転生近界民のアカデミア   作:暁月鈴

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第9話「轟焦凍」

 

 ばくごうとの試合を終えたおれは、控え室へと足を運ぶ。しかしその途中、曲がり角から巨大な人影が表れた。

 

「おォ、いたいた。君が空閑遊真君だね?」

 

 そうやっておれに話しかけてくるそいつは自分の倍はあるだろう巨漢で、身体中の至るところから炎を出している。

 

 おれはそいつを見て、とある出来事を思い出した。それは、最終種目の2回戦第1試合、みどりやととどろきの試合中の出来事。とどろきが炎を出した時にやけに大きな声を出して騒いだのがこいつだった。たしか、名前はエンデヴァー。次の対戦相手である、とどろき しょうとの父親らしい。

 

「予選から本選まで、君の活躍は見せて貰った。素晴らしい戦闘能力、そして素晴らしい個性だ」

 

「はぁ………それはどうも?」

 

 そいつは炎を纏った顔に笑みを浮かべながらそう言うが、その目は全く笑っていない。だが、先の言葉にウソは無かったためとりあえずお礼は言っておく。

 

「それで、おれに何か用か?」

 

「簡単な事だ───あいつに左の力を使わせろ」

 

 何をしに来たのかとおれが訪ねると、そいつはそう答えた。そして、そいつはそのまま説明を始めた。

 

「ウチの焦凍には、オールマイトを超える義務がある。まだアレは迷っているようだが、君との試合なら確実に左を使うことになるだろう。とても有益な戦いを期待する。あれの為にも、君の為にもな」

 

 そう説明するエンデヴァーの周りには、黒い靄が見える。………てことは

 

「君の為にも、ね…………おまえ、つまんないウソつくね

 

 そう、こいつはおれのため──なんてことは全く思っていない。こいつはおれに、とどろきの引き立て役になってほしいだけだ。

 

「それともう一つ。あいつが左を使うかどうか、決めるのはおれやおまえじゃない。あいつ自身だ。それじゃ」

 

 それだけ言って、おれはその場を後にした。背後からはずっと、エンデヴァーの威圧感のこもった視線を感じた。

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 

『さァいよいよラスト!!雄英1年の頂点がここで決まる!!決勝戦 轟 対 空閑!!!』

 

 あれから30分が経過し、決勝戦開始の時間になった。ステージには遊真と轟の2名が立ち並ぶ。観客からも、ワァァァァァという歓声が鳴り響き、会場にいる皆が決勝戦の開始を今か今かと待ちわびる。お互いに準備が整ったのを確認し、プレゼント・マイクは開始の合図を振り下ろした。

 

『両者が今!!スタートだぁぁぁぁ!!!』

 

 その瞬間、轟は一回戦で見せた氷結攻撃を行おうと右手を地面へと伸ばす。それを見た遊真は即座にグラスホッパーを起動し、轟の足元に5、6枚ほど展開した。

 

 轟の伸ばした手は地面ではなく遊真が展開したグラスホッパーに触れて、大きく弾き跳ばされる。それによって轟の体勢が大きく崩れた。その隙に、遊真は轟へと接近する。

 

 それを見た轟は迎撃しようと足元から氷結を放つが、遊真はそれを軽々と避ける。そして、再び展開したグラスホッパーを踏み込み、轟との間合いを一気に詰め、その勢いのまま轟に拳を叩き込む。

 

 生々しいのがモロに入り、轟の身体は場外めがけて跳んでいく。しかしその途中、轟が背後に出した氷の壁がストッパーの代わりになり、何とか場外にならずにすんだ。そして、轟が顔を上げると、そこには手裏剣の様な形に変形したスコーピオンを投げようとする遊真の姿。

 

 勢いよく投げられたスコーピオンは轟めがけて真っ直ぐに、回転しながら飛んでいく。それを轟は身体を傾けてギリギリで避ける。スコーピオンは轟の身体を掠め、背後の氷壁に突き刺さった。

 

 その後、遊真は大きく足を踏み込み、今にも走り出しそうな姿勢をとる。それを見た轟は迎え撃とうと、氷結攻撃を放とうとした。………しかし、

 

「がっ!?」

 

 遊真が先ほど投げて、後ろの氷壁に刺さったままのスコーピオン。その刃がいきなり伸びて、轟の身体に突き刺さった。

 

 先に投げたスコーピオンに、地面の下から伸ばしたスコーピオンをつなげて変形させる『変化版マンティス』。

 

 何をされたか分からずに、轟の身体は大きくぐらつく。そこに、遊真は『マンティス』で轟の急所に攻撃を叩き込んだ。

 

 氷結攻撃を使って身体が冷えたことでの身体機能の低下。それに加えて、急所への攻撃をまともに受けてしまった轟は地面へと倒れ伏す。

 

 そのまま数秒が経過し、ミッドナイトが勝利宣言をしようとしたその時、

 

「轟君、負けるな!!頑張れぇぇぇぇー!!!」

 

 突如、観客席から大きな声を出して応援する緑谷。さらに

 

「そうだ!!轟、負けんじゃねぇー!!!」

 

「頑張って下さい!!轟さん!!!」

 

「そうだそうだ!!轟くん、ファイトー!!!」

 

 緑谷の応援をきっかけに、A組の皆も声を上げて轟を応援する。

 

 観客席から大きな声で声援を送るクラスメイト達。そんな彼らに背中を押されたのか、轟は再び立ち上がる。同時に、轟の左半身からはめらりとオレンジ色の烈火が噴き上がった。

 

 轟が再び()を使った。実況席にいるプレゼント・マイクはその光景にいち早く声を上げる。

 

『おぉーっと!? 轟、クラスメイトの声援を受けて、炎を出しつつ立ち上がったぁぁぁぁ!!熱い展開になってきたなオイ!!!』

 

『これを機にどう戦況が変化していくのか注目だな』

 

 その興奮は観客にも伝播し、あちこちから歓声が沸き上がる。炎を使う轟と遊真が、これからどんな戦いを繰り広げるのか、会場にいる全員の期待が高まる。

 

「使うことにしたんだな、それ()。きっかけはあいつか?」

 

 轟の炎を見た遊真はそう言うと観客席にいる緑谷を指差す。それを見た轟は、こう返答した。

 

「まあな。俺が今まで抱え込んでたもん全部ぶち壊しやがった。今までずっと迷ってたのが嘘みてぇにな。……本当に不思議なやつだよ、あいつは」

 

「ふーん、そっか。じゃあ……そろそろ続きを始めようか」

 

 轟の答えを聞いた遊真はそう言うと、その場で2、3回軽く跳躍し、スコーピオンを構える。それを見た轟も腰を深く落として戦闘態勢をとる。

 

 お互いに戦闘態勢に入ってから数秒。先に動いたのは遊真だった。地面に落ちている氷の塊をグラスホッパーで轟へと飛ばしながら、自身もグラスホッパーを踏み込み、轟へと接近する。

 

 それに対して、轟は飛んでくる氷の塊を炎で防ぐのと同時に、足から氷結を放ち迎撃する。氷結はいとも簡単に避けられたが、避けた先に炎を放ち攻撃する。

 

 それを遊真はシールドで防ぐが、そこに再び氷結攻撃。その連撃を前に、遊真は轟が少し前に作り出していた氷壁を壁にしてやり過ごす。轟の猛攻が途切れたその瞬間、遊真は再びスコーピオンを手裏剣の様な形に変え、轟めがけて投擲した。

 

 投げ出されたスコーピオンに対して、轟は左に大きく動いて避けようとする。しかし、スコーピオンは途中で大きく軌道を変えて、轟へと襲いかかった。

 

 そのスコーピオンを轟は何とか腕で防御する。しかし……

 

《 グラスホッパー 》

 

 遊真は轟の周囲に、大量のグラスホッパーを展開。勢いを失って地面へと落ちるスコーピオンがグラスホッパーに触れると勢い良くはね上がり轟へと襲いかかる。轟はギリギリでそれを避けるがまた別のグラスホッパーにぶつかり、再び轟へと襲いかかる。この『ブレード乱反射(ピンボール)』によって轟の身体には少しずつ、それでいて確実にダメージが入っていく。

 

 何度も何度も襲いかかってくるスコーピオンに対して、轟は大氷壁を放ち、スコーピオンごと凍らせる。その後左で身体を暖めつつ遊真がいた方向を向くが……

 

「かはっ………」

 

 既に背後に回っていた遊真が轟の首元にブレードを叩き込んだ。結果、轟は気を失い、ステージに倒れ込む。

 

「轟君、戦闘不能!!空閑君の勝ち!!!」

 

『決着ぅぅぅぅぅっっ!!大激戦の決勝を征したのは空閑遊真だぁぁぁぁ!!!最高に熱い戦いをありがとう!!!会場の皆、両者の健闘を称えてクラップユアハンズ!!』

 

 ミッドナイトが試合終了の合図を告げると、プレゼント・マイクも声を上げる。すると、会場からは今まで以上の拍手喝采が鳴り響く。

 

 遊真はその身に拍手喝采を浴びながら、ステージを立ち去った。

 

 

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