いあ!いあ!まぐ=めぬえく!【完】   作:ringosuki

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第18話 接ぎ木の芸術家

 12月上旬、とあるコンベンションセンターの1室。

 

「あれ、鈴ちゃんのだけちょっと離れたところに飾られてるね」

「ホントだ。大賞とかじゃなくて入選だったんだけど……」

「偉く年季が入った額縁だよね」

 

 鈴は夏休みの自由研究の一環として破壊神の絵画を描きまくり、条件に合う絵画コンクールに片っ端から送った。結果、県の夏休み自由研究コンクール芸術部門に入選した。

 

 本日は美術クラブの活動としてみんなで入賞作品が展示されている会場へ来た。

 

 クラブの他の生徒も何人か入選している。

 

 言われてみると確かに他の作品は何の変哲もない普通の額縁に飾られており、鈴のだけいかめしい年季の入った額縁である。

 

 内情としては鈴の作品は邪神の信徒が己の主神を描くという、非常にマガツヒが込められた作品のため、妖しい雰囲気を放ち見るものの心を揺さぶり、感受性の高いものを惑わす効果があった。

 幸いにもいわくつきの芸術品に詳しい審査員がいたため、認知フィルター機能付きの額縁を用意したうえで審査がなされ、無事入選した。

 

 マガツヒ抜きにしても熱意と題材の独創性を評価されたのだ。

 

 作品を見て回る鈴の前にカランと杖が倒れてきた。彼女はそれを拾って落としたと思われる男へと差し出す。

 

「どうぞ」

「ああ、すまないね」

 

 見ると非常に大柄な高年の男性である。精緻な刺繍がされたケープを羽織っており、頭に鉢巻を巻いている。最もこれは鈴がそう勘違いしただけであり、正しくは金属板を輪状につないだ冠である。

 いかにも孤独を愛し、アトリエにこもっていそうな偏屈な芸術家といった出で立ちだ。

 

「もしかして接ぎ木の芸術家ゴドリック先生ですか?」

 

 別の子がそう問いかける。

 

「ああ、知ってくれていたのね。まだ若いのに感心、感心」

「みんな、この人はゴドリック先生といって独創的な作品で有名なの。それで、なぜここに?」

「いやあ、生徒の作品があってね」

「えー、弟子がいるんですか!?」

「そんな大したものじゃないよ、生活費の足しに基礎を教えているだけ。未来の芸術家や顧客が生まれる畑を耕しているようなものね」

 

 話しかけた子以外にも知っている者がいたようで、声を抑えつつも盛り上がっている。

 

「そうそう、ちょっと聞こえたんだがあの作品は君のかい?」

 

 そういって鈴を見ながら破壊神の絵画を指し示す。

 

「はい、そうですが……」

「いやいや、そんな怯えないでちょうだい。技術は拙いが、観る者の心を打つ何かがあると言いたかっただけよ」

「あ、ありがとうございます」

「じゃあ我はこれで。近々作品集を出すからよかったら見てちょうだい。図書館にも寄付する予定よ」

 

そういうとゴドリックは去っていった。

 

 

****

 

 

「鈴、指名依頼だ……端的に言うと物件の除霊だ」

「私たちがやると除霊(物理)になりますよね……」

 

 破壊神が説明した依頼文は以下の通りだ。

 

『依頼の概要を説明しよう。

 

依頼内容は新しく購入した我が物件に住み着くポルターガイスト現象の主の対処だ。

できることならば穏便な手段での解決が望ましい。

現象の規模から想定されるレベルだと君の腕前なら何が出てこようと問題ないだろう。

依頼の概要は以上だ。

 

依頼主は、あなたを高く評価している。

その証拠として全額前払いを約束しよう。

そちらにとっても、悪い話ではないと思うが。』

 

「名が売れてきたようで嬉しいぞ……」

「除霊というからには破魔系のアイテムが必要でしょうか……屋内なので、極力破壊しないように作戦を立てないと……」

 

 

****

 

 

 依頼当日。

 

「今日はよろしくお願いします」

「よろしく。おや、この間のコンクールの展示であった……」

「えーと、芸術家の……」

「ゴドリックよ」

「すいません」

「気にしないで、ちょっと喋っただけだしね。我も悪魔業界に伝手があるの。絵画に取り憑いた怨霊とペインティングナイフ片手にやり合ったこともあるんだ」

「そ、それはすごい経験ですね……」

 

 

 ひとまず応接間へ通される。お茶と茶菓子が出され、鈴は遠慮してお茶だけだったが破壊神は菓子もいただいた。

 

 館の所持者ゴドリックから依頼の説明が行われる。

 

「ポルターガイスト現象の主がいると思われるのは地下室、頑丈なので少しくらい派手な戦いになっても生き埋めになったりしないわ」

 

 おおよそ依頼文通りのためつつがなく話は進んだ。

 

 確認が終わり、ちょっとした雑談に移る。

 

「あの、あのあとちょっと先生について調べたんですけど、接ぎ木の芸術家って異名なんですよね?」

「そうね。私は作品を2つ作り上げてからメインの方にサブから切り取って継ぎ足していくの。それでメインがより強く美しくなるの」

「すごい手法ですよね」

「足し算の美ということか…」…

 

 いよいよ依頼遂行となり、地下へ行くこととなる。

 

「この階段の先よ、頑張ってね」

 

 扉を開けると広さ、高さともに小学校の体育館の半分くらいある。明らかに隣の土地まで入っている広さだ。

 

「広すぎません?」

「流石に妙だな……」

 

 その時、スピーカーからゴドリックの声が響く

 

「だまして悪いが、芸術なんでな。我の『作品』と戦ってもらおう」

 

 床に魔法陣が描かれ、悪魔が召喚される。それは悪魔全書で見たことのない、正確には手や頭、羽など各パーツは見たことのあるものがまぜこぜになった正体不明の悪魔だった。

 

「若人よ、接ぎ木のキマイラをご照覧あれいぃぃ!」

 

 ゴドリックの高笑いがスピーカーから響く。

 

「これは我の現時点での最高傑作でね。特殊な悪魔合体を繰り返したのよ」

 

 ゴドリックは得意げになってペラペラと説明してくれる。

 

「聖獣キマイラをベースとして、足は聖獣ユニコーン、爪は凶鳥チンの猛毒のツメ、頭部は邪神バフォメット、頭に妖精ジャックフロストの帽子、手に持つ武器は妖鬼オニの金棒と妖精セタンタの槍、翼は妖魔テングのものよ」

「戦うしかありませんね」

「あやつめ……あとで後悔させてくれる……」

 

 最初は平和的解決を目指していたため召喚していなかった龍王ヤトノカミも喚ぶ。

 

「キメラの勇姿を撮影させてもらってるわ。戦闘データを取ってより良い作品を創らないとね」

「ああ、反魂香も用意してあるから思いっきりやっちゃって大丈夫よ」

 

 鈴はアナライズを行う。パッと見はおかしなところはない。だが何か違和感を感じる。 

 

「すいません。時間稼ぎを!」

「任せろ……」

「合点」

 

 2体が時間稼ぎを頑張る間に、鈴が部位ごとの詳細アナライズを行う。

 

 その結果、混ぜすぎたせいで各部位の弱点がそのままになっていることが分かった。大型ボスのように複数攻撃部位が存在している。しかもあくまで接ぎ木の追加パーツのため、全体攻撃だとその部位分しか反射・吸収をしない。

 

「攻略法が分かりました!威力を落としてもいいのでとにかく範囲を広げてください!」

 

【拡散型破滅の眼光】

【衝撃の小秘石*1

【マハブフ】

 

 接ぎ木のキマイラにとって不幸なことに、耐性・弱点は存在しても無効・反射・吸収が全ての部位に存在しない属性があった。そのためそれを突かれてろくに行動権(ターン)を得られぬまま倒されてしまった。

 

「なんてこと……強い部分を集めれば最強になると思ったのに、実際は弱点をいたずらに増やしていただけだったなんて……」

 

 モニタールームにいたゴドリックは意気消沈し、抵抗の意思を見せることなく質問に答える。

 

「あの私の作品は特殊でね、蘇生ができないの。それぞれの接ぐ前の悪魔に分かたれたうえでマガツヒとして溶けてしまったでしょうね」

「どうしてこんなことを?」

「ほぼ戦う前にいった通りよ、あれは私の現時点での最高傑作だったの。そこで戦う相手が欲しかったの。万が一が起きた時は蘇生するつもりだったし、反魂香を用意してたのも嘘じゃない」

「なぜ騙し討ちじみた真似をした……」

「君たちを推薦してくれたものがいてね。君たちなら大丈夫だろうし、真剣味を持たせるために事前に説明をしないほうがいいと」

「そやつは誰だ?」

 

 キナ臭い流れになってきたため、破壊神が虚偽は赦さぬと眼を物理的に光らせる。

 

「私の作品を買ってくれた少年に君たちのことを薦められたのよ」

「もっとも、本当に見た目通りの年齢だったのか……そもそも人間だったのかもわからないわ。即決即金ですぐ帰っていったしね」

 

 そこでゴドリックは見事なまでの土下座を披露する。そのフォルムの見事なことと言ったら、以前土下座の経験があるのだろうか。

 

「すまなかった、このようなことは二度としないし報酬も3倍払うから許して欲しい……」

 

 鈴は謝罪を受け入れる空気を出しているが、破壊神は難色を示している。

 

「君の信徒になろう。これは一種の契約であなたを裏切れなくなる」

 

 破壊神の意思がぐらつく。

 

「贖罪として君の作品を作らせてくれ!モデル料は弾むし、次の個展の目玉にしよう!」

「よかろう……」

 

 信徒の契約か、他の条件に気をよくしたのか破壊神も謝罪を受け入れた。少なくともこの一件はこれで片が付いたといえるだろう。

 

「あの、あとひとついいでしょうか?」

「ああ、できることなら何でもしよう」

「私の学校の美術クラブにゲストとして来てくれないでしょうか?みんな喜ぶと思います」

「ああ、そんなことでいいなら行かせてもらうわ」

 

 ゴドリックは鈴個人に対しては対価が少ないと感じたのか追加の提案をしてくる

 

「美術の同好の士とお詫びとして鈴さんに接ぎ木のアタッチメントはどうかしら?作業する手が増えるので便利よ、戦闘に使えるほどの頑丈さはないけど」

「それはやめておきます……」

*1
敵全体に小威力の衝撃属性攻撃




【混成獣 接ぎ木のキマイラ Lv19】
ステータスタイプ:体型
防御相性(表向き):物理耐性、火炎吸収、呪殺反射 
スキル:【暴れまくり】【地に伏せよ!】【ご照覧あれい!】 etc.
・聖獣キマイラをベースとして、足は聖獣ユニコーン、爪は凶鳥チンの猛毒のツメ、頭部は邪神バフォメット、頭に妖精ジャックフロストの帽子、手に持つ武器は妖鬼オニの金棒と妖精セタンタの槍、翼は妖魔テング
・弱点まみれのため、だいたいの全体属性攻撃は弱点攻撃によるプレスターンアイコン増加が無効化等のアイコン減少を上回る悲しき悪魔
・肉体制御担当のバフォメットも頑張ってはいたが、完全コントロール下とはいかず時たまキマイラの尻尾の蛇に嚙まれていた
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