八幡視点
俺、千束、井ノ上の三人はDA本部にて、リコリス襲撃主犯の真島の似顔絵を作成していた。実際に接触したのは俺たちだ。防犯カメラにでも映っていれば良かったのだけど、全て削除されており映っていなかった。
恐らく消したのはロボ太だとクルミが言っていたな。それにしても我ながらいい出来だと思う。
「それが真島か?」
「「はい!これが真島です!」」
千束と井ノ上が同時に楠木司令に似顔絵を見せたけど、小学生の落書きの方がまだ上手だと言えるほどの似顔絵になっていた。
「ぷぅー!たきな、それはないよ!」
「千束のより私の方が似ていますよ!」
「どっちもどっちだと思うが?」
「八幡だって、似たようなもんじゃん!」
「俺の方が断トツで上手いだろ!?」
三枚を並べて見比べても俺が一番上手のはずだ!春川や乙女がため息を出して呆れている。どうしてだ!?どう見ても俺が一番だろ!?
「リコリスに画力を付けさせた方がいいっすね」
乙女が俺たち三人の似顔絵を見てそう言ってきた。どうしてだ!?どう見ても俺が一番だろ!千束のは角ばっているし、井ノ上のは髪型とか色とか全然違うし!
「ねぇ八幡。もうクルミのドローンの映像、見せた方が早いんじゃない?」
「それだとクルミの存在をDAに知らせないといけないだと?あの見た目で凄腕のハッキング技術を持っているんだぞ」
「もしかしてウォールナットが生きているとか言ってきそうだね」
「あとで俺が映像を見ながら描いて送っておけばいいだろう」
「そうだね!」
ウォールナットことクルミの存在はリコリコのメンバー以外に知らせない方がいい。もしウォールナット生存説が出てきたならリコリコが殺し屋の襲撃に遭う。
俺と千束が居れば、撃退は出来るけど店が無事とは限らない。もしかしたら営業停止になる可能性が高い。
「たきな!帰るよ」
「待ってください。もうちょっとなんで!」
「まだ描いているよ……」
井ノ上は自分の絵が下手だと思われているのが気に入らないようで描き直している。でもさっきと変わらないので、どのみち破棄されるだろうな。
やはり俺のが一番上手だろ!千束も井ノ上もさっさと認めればいいものを。帰ったらクルミから映像を貰って描いておかないとな。
「―――比企谷」
「……よぉ、久しぶりだな」
「ああ……」
千束たちとDA本部からリコリコに帰ろうとした時に後ろから声を掛けられた。振り返ってみるとそこには一人のリリベルが立っていた。しかもファースト。
こいつの事は知っている。昔の同室だったリリベルだ。俺が本部からリコリコに異動になる前はセカンドだったけど、今はファーストになったようだ。
「どうしてお前がここに?」
「司令の付き添いだ」
「……マジか」
「最近のリコリス狩りの件でな」
「ああ。なるほど……」
真島とか言う男の襲撃以来、リコリスたちへの襲撃は少なくなった。こちらを警戒しているのか、もしくは別の事で手が回らないのかは分からない。
でもきっとロクな事を考えてはいないだろう。99号……小町の事もあるから早めに動いて欲しいけど、まったく動きがないのでちょっと不気味だ。
「お前はまだ錦木千束を殺していないんだな?」
「だって、あいつは裏切っていないしな。今、殺したら損失だろ?」
「情でもあるのか?」
「それもあるな……」
「それも?」
出口近くで井ノ上と話している千束を見る。殺す事しかなかった俺に不殺という呪縛で救ってくれた。もう誰も殺さなくていい理由を俺に与えてくれた。
俺がそれだけでどれだけ救われたかは千束は知らないし、教えるつもりはない。いつか俺が千束の下から離れる時まで。
「お前は変わったな……」
「人は変わるものだろ」
「腑抜けになったな……くっ」
いきなり銃を抜くものだから腕を掴んで壁に押さえ付けて、銃を奪って頭に銃口を向けた。まったくいきなり銃なんて本部で抜くなよ。
「いきなりだろ……」
「……比企谷。戻って来い」
「虎杖司令みたいな事を言うなよ。俺はまだ錦木線束を殺していないんだぞ?」
「お前はあんな所に居るべきではない!」
こいつにしては珍しく叫ぶな。同室だった時のこいつは昔の俺のように機械のような感じだったのに。
俺は銃を返して出口に向かって歩き出した。あいつは何か言いたそうだったけど、知らん振りして千束と合流した。
「八幡。さっきのリリベル、知り合い?」
「昔の同室だった奴だよ」
「ふ~ん……好きだった?」
「生憎、俺はノーマルだよ」
「そうだよね!」
千束は何を言ってくるんだ?誰が同姓を好きになるかよ。千束は何故か嬉しそうにしている。何かいい事でもあったんだろうか?
そしてリコリコに戻った俺はクルミから映像を見て、真島の顔を改めて描いて店長とミズキさんに見て貰ったけど笑われてしまった。
どうして!?中々の力作なのに!?結局、似顔絵に関しては本部に送らない事になった。下手に似せ過ぎると疑われるからだ。