いあ!いあ!まぐ=めぬえく!【完】   作:ringosuki

15 / 23
第15話 ウォーターからのメッセージ 潜入

 10月に入り徐々に肌寒さを感じさせる日が増えてきた。

 子どもは風の子とばかりに元気で、用意周到な大人は冬物のセールを調べたり冬用タイヤや暖房等の点検を行う頃。

 

 小学校の帰りの会にて、ぐったりと椅子によりかかる生徒がいた。洗い過ぎてくたくたになったぬいぐるみの様でこのまま椅子を滑り落ちてしまいそうだ。

 

 端的に言うと鈴は疲れていた。

 

 この日の5・6時間目は職場体験の発表会であった。

 

 彼女は職場体験先の希望は特になかったのだが、急遽体験先にヤタガラスホテルグループ系列のホテルが追加されたのを聞いて参加先を決定したのだ。

 

 思い返してみれば、ヤタガラスからは活動状況の報告やカウンセリングの一環として学校生活やイベントについてのやり取りがあった。

 

 この間は学校行事についての詳細なやり取りがあったうえで積極的に取り組んでほしいとの謎の激励を頂いた。ヤタガラスホテルグループのリニューアルやイベント情報が来る頻度もこのところ増していた。

 

 おまけにホテルからの生徒へのコメントが「『悪魔的な客室係』の業務の実態をお見せします」ときたものだ。

 

 体験先は公共施設や交通機関、医療・福祉、インフラ、製造、小売りと一通りそろっており、ホテルはもともと1つだったのをヤタガラス系列ホテルがねじ込んで2つに増やした形となった。

 

 鈴以外もそのホテルに応募したが、受け入れ態勢の都合で()()()()()が行われて鈴1人だけが当選した。

 

 表向きはホテルマンの仕事の体験だけあって内容もマナーや電話応対、接客の基本、ベッドメイク、ルームサービスの配膳、厨房の見学など盛りだくさんだ。しかしこれらは半日という超ハイペースで消化された。

 

 あとはこれもある意味ヤタガラスホテルグループの仕事だからと半ばのせられる形で回復アイテムの作成体験、マガツヒや土地の霊脈を使用した回復施設の見学を行った。

 さらに悪魔出現調査に駆り出され、仲魔召喚可能のホテルのバーでバーテン見習いという名の悪魔関係者との顔つなぎの時間もあった。

 

 後日口座にしっかりと給料が振り込まれたため、鈴が驚愕することとなった。

 

 有意義ではあったが日程の4日間のほとんどは発表できない体験であるため、表向きのものを何倍にも膨らませて発表する必要があった。

 

 ホテル側が気を利かせてアリバイとしてわざわざ「外道 ドッペルゲンガー」を連れてきてまで撮影した、鈴に変身したドッペルゲンガーが働いている写真が多数あるので発表資料には困らなかったが。

 

 他は基本的にひとつの職場に2名以上が行っていたが、鈴だけ1人で行ったので資料作りも発表も孤軍奮闘であった。発表時間が短くてもよかったのが救いである。

 

 帰ったら最近はまっている料理系Vチューバーがアップした「四角い納豆巻きの作り方」を実践して自分と破壊神のおやつにしようと考えていた。

 

 すると、担任の先生が真剣な表情で連絡があると語った。

 

「学校からのお知らせです。最近『幸せになる水』というものが流行っているらしく、そういった怪しい誘いにはついていかないようにとのことです」

「せんせー、ペットボトル1本1万円とかで売ってるってことですか?」

「いや、詳しい手口はまだ分かっていないようなんだ。だから怪しい売り文句で水を勧められても口にしないようにね」

「はーい」

 

 そこで先生はやや遠くを見る目になり、述懐する。

 

「先生が新米のころにも似たような水のことで論争があったなぁ……時代は巡る。ってことなのかね」

「昔にもこんなことがあったんですか?」

「うん?ああ、まあね。水っていうものは人間にとって欠かせないものだからある種の神聖視があるし、こういった怪しい話は定期的に出てくるのさ」

「水素の音〜ってやつですか?」

「いや、それよりももっと前の話だよ。気になるなら調べてみなさい。調べるヒントを教えるよ」

 

 そう言って担任は話を終わらせ、帰りの会を進める。

 

 鈴は疲れていて「水」、「怪しい」などの大事そうな単語を頭の片隅に入れておくのが精いっぱいであった。

 

 

****

 

 

「酢飯もしくは白米は炊きたてを使うのではなく、こうやって適温に冷ますがよい。海苔が湿気て食感が悪くなるので気を付けるのだぞ~」

 

 鈴は料理系VTuberの動画を再生しながらを納豆巻き作っていた。

 

 破壊神は「カラテノミコン」なるどこで手に入れたかもわからないどこか冒涜的雰囲気を漂わせる古めかしい書物を読みながらスマホ型COMPのメールチェックを行っている。

 

 前に似たようなことをしていて鈴が問題ないのか尋ねたのだが、破壊神の単眼は視野が広いうえに深淵の智慧が眠る頭脳なら問題ないとのことだ。

 

「マグさん、できました」

「いただこう……」

 

 夕食までの軽食兼のちに夕食の一品となる四角い納豆巻きを1人と1柱で食べる。

 

「白き穀物と腐敗せし豆を板状の海藻で包んだ料理……直方体の形にしてタッパーに収める面積の無駄をなくすとは考えたな鈴よ……」

「独特な食レポありがとうございます。そこまで考えたわけでは……」

 

 最近やたらと褒めてくれる破壊神だが、鈴としては彼が少し前に読んでいた「ほめて育てる育児書」と「尊敬される上司になるビジネス書」どちらの影響なのか気になるところである。しかし、真実が明らかになるのが怖くて聞き出せていない。

 

「そういえば鈴よ……この市の治安に関わる依頼が出たぞ……」

「え?ほんとうですか?」

「うむ。危険度は低いがその分報酬が低く、情報も集まっていないため足を使うそうだ……ともすると塩漬けになりかねんな」

「そこで私たちの出番ってことですね?受けてもいいですか?」

「そこはサマナーとして『受けてもいいですか?』ではなく……まあよい。身近なところからコツコツやるのが布教の第一歩だ……」

 

 破壊神は納豆巻きを吟味しながら言う。

 

「かの油を注がれた者は説法中母親が来ていつもの調子を崩したそうだが、この世界の我には親族……というより同胞はいないしな。知りすぎているが上に邪魔になる者がおらぬ……」

「マグさんにも仲間がいたんですよね?」

「仲間というよりは同族であり覇権を争うライバルだ……」

 

『この宇宙は君の召喚を通して()()()()()()()()()()()()

 

 破壊神の脳裏に車椅子の男の言葉がよぎるが、頭を切り替えて本題を進める。

 

「それよりも依頼だ……端的に言うなら潜入調査といったところだな」

「まるでドラマとかに出てくる探偵みたいですね」

「そのような大層なものではない……オカルト絡みらしき怪しい集会があるから行ってくれとのことだ」

 

 破壊神が依頼の概要を説明する。

 

 依頼主は土着の弱小カオス勢力。近頃怪しい水の商売が広まっており、それらしき集会があるので同行をお願いしたいそうだ。

 

 それは奇しくも鈴が学校で聞いた怪しい水商売(誤用)の話であった。

 

 土着だけあってご近所のネットワークで見つけたはいいものの、もし本当にバックに悪魔がついていた場合太刀打ち出来ないらしい。後ろで睨みをきかせる武力担当募集で、ウンディーネなど水に関わり水の良し悪しが分かる悪魔がいると尚良しとのことだ。

 

 後先考えない破壊力だけなら既に中堅サマナーを超えている2人は十分に条件を満たしている。

 

「マグさんは水の鑑定とかできますか?」

「軟水や硬水などの成分分析くらいならできるが……巧妙に隠された祝福(呪い)等となるとちと厳しいな」

「じゃあ、依頼当日までに力になってくれそうな悪魔のスカウトか作成をしましょうか」

「ポセイドンあたりが仲魔にできたらよいな……」

「大物過ぎる上に海の神さまでは?」

 

 依頼受注をし、数日猶予があるため可能なら即戦力を仲魔にすることにした。

 

 

****

 

 

 日曜の午前中。

 

 実寸大をよく確かめないで注文すると地獄を見ることで有名な喫茶店で鈴と依頼主は会っていた。

 

「はじめまして。阿座斗鈴(あざとすず)です」

『仲魔兼主神のマグ=メヌエクだ……』

「今回は依頼を受けてくれて感謝するっス。『豊穣の会』の千黒山(せんこくざん) 羊子(ようこ)です。羊子って呼んでくれると嬉しいっス」

 

 人目があるため破壊神はスマホ型COMPの画面上の文字で発言を行う。

 

「いやー、正直こんなに早く依頼を受けてくれる人が出るとは。本当に悪魔絡みだった場合の追加報酬は確約してるっスけど、そうじゃなかった場合は同じ時間で野良悪魔にカツアゲした方がはるかに儲かる金額だったんスけど」

 

 周りを気にしてか一部単語の声が小さい。

 

「この町の治安に関わるとのことだったので……」

有難(あざ)っス、鈴センパイ!」

「あの、年上ですよね?先輩はちょっと……」

 

 鈴が困惑した様子で羊子に問う。彼女はどう見ても高校生くらいの年齢だったからだ。

 

「違うんスよ。この(悪魔)業界は前々から知ってたんスけど、異能に覚醒めてこういったことを任されるようになったのはつい最近なんスよ」

「えっ、そうなんですか?」

「ちょっとそのスマホのアナライズアプリで診てくださいッス」

 

 そう言うとスマホ型COMPを指す。

 

 言われるままにアナライズすると、「異能者 千黒山羊子 Lv7」と表示される。

 

 なるほどぺーぺーもいいところである。先の十戒戦でレベルが15に達した鈴であれば、後方支援系デビルサマナーとはいえタイマンでも一方的に制圧可能だ。

 

「というわけで鈴さんはセンパイなんスよ」

「うーん、でも……」

『敬われているなら好きにさせればよいだろう……』

「まあ、学校外でスポーツとかの趣味の世界ならそう呼ばれても不思議じゃ……?」

「じゃあ鈴センパイ、依頼の説明するっス」

 

 羊子から町に流行っている怪しい商売について世間話の形をとって依頼の説明が行われた。

 

「はっきり悪魔関係の詐欺だって判明したらヤタガラス(お上)に丸投げできるんスけどね」

「まあこういう細かいオカルト関係の不安の解消はウチのシノギでもあるっスから」

「土着ってそういうことなんですね」

「でもウチは弱小かつ脳筋しかいないんで調査とかさっぱりなんですよ」

『それで直接乗り込んで調査する、と……』

「スポンサー様がやる気出してくれたら一発で解決しそうなんスけどねぇ」

「スポンサー?」

 

 「豊穣の会」は、昔地母神を仲魔とした男が「超常の力を身につけ、弱者救済を行い恵みをもたらす」という方針を掲げて設立した団体だそうだ。

 しかし時代の流れで衰退し質も数も低下、ここ最近で一番の手柄は魔獣ケットシーを活用した迷いネコ探しというありさまだった。

 

「それはそれで立派だと思いますが……」

「それがっスね……」

 

 最近スポンサーを名乗る存在が豊穣の会に付いたらしい。その「プロヴィデンス」と名乗るスポンサーは豊富な資金と上質な魔道具を持ち、深い魔術の知識からアドバイスをくれるそうだ。

 

 しかし、その「プロヴィデンス」さまはずいぶんとイイ性格であらせられた。

 

 その豊かな資産は豊穣の会会員が身の丈を超えるような試練や善行を行おうとするときにしか提供されず、普段はぎりぎり現状維持が不可能な程度の支援しかしてくれないそうだ。

 

 なんでも「ひ弱な人間が身の程を知らずに大きなことを成そうとする姿は推せる」とのことだ。

 

 今回もスポンサーからの調査に使えそうな魔道具の貸し出しがあればすぐに白黒が付いたであろう。羊子が自分なりに調べ、考えて集会に潜入するのに自分だけでは不安があるということで始めて依頼を出せるだけの支援をもらったのだ。

 

「大変なんですね……」

『推せる……?』

「まあ、それは置いておいて姉妹と言い張って集会に参加は怪しいっスかね?」

「うーん……?」

『我に良い考えがあるぞ……』

 

 

****

 

 

 とあるイベント会場にて。

 

 合同で行われる大学説明会のような細かく区切られたブース形式になっており、メイン商品の「幸せになる水」の説明会を始めとし、定期購入のセールス兼説明会、体験談の発表、「幸せになる水」の研究発表、試飲会、マスコットキャラ「ハッピーウォーターくん」の着ぐるみとの撮影会等と多種多様だ。

 

 「幸せになる水」を使った料理の出店も出ている。

 水が主役なため薄味の麺類や汁物、ドリンクが多い。極一部では「幸せになる水」で茹でて「幸せになる水」がつゆ代わりのそうめんや「幸せになる水」を凍らせて削ったかき氷に「幸せになる水」の砂糖水をシロップとしてかけるものが売っていたりする。

 

 そこに先ほどから包帯を全身に巻き付けた長身の男性らしき人間が出店をはしごしている。

 

 その男は奇っ怪な見た目と妙にグネグネした動き、何よりもその食べっぷり飲みっぷりに周囲の目を惹いている。

 

 その男は入口近くにあった「幸せになる水」の試飲会に誘われ、そこでほぼ満タンだった蛇口付きウォータータンクを空にした。

 

 仰天しているスタッフ達に気づいて悪いと思ったのか「幸せになる水」の2Lペットボトルを5本買い、それをその場で空にしたことにより再度仰天された。

 

 その後も出店を巡り、今のところ全品制覇である。気に入ったものは追加で何人前も注文しており、まだその男が訪れていない店は大慌てで在庫を確認している。

 

 その他の具材はだいぶ減ったものの一番使う水はまだ大量にあり、良いお客ではあるので戦々恐々とされつつもつまみ出されたりするようなことはない。

 

「おかしい……妙だぞ!?明らかに奴の体積より食べた量の方が多い!」

「いやそんなにマジで悩まれても……」

 

 鎖を使いそうな青年と最初期はナイフ使いの雰囲気を出していそうな男性が囁きあう。

 

 男は全店制覇を成し遂げたのち、やや年の離れた姉妹らしき2人組に合流する。

 

「作戦通り大量の『幸せになる水』を確保したぞ……これをあやつに調べさせればよかろう……」

「お疲れ様です」

「そら、これをやろう……一番栄養バランスが絶妙だった……」

 

 そう言いつつ出店の食べ物を差し出す。

 

「ありがとうございます。これって、大丈夫だったってことですか?」

「うむ、少なくともここで大量に売っているものは普通の水だ……むしろ雑味成分が少なくミネラル等のバランスが良い、下等生物(ニンゲン)が美味と感じる理想的なミネラルウォーターであった……」

 

 恭しい様子で食べ物を受け取るのは妹役の鈴である。

 

「水の値段も高いっちゃ高いっスけど、日常の飲み水に使えなくもないっスね」

 

 姉役の羊子は不審に思われない程度に商品などの写真を撮っている。

 

 そうしているとメインイベントである「『幸せになる水』の真髄」の準備が始まり、一部のブースが片付けられて広いスペースができていく。

 

「あやつからの言伝だ……あと四半刻もあれば終わるそうだ……」

「分かりました」

 

 ステージの準備が整ったようだ。

 

 発表者が登壇する。極普通のカジュアルスーツ。

 

「本日は『幸せになる水』のイベントに来てくださり、まことにありがとうございます」

「水の美味しさはもう十分に堪能していただいたと思いますが、皆さんこう思っていられるでしょう」

「『これで本当に幸せになるの?』と」

 

 大げさな身振り手振りで観客を煽っていく。

 

「それではこの『幸せになる水』の真の力をお目にかけたいと思います!」

 

 別のスタッフが水槽に入った水を持ってくる。

 

「水とは人の生活に欠かせないものであり、体内物質の循環、体温調節、洗浄、運搬、冷却と役割を挙げるときりがありません」

「水は古来よりあらゆるところを流れ、汎ゆるものを溶かし、汎ゆるものに溶け込んできました。今飲んだ水が数千年前にエジプトのファラオの喉の乾きを癒やした水を含んでいるかもしれませんし、今朝顔を洗った水に1億年前恐竜が水浴びをした水が入っているかもしれません」

 

 発表者の口調に熱が入ってくる。

 

「水には地球の歴史が蓄積しているのです」

「ですから、水に適切な呼びかけをすると目覚め応えてくれるでしょう」

 

 その勢いに指さされた水槽を見るも、どう見てもふつうの水槽と水だ。

 

「その昔、水に良い言葉をかけて凍らせると形が整った美しい結晶になるという話がありましたが、これはそんなレベルではありません」

 

 水槽からコップに水を汲んで1杯飲み干し、なにか仕掛けがある飲めないような水ではないことを証明する。

 

「見やすくするためにちょっとこれを垂らします」

 

そう言って市販の食用色素、つまり食紅の青色を数滴垂らして混ぜ水が青く染まる。ご丁寧にわざわざ未開封のものを用意する念の入れようだ。

 

 水槽から柄杓で用意していた透明な板に青い水を垂らす。板面はプロジェクターで大きく映されて後ろの人間にもよく見える

 

「偉大なる水の意思よ、呼び掛けにお応えください」

 

 すると水が震えるように動き始めた。

 

「こんにちは」

『こんにちは』

 

 発表者のあいさつを受けて板上に青い水で文字が描かれ、驚きで会場がざわめく。

 

「信憑性を上げるために即興でなにか書いていただきましょうか。ではそこのあなた、なにかリクエストお願いします」

 

 発表者は目についた観客を指す。

 

「えーと、じゃあみんなに向けてなにか一言と普通の文字じゃないやつをお願いします」

『こまめな水分補給を忘れずに\(^o^)/』

 

 昨今ではスタンプ機能などにより見る機会の減った顔文字が描かれたメッセージだ。

 

「最後に今私たちができる最大限をお見せしましょう」

 

 追加でスタッフが2名出てきて、3人で念を送る。

 

 すると板の上の水が集まりタバコ1箱くらいのサイズの人型を取った。お辞儀をし手を降ってあいさつをしたのち、力尽きたのか普通の色水に戻って板に広がった。

 

「実はどの水でもこういったことをできるポテンシャルはあるです。しかし大変難しい。簡単にできるなら人類と水との付き合い方はもっと変わっていたでしょう。私達も特別に清らかな水で最近成功しました。そこからその水を媒介として幸せになる水を増やしているのです」

 

 板上の水を戻しながら言う。

 

「水側にも動いてもらえるようになったら世界が変わると思いませんか?喉が渇いているとき水が自分の口に飛び込んできてくれたらと思ったことは?入浴もお湯を纏うような形になったら使う水が大量に減りますし、水泳界も革命が起きるでしょう」

 

熱弁を振るう中で小さなどよめきが起こる。食用色素が水槽の一箇所に集まっている。エントロピーの法則を無視した現象が起こる中、スタッフの一人がその部分だけ掬って回収していった。

 

「『幸せになる水』とはいっても、飲んで幸運が身に付くゲームのタネのようなものではありません。いわゆる新技術の種でしょうか」

 

 そういって申し訳なさそうな表情を形作る。

 

「ですがぜひ商品を買ってこの事業に協力していただきたい。この『幸せになる水』は今お披露目した特別製の水から精製された水で普通の水よりはポテンシャルがあります」

 

そう締めくくってメインイベントたる「真なる水の力の開陳」は終わった。

 

 観客のリアクションは様々であり、感銘を受けたのかすぐさま定期購入のブースへ行く人、話についていけなかったのか頭を振りながら帰っていく人あり、狐につままれた顔で座ったままの人もいる。

 

「ずいぶんと壮大な話でしたね……」

「『幸せになる』って新発見による人類の幸福のことだったんスね」

 

その時、このイベントに入って来たときより厚みのある体になった破壊神がつぶやいた。

 

「解析が終わったようだ……」




この話の開始時点でマグちゃんはLv17、鈴はLv15です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。