千束視点
怪しい。ここ数日、先生の様子が変だ。数日前に先生のスマホに来たメールが原因かもしれない。トイレに行く途中に視界に入ってしまった。
『千束の件で話がる』
なんて、気になってしょうがいじゃん!先生は誰と私の件で話すんだろう?先生に直接聞いても答えてくれるか分かんない!
「リコリコ閉店の危機です!」
私は閉店後に先生を除くリコリコのメンバーを招集した!八幡とたきなは怪訝そうな顔を向けてくるし、ミズキは呆れ顔だし、クルミに至っては話を聞いていない。
「どうして、店長が千束の話をすると閉店の話になるんですか?」
「それは楠木さんが先生を誑かして私を本部に戻そうとしているからだよ」
「アンタが無理ならおっさんから攻めようって?」
「店長と司令は愛人関係なんですか?」
「愛人関係って!」
たきなは本当に面白いな!それにしても純粋なたきなが愛人なんて言葉を言うなて、どこでそんなの覚えたの!?あ、私が貸した映画の中だ!
「でも店長が本部に戻ると千束が付いて行くと閉店になるんですか?」
「小さいとはいえ、ファーストが居て支部がなりたっているからね」
「みんなだって、お店がなくなると困るでしょ!」
「私は教習所に戻ります……」
「男の出会いの場が……」
「ボクは命の安全が……」
「…………」
たきなは教習所から一からやり直す事になるし、ミズキは出会いの場がなくなるし、クルミは私がいなくなると命の危機だ。
八幡に関してはそれほど問題ないのか、さっきから黙ったままだ。八幡は私と離れる事になってなんとも思わないのか?
「八幡は何か、先生から聞いていない?」
「そうだな……あ、そういえば明後日、店の戸締りを頼まれたな」
「それだ!その日に先生はメールの相手に会うんだ!クルミ、調べて欲しいんだけど!」
私はクルミに先生に届いたメールの相手が指定したバーについて調べてもらった。先生には悪いけど、気になるんだもん!
「会員制のバーだな」
「ここに……八幡」
「何だ?」
「当日は私と一緒にここに潜入するよ!」
「了解」
そうだ、このバーではドレスを着ないといけないから用意しておかないと!どれがいいかな?八幡は似合っているって言ってくれるかな?
「よし!リコリコ閉店の危機を回避するぞ!」
「「「「おおぉぉ~!」」」」
この居場所は絶対に守ってみせる!そうと決まれば早速準備をしないと!もう明後日だからね。時間がないぞ!
私はリコリコを出て、すぐにドレスの準備を始めた。クルミはバーの情報を集めてもらった。
八幡視点
店長が動いた。俺たちは着替えて、店長が向かったバーに向かった。俺はスーツを着て、髪型はオールバックに伊達眼鏡でバッチリ変装した。
この格好も久しぶりだ。前にお客さんに怖がれるとミズキさんにさせられて、千束が俺を厨房に押し込まれて以来だ。
「八幡のその格好、久しぶりだね」
「お前がさせなかっただけだろ」
「……だって、他の人に見られなくなかったから」
「なんだって?」
「なんでもない!」
千束は顔を少し赤くして視線を逸らした。千束の今の格好は赤いドレスに髪を後ろで束ねていた。いつもとは違う格好に少しだけ、ドキッとしてしまった。
「八幡ってば、千束さんのドレス姿に見惚れちゃった~?」
「制服でない千束が新鮮なだけだ」
「そこはお前が一番美しいって言ってよ」
「俺がそんな歯が浮きそうなセリフを言うとでも?」
「だよね~」
分かっているなら言わなくていい。今回は井ノ上とクルミがサポートをしてくれている。店の中には入ってこないとはいえ、心強い。
「もっと褒めてよ~!」
「揺らすな!」
「褒めて~!」
車内なんだから暴れるな。さっさと大人しくさせないと。でもどうしたらいいんだ?褒めたら満足して大人しくなるだろう。
「千束……」
「え?は、八幡?」
「…………」
「は、八幡?」
俺は千束の顔を手で俺の方に向けさせて、10秒以上視線を合わせた。千束は恥ずかしいのか、視線を逸らそうとしたけど、俺がそうはさせなかった。
すると千束の顔がドレスと同じくらい赤く染まってきた。前に千束が見ていた男性雑誌に載っていたので試してみたら効果ありのようだ。
どうして千束が男性雑誌を見ていたかは不思議だけど。
「千束……綺麗だ」
「え?は、八幡!も、もういいから!私が悪かったから!」
「綺麗だ……」
「もう無理!」
千束は俺の手を振り解いて両手で自分の顔を覆った。褒めろと言ったので褒めたのにどうして恥ずかしがるんだ?
「おい!夫婦漫才をしている場合か!?」
「俺と千束は結婚していないので夫婦ではないですよ?」
「アタシへの当て付けか!?」
「?」
ミズキさんは何を言っているんだ?何か車内が不機嫌の空気になってきた。千束の横で井ノ上が俺を睨んできていた。何か変な事でもしただろうか?
「井ノ上?」
「知りません」
「えぇぇ……」
ミズキさんと井ノ上は不機嫌になり、千束は顔を覆って黙っているし、クルミに関しては我関せずと言わんばかりにタブレットを見ていた。
バーに着くまでこの空気に耐えなければならないのか!?千束の所為だぞ!