やはり俺がリリベルなのはまちがっている。   作:新太朗

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襲撃と撃退

「お泊りセット?」

 

『うん。今から位置情報送るから持ってきて』

 

喫茶リコリコの営業時間が終わりそうな時に井ノ上と一緒に外に仕事に行った千束からそんな電話がやってきた。

 

「井ノ上の家にでも泊まるのか?」

 

『例の武器取引の現場を撮った写真があって、それで狙われての人の警護!』

 

「それで泊り込みで見張るのか?」

 

『うん。だから持ってきて』

 

「了解……店長、千束からお泊りセットを持ってきて欲しいそうだなので」

 

「分かった。夜道には気をつけなさい」

 

「はい」

 

俺は着替えて車庫からオートバイを出した。これは店長が俺の16歳の誕生日に買ってくれたものだ。左遷されたとはいえ、俺はファーストリリベルだ。

時々単独任務がやってくる。その任務報酬はリコリコ維持に使われている。リコリコの移動手段は車だけだ。だけど一台しかない。

そこで店長がこのオートバイを買ってくれたのだ。俺はヘルメットを被って千束が送ってきた位置情報の下へと向かった。

 

「ほれお泊りセット」

 

「それじゃ次はここね」

 

「警護の人の家か?」

 

「うん。急いでね」

 

井ノ上の姿が見えないが、その警護対象に付いているようだな。千束がオートバイの後ろに乗ってきた。腕を俺のお腹に回して背中に自分の胸を押し付けきた。

千束はオートバイの後ろに乗る際にこのように密着してくる。ここまで密着する必要はないんだが、どうしてだ?

 

「ねぇ八幡」

 

「なんだ?」

 

「たきな。美人だよね?」

 

「まあ、スタイルがいいからそうなるな」

 

「タイプ?」

 

千束が後ろからそんな事を聞いてきた。その手は少しだけ震えているようにも見えた。井ノ上たきながタイプかと言われるとどうだろうか?

 

「タイプではないな」

 

「ホント!?嘘じゃない!?」

 

「あ、ああ」

 

「なら八幡のタイプってどんなの?」

 

俺の恋愛対象か。今まで考えた事もなかった。こんな仕事をしている俺の事を受け入れている人間が果たしているだろうか?

他人の血で汚れているこの手を握ってくれる相手がいるだろうか?数え切れないほど死を見てきた。でも俺の心はそれでも動揺しなかった。心が麻痺している。

 

「……千束みたいな子かな?」

 

「わ、私!?」

 

「ああ。どうせならお前みたいな子がいい」

 

「そ、そっか……ならチャンスあるよね」

 

千束は最後の方、なんて言ったんだ?小声で聞き取れなかった。まあ、千束のように俺をいろんな場所に連れ回してくる相手なら俺は笑えるだろうか?

これまで心から笑った事はない。でも千束がリコリコが定休日に色々な場所に連れ出してくれた。

遊園地、水族館、動物園、デパートと俺一人だったら絶対に行かないな場所に千束は連れて行ってくれた。

 

「千束。そろそろ目的地だぞ」

 

「あ、うん。たきな、着いたかな?」

 

「―――きゃああぁぁ!?」

 

女性の悲鳴が響いた。すると千束がバイクから急に降りて駆け出した。俺も千束に続いて走った。するとワゴンに女性を連れ込んでいる場面に遭遇した。

千束がワゴンに向けて発砲した。

 

「八幡。ワゴンの中の人を!」

 

「護衛対象か!?」

 

「うん!」

 

まったく運がないな。二人のファーストが揃っているのだから。誘拐犯に同情してしまう。俺が拳銃を抜くと誘拐犯の一人も拳銃を抜いて、こちらに向けて発砲してきた。

しかし誘拐犯の弾が俺に当たる事はなかった。俺は紙一重で弾を全て避けたからだ。俺は人より目がよく観察する。

表情や手の動きで発砲のタイミングを把握して引き金を引いた直後に回避している。これは千束も同じような事が出来る。

 

「同情するよ」

 

「がっ!?」

 

俺は誘拐犯に近づき発砲した。着弾と同時に赤い煙が立った。これは店長の手製の非殺傷弾だ。弾が当たった所で死ぬ事はない。しかしかなり痛いらしい。

一度も当たった事がないのでどれほど痛いかは知らない。でも常人が気絶するほど痛いらしい。

ものの数秒で俺と千束は誘拐犯を制圧した。すると井ノ上がようやくやって来た。何をしていたんだ、こいつは?

 

「たきなちゃぁぁん!!」

 

警護対象が起きたようで井ノ上に抱き付いて泣いていた。まったく護衛対象をほったらかしてどこに行っていたんだ?この問題児は!

一先ず千束がクリーナーを呼んで誘拐犯と車を持って行ってもらう事にした。クリーナーって高いんだよな。ミズキさんがまた文句を言いそうだな。

 

「千束。今夜は護衛対象と一緒に居ろ」

 

「分かった」

 

「あとは俺の方でしておくからその人送って来い」

 

「うん。たきな、行くよ」

 

「はい」

 

千束と井ノ上は拉致されそうになった女性を自宅まで送って行った。俺はクリーナーが来るまで車を物色する事にした。

こいつらが持っていた身分証は偽造されたものだな。これと言って役に立ちそうな物はないな。

 

「うん?これは…………え?」

 

俺は車の中から手紙を発見した。変哲もない手紙だったが、送り先の名前を見て思わず驚いてしまった。

 

『比企谷八幡様』

 

と書かれていたからだ。どうして俺の名前が手紙に書かれているんだ?あの女性を拉致しようと連中は俺に手紙を渡すつもりだったのか?

詳しく話しを聞きたかったけど、全員気絶してクリーナーが来てしまって詳しく話しを聞く事が出来なかった。俺は手紙だけを持って帰る事にした。

 

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