「スタートッ!!!」
ミッドナイトから競技開始の合図が出されるのと同時に、おれはグラスホッパーで跳び上がる。高く、それでいて目の前でごちゃついているやつらを飛び越せるように、前方へと。するとその刹那、辺りが冷気で包まれたかと思うと、地面は凄まじい速度で凍りついた。
空中にいたことで、おれはその妨害から逃れることが出来た。さらに、再びグラスホッパーを展開し、それを踏み込むことで、更に前方へとその身を加速させる。そして先頭にいた、さっきの氷結攻撃を仕掛けたであろう、紅白の髪をしたソイツを一気に抜き去った。
「なっ・・・!!」
簡単に追い抜かれたことに驚いたのか、ソイツは声をあげた。その反応を余所に、おれはグラスホッパーを使い、そいつとの距離を引き離す。
この光景に実況席にいるプレゼント・マイクも興奮したのか、高いテンションでこう声を発した。
『スタート地点の地面を凍らせ、大多数の妨害に成功したA組の轟!先頭で独走かと思いきやそう上手くはいかなかった!まさかの展開だ!!なんと先頭に躍り出たのはヒーロー科ではなく………』
『D組普通科、空閑遊真だぁぁぁぁ!!!』
ヒーロー科ではなく、普通科が先頭に躍り出る。そんな予想外な光景にか、会場は大きな歓声で包み込まれた。
『さあ、実況していくぞ!!解説
『無理矢理呼びやがって………』
テンションが最高潮なプレゼント・マイクとは正反対にミイラマンと呼ばれた包帯だらけやつは不機嫌そうだ。……というかアイツ、よくその状態で動けるな。どう見ても入院レベルの怪我だと思うんだが…?それとも、あれがいつもの格好なのか?
そんなことを考えつつも、おれはグラスホッパーを駆使して後ろの奴らをどんどん引き離す。そして、おれはロボットがたくさんいるエリアへと突入した。
そこにいるロボットは大中小、様々な姿形をしている。ソイツらはおれの姿を捉えると、こちらに襲いかかってきた。それを避けつつ、すれ違い様にスコーピオンで一閃。たったそれだけで、ロボットは破壊された。
(やっぱ、ここのロボ弱いな。まだバムスターの方がよっぽど強いぞ?)
そうしておれは、襲いかかるロボットを速攻で破壊しつつ、最短距離を進んでいく。後少しでここを突破する。その光景を見てか、実況席で動きがあった。
『ほら、無駄口叩いてないでさっさと実況したらどうだ。普通科のあいつはもう少しで第一関門を突破するぞ』
『
この光景を見て、プレゼント・マイクは実況を再開した。しかしよほど慌てていたのか、その声は少し裏返っていた。
最後に立ち塞がった3体を切り裂き、第一関門を突破した。そしてその勢いのまま、おれは走り出す。そして、おれは次のエリアにたどり着いた。
そこは、切り立った崖がバラバラな間隔で幾つも並び、崖と崖同士が細い綱で繋がっているエリアだった。下には何も見えず、ただ真っ暗な闇が広がるばかり。この光景から、その高さは計り知れない。
おれはこのエリアを崖から崖へと跳び移り、届きそうにない距離はグラスホッパーを使って次の崖へと跳躍する。こういった方法で突破していく。
グラスホッパーで最短距離を一気に抜けるという方法も考えたが、後続との差がかなり開いていること、少しでもトリオンの消費を抑えようという考えから、この方法をとることにした。
『さあさあ、ヒーロー科の奴らが第一関門を攻略している間にも、普通科のアイツは第二関門、ザ・フォールを攻略していくぅぅぅ!!マジですげぇなアイツ!!……………って言ってるうちに第二関門を突破したぁぁぁ!!!』
プレゼント・マイクの実況の通り、第二関門を突破したおれは、そのままゴールを目指して走り出す。
そうして、おれは3つ目のエリアまでたどり着いた。だがおれは、このエリアの異様さに足を止めた。
このエリアは、不自然なほど広く、ただただ平地が広がるだけ。そして、「ここから先は危険」と示すような看板が辺りに建ち並ぶ。地面を見ると、そこには
とりあえず、おれはスコーピオンを形成し、何かが埋まっている場所を目掛けて投擲する。投げ出されたスコーピオンはまっすぐ飛び、狙いどおりの位置に突き刺さった。するとその瞬間…………
スコーピオンが刺さったその場所は音を立てて爆発し、辺りにピンク色の煙を撒き散らした。
「なあレプリカ。アレってまさか………」
おれはレプリカに、さっきの爆発の正体を聞こうとした。すると……
『ようやく足を止めたな!さっきの爆発で察しはついてると思うが、一応解説しとくぜ!!これぞ、最終関門の地雷原!名付けて、怒りのアフガン!!!地雷の位置は、よく見りゃ分かるようになってる!目と脚を酷使しろ!他の奴らもアイツに追いつくチャンスだ!!!』
と、プレゼント・マイクがこのエリアの説明をする。そして最後に『威力は控えめだが、音と爆発は派手だから失禁必至だ!』と付け加えると、『人によるだろ』とそれに対してツッコミを入れるミイラマン。
何物騒な物持ち込んでんだと、おれは心の中で軽くツッコミを入れる。まあ、大量のロボットや落ちたら骨折不可避であろう崖があった時点でいまさらか……?
そんなことを考えつつも、おれはここを攻略するために、再度グラスホッパーを展開する。そしてそれを踏み、前方へと跳躍した。
『あーっと、空閑が動いた!!なんと地雷の上を悠々と跳び進んでいくうゥゥゥ!!これじゃあ地雷を設置した意味がねえじゃねえか!!!』
『だが合理的な方法だ。あれなら地雷に左右されないからな』
実況席にいる二人の言葉が終わるのとほぼ同時に、おれはこのエリアを突破した。あとはただ、ゴールに向かって走るだけ。そうしておれは、トリオン体の脚力に物を言わせ、全力で駆け抜ける。
そして、おれがゴール地点を通過したその瞬間、
ワァァァァァァと、辺りは大きな歓声で包まれた。実況席にいるプレゼント・マイクもハイテンションに、周りの歓声に負けないような大きな声を発した。
『おいおいマジか、マジなのか!? こんな展開誰が予想出来るかってんだ!終始ヒーロー科を圧倒し続けて一番最初にスタジアムに戻って来た、その少年の名は───』
『空閑遊真だぁぁぁぁ!!まさかの普通科が一位になった!!まさに下克上!!これぞまさしく下克上だぁぁぁぁ!!!』
プレゼント・マイクのその言葉に、辺りは先ほどより大きな歓声で包まれた。その上、何やら品定めをするような視線も感じる。
それらの反応を余所におれは1つ、レプリカに質問した。
「なあレプリカ。こういうことって珍しいのか?」
こういうことというのは、普通科の生徒がヒーロー科に勝つ、と言うものだ。正直、”個性”によっては普通科がヒーロー科に勝つなんてこと、普通にありそうだが……?
そう考えていると、レプリカが質問に答えてくれた。
『ああ、正直かなり珍しい。”個性”の相性などによっては普通科がヒーロー科に勝つ、ということは十分起こり得る。だがそんなことはごく稀だ。それにユーマは、有利な種目とはいえヒーロー科を大きく圧倒した。ここまでヒーロー科を圧倒した普通科は過去のデータにもない』
レプリカの説明を聴きながら、おれは設置されているモニターに視線を向ける。モニターには、まだ競技をしてる人達が写っていた。そして、今先頭にいる紅白の髪をしたソイツは悔しそうに顔を歪ませながらも、第二関門を攻略していた。
おれは競技終了まで、モニターに映る中継を見ておくことにした。相手の”個性”を観察できるしな。
そうしておれは、のんびりとモニターを眺めながら時間を潰すのだった。