いあ!いあ!まぐ=めぬえく!【完】   作:ringosuki

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第8話 買い物と実地訓練

 8月の始めごろ、まだ小学校の夏休みも前半である。賢しい子どもは既にほとんどの宿題を終わらせ、結構な割合の子は日記以外は手つかずか、下手すると日記すらも三日坊主で4日目以降が空白のままの状態である時期だ。

 

 某市の商業エリアの駐車場に、1台の車が駐まる。ドアが開き、30代らしき黒いスーツの男と小学校高学年ごろの少女が下りてくる。

 

「そういえば鈴ちゃん、学校の方の宿題はどうだい?」

「問題集とかはもう終わらせました。あとは毎日書く日記とか自由研究とかです」

「そいつはえらいな。訓れ……習い事とかもあるのに大変だったろう。今日はなるべく羽を伸ばしてくれ」

 

 その少女は夏休みに入ったことによりデビルサマナー教習に使える時間が増え、数日前にヤタガラスでの座学と訓練が完了した鈴である。もう一人は、ヤタガラスよりデビルサマナー御用達の店舗の紹介や実地訓練としての修練場への挑戦、初依頼の付き添いを正式に委託されたフリーのデビルサマナーの九頭である。

 

 わざわざ依頼料を払ってまでヤタガラスがフリーのサマナーである彼に委託したのは、実際に現場で働く生の声を価値あるものとしているからだ。そのため破壊神と鈴の2人と面識があり、顔が広くて初心者教導の実績もある九頭に白羽の矢が立った。

 彼も差し迫った仕事がなく、鈴たちを気にかけていたため無事今回の役が決まった。

 

 ちなみに職務質問対策として、用件は父親への誕生日プレゼントの下見で、親戚のおじさんの意見を参考にするためについてきてもらったというカバーストーリーを事前に作り、鈴、両親、九頭間で示し合わせている。

 証拠として阿座斗家と九頭が一緒に写った写真を用意し、九頭のスマホに阿座斗家と鈴の父親の電話番号を登録しておくという念の入れようである。

 

 職業柄、職務に忠実で厳格な警備員や好奇心旺盛な一般人を煙に巻いたり、場合によっては悪魔の術を使って記憶をあいまいにしたりする九頭であるが、自分の子供でもおかしくない年齢の他の家の娘と並んで歩くのは、それ自体は悪魔と関連が薄いため超常の力を使って誤魔化すわけにもいかない。

 表の未成年者略取の噂は、裏で悪魔交渉における緊縛状態にしてからの無慈悲なカツアゲ動画が拡散するよりも不味いことがあるのだ。

 

「たとえ今日は用事がない店でも店長とかに新人サマナーとして顔見せだけはしておきたいかな。武器と防具とCOMPはヤタガラスから貸与だっけ?」

「はい。初心者卒業まではそれで十分だって。あと、消費アイテムも基本的なものはもらいました」

「じゃあ今日入用なものはそこまでないかな。今どきならだいたいはネットで買えるんだけど、直接会ってする取引っていうのも馬鹿にできないからな」

 

 2人はしゃべりながら並んで歩く。

その時、鈴のスマホがメッセージの受信を知らせる。彼女がスマホを取り出して画面を見ると、そこにはこうあった。

 

『残余の時があれば、XX百貨店の北海道物産展なるものに行くのを所望する。無論、代価は我が払う』

 

 COMPに収納中のマグ=メヌエクからのものである。こうしてCOMPに収納中だと通常時はスマホの画面やスピーカー、マイクを介して意思疎通を行い、緊急時は思念を直接鈴の脳に送ることになっている。

 

「あの、これ……」

「ああ、そのくらいの時間は余りそうって返信してやってくれ」

 

 鈴は前より手慣れた手つきで返信のメッセージを打ち込む。数秒後、了解とでもいうかのようにスマホが震えた。ちなみに今日の買い物の代金はマグ=メヌエク持ちである。

 

「あの、この辺には何回か来たことがあるんですけど、本当にそういったお店があるんですか?」

「まあな。商品や店自体に認識阻害がかかっていて、一定のレベルがないと気づけもしなかったり、地下や隠し部屋があったり、中にはどこかの空間に飛ばされるものもあるらしい」

「思ったより日常に溶け込んでるんですね」

「あの狸や狐のジブリ映画のラストを想像してもらえると分かりやすいな」

「?」

「そうか、ジェネレーションギャップか……気になるなら30年くらい前のアニメ映画について調べてくれ」

 

 九頭が自分が年を重ねたことに気づいてしまった何とも言えない表情をしつつ、まずは悪魔の体の一部や持ち物(ドロップアイテム)も扱っている古物屋を訪れて破壊神の所持する彼への供物を売却する。

 そしてやや雑多な店が並ぶエリアへと入っていき、個人経営のパソコンショップの前で立ち止まる。

 

「おお、ここだ。店構えでわかると思うが、この店はCOMP関係だ。じゃあ入ろうか」

 

 そういうと九頭は入店していき、鈴もおずおずとそれに続く。

 

「いらっしゃいませー。ああ、九頭さんか」

「こんにちは、店長。今日は新人の紹介をしたくてね」

「まさか、そこのお嬢さんがかい?」

「初めまして。阿座斗鈴です」

 

 店長と呼ばれた男は、信じられないのか手に巻いていたガントレット型の端末を操作して何かしらのアプリを起動しようとする。

 

「そのまさかさ。この地方に新しく誕生した世にも珍しい小学生デビルサマナー鈴ちゃんだ」

「これはまた……」

 

 店長は端末に表示された簡易的なアナライズ結果を見て目を丸くする。そして、少女に向き直り、どこか真剣な表情で問いかける。

 

「お嬢さん。誰かに『デビルチルドレン』って呼ばれたことがあったり、お父さんがどこか陰のある職業不詳のダンディな男だったりしないかい?」

「い、いえ……そんなことはないですけど……」

「そうか……ならいいんだ。変なことを聞いてごめんね」

 

 店長の表情から警戒心が抜けていく。そして仕切りなおすように営業トークを始める。

 

「もうCOMPは持っているようだけど、周辺グッズはどうかな?これは悪魔関係なくうちの店の人気商品で、値段は市販品の10倍近いんだけど高度な魔術で貼るときに絶対に気泡とほこりが入らないようになっている保護フィルムで―――」

 

 店長のセールストークに押され、鈴はスマホの特別性保護フィルムと足の小指をぶつける呪いくらいなら肩代わりしてくれるストラップを購入した。

 

 店を出て、少し疲れたような顔の鈴を見て九頭が言う。

 

「ああいうタイプの商売人はまず始めに欲しい商品と譲れない条件を告げた方がいいな。そうすれば浴びせられる情報の洪水を最小限にできる」

「は、はい。次からそうします……」

「じゃあ行こうか。次は―――」

 

 鈴は九頭に連れられて防具屋、武器屋に行き、顔見せ後手入れ道具を買う。その後道具屋でアイテムの説明を受けつつおすすめを一通り買い、魔界の通貨であるマッカ、マガツヒ、現金を両替してくれる銀行でデビルサマナー用口座を作成後マッカへの換金と預金を行い、悪魔合体をおこなう研究所で珍しいサンプルとして破壊神ともども歓迎され、情報の売買や依頼の斡旋・仲介を行うスナックでカラオケで1曲披露する羽目になったりした。

 

「さて、今日はこのくらいかな。他にはRPGの宿屋みたいな回復・医療施設があるんだが、ヤタガラスグループのホテルはだいたいその用途で使えるから聞いてみてくれ。VIP中のVIPだと、『魔界医師』って呼ばれる()()()()()()()()()()()()()()()に転移で出張してもらえるらしい」

「はい。そういえばマグさんが言ってました。ルームサービスの品目が多種多様だって」

「ああ、別に何でもない時に行くのもいいかもな。じゃあ今日の締めくくりとして破壊神さんご希望の物産展に行こうか」

「はい!楽しみですね、マグさん」

『我の目に叶うものがあるか楽しみだ』

 

 そして北海道物産展をめぐり、破壊神所望の品と破壊神から鈴への褒美と両親へのお土産を買った後。

 

「今日一日ありがとうございました」

「いや、ヤタガラスからの正式な依頼だし、こうしてジェラートを舐めている時間もきっちり仕事に入っているんだ。君たちがどうしているかも気になってたしね」

「乳脂肪と果汁を凍らせ攪拌した菓子か。北の大地の冷たさとそこに住む生命の逞しさを感じる……」

 

 物産展のイートインコーナーで、九頭のおごりで購入したジェラートを九頭、鈴、マグ=メヌエクでそれぞれ舐めている。認識阻害の術を掛けているため破壊神の姿は一般人には認識されない。

 

「しかし、デビルサマナーとして順調に成長しているようでよかった。三日会わざれば刮目して見よとはこのことだな」

「我が付いているのだ、自明のことであろう……」

「ありがとうございます。でも、実感がなくて」

 

 そこで九頭はヤタガラスからの()()依頼について切り出す。

 

「それに関しては次で嫌でも実感できるさ。今度は野良の悪魔相手に実地訓練と行こうか」

「え?それも九頭さんが?」

「ああ、事前と事後に報告義務はあるが基本的に俺に一任されている」

「い、いよいよなんですね!」

「鈴よ……我が付いているのだ。何を気負うことがある」

 

 九頭は少女の意気込みに苦笑しながら答える。

 

「なんでも初回ってものは後を引くから大事だ。親御さんともしっかり話し合って準備する必要があるから、送るついでにお邪魔して大丈夫かな?」

「はい、大丈夫だと思います」

「よかった。物産展に寄ることになって良かったよ」

 

 九頭はちらりと手土産として買ったマルセイバターサンドとソフトカツゲンを見る。

 

「じゃあ、そろそろ帰ろうか」

「いよいよ我が威光を有象無象の悪魔たちに見せることとなるのだな……」

「マグさん、COMPに入ってくれますか?」

「了承した」

 

 破壊神をCOMPへと戻し、2人はイートインを出ていく。

 

 

****

 

 

 その数日後の8月の熱帯夜、とある打ち捨てられた墓地前に九頭と鈴と破壊神はいた。

 

 ここは修練場として使われることもある異界の一つ、「ヤディス元動物霊園」である。

 経営不振と管理・経営者の謎の失踪によりろくに墓じまいもされずに閉園となってしまったため、噂が噂を呼んで悪魔が出現するまでになってしまった。

 しかし、出てくるのは低位の動物型悪魔がほとんどであり、知能も低い。異界といっても元の地理のままで、異空間になったり面積がおかしなことにはなっていない。度胸試しの一般人でも嫌な雰囲気に気づいて深入りしなければ無事に帰れるであろう。九頭の、いきなり人型でぺらぺらとこちらに話しかけてくるような知能の高い悪魔の相手は辛かろうとの判断でこことなった。

 

「よし、ここに出る可能性の高い悪魔は覚えてるな?」

「はい!」

「マップは覚えたな?」

「はい!」

「装備やアイテムの準備は万全か?」

「はい!」

「今回は俺がうしろから隠形して見ている。いざとなったら下がるんだ」

「はい!」

「隣の客は?」

「よ、よくきゃきくうきゃくだ!」

「一応合格!破壊神さんも、最優先は?」

「無論、鈴の命だ」

「よし、行こうか」

 

 そうして鈴と破壊神は霊園に入っていく。九頭はイナバシロウサギのルイスを召喚し、後をついていく。

 

 しばらく進むと怒り狂った形相のポメラニアンのような悪魔が出てくる。

 

「ギャンギャンギャン!」

 

 前に出ていた破壊神がけん制し、鈴はCOMPでアナライズを行う。

 

【魔獣 バケイヌ Lv4】

防御相性:火炎・破魔弱点 

スキル:【噛みつき】

 

 どうやら相手は化け猫の犬バージョンで、場所の影響か随分とポメナイズされているようだ。

 

 鈴は戦闘訓練での教官役の言葉を思い出す。

 

「ぶっちゃけ君の仲魔の『破壊神 マグ=メヌエク』を適切に扱えれば、君の悪魔のレベルの一回り上の悪魔までなら普通に勝てるんだ。だから君が学ぶのは勝ちを掴み取る方法ではなく、負けの目を潰す方法だ」

 

 鈴は主に護身術とアイテムを用いたサポート、そして何よりも戦闘中にパニックにならないメンタルコントロール法を学んだ。

 そのため得物の警棒を用いた戦闘でも受け流しやブロックは得意だが、性格も相まって相手を撲殺するのは格下でも相当に手こずるであろう。

 射撃訓練も行い、現在も小型拳銃のデリンジャーを装備している。しかし、腕前は置き物相手ならそこそこの命中率で、実際の戦闘中で誤射はしないというだけものである。結果、相手に飛び道具を持っていることを警戒させる以上の意味は薄い。

 

「アギストーン*1で怯ませます!その隙に破滅の眼光を撃ってください!」

「承知した」

 

 取り出した火炎魔法の力が封じられた石を、狙いを定めてバケイヌに放り投げる。

 バケイヌはとっさに直撃は交わしたものの炎が思った以上に広がったようで、火炎に焙られて怯む。

 

【破滅の眼光】

 

 マグ=メヌエクの単眼の周りに牙が生え、破滅的エネルギーが収束し、白い閃光が放たれる。

 

 その光がターゲットを通り過ぎたあとは、魔獣バケイヌの姿はどこにもなかった。

 

 鈴が振り返って九頭の方を見ると、九頭はグッと親指を立てて初勝利を祝う。

 

「やりましたねマグさん!あの恐ろしい悪魔を2人で退治したんですね!」

「我も第一信徒の成長に胸が震える……しかし、勝利という名の美酒はここより出てから味わおうぞ」

「そ、そうですね。気を引き締めないと」

 

 どうやら破壊神がいい方向に誘導してくれたようだ。その後も霊園を回って幾度か戦闘を行ったが、最終的に無事勝利した。少しひやりとする場面もあったが、九頭は静観を貫いた。

 

 しかし、そろそろ引き上げようかという時に、見慣れない悪魔がひょこひょこと飛び出してきた。

全体的に紫色で、ガリガリの体にぽっこりとした腹部、長い顔でどことなくナスっぽい。

 

 鈴は事前情報にないうえに、初遭遇の悪魔ということもありアナライズしようとする。

 

 紫色の悪魔はこちらの存在を察知していたのか、何やら構えを取って大した溜めもなしに謎の怪光線を鈴の方へ放ってきた。

 

 破壊神は、物理的な脅威を感じないことと怪光線発射までの短さから、大技などではなく一時的狂気などを引き起こす邪法だとあたりを付けつつ、身を挺してかばう。

 

【マッカビーム】

 

 謎の怪光線は破壊神に当たるも、特にダメージはなく、肉体も精神も何らかの変質をきたしているようには見えない。

 

「2人とも下がるんだ!俺たちがやる!」

 

 九頭は隠形を解き、イナバシロウサギとともに駆け出している。

 

 鈴と破壊神はあわてて後方に退避し、鈴は破壊神の状態を確認する。

 

「出て来い!魔獣カソ!霊鳥フェニックス!」

 

 九頭は召喚済みのイナバシロウサギ以外に追加で2体召喚し、フルメンバーで悪魔に襲い掛かる。

 

【スクンダ*2

【アギラオ*3

【ハマ*4

【ファイヤーバットを喰らえ*5

 

 回避率を下げられたうえで火炎・破魔属性の魔法と燃え盛る打撃武器の殴打をまとめて食らった悪魔は、断末魔の叫びを上げる余裕もなく消滅した。

 

 九頭は悪魔の消滅を確認すると倒した悪魔のドロップアイテムを拾い、周囲を警戒しながら2人の方へ歩いてくる。

 

「大丈夫か?ないとは思うがアレを喰らった破壊神さんは状態異常とかになってないよな?」

「ええ、体に異常は――」

「無論、無事だ……」

「じゃあCOMPでマッカを確認してくれ、大丈夫か?」

 

 九頭の問いかけに不思議に思いつつも鈴がCOMPを確認すると、謎の悪魔との会敵前より明らかにマッカが減少している。

 

「あれ?マッカが減っています」

「ああ、でも運良く取り返せたな。死なばもろともタイプじゃなくて強欲なタイプで助かった」

 

 九頭は鈴へ先ほど拾ったマッカを渡してくる。この元動物霊園の悪魔が落とすにしては多いマッカの量だ。

 

「え?盗まれたってことですか?」

「ああ。離脱しながら説明する」

 

 仲魔に先導させて異界からの脱出を行いながら九頭は先ほどの悪魔と怪光線について語る。

 

 マッカビーム。

 

 満たされることなき飢えに苛まれる幽鬼ガキの一部の使用が確認されているスキル。

的中者の所持マッカと現金を25%減少させる。恐ろしいことに魔法反射の補助魔法であるマカラカーンでも防げず、「奪う」のではなく「消失」させるため幽鬼ガキを倒しても失われたお金は返ってこない。

 

 一説には飢えに苦しむガキが、己の苦しさを少しでも他者に味合わせるためのものとされている。

 しかし、今回のガキは他人を苦しめたうえで自分もいい思いをしたかったらしく、マッカビームが「泥棒」スキルとなっていたため倒すとお金が返ってきた。

 

 九頭は駆け出し時代、掘り出し物の武器を買うために大金を下ろして購入し、手に入った喜びで残金がまだあるのに愚かにも試し切りとして異界に突撃した。おニューの武器の助けもあって獅子奮迅の活躍で懐が肥え、帰ろうとしたところで幽鬼ガキの集団に囲まれて消滅タイプのマッカビームを雨あられと浴びてしまったらしい。

 ガキの集団を倒して異界を脱出することはできたものの、その後数週間は種族「フード」の悪魔を獲物として飢えをしのぐ日々が続いたそうだ。その経験談から来た先ほどの過剰なまでの一斉攻撃である。

 

 鈴の元々所持するマッカと今回の実戦で稼いだマッカは、大した金額ではないためそのまま見守って悪魔の特殊スキルをその身で体験してもらうということとなった。そのうえ、ガキの特殊なスキルがさらに変質していたため結果的に金銭的損失がなかった。

 

「まあ、俺の新人時代のやらかしはどうでもいいとして、悪魔と関わるってことはこういう別方向の恐ろしい目に遭うっていうことも知っておいてくれ」

「わ、わかりました」

「不届きな盗人め……」

 

 ふと、九頭は疑問になったことを尋ねてくる。

 

「基本的には仲魔がマッカビームを喰らってもサマナーのマッカが減少するんだが、破壊神さんは無事かい?」

「ああ、我が深淵の空間の財貨等が減った様子はない」

「流石に格上で、神性持ちかつ体内に広い亜空間があるような相手には通じないか」

「基本的にってことは、仲魔もお金が消えることがあるんですか?」

「ああ、ごく少数だがへそくりとかの一部が消えたって報告があるらしい」

「『消える』っていうのが怖いですね……」

「ふん、惰弱なことよ。邪魔な相手ならば、肉体ごと、魂ごと、概念ごと消滅させればよいのだ……」

「いや、それができるのは本当にごくわずかの奴だけだからな?」

 

 九頭はヤタガラスから、鈴に成長を実感させつつも増長させないでくれと依頼されていたのだが、マッカビームの結果と九頭の失敗談で達成できたようだ。

 

 無事異界を脱出し、九頭は悪魔をCOMPに送還する。

 

「今回の実地訓練は良かった。ちょっと詳細すぎたけどちゃんと指示を出せていたし、自分にできるサポートに徹していた」

「はい!」

「当然の結果である……」

「だが、すべての戦闘でオーバーキルかつ目の前に過集中気味だったな。破壊神さんのレベルとスキルを考えたらしょうがないが、いずれペース配分も考える時が来る。だがとりあえず今は目の前の敵を倒すことに全力を出してくれ。今ならどんな失敗でも取り返しがつくから、恐れずに失敗してくれ」

「はい……」

「よし、帰ろうか。夜更かしは若い子の成長の天敵だ」

「はい。今日はありがとうございました」

 

 帰りの車の中、九頭が鈴に問いかける。

 

「そういえば、鈴ちゃんは自由研究は終わった?」

「いえ、あれから読書感想文は終わらせたんですけど、そっちはまだです」

「じゃあ、今度の初依頼のついでに港町の地元産業について調査するっていうのはどうだい?」

「え?もう決まってるんですか?」

「ああ。今回の実戦も問題なかったし、その依頼も一度も戦わない可能性すらある。付き添いも引き続き俺だ」

「いいですね。依頼と自由研究で一石二鳥です」

「ふむ。興味深いな。我らが初の偉業を行う地はどこだ?」

 

 九頭は依頼の調査対象の町名を思い出そうと少し眉間にしわを寄せて考えていたが、思い当ったのかしわをほぐすと答える。

 

「ああ、思い出した。()()()()()()()()()()()っていうんだ」

 

*1
敵単体に火炎属性で小威力の攻撃を行う

*2
敵の命中・回避率を1段階低下させる

*3
敵単体に中威力の火炎属性攻撃

*4
敵単体に小威力の破魔属性攻撃。弱点をついた時、確率で即死させる

*5
火炎属性付き打撃攻撃。的中時に相手に火傷を付与する




【ソフトカツゲン】
・北海道以外ではなかなか見かけない乳酸菌飲料
これをロックで飲むと薄まっていく味の変化が楽しめて美味しい

何となくですが、鈴のキャライメージは「Lobotomy Corporation」のミシェル(ホドちゃん)、九頭は「Library Of Ruina」のローラン+「スナックバス江」のタツ兄です。
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