私は皆様の盾ですから   作:斗穹 佳泉

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第一話 運命を決めた出会い

まぁ、なんということでしょう。

孤児院に居た頃測った時は、魔力適正などまったくなかったのに。

 

 

「魔法適正A。シェリン・フュッター。君には軍大学へ編入してもらう。」

 

 

その日から、私の人生は変わってしまったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも皆様こんにちわ、シェリンです。

戦争孤児として幼少期に孤児院に預けられ、図書館通いを繰り返してやっとのことで奨学金を得て大学に進学し、やっと大好きな数学を学べるといった矢先のことでした。

 

なんと、私に魔法適正があったのです。

しかも、Aクラス相当の適正が。

それはもう、軍の方々は私のことを放っておいてくれないわけでして。

 

もちろん、私にだって愛国心はありますよ?

でも、それはそれとして、せっかく勉強を重ねて数少ない枠を勝ち取りましたのに、無駄になってしまいました。

いえいえ、まったくの無駄というわけでもないのです。

軍大学でも、数学を学ぶことはできます。

しかも、魔法適正があるのならば、術式の理論に直接触れる機会もあるわけです。

それはそれで興味深いので、まぁよしとしましょう。

 

 

ただ、ここでまた違った選択をしていたら、もしかしたら私は今、戦場にいなかったことでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シェリン・フュッター准尉であります。ただいま着任いたしました。」

「うむ。入りたまえ」

「失礼いたします」

 

場所はある駐屯地。

この駐屯地のとある部屋に行くよう上からの命令によってやってきました。

 

入室をすると、ガタイの良い人が机に頬杖をして待っています。

しかしその奥、偽りの壁の向こうに見える襟章に、思わず固まってしまいました。

なにせ、准尉ごときではまずお目にかかることのないお方が座っていらしたからです。

バッチリ目が合った、と感じた時には、すでに私の体は敬礼の姿勢でありました。

 

「じ、准将閣下!失礼いたしました!私はシェリン・ヒュッター学生、帝国軍より魔導准尉を拝命しております!」

 

ほう?と閣下の口元が動いた気がしました。

 

閣下に目を取られていましたが、その二つ隣を見ると、より目を取られる方がおられました。

なんと驚き、銀翼突撃徽章を授与された帝国軍最年少のエース、デグレチャフ中尉ではないですか。いえ、襟章を見るに昇進されたようで、今は大尉ですね。

軍大学での講義こそ同じ時間になりませんでしたが、数えるほどですがすれ違ったことはあります。

まぁ、私は編入生でしたので、デグレチャフ大尉は先に卒業されたのですが。

 

 

そんなことを考えている間に、偽りの壁が揺らいで消える。

 

「このように、現学生でも見抜けるような一般的な光学術式です。先程原隊へ送り返した彼らなど、話になりません」

「貴官が散々不合格を突き付けるのも納得だな」

「合格者は彼女を含め13人。中隊分しかありません」

 

 

あのぉ~、というか、私はなぜここに呼ばれたのでしょうか?

合格?

私はレルゲン中佐にこの駐屯地にこの時間に行くようにとだけ言われて来たのですが……。

 

 

そう、私をここへ寄越したのは、レルゲン中佐なのです。

私が現在作成している論文、『魔法演算処理能力の適正による防核術式及び環境術式の部隊一括集中について』の内容に興味を示していただき、何度かお話をさせていただいたことがあるのです。

理論自体は完成しているので、あとは検証を残すのみとなっており、ならばこちらで検証を行うとよいと案内されたという経緯です。

 

あの、内容をまったく教えられていないのですが、合格、と言ってましたし、これはいったい何の選考なのでしょう?

 

 

「構わん、この際多少手荒でも再教育してやれ」

「了解しました」

 

 

ゼートゥーア閣下はそうデグレチャフ大尉に伝えると、部屋を後にしました。

残ったのはデグレチャフ大尉の副官であろう女性と、デグレチャフ大尉、そして私です。

 

「貴官はまだ学生だったな。卒業までにどの程度時間がかかる?」

「はい。残すは論文作成のみとなっております。作成自体も終盤で、耐久検証のみになります。レルゲン中佐より、こちらで検証を行ってはどうかとのご提案を頂きましたので、今回の任に着任いたしました」

「ふむ、そうか。フュッター准尉といったな、私はデグレチャフ大尉だ。彼女は私の副官のセレブリャコーフ少尉だ。このむさくるしい軍の中で数少ない同性の同胞だ、よろしく頼む」

「わ、私からもお願いしますね!フュッター准尉!」

「よ、よろしくお願いします、デグレチャフ大尉、セレブリャコーフ少尉」

 

 

これが、デグレチャフ大尉との初めての出会いでした。

この時までは、そんなに悪い空気じゃなさそうだなぁとか思っていたんです。

思えばこの時からセレブリャコーフ少尉をちゃんと見ていれば、デグレチャフ大尉がどのような方か、詳しく知ることができたのではないかと感じます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月明りが差し込む執務室。

ゼートゥーアは煙草に火をつけ、机に仕舞った作成途中の論文を取り出す。

 

「シェリン・フュッター准尉といったか。どこかで聞いた名だと思ったが、以前レルゲン中佐が提出した論文の著者だったか。『魔法演算処理能力の適正による防核術式及び環境術式の部隊一括集中について』……なるほど確かに、フュッター准尉はこの大隊案には必要な存在だ」

 

理論のみで言えば、これにより魔導士の継戦能力は格段に良くなるだろう。検証はこれからだが、理論通りであれば各隊員の魔力消費を20%程抑えることができるのだという。彼女の論文と才能はまさに大隊の構想案のためにあるかのようなものだ。

 

 

「案外、我々は神に愛されているのかもしれんな」

 

 

 

 

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