転生近界民のアカデミア   作:暁月鈴

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第8話「爆豪勝己」

 

 ──控え室にて──

 

 モニターに映る遊真と常闇の試合を見ていた少年、爆豪勝己はその試合が終わるとすぐに顔を歪め、テーブルに拳を叩きつきた。この様子から分かるように、彼は今とてつもなくイラついていた。その原因はもちろん───

 

「あの白髪野郎っ・・・・!」

 

 自分たちヒーロー科を圧倒する実力を持つ普通科の少年、空閑遊真だ。

 

 障害物競走では一切追い付けずに終わり、騎馬戦ではヒーロー科からの集中攻撃を受けながらも、それらを全て捌ききり、最後まで1000万を守りきった。そしてトーナメントでは芦戸を瞬殺し、常闇を瞬く間に攻略した。

 

 ただのモブだと思っていた──いや、全く認識すらしていなかった普通科の少年。それがヒーロー科を圧倒できる実力を持つことに、プロヒーローにも匹敵する実力を持っていることに、そして、そんな事実に彼は苛立ってしょうがない。

 

 そんなことを考えているうちに、自分の番が回ってきた。次の対戦相手である切島に対する作戦は既に仕上がっている。そのため、爆豪は対遊真戦に向けての作戦を考えながらステージへと向かって行った。

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 常闇との試合を終え、席に戻った時には既にばくごうときりしまの試合が始まっていた。この試合はおそらく……いや、ほぼ間違いなくばくごうが勝つだろう。戦術も戦闘も、どちらもばくごうの方が上だし。

 

 案の定、試合はばくごうの勝ちで終わった。最初こそは身体を硬くしたまま猛攻を仕掛けるきりしまに防戦一方だったが、疲労が積み重なって脆くなった瞬間を狙い、連続で爆撃を食らわせ一気に勝負を決めた。

 

 相手の隙を見逃さない洞察力といい、やっぱヒーロー科の中ではあいつが一番戦闘上手いな─と、おれは心の中でそう思った。

 

 そして、それから数十分が経過し、準決勝第一試合。とどろきといいだの試合が始まった。とどろきの放つ氷結攻撃をいいだは足を活かした機動力で避けていき、間合いに入ったところで、『レシプロバースト』を発動。その勢いのまま、とどろきの頭部に蹴りを入れ、体操服の襟を掴み、外に出そうと走り出したが何か異常が起きたのか、その足は途中で止まってしまう。とどろきはその隙を見逃さずに氷結を放ち、いいだを氷付けにした。

 

 ミッドナイトによってとどろきの勝利が告げられる中、おれは控え室へと足を運ぶ。が、控え室が見えた所で足を止めた。何故か次の対戦相手であるばくごうが控え室の前に立っていたのだ。それも、物凄く苛立った表情で。その様子を見たおれは、レプリカにこう尋ねる。

 

「レプリカ。もしかしておれ、場所間違えた?」

 

『いや、場所は此処で正解だ』

 

 じゃあ、向こうが間違えてるのか。そう判断したおれはばくごうにその事を伝えようかと考えた。しかし見るからに不機嫌そうなあいつにそんなことを言ったら逆にこったが怒鳴られそうだ。触らぬ神になんとやらってやつだな。

 

 そう判断したおれは、そのままばくごうの横を通り抜けて、控え室の扉へと手を伸ばす。すると……

 

「オイ、待てやこの白髪野郎!!」

 

 と、ばくごうは怒鳴り声を上げながら、此方へと近づいてきた。先ほどの怒鳴り声が廊下へと響き渡る。

 

 いや、結局怒鳴られるのかよ………

 

「何か用か?おまえの控え室なら反対だぞ?」

 

「分かってるわんなもん!!」

 

 そう言うと、ばくごうは更に一歩、此方へと詰め寄る。そして、掌からパチパチと音を鳴らしながら、続けざまに声を発した。

 

「いいか、お前には騎馬戦の借りを返してやる!!だから、始めから全力で来い!!それを俺が上からねじ伏せる!!いいな!!ふざけた真似しやがったら殺すぞ!!!」

 

 そう言うと、ばくごうはクルリと踵を返し、カツカツと足音を立ててこの場から立ち去った。あいつ、それを言うためだけに此処に来たのか?だとしたら………

 

「面白いやつだな」

 

 おれは小さく、そう呟きながら笑い、控え室の扉を開けた。

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 準決勝第一試合が終わり、数十分後。準決勝第二試合が、爆豪と遊真の試合が始まろうとしていた。ステージに上がった二人は既に戦闘態勢を取っていた。爆豪は右手を引いて腰を落とし、遊真は右足を軽く引いて、右手にスコーピオンを。

 

『さあ、用意はいいな、お前ら!!準決勝第二試合。爆豪と空閑の試合が今、スタートだぁぁぁぁぁ!!!』

 

 プレゼント・マイクが試合開始を告げるのと同時に、爆豪は両手を勢いよく爆破させて飛び上がる。その勢いのまま遊真との距離を詰めると

 

「死ねぇぇぇ!!!」

 

 と、そう叫びながら右手を大きく振りかぶり、爆破を叩き込もうとした。

 

 遊真はそれに対して、一歩踏み込むのと同時に振り下ろされる爆豪の右腕を掴み取る。そして、そのままグイッと後方へと、誰もいない場所へと引っ張った。その結果、爆豪の初撃は何もない所を爆破するという結果に終わった。

 

 あっさりと避けられた事に爆豪は軽く舌打ちをする。ならばと、爆豪は左手を遊真のいる方向へと構え、爆破をぶつけようとした。が、それよりも早く、遊真はグラスホッパーを押し付ける様に爆豪の胸もとに展開した。その結果・・・

 

「がっっっ!!!」

 

 爆豪の身体は凄い勢いで場外へと飛ばされた。そこに、先ほどやろうとした左手の爆破が組み合わさり、爆豪の身体は回転しながら空を舞う。

 

「ああああぁぁぁぁぁ!!!」

 

 今度はそう叫びながら、爆豪は両手を爆破させる。その爆破による推進力がブレーキとなり、何とか場外にならずにすんだ。そして、爆豪が立て直した時には既に、遊真は爆豪の目の前にいた。

 

「クソッッッ!!」

 

 すかさず爆豪は右手から爆破を繰り出して迎撃するが、それより早く、遊真は左側へと跳び、その攻撃を回避する。その後遊真はメインとサブのグラスホッパーをフルに起動し、爆豪の周囲に大量のグラスホッパーを配置。

 

 無数に出現したグラスホッパーを足場に、高速の三次元機動を行った。

 

 この技の名は『乱反射(ピンボール)』。大量に分割したグラスホッパーを一定範囲内に展開する事で、地形に左右されない三次元機動を展開するというもの。

 

 あまりの速さに爆豪はついていけず、すれ違い様に浴びせられる斬撃によって、少しずつ、確実に爆豪の身体にはダメージが蓄積されていく。

 

「クソがぁぁぁぁぁ!!榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)ォォォォォ!!!

 

 それに対抗するべく、爆豪が取った行動は広範囲の爆破攻撃。遊真はそれをシールドを二枚フルで使った全防御(フルガード)でしっかりと防ぐ。

 

 この攻撃で『乱反射(ピンボール)』から抜け出すことに成功した爆豪は、すかさず遊真のいる方向へと視線を向ける。そして目に映ったのは背後にグラスホッパーを展開させる遊真の姿だった。

 

 爆豪はボロボロの身体に鞭打って立ち上がり、いつ攻撃してきてもいいように腰を落として構える。しかし………

 

「ぶっ」

 

 突如として横から跳んできた瓦礫が爆豪の頭部に激突した。

 

 この瓦礫は遊真がグラスホッパーで跳ばした物。背後のグラスホッパーは囮で、本命はこっちだった。

 

 予想外な攻撃に、思わず爆豪は目を閉じてしまう。そして、それは余りにも致命的な隙だった。

 

 その一瞬の隙に遊真は爆豪との距離を詰める。そして爆豪の腹部……鳩尾に膝をめり込ませ、その勢いのまま蹴り跳ばした。

 

 凄い勢いでステージを転がり、倒れ伏す爆豪。ヒーロー科でもトップクラスの戦闘能力を誇る爆豪がこうも一方的に叩きのめされる光景に観客の人達……特にA組の人達が驚いていた。

 

「まだ・・・まだだ・・・・・・」

 

 静まり返る会場に対して苦しげに、だがそれでいてしっかりとした声を発しながら立ち上がる爆豪。

 

「俺は・・・まだ・・・・・・」

 

 しかし、此処までが限界だったようでバタリとその場で倒れ伏した。

 

 倒れ伏した爆豪に主審のミッドナイトが近づき、彼の容体を確認する。

 

「爆豪くん、戦闘不能!!空閑くんの勝ち!!!」

 

 そして、ミッドナイトが声高に遊真の勝利を宣言する。瞬間、静まり返る会場に観客の歓声が沸き上がった。プレゼントマイクも負けじと声を上げる。

 

『オイオイマジかよ!!あの爆豪を一方的に叩きのめすとかホント強いなお前!!!さあ、これで決勝は轟対空閑に決定だぁぁぁぁ!!!』

 

 遊真は観客からの拍手喝采を浴びながら、救護用のロボットで保健室へと運ばれる爆豪を見送る。そして、爆豪が完全に見えなくなった所でステージから立ち去った。

 

 

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