魔法少女リリカルなのは~生まれ墜ちるサイヤ人は悪魔の子~(更新一旦停止)   作:生まれ変わった人

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納得いかない退き

「フェイト・テスタロッサ及びその使い魔だな?」

「は、はい……」

「……!」

 

 決闘を終え、フェイトたちはカリフたちと共に地面に降りるとすぐに武装隊が駆けつけてきた。

 

 そして、一人の男が高圧的にフェイトたちに近付いて拘束具をチラつかせる。

 

 それにフェイトとアルフは体を震わせる。

 

「一時的ではあるが、大人しくしてもらえば悪いようには……」

 

 そこまで言ったときだった。

 

 カリフは高速移動で局員とフェイトの間に割り込み、どこかに落ちていたであろう小さい木の枝を局員の目玉の前に突きつけた。

 

「!!」

「カリフ!?」

「ちょっ……あんた!!」

 

 目先ミリ単位で突きつけられた切っ先は震えれば局員の目玉を簡単に貫くであろう距離で制止していた。

 

 局員も恐怖で何も言えず、呼吸すらも止めてしまった。

 

「おい……さっきまで闘ってた奴を拘束とかさぁ……ナメてんのか?」

 

 周りの局員もとんでもない事態に動けずに立ちつくす中、カリフは一言だけ言った。

 

「失せろ……」

「う……あ……」

 

 何気ない感じで言いながら木の棒を引っ込めて投げ捨てるのを見て局員は腰を抜かしてしまった。

 

 その様子に目をくれずにカリフは上を見上げて告げた。

 

「オレは逃げも隠れもしない!! この言葉だけは信じて欲しいし、一切の嘘は言わん!! 誓ってもいい!!」

 

 腕を組み、だが!……と付け加える。

 

「もし、待ち伏せや闇討ちまがいのことをしてみろ!! その時はオレへの侮辱とみなし、船の奴等全員に地獄を見せてやる!!」

 

 それをモニター越しで聞いたクロノたちは冷や汗を流して呟いた。

 

「なんて奴だ……」

 

 カリフを調書する点では結果オーライとなったが、どこまでも我の強いカリフに頬を引き攣らせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこともあり、フェイトやなのはたちを含めた全員はアースラ内のモニター室に集まっていた。

 

 フェイトとアルフは拘束具を付けられることもなくバリアジャケットのままだった。

 

 その横でカリフは何事もなかったかのようにフェイトたちと一緒にやって来た。

 

 あっさりと姿を現したカリフにクロノたちは警戒の色を強めた。そんな面々を余所にカリフは悠然と歩きまわって命令していく。

 

「おい。速くモニターを見せろ」

「はいぃぃ!!」

「強行隊の鎮圧予定時刻は!?」

「は、早くて十分くらいです!!」

「おい! 何故君が勝手に仕切っている!!」

「さっさとしろこのノロマ……オレの貴重な時間を無駄にするな」

「こ、こ…の…」

「クロノ執務官。今は落ち着いてください」

「艦長……しかし……」

 

 クロノの文句に対して鼻で笑いながら見下す嫌みで返すカリフにクロノはデバイスを握るが、リンディによって諌められる。

 

「今の優先順位はジュエルシードです」

「……分かりました」

 

 渋々とデバイスをしまう。

 

 そんな姿になのはとユーノは苦笑するしかなかった。

 

「初めまして……でいいわよね? フェイトさん」

「あ、あの……」

 

 同伴された形になったフェイトは困惑していた。今まで敵対を示していた管理局の艦長クラスの人が自分の前に立って挨拶を交わしてきたのだから。

 

 アルフも彼女の大人らしく、底の見えない対応にいつもの喧嘩腰も弱くなっている。

 

 そんな中、フェイトは目にしてしまった。

 

「!!」

「なんだよこいつ……ねえフェイト……フェイト?」

「か……母さん?」

「あ? あの鬼ババがどうした……!?」

 

 映し出されたスクリーンに映るのは数多の管理局に囲まれている最愛の母、プレシアの姿があった。

 

 どう考えても芳しくない雰囲気のプレシアにフェイトとアルフは驚愕した。

 

 尤も、アルフはこのことを予想していたかのように目を伏せるだけではあったが……

 

 何が何だか分からないといったフェイトにリンディは諭すように肩に手をかける。

 

「フェイトさん……お話はあちらで……」

 

 多少強引にフェイトにプレシアの逮捕を見せまいと別の部屋へと誘導しようとした時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『私のアリシアに触らないで!!』

「「「「!?」」」」

 

 突如としてモニターから緊迫した声が響いた。

 

 なのはたちがモニターに目をやるとそこには魔法を行使して抵抗するプレシアの姿があった。

 

 局員たちは紫の雷で痙攣を起こして倒れている。

 

 そんな予想外な事態にリンディは焦燥を隠せなかった。

 

「いけない! 局員たちの送還を!!」

「はい!!」

「座標固定!0120−503!」

「固定、転送オペレーション、スタンバイ!」

 

 リンディの指示で局員たちをアースラへと戻す中、モニターの向こう側ではプレシアは演じる。

 

 仮面を外すことなく、自虐へと奔る憐れな道化を演じてフェイトそっくりの少女がいるポッドを撫でる。

 

『もうダメね、時間がない……たった九つのジュエルシードでアルハザードに辿り着くかどうかは分からないけど……でも……もういいわ、終わりにする。この子を失ってからの暗鬱な時間を……この子代わりの人形を娘扱いするのも』

「え?」

「な……なに言ってるんだい……あいつ……」

 

 フェイトもアルフもプレシアの悟ったような物言いに嫌な予感を感じて胸を押さえる。

 

 そんなフェイトたちの様子が伝わったかのようにプレシアは画面越しに呼び掛ける。

 

『聞いていて? 貴方の事よ……フェイト』

「!?」

 

 母からの冷たい問いにフェイトの体が震える。

 

 それでもプレシアは冷たく突き放す。

 

『折角、アリシアの記憶をあげたのにそっくりなのは見た目だけ……役立たずでちっとも使えない私のお人形……』

「……」

 

 信じられないのか、フェイトは悲しみに顔を歪ませる。

 

 そんな物言いにアルフは我慢できなかったのかモニターに怒りをぶちまける。

 

「ふざけんな!! 今までフェイトがどれだけ頑張ってきたかも知らないで勝手なこと言うんじゃないよ!! 大体なんだいアリシアってのは!! そのフェイトにそっくりな奴は誰だい!!」

 

 プレシアはアルフの質問を一笑する。

 

『キャンキャン五月蠅い犬ね……私に聞かなくてもそこの管理局なら……もうご存じじゃないかしら?』

「なんだと!?」

「アルフさん……プレシア女史の言うことは間違ってないわ」

「!!」

 

 プレシアからの嫌みに額に血管を浮かばせて牙を見せているアルフにリンディが諌めると、エイミィが辛そうに顔を俯かせて話す。

 

「最初の事故の時にね……プレシアは実の娘のアリシア・テスタロッサを亡くしているの……」

 

 隠された真実になのはたちは衝撃を受けるが、話には続きがあった。

 

「プレシアが最後に行っていた研究は使い魔とは異なる人造生命の生成」

「「「「!?」」」」

「そして、使者蘇生の秘術……“FATE”って名前は開発コードに付けられた名前なの……」

 

 明かされていく真実、そしてその真実がフェイトの心をかき乱し……壊していく。

 

『その通りよ……造る所までは完璧だったのにその後は積み木崩しのように狂っていった……貴方は失敗作だったのよ……』

「……」

「止めて……」

 

 涙を溜めるフェイトの傍でなのはは耐えられなくなっていた。

 

『折角あげたアリシアの記憶も貴女じゃ駄目だった……あの笑顔も遠いところへ逝ってしまった……』

「止めて……止めてよぉ!」

 

 なのはの悲鳴にも耳を貸さずにフェイトの心を壊していく。

 

『所詮、貴方はアリシアが蘇るまでの間に、私が慰みものに使うだけのお人形……だから貴方はもう要らないわ……何処へなりとも消えなさい!!』

「!!」

「お願い! もう止めて!!」

『ふふふふふふふふふふ……!! あははははははははは……!!』

 

 まるで狂ったかのように、それとも今までの何かが切れたかのようにプレシアは笑う。

 

 そしてひとしきり笑ったところでプレシアは言い放った。

 

『フフフ……最後に良いことを教えてあげるわフェイト、私ね、貴方を造りだしてからずっとね……私は貴方の事が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大嫌いだったのよ』

「!!」

 

 その瞬間、フェイトの手からバルディッシュを落とし……

 

 フェイトの心を暗示させるかのように……

 

 粉々に砕け散った……

 

 

 

 

 

 フェイトの瞳から光が消え、床に崩れる。

 

「フェイトちゃん!」

「フェイト!」

 

 それをすぐ傍にいたなのはとユーノが慌てて支えるが、フェイトからは力を感じなかった。

 

 だが、事態はそれだけでは終わらない。

 

「や、屋敷内からの魔力反応が多数!!」

「何だ!?何が起こっている!?」

 

 局員からの報告にリンディたちに衝撃が奔る。

 

「プレシア・テスタロッサ、一体何をするつもり!?」

 

 プレシアの意図が理解できないリンディはモニターの向こうで未だに嘲笑い続けるプレシアを睨む。

 

 プレシアは魔法でポッドを浮かせて玉座へと運ぶ。

 

『私達の旅を……邪魔されたくないのよ……私達は旅立つの……忘れられた都、アルハザードへ!!』

 

 プレシアの願いを叶えんとするためにジュエルシードは玉座の中心で円を描くように浮かんでいる。

 

「まさか!!」

『この力で旅立って、取り戻すのよ……全てを!!!』

 

 そして、プレシアは全てのジュエルシードの力を

 

 

 

 

 

 解放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次元震です!中規模以上!!」

「振動防御!ディストーション・シールドを展開して!!」

「ジュエルシード、九個発動!!次元震、更に強くなります!!」

「転送可の距離を維持したまま、影響の薄い空域に移動を!!」

「了解!!」

「規模、更に増大!このままでは次元断層が!!」

 

 アースラ内が慌ただしくなっていた中で、一人だけそんな事態に動じない者が一人だけ

 

 

 いた。

 

 

 

 

(フェイトがクローン……か。オレと同じ造られた存在か……)

 

 カリフは介抱されるフェイトを眺めから、モニターへと視線を戻した。

 

 その先には未だに嘲笑い続けるプレシアがいた。

 

 嘲笑い、侮蔑し、憎み、後悔している。

 

 プレシアの自虐にカリフは見ていられずに視線を逸らした。

 

(プレシア……お前はこのまま幕を降ろす気か?……)

 

 カリフは壁にもたれかかっていた体を起こして拳を握った。

 

(それなら……オレにも考えがあるぞ……!)

 

 静かに

 

 

 

 

 

 そして強く

 

 

 

 

 

 

 

 

 拳を握りしめていた。

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