やはり俺がリリベルなのはまちがっている。   作:新太朗

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たきなと八幡

たきな視点

 

「ここですね……」

 

私は先日の銃取引の失敗の責任を取る形でこの支部に異動になった。どう見てもただの喫茶店にか見えない。だけど、メモの住所はここであっている。

私は店の中に入った。

 

「あぁ!また結婚か!」

 

店の中には和装の女性がテレビで報道されている芸能人の結婚のニュースに憤慨していた。何をそんなに怒る事があるのだろうか?

 

「うん?リコリス……?」

 

「井ノ上たきなです。本日よりこちらに転属になりました。不本意ですが、司令があなたから学べと錦木千束さん」

 

「それは千束ではない」

 

「それって言うな!」

 

 

この女性ではないのか。では店の奥から出てきた褐色の男性が錦木千束さんなのだろうか?確か私と歳は近いはずですが。

 

「…………」

 

「そのおっさんでもないよ!」

 

「ここの管理者のミカだ」

 

「井ノ上たきなです」

 

私は管理者のミカさんと握手を交わした。すると錦木千束とは誰なのだろうか?店には二人以外に人がいるとは思えなかった。

 

「センセー!大変。この店、食べモグの口コミでホールスタッフが可愛いって!これって私の事だよね!」

 

「アタシだよ!」

 

「……冗談は顔だけにしろよ。酔っ払い」

 

和装の二人の男女がお店に入ってきた。男性の方を見た時、思わず一歩下がってしまった。その人の目はまるで死んだ魚のような目をしていた。

これまであんな恐ろしい目を見た事がなかった。本当に恐ろしい。

 

「あら?リコリス……?てか、どうしたの?その顔」

 

「千束。話したろ?例のリコリスだ」

 

「「えっ!?」」

 

お店に入ってきた女性が錦木千束だったのか。すると男性の方は誰なのだろうか?この店のスタッフだと思うけど。

 

「今日からお互い相棒だ。仲良くしなさい」

 

「この人が?」

 

「この子がぁ!」

 

錦木さんが私の手を取って顔を近づけてきた。こんなにも目を輝かせた人間を見た事がない。そんなに興奮する事だろうか?

 

「よろしく相棒!千束でぇす!」

 

「井ノ上たきなです。よろしくお願いし―――」

 

「たきな!初めましてだよね?」

 

「は、はい。去年京都から転属したばかりな―――」

 

「おぉ!転属組。優秀なのね!歳は?」

 

「十六です」

 

「私が一つお姉さんか。でも『さん』はいらないよ。ち・さ・とでオッケー!」

 

こちらが答える前に次々と言ってくる。どうにか逃げないと。

 

「それでその顔のは名誉の負傷ってやつ?」

 

「これは……」

 

正直、言いたくはなかった。これが原因で私はここに異動になったのだから。でも言わなくても少し調べれば分かる事だ。

それなら私の口から言った方が楽かもしれない。

 

八幡視点

 

「殴る事ないじゃん!」

 

千束の怒号が店に響く。電話で文句を言っているのは千束と同じファーストリコリスのフキって子だ。会った事はないけどな。

俺はカウンターに座る井ノ上たきなを観察した。黒髪ストレートで美少女と分類出来る。一見すると問題児とは思えなかった。

頬の傷を話してからかなり落ち込んでいる。DA本部で色々と言われたのだろう。俺も少しは状況を把握している。

井上は人質になった仲間を救おうとしたのだろう。結果として仲間は無事だけど、武器商人は全滅しては異動になるのも頷ける。俺は井ノ上にモンブランを出した。

 

「これは?」

 

「今度、店で出すモンブラン。店長のコーヒーに合うように作ったから感想を聞かせてくれ」

 

「……おいしい」

 

モンブランを食べている井ノ上は年並みの少女の姿になっていた。先ほどまで落ち込んでいたのに元気を取り戻したようだった。

やはり甘味は誰だって元気にする力が宿っているのだろう。特に年頃の女子には効果絶大だ。千束も機嫌が悪くても俺が菓子を作って出すとすぐに機嫌が直るからな。チョロいものだ。

 

「ところであなたは?」

 

「名乗ってなかったな。リリベルの比企谷八幡だ」

 

「リリベル?」

 

「男版リコリスみたいなものだ。ちなみに俺も千束と同じファーストだ」

 

「そうなんですね」

 

「うっさい!あほぉ!」

 

千束が受話器を叩きつけるように置いた。ものに八つ当たりするなよ。千束も機嫌が悪そうだからもう一つモンブランを用意した。

 

「まったく司令司令って、自分で少しは考えろっての」

 

「命令無視する問題児よりかはいいだろう?」

 

「人の事、言えないくせに」

 

確かに単独行動しまくりの俺も千束の事を強くは言えない。千束はカウンターに座ると用意したモンブランを頬張った。まったくお前はリスか?

 

「よしたきな!さっそく仕事に行こう!」

 

「はい!」

 

「着替えてくるからゆっくりでいいよ」

 

千束は更衣室へと向かった。俺はスマホを井ノ上に渡した。彼女はスマホと俺を交互に見て、何故渡したのか分かっていなかった。

 

「連絡先、知っていた方がいいだろ?」

 

「自分でしないのですか?」

 

「やり方が分からん」

 

「はぁ……」

 

井ノ上は素早く自分のスマホを取り出して連絡先を交換した。それが終わると千束が着替えて出てきた。DAから支給された赤い制服だ。

DAは色で実力分けにしているので分かり易いよな。赤がファースト、紺がセカンド、ベージュがサードだ。

千束は井上を連れて仕事に向かった。しばらくは静かに過ごせる。さて、モンブランでも作っておくか。

 

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