転生近界民のアカデミア   作:暁月鈴

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2023/1/4 芦戸との試合の振り返りと常闇との試合内容を一部修正しました。


第7話「トーナメント」

 

 騎馬戦後の昼休憩が終わり、午後の部。会場内は相変わらず大勢の観客で賑わっており、これから始まるレクリエーションにも歓声が轟く。

 

 そんな中、プレゼント・マイクも観客に負けじと、大きな声を上げた。

 

『最終種目の前に予選落ちの皆へ朗報だ!あくまで体育祭!ちゃんと全員参加のレクリエーションも用意してんのさ! 本場アメリカからチアリーダーも呼んで一層盛り上げ………ん?アリャ?』

 

『なーにやってんだ………?』

 

『どーした!?A組!!?』

 

 何故かは知らないが、A組の女子生徒が全員、チアリーダーの格好をしてステージに立ち並んでいるのだ。最初はA組が出し物でもするのかと思ったが、皆して死んだ魚のような表情をしてるため、それは違うのだろう。そもそも何であいつらはこんなことをしているのだろう。

 

 そんなことを考えていると、その内の1人が抗議の声を上げた。どうやらクラスメイトに騙されたらしい。騙されたことに落ち込む者、チアの格好に恥ずかしがる者、はたまた楽しんでしまえ!と言う者と反応は様々だ。

 

 このちょっとした騒動が一段落ついた後、最終種目の説明が行われた。

 

 最終種目の内容は騎馬戦の上位4チームと5位のチームから2名繰り上がり、計16人による1対1のトーナメント形式。5位のチームからは、灰色に近い髪をした少年と植物のツルのような見た目の髪をした少女の2人が出るようだ。そうして、1位のおれたちから順番にクジを引いていき、全員が引き終わった後、スクリーンにトーナメントの組み合わせが表示された。おれの1試合目は第5試合。対戦相手はあしどみなという、物体を溶かす液体を出す少女だ。

 

 そうして、全員の対戦相手が決まった後、レクリエーションが始まった。内容は借り物競走や大玉転がしといったよくあるものだが、それでも会場は盛り上がっていた。

 

 

 

 

 全てのレクリエーションが終了し、最終種目の時間になった。一回戦第一試合の組み合わせは騎馬戦で同じチームを組んでいたみどりやとしんそう戦い。しんそうは”個性”のしかけがばれていながらも言葉巧みにみどりやをゆさぶり、メイの時みたく、みどりやの動きが止まった。プレゼント・マイクが言うには、しんそうの”個性”は洗脳。問いかけに答えた者はスイッチが入り、あいつの言いなりになるようだ。

 

 この試合はしんそうの勝ちで決まりかなー?と、おれが思った時、何故かあいつの指が爆発し、あいつは洗脳から目覚めた。その後は普通の殴り合いになったが、怪我してるとはいえ、身体能力はみどりやの方が高いため、そのまましんそうを場外へ落とし、みどりやの勝ちとなった。

 

 第二試合と第三試合はそれぞれ一瞬で終わり、第四試合はメイといいだによるアイテム解説つきの鬼ごっこ(?)のあと、メイが自ら場外に出て、いいだの勝ちのなった。そして次は、おれとあしどの試合だ。

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

『メインカラーはピンク!そして個性はショッキング!!溶かしすぎてショックな映像見せんなよ!!A組ヒーロー科、芦戸三奈!!!』

 

(バーサス)!!障害物、騎馬戦共に1位通過!!下剋上を成し遂げる少年!!D組普通科、空閑遊真!!!』

 

 プレゼント・マイクの実況と観客の歓声を聴きながら、おれはステージに上がる。おれがステージに上がる頃には、あしどは既にステージに立っていた。

 

『それじゃ、早速はじめるぜ!!レディィィ………スタート!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………えっ?」

 

『…………は?』

 

( ( ( (…………え?) ) ) )

 

 実況席にいるプレゼント・マイクと、主審を勤めるミッドナイト。そして観客の皆は、今目の前で起きている出来事に困惑していた。

 

 芦戸はステージの上で苦しそうな声を上げながら、青くなった両足を押さえて蹲り、遊真は初期位置から数メートルほど離れた位置に、剣を振り抜いた様な体勢で立っていた。

 

 この光景から、遊真が芦戸に勝ったというのは分かる。分かるのだが、彼らには遊真が何をしたのか、全く見えなかったのだ。

 

 それもそのはず。遊真のやったことは、開始と同時に突っ込んでスコーピオンで彼女の両足にダメージを与えただけ。それだけなのだが、それに掛けた時間はあまりにも短かった。その間、僅か0.2秒。一般人はもちろん、そこらのプロヒーローが見切れる速度ではない。

 

「あ、芦戸さんダウン!空閑くんの勝ち!!」

 

 芦戸の苦しそうな声を聞いてか、一足先に我に返ったミッドナイトが勝利宣言を行うと、プレゼント・マイクも声を上げた。

 

『は、はぁぁぁぁぁぁ!!?おい、今何が起きた!?いや、何をした!? 全然!! 全く!! 何も!! 見えなかったんですけど!?マジで何で普通科なんだよアイツ!!』

 

 その後、芦戸は救護ロボによって保健室へと運ばれ、遊真は観客の声を他所に、ステージを後にした。

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 試合が終わり、空いている席についたおれは、今行われているとこやみとやおよろずの試合を見ながら先の試合を振り返っていた。……個人的には、十分合格点だろう。速攻で何もさせずに倒せたし。

 

 そんなことを考えてる間にも試合は進み、今行われている試合はとこやみが勝利。第七試合は策もなく、ただ正面から殴り合うというあまり面白くない展開になり、最終的には引き分け。そして、うららかとばくごうによる第八試合。これは案の定、ばくごうの勝利で終わったが、うららかの策といい油断無く相手を追い詰めるばくごうといい、見ていて一番面白かった。…………ブーイングをだすプロヒーローやそれに賛同したプレゼント・マイクには呆れたが。

 

 これにて全ての一回戦が終わり、二回戦第一試合。みどりやととどろきの試合が始まった。

 

 この試合は、最初は氷結と(パワー)のぶつけ合う、耐久戦という形で始まった。しかし、とどろきが氷結を使うのに対して、みどりやの力は使う度に体の一部を壊す為、耐久戦はとどろきが有利だろうと思ったが、あいつは壊れた体を使って、とどろきに食らいついた。

 

 その後は、二人は何かを話ながら戦闘を続け、みどりやが最後に放った一言が、「君の力じゃないか!!」という言葉がきっかけになったのか、とどろきは左側から炎を出した。そして、お互いの”個性”がぶつかり合い、ステージを破壊する程の大爆発を引き起こした。

 

 煙が晴れた時には、とどろきはフィールドに残り、みどりやは気を失って場外に倒れていた。

 

「緑谷くん………場外。轟くん───……三回戦進出!!!」

 

 あまりにも凄絶な試合に静まり返る会場。その会場に、ミッドナイトからとどろきの勝利が告げられた。

 

 それから10分後。修復されたステージでしおざきといいだによる二回戦が始まった。この試合はいいだの『レシプロバースト』という技による速攻でしおざきを場外に押し出し、いいだの勝ちとなった。前の二戦と比べるとどうしても見劣りしてしまうが。そして、第三試合。おれととこやみの試合が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『二人とも用意は良いな?それじゃ、早速始めるぜ!!レディィィ………スタート!!!』

 

 プレゼント・マイクから試合開始の合図が出されたその瞬間、すぐさま常闇は動き出した。

 

黒影(ダークシャドウ)!!!」

 

『アイヨ!!』

 

 常闇が声を出すのと共に黒影(ダークシャドウ)は遊真目掛けて突き進んだ。芦戸と遊真の試合を見た常闇はこう思った。彼は自分よりも強いと。正面からの戦闘では、万が一にも勝ち目はないと。

 

 だからこそ、常闇の作戦は「速攻」。絶え間無く攻撃を浴びせ続けて、彼に攻撃をさせないように。そして、彼の間合いに入らないように。

 

 この策が上手く嵌まったのか、黒影(ダークシャドウ)の攻撃をブレードで受け止めた遊真の体がぐらりと傾く。

 

「よし、いいぞ!!そのまま───」

 

 ───押し出せ。と、常闇が指示を出そうとしたその時。

 

ドッ!!

 

『オワッ!!』

 

「………は?」

 

 突如、黒影(ダークシャドウ)は何かに弾かれたかのように上空に吹き飛ばされた。何が起きたのか分からず、常闇は間の抜けた声を出す。そしてその瞬間、遊真は一瞬で常闇との距離を詰める。常闇が我に返った時には既に遅く………

 

「…………がっ!」

 

 急所に斬撃が叩き込まれ、常闇は少したたらを踏むと、そのままばたりと力無く倒れた。それを見たミッドナイトが遊真の勝利を宣言する。そして、実況席にいるプレゼント・マイクも同じく声を上げた。

 

『まーた普通科が勝ちやがったぁぁぁ!!てかアイツさっき何したんだ!?突然黒影(ダークシャドウ)が吹き飛んだんだけど………何したか分かるかイレイザー!?』

 

 遊真が何をしたのか全く呑み込めてないプレゼント・マイクは隣にいるミイラマンこと相澤に彼のしたことの解説を求める。話を振られた相澤は「お前プロだろうが」と呆れた声を漏らしつつも、淡々と解説を始めた。

 

『あいつが予選の時に何度も使っていたジャンプ台。あいつはあれで黒影(ダークシャドウ)を吹き飛ばしたんだ』

 

『マジかよ!!アイツあの一瞬でそんなことしてたのか!?どんだけ強いんだよアイツ!?』

 

 遊真の戦闘能力の高さに驚くプレゼント・マイク。それは他の観客やプロヒーローも同じ様で、皆の視線は遊真に集まっていた。遊真もその視線を感じているようで、居心地悪そうに肩をすくめると、足早にステージを立ち去った。

 

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