転生近界民のアカデミア   作:暁月鈴

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第12話「体験」

 

「えーと。確かこの辺りだよな」

 

 職場体験当日。おれは学校ではなく、集合場所として指定された駅に来ていた。此処にいる、A組のメンバーと一旦合流してから体験先に向かうように言われたからだ。

 

 A組のメンバーを探していると、少し離れた所から話し声が聞こえて来た。

 

 そして、その声は聞き覚えのあるものだった。

 

 その声が聞こえた方向へと、おれは足を運ぶ。そこには雄英の制服を着た人達が並んでいた。

 

 向こうもおれに気づいたらしく、首にマフラーのようなものを着けた人―Aクラス担任の相澤先生が声を上げる。

 

「……やっと来たか」

 

 その声につられてか、A組の人達もおれの方へと目を向ける。そして、おれの姿を捉えるや否、驚きの声を上げた。

 

「おまっ、体育祭の時の普通科じゃねえか!!」

 

「え、何で此処にいるの?学校は?授業は?」

 

 その質問にはこのクラスの担任である、相澤先生が答えてくれた。

 

「こいつは特例で職場体験に参加することになった。ほら、自己紹介くらいさっさとしろ」

 

 そう言われたおれは、自分の名前と年齢を簡単に伝える。するとまた、A組の人達は様々な反応を見せた。ある人はおれが参加することに驚きの声を上げ、またある人は殺気を感じさせるような視線をおれに向け、またある人はおれの体験先を聞いてくる。

 

 そんなこんなで場は少し騒がしくなるが「オイ、まだ話の途中」と言い相澤先生が睨みを効かせると、その瞬間、場は一瞬で静まり返った。見事に調教されてるな、こいつら。

 

 そうして周りが静まり返った所で、相澤先生が最終確認を行う。

 

「さて、全員コスチューム持ったな。本来なら公共の場での着用は厳禁なんだ。間違っても無くしたり落としたりするなよ?」

 

「はーい! 分かりました先生!」

 

「伸ばすな、『はい』だ芦戸。くれぐれも先方には失礼のないようにな。じゃ、行け」

 

 そうして最終確認が終わり、相澤先生が解散の合図を出した所で、A組の皆は各自自分の体験先へとバラバラに動き出す。

 

 おれもまた、自分の体験先へと向かおうと、駅のホームへ足を運んだ。

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 電車に乗ること数時間。太陽が高く昇るこの時間に、おれは目的の場所にやって来た。此処は、『ヨロイムシャ』と言う名前のヒーローが所属する事務所だ。おれが此処に決めた理由はこいつが刀を使うからだ。

 

 此処で抜刀術を習得出来れば、あの技を再現出来るかもしれない。40mもの射程を誇る、あの剣技を。

 

 受付で簡単な手続きを済ませ、相棒(サイドキック)と思われる人の案内にしたがって歩くこと数分。そこには戦国武将を彷彿とさせる鎧を全身に纒い、腰には一振の刀を装備した老人が椅子に腰かけていた。

 

「良く来たのお、少年。歓迎するぞ」

 

 この人物こそ、具足ヒーロー『ヨロイムシャ』。此処の主にして、おれに指名をくれたプロヒーローの一人。

 

 この場で自己紹介を済ませた後、おれは相棒(サイドキック)の手で客室へと案内された。これから一週間、この部屋で生活するらしい。

 

 持ってきた荷物を全て下ろした後、おれはトリオン体へと換装する。動きやすい服装に、玉狛第二の隊服姿になったおれはそのままヨロイムシャの下へと向かう。

 

「おや、もう準備出来たのか。思ってたよりもだいぶ速いのう」

 

 そこには、ホワイトボードに机や椅子などを準備するヨロイムシャの姿が。これから勉強でもするのだろうか。

 

「うむ。まずはお主にヒーローの仕組みについて教えようと思っての」

 

 そう言いながらも準備を終えたヨロイムシャは、ペンを片手にヒーローについての説明始めた。おれは用意された椅子に座ってその話を聞くことにする。

 

 ヒーローは国から働きに応じた給与を頂いているとのこと。(ヴィラン)を捕まえたり、市民を助けたりなど成果に応じてお金が貰えるらしい。

 

 その仕組みは、ボーダーの仕組みとかなり似ていた。ボーダーも、近界民(ネイバー)の撃破数に応じて給料が貰えるし。

 

 他にも、ヒーローには副業が認められているらしい。まあ、ただでさえヒーローが多い上に、手柄を上げないとお金が手に入らないのだからそうなるのも仕方ない。

 

 ほかにもヨロイムシャは、ヒーローの起源なんかを教えてくれた。

 

 こうして座学が終わり、一時間の昼休憩を取った後。おれはヨロイムシャと共に市街地のパトロールに参加することになった。パトロールの注意点などを聞きながら、おれはヨロイムシャと共に街中へと向かう。

 

 ヨロイムシャの後を追って街中を歩いていると、流石はトップヒーローの一人と言うべきか、「ワーワー」と、あちらこちらから歓喜の声が響き渡る。そんな人達に手を振ったり、握手やサインを求める子には、仕事の邪魔にならない範囲で、丁寧に相手をしていた。長年生きてるだけあってこういうのには慣れてるのだろう。ずいぶんと手慣れてるな。

 

 その様子を離れた位置から眺めていると

 

「体育祭で優勝した子ですよね!!一緒に写真取ってもらっても良いですか!?」

 

「ずるいずるい!!私も写真取りたい!!良いですか!?」

 

「あ、じゃあ俺にはサイン下さい!!」

 

 うわ、やっぱりこっちにも来た。

 

 ヨロイムシャがファンサービスをしている途中、おれの存在に気づいた人達が次から次へとおれの所へ歩み寄って来た。前は学校を理由に逃げたけど、今回はそうも行かない。ヨロイムシャからもファンを邪険にしないようにと言われたし。

 

 そうして相手にすること数分後、

 

「お疲れのようじゃのう、少年」

 

「疲れたよ」

 

 何とか全員の相手を終えたおれは、ヨロイムシャの問いにそう答える。本当に疲れた。普段の戦闘訓練より大変かも。そんなことを考えながらも、パトロールは続いていく。

 

 この日は特に大きな事件も、おれが何かすることもなく、無事にパトロールは終了した。職場体験初日はこうして幕を閉じた。

 

 

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