私は皆様の盾ですから   作:斗穹 佳泉

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第二話 実戦までに

 

どうも皆様こんにちわ、シェリンです。

大隊結成から半月と少しが過ぎ、部隊の皆様ともだいぶ打ち解けてきました。

 

 

この三週間については、特に記載しないこととします。

 

えぇもちろん、思い出したくもないので。

 

 

今日はデグレチャフ大尉が私の論文作成に協力してくださるとのことで、第一中隊の皆様と中隊長の皆様をお借りしています。

 

 

「第一中隊と各中隊長の諸君。本日はフュッター准尉の論文作成のため、検証を行ってもらう。詳しくは彼女より説明があると思うが、私個人としては非常に興味深い内容であった。諸君らの今後にも関わる内容だ。では、フュッター准尉。よろしく頼む」

「デグレチャフ大尉、ありがとうございます。まず私の研究内容について皆様に軽く説明いたします」

 

 

説明するのは私が編み出した理論と、皆様がこれから何をするかです。

 

 

 

魔導士というのは、実はかなり燃費がよくない兵科なのです。肝心の魔力量ですが、完全に個人の才能に頼りきっています。そこで、より効率的に魔力消費を抑える方法はないかと考えたのが私の研究のきっかけになります。

 

魔導士が魔力を消費する中で、最も多いのは攻撃術式と飛行術式になります。そこは魔導士という兵科の存在意義なので、火力を落とすような方法は本末転倒。そこで目をつけたのが、防核術式と環境術式です。

魔導士は経験を積むと、ほぼ無意識的にどんな時でもそれらの術式を使うようになります。何故なら、一々意識的にそんな術式を行っていれば不意打ちにまったく対抗できないまま死んでしまうからです。

魔導士として戦闘をするのならば、必須極まりないことと言えるでしょう。しかしその無意識下で行っている術式が、本人たちの魔力を無駄に消耗し続けているのです。

そこに着目したのが私が研究している内容になります。

 

サンプルとして、大学で学んでいる魔導少尉100名を集めて検証を行いました。

魔力量をおおよそ均等に50人と50人に分け、片方は防核術式と環境術式を発動したまま、もう片方は意識的に術式を発動させず、魔力が尽きるまで攻撃術式を撃っていただきました。

 

結果は、防核術式と環境術式を発動させていない50人が、発動させている50人に比べ長い間撃ち続けることができました。

魔力消費量に換算すると、およそ20%になります。

 

 

そこで――あ、コホン。

論文の内容を口頭で全部説明するところでした。

私の悪い癖です。

 

 

要するに、防核術式と環境術式、各自が発動させているのって魔力がもったいないよね、だったら、演算処理能力に適性がある人に一括で担ってもらうのはどう?という内容です。

そして、それに最適化した術式を組み上げました。しかし、実戦での検証はまだ行っていないので、今回皆様の力を借りて行います。

 

 

なので、伝えることは単純です。

 

「私が皆さんに防核術式と環境術式を展開します。その状態で銃弾や砲撃を受けてください。どれ程の銃撃、砲撃に耐えられるかの検証です。あ、もちろんご自身で防核術式と環境術式は展開しないように願います」

 

 

あらあら、ヴァイス中尉が何を言ってるんだこの人はって目で私を見てきます。

その他の方々もざわざわしだしました。

 

「あ、あの、すみませんフュッター准尉。それはつまり、我々は銃弾や砲弾が降ってくる中ただ立っていろ、ということですか?」

 

冗談ですよね?とグランツ少尉が質問をして来ます。

もちろん、そんなこと想定内です。

笑顔でお答えします。

 

 

「もちろん本気ですよ。とは言っても、皆様私に、大尉や上の階級の方ならともかく、准尉に命を預けるなど、納得のいかない方がおられるでしょう。なのでまず、私を撃ってください。私の防核、環境術式の精度をご覧に入れましょう」

 

 

そのために、今回フル装備で集まっていただいたのですから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆様、これで私の検証に協力していただけますね?」

 

 

第一中隊の斉射で起こった盛大な土煙の中から、まるで何事も無かったかのように笑顔で歩みを進める彼女に、彼らは自分の目を疑った。

 

 

「嘘、だろ?」

「あれだけの斉射を受けて、塵ひとつ服についていない!?」

 

 

 

その後のことです。

何故か私にも、デグレチャフ大尉に向けるような少し、何と言いますか、怖いものを見るような目で見られることが多くなりました。

 

おかしいですね、私普通の16歳の女の子ですよ?

ヴィーシャと何も変わらないじゃないですか、え、笑顔になる時の眼鏡が怖い?

普通の丸眼鏡ですよ、何か悪いんですか?

 

 

 

 

ともかく、検証は無事終了いたしました。

結果も十分実践範囲内であり、これで晴れて私も軍大学を卒業できるというものです。

 

あ、理論といいますか、そもそもどうやって防核術式と環境術式を部隊一括で管理するのかについての説明がまだでしたね。

 

 

まず、私自身をベースに、各中隊の隊長、小隊長を中継点として各隊員に魔力ラインを接続します。魔力ラインというのは、めちゃめちゃほっそい魔力で出来た糸のようなものだとお考え下さい。これは、各隊員を私の体の一部と認識できるようにするための方法になります。

 

魔力ラインを接続しましたら、各隊員を中心点として、半径1.5kmを観測術式でカバーし、物体の入射角・空気成分から、防核術式の角度計算、環境術式の強度等を隊員ごとに調整いたします。

防核術式、環境術式が作動した場合、対象の隊員には魔力信号で角度、距離、発動理由が魔力ラインを通じてリアルタイムで送信されます。

もちろん、魔力燃費をよくするために、防核術式は改良し、攻撃や衝撃を逸らすことに重点を置いております。

 

私から各中隊長へのラインは50㎞、そこから各小隊長へのラインは30㎞、そこから隊員へのライン15㎞が、私の演算能力では限界の範囲です。

これでもかなり演算に適性があると自負しておりますので、この範囲を一般航空魔導士へ普及することは難しいと思いますが、魔導士の新たな戦術を作成したといって良いでしょう。

 

もちろん、安全には安全を重ね、私が処理できない範囲外に出そうになった際や、集中砲火を受けている隊員の処理が追い付かない場合は、事前に警告をラインで送ります。術式範囲外に出ようとしています、自己防衛のため防核術式と環境術式の展開願います、といった内容のものなどです。

 

 

というのが簡単な説明となります。

 

今回改めて防核術式を調べたところ、なんと燃費の悪いことか、逸らすではなく100%受け止めるような術式となっております。

それは魔力を多く消費するわけです。

 

 

 

さて、検証が終了し、第一中隊の皆様にはお帰り頂きました。この度はありがとうございました。

最後にデグレチャフ大尉にお礼を言い、現在は帰途についています。

 

 

 

ところで、デグレチャフ大尉。

 

「ん?何かねフュッター准尉」

「途中から大尉も参戦してましたよね、何なんですかあの威力、私を吹っ飛ばすおつもりで?」

 

ジト目で私の小さな上官を見ます。

えぇもう、他の方たちは私相手に撃つということで多少は手加減(本気でやれと言ったのに)していたようですが、デグレチャフ大尉は笑顔で銃撃ってましたもんね?

隣でヴィーシャが、「ちょ、大尉殿!もうちょっと抑えてください!」と泣きついてましたもん。

 

「そういえば丁度いい憂さ晴らしになったな。そうだ、今後も私撃たれてみないか?チョコレートなら大量にあるんだが」

「私をサンドバックだと思ってます?」

「冗談だ、さっさと論文を書き終えて卒業しろ」

 

 

 

よかった、とりあえずサンドバックになることはなさそうです。

 

 

もう少しでデグレチャフ大尉が提案した一か月が過ぎようとしています。

 

自分の研究が実を結んだことにうきうきで、今日の夜はあまり眠ることができなさそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……あれ、というか、私、まだ本当に人を殺したこと、ないや。

 

 

軍人ですので考えてはいましたが、いざそれが近づいてくると、少し怖くなります。

 

どうしましょう、今夜は本当に眠れなさそうです。

 

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