やはり俺がリリベルなのはまちがっている。   作:新太朗

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指令と脱出

八幡視点

 

ウォールナットの依頼で死の偽装をするなった。リスの着ぐるみを着てリコリスと合流する事で着ぐるみがウォールナットだと周りに印象付けた。

こちらの目論みは成功してプロよりのアマの殺し屋に狙われる事になった。ここまでは予定通りだ。

 

「…………」

 

『なんだ?』

 

「ウォールナットさんって、私と初対面ですよね?」

 

『そうだが?』

 

「どこかで会った事あります?」

 

『いや、リコリスに会うのは初めてだ』

 

千束が視線を俺に向けてそんな事を言ってきた。中々鋭い勘をしている。伊達にファーストではないな。流石に喋らないから俺だとは分かってはいない。

 

「ウォールナットさんは海外に逃げたらどうするんです?」

 

『しらばくはどこかの片田舎に引き篭もってほとぼりが冷めるのを待つさ』

 

「ふ~ん……海外か」

 

『一緒に行くか?』

 

「あぁ……遠慮しておきます。私が逃げると八幡に殺されるんで」

 

千束は海外に憧れがあるからな。俺たちは戸籍がない。つまりパスポートが作成出来ない。車や電車などは使えるけど、飛行機だけは無理だ。

 

「千束。さっきの話はどういう事ですか?」

 

「うん?海外の話?」

 

「そっちじゃなくて、比企谷さんに殺されるって事ですよ!」

 

「だって、八幡は私を殺すためにリコリコに居るんだよ?」

 

そう、俺は錦木千束を殺すためにリコリコに居る。もし千束が死んだりするとDA本部に戻る事になるだろうな。

 

「どうして……」

 

「DAにとって私が逃げたり裏切ったりすると八幡が私を処分するんだよ」

 

「だったら今なら逃げられるんじゃ……」

 

「逃げたら八幡は先生を人質に私を誘き寄せるよ」

 

千束にとって店長は掛け替えの無い人だ。千束なら絶対に逃げても店長を助けるために戻ってくるだろうな。

 

「でも!比企谷さんだって店長にお世話になっているんですよ!?」

 

「それでも指令が優先するのが八幡なんだよ。普段、お世話になっている?そんなの八幡にとって瑣末な事なんだよ。私を殺す事が最優先なんだから」

 

井ノ上は千束のその言葉に納得していない顔をしていた。井ノ上とは対照的に千束はどこか嬉しそうに俺の話をするな。自分を殺すかもしれない相手なのに。

 

「たきな、大丈夫だって!私が裏切ったり逃げなければ、八幡は私を殺さないんだから」

 

「二人は普段、あんなにも仲がいいのに……」

 

「そうだね。それは仕方ないんだよ……八幡は昔、DA以上に酷い場所でそう教育されたらしいから」

 

「DA以上の場所で教育を?」

 

確かにあそこはDA以上の場所だった。毎日、子供たちは死んでは新しい子供が補充される。あそこで生き残るには他者を利用するしかなかった。

おかげで精神は麻痺して、目はすっかり淀んでしまったけどな!今は組織は潰されて施設も跡形も残ってはいない。

 

『ハチマン?ヒキガヤ?誰の事を言っているんだ?』

 

「私の愛しのダーリンだよ。写真見る?」

 

『……こ、これは驚いたな。こんな死んだ魚のような目をした人間は初めてみた』

 

「だよね!でもね、優しいんだよ。私の我がままも文句を言いつつ全部、叶えてくるから」

 

叶えないとお前がいつまでも駄々を捏ねるからだろう。お前の我がままなんて俺でなければ、三日で胃に穴が開いているぞ?

 

「だからウォールナットさん。海外は私が死ななくてよくなったらお願いします」

 

『……分かった。いつでも連絡をくれ。戸籍を偽装するくらいボクならワケない』

 

「言質、取ったからね?」

 

千束はマジで自分が殺されないようにするつもりか?まあ、俺もそっちの方が楽が出来ていいかもしれない。

さて、そろそろ高速に乗って空港まで行くか。俺がハンドルを切ろうとしたが、車がそれとはまったく逆方向に進んだ。

 

「あれ?高速は乗らない?」

 

『どうした?』

 

「いや、それはこっちが聞きたいよ」

 

『どうやら乗っ取られたようだ。ロボ太か……腕を上げたな』

 

「ちょいちょいちょい!どうするの!?」

 

不味いな。車のコントロールを完全に奪われた。キーを回そうとしてもエンジンが止まる様子は無い。このままだと海に突っ込むな。

 

『コントロールを奪うと同時に物理的に回線を切らないとどうにもならない』

 

「ルーターどこ!?」

 

『知らん。ボクの車じゃない』

 

おい、ルーターの位置くらい把握しておけ。それにしてもさっきから後ろをついて来る高性能ドローンが気になるな。ロボ太と言うハッカーのものか?あれが中継しているんだろうな。

 

「たきなは後ろのドローンをお願い。私が回線を切るから」

 

「分かりました!」

 

『取り戻すぞ。三……二……一。今だ!』

 

千束もドローンには気が付いていた。ウォールナットが車のコントロールを取り戻し、千束がルーターを破壊し、井ノ上がドローンを撃ち落した。いい腕をしている。

俺はコントロールが戻った車にブレーキを踏み、ハンドルを切って車体を横にして海に落ちないようにした。ギリギリだったぞ。

それにしても俺のドライブテクニックも中々捨てたものではないな。

 

「みんな、ゆっくり外に出よう」

 

井ノ上が出て、俺が続いて荷物が出て千束が出た所で車は海に落ちた。たった数分のドライブ、お疲れ様。

俺たちは近くの潰れたスーパーに身を隠した。もう近くまで殺し屋たちが迫っていた。

 

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