転生近界民のアカデミア   作:暁月鈴

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第11話「勧誘」

 

 2日間の休校が終わり、学校へと向かう途中の事

 

「体育祭見たよ!凄かったねぇ本当に!ヒーローデビューが待ち遠しいよ!」

 

「ねえねえ、なんで君はヒーロー科じゃないの?君とっても強いから、絶対トップヒーローになれるのに!」 

 

「すみませーん!TV局の者なのですが、少しお話よろしいでしょうか?」

 

「君、私の所属する事務所に来る気はないかな?あっ、私こういう者でして……」

 

「ねえねえ、サインちょーだい、サイン!!」

 

 おれは波に捕まった。

 

 比喩でもなんでもなく、近くにいた人達が皆して、おれの所まで近寄ってきたのだ。

 

 こうなることは予想していたとはいえ、実際に対処するとなると、面倒なことこの上無い。おれは朝からその人達の対処に追われ、学校にたどり着いた時にはすでに、精神的に疲れていた。

 

 ………というか、なんであの中にプロヒーローが居たんだ。暇なら仕事をしろ、仕事を。

 

 そんなことを考えながら、自身の教室へと向かう最中、おれは他の生徒達から物珍しい者を見るような視線を向けられた。その馴染みの無い視線を無視しながら、おれは教室の扉を開ける。

 

「おはよー。体育祭凄かったなーお前!!………って何か疲れてないか?」

 

「そりゃあ、ヒーロー科をボコボコに叩きのめしたんだから、マスコミとかに声も掛けられるだろ。疲れてるだろうからそっとしとこうぜ」

 

 此処でもまた、おれは波に囲まれたのだが、クラスの委員長の一声のおかげで、波から解放された。ほんとありがと。委員長………名前知らないけど。

 

 そうして机に突っ伏して休むこと数分。教室に担任の先生が入って来て、朝のHR(ホームルーム)が始まった。

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 ──場所は変わって、ヒーロー科。1年A組の教室にて──

 

「『コードネーム』。ヒーロー名の考案だ」

 

「「「夢ふくらむヤツきたあああ!!」」」

 

 相澤の口から発せられたその言葉に、クラスの皆がドッと沸き立つ。しかし、相澤が個性を発動させながら睨みを効かせる事で、場は一瞬で静まり返る。此処(1年A組)ではいつもの光景である。

 

「というのも、先日話した『プロからのドラフト指名』に関係してくる。指名が本格化するのは経験を積み、即戦力と判断される2年や3年から…。つまり今回来た指名は将来性に対する興味に近い。卒業までにその興味が削がれたら、一方的にキャンセルなんてことはよくある」

 

「頂いた指名がそんまま自身へのハードルになるんですね!」

 

 葉隠が言うと相澤は頷く。つまり体育祭は前座に過ぎず、これからが本番という事だ。

 

「そうだ。で、その指名結果がこれだ」

 

 相澤が手元のタブレットを操作しながらそう言うと、白いスクリーンが黒板の前に降りてきた。そして、雄英に送られてきた各生徒の指名件数がそれに映し出される。

 

 

  A組職場体験 指名件数

 

 轟   3.261

 

 爆豪  2.864

 

 常闇  332

 

 飯田  328

 

 上鳴  202

 

 八百万 88

 

 切島  54

 

 麗日  18

 

 瀬呂  9

 

 尾白  4

 

 

「例年はもっとバラけるんだがな。今年は3人に偏った」

 

 その一覧を見た生徒達は、それぞれ思い思いの声を出す。指名を貰えたことに喜ぶ者、轟と爆豪の圧倒的な票数に驚く者、指名を貰えなくて落ち込む者、反応は様々だ。そんな中、一人の生徒が声を上げる。

 

「でも、先生(せんせー)。何か票数少なくないですかー?」

 

 その疑問は最もだ。雄英高校の職場体験は、毎年1万以上のヒーローが指名を送るのに、スクリーンに表示されている皆の票数を合わせても大体5、6000程しか無いのだから。

 

「ああ、そうだな。だからさっき言っただろ。()()()()()()()()()とな。」

 

 その言葉を聞いた皆は、ある人物を思い浮かべた。普通科でありながら、自分たちヒーロー科を完膚なきまでに叩きのめした、白い髪の少年を。他に票を集めそうな人なんて、彼以外には思いつかない。

 

「お前達も覚えているだろう。お前達をボコボコにした普通科のあいつを。あいつがより多くの票を集めた。これがその結果だ」

 

 

 空閑  4.975

 

 

 爆豪、轟を上回る票数に、皆が驚き目を見開く。そんな中、相澤が淡々と語り継げる。

 

「これを見て分かるように、ライバルは同じヒーロー科だけじゃない。場合によってはヒーロー科への編入も、その逆もあり得る。体育祭で結果を残せた奴も、残せなかった奴も、決して気を抜くなよ?」

 

「「「「はい!!」」」」

 

 その返事が、教室内に響き渡る。

 

「………とまあこの話題はこれまでとして、お前達にはこれから、指名の有無関係なくいわゆる職場体験ってのに行ってもらう。お前らは一足先に経験してしまったが、プロの活動を実際に体験してより実りある訓練をしようってこった」

 

「それでヒーロー名か!」

 

「俄然楽しみになってきたァ!」

 

 場のピリピリとした空気を払拭するかのように、砂藤と麗日はテンションを上げ声に出す。

 

「まぁ仮ではあるが適当なもんは…」

 

「付けたら地獄を見ちゃうよ!この時の名が!世に認知され、そのままプロ名になってる人多いからね!!」

 

「「「「ミッドナイト!!!」」」」

 

 相澤の言葉に割入るかの様に扉が開かれ、教室にミッドナイトが入ってきた。まるで最初から打ち合わせをしていたかのように、タイミングばっちりだ。

 

 その後、ミッドナイトの査定の下、ヒーロー名の考案が始まった。

 

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 

 4校時の授業が終わり、昼休み。本来なら屋上でハンバーガーを食べてるであろうこの時間に、おれは職員室に来ていた。

 

 その理由は……

 

「やあ、突然の呼び出しすまないね!ちょっと話したい事があって、こうして君を呼んだのさ!」

 

 根津校長に呼ばれたからだ。まあ、何で呼び出されたのか何となく予想は付くが。

 

「君に嘘ついても意味無いから、早速本題に入らせて貰うけど………君、ヒーロー科に入る気はない?」

 

 やっぱりそれか。

 

「まあ、今の所は無いかな」

 

 その質問に、おれはそう答える。おれは今の所、ヒーローに成りたいとは思ってないし。

 

「ふむ………まあ、分かってはいたけどさ」

 

 校長はそう言うと、おれに一冊のマンガくらいの厚みのある紙束を渡してきた。その紙には、『職場体験 指名一覧』と記されている。

 

「分かりやすく説明すると、これは君をドラフト指名したヒーロー事務所の一覧表さ。これだけ大勢のヒーロー事務所が、君には職場体験に是非とも来てほしいと希望しているって事になるのさ」

 

 その説明を聞きながら、おれはその紙束をパラパラと捲る。これをおれに渡したということはつまり。

 

「おれも、その職場体験に参加しないといけないのか?」

 

「まあ、参加するかどうかの判断は君に任せるよ。でも、僕としては参加しても良いんじゃないかって思っているのさ」

 

 そう言うと、校長は新たに一枚の紙を取り出し、それをおれに見せる。その紙は雄英に入学してから少し経った時にやった将来の事に関するアンケート。おれはそれの『将来の夢』の項目に、特に無いと答えている。

 

「君は将来の夢や目標が定まっていないみたいだからね。ヒーローの仕事を体験してみて、見解を広げてみても良いと思っているのだけど、どうかな?」

 

 なるほど。ヒーローの仕事を間近で見る機会なんて滅多に無いし、面白そうだ。おれは職場体験に参加することを決め、その事を校長に報告する。

 

「分かったのさ。それじゃあ、さっき渡した資料の中から志望する事務所を決めて、今週末までに提出するようにね」

 

 いや、2日もないのかよ!!

 

 おれは提出期限の短さに、心の中で驚愕の声を上げる。そして、受け取った資料を片手に職員室を後にした。 

 

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