魔法少女リリカルなのは~生まれ墜ちるサイヤ人は悪魔の子~(更新一旦停止) 作:生まれ変わった人
カリフが管理局本部でフェイトたちを一方的にシゴきにシゴいて二日目の昼
カリフは地球へと帰る日が来た。
二日とはいえ、結構ギリギリまで密度の濃い修業を続けていたクロノたちはもはや虫の息となりながらも見送りには来てくれていた。
そこには修業をバックれていたユーノの姿もあった。
「二日か……時間も時間でな、全てを教え切ることができなくて非常に遺憾だと思う。悪いな」
「いや、ほとんど君の憂さ晴らしだったろ?」
クロノのささやかな反撃もカリフには伝わらず、どこまでもマイペースな彼にリンディたちも苦笑する。
「ユーノ、修業をサボったことはいつか追究するとして……ほれ、これらがお前等の課題だ」
「僕は裁判の準備してたんだけど!?」
ユーノの主張も無視してカリフはクロノたちに紙を一枚ずつ渡していく。
「これは?」
「お前等の弱点克服部分、これからに必要なトレーニング方をオレなりに纏めてきた」
「こういうところはマメなんだな……」
クロノがカリフの意外な一面に素直に驚く中でリンディとエイミィが思い出したかのように手を叩いた。
「それってクロノたちが眠った後に書いてた物よね?」
「そういえば訓練風景のビデオを見せて欲しいって……」
「……」
リンディとエイミィの余計な一言にカリフは全員から目を背けるようにそっぽを向く。
それを聞きながら紙の内容を見ると、その紙はクシャクシャで少しだけインクで黒ずんでもいた。
それだけ内容を事細かく書いており、分かりやすくできていた。
「これ……アンタが?」
「これはまた……戦技官としてやっていけるだろ……」
高度な戦いについてのレクチャーがビッシリの紙を見ながらアルフとクロノは感嘆の声を上げる。
「カリフ……ありがとう!!」
「ぐっ……」
フェイトの屈託のない笑顔と素直な感謝にカリフは苦い声を洩らす。
あらゆる意味での好意を向けられることが少なかった彼にとって、こういった顔を自分に向けてくる人物は苦手だ
フェイトは本当に嬉しそうにカリフをじっと見つめ、視線を合わせないカリフにユーノは苦笑する。
「はは……カリフってなのはとフェイトには弱いよね?」
「……一応は母の教育でフェミニスト精神を持って育てられた」
「フェミニストが小山を投げるか? 普通」
アルフの突っ込みにフェイトを除く全員がウンウンと頷く。
と、ここでカリフは思い出したかのようにマリーに視線を向ける。
「ところでマリーだったか? この件については礼を言おう」
「あ、ううん。私としても中々興味があったから別にいいよ」
少し震えはしたが、カリフの誠意の籠った謝礼にマリーも恐れていたカリフに少しは慣れていたようだった。
「腕時計型重力付加装置……初期段階では最高が今のところは100倍にまで設定可能だけどこれからは段々と増やしていけるから」
「今の段階ではどのくらいの負荷を実現できる?」
「ん~と……最高は700倍かな……というか生身で使えないよ」
マリーに注意されながらもカリフはもらった腕時計を付けて設定をいじってみる。
その際、100と数を合わせてスタートのボタンを押した時だった。
「「「「「「!!」」」」」」
突如としてカリフの足場が陥没したことに全員が度肝を抜かれた。
マリーに至ってはまだ操作説明さえもしてないのにいきなり無茶なスタートを切ったことに軽い悲鳴を洩らした。
普通の年端もいかない子供なら10倍の重力で簡単に潰れるはず。
「ぐ…ぐ…ふぅ」
だが、目の前の子どもは少しよろけるも、ゆっくりではあるが、100倍重力の中で立ち上がった。
カリフはリセットと書かれているボタンを押して元に戻す。
そんな彼にはもう驚き疲れたのか何とも言えない表情のクロノたち
「実にいいものだ。次回は最高出力の物を頼む」
「は、はい……」
呆然と立ちすくむマリーはそれ以上の言葉も出せない。
カリフは転送用ポートの上に立ってフェイトたちに向き合う。
「んじゃ、オレはもう行く。縁があればまた稽古をつけてやる」
「うん。その時にはアッと言わせてみせるよ」
「今度は一発殴る!!」
「殊勝な心構えだ。楽しみにしているぞ」
ガッツポーズを送るフェイトとアルフに笑みを見せる。
「クロノ、なんやかんやあって色々あったが、オレはお前の無謀だが、屈しない態度は嫌いじゃない」
「な、なんだいきなり……君らしくない……」
「ユーノ……保留だ」
「僕だけそんな扱い!?」
「エイミィとマリーからもいい物を貰った。大義である」
「あはは……」
「はい……」
「リンディとレティもこの二日はすまんな。訓練場を貸してもらって」
「え、えぇ……」
「…あなたってそんなキャラだっけ?」
らしくなく律儀に礼を述べるカリフにリンディは失礼なことを口走って後悔して口を押さえた。
折角相手が礼を述べているのだ。意外だとしてもそんなことを言うのは大人として失礼ではないか。
そう思っていたところ、カリフは首を傾げて普通に答える。
「言うべきことを言っただけだ。それくらい普通ではないのか?」
何を可笑しな……と首を傾げるカリフにリンディたちの中のカリフの評価が変わった。
(礼を尊び、約束は守る……簡単そうで難しいことよね……)
(性格とやることはアレだけど、本当は真っすぐで純粋な子なのよね……)
少なくとも、カリフはいい意味で特殊な子供だということが分かった。
それだけで大人組みとしては嬉しい限りだった。
それどころか首を傾げて見上げてくるカリフがなんだか小動物にさえ見えてきた。
「次に何か面白そうなことがあれば一時的だが、共同戦線は張ってやろう」
「そうか……そうなってくれるといいがな」
抱きしめたい衝動を抑える大人組みの横ではクロノとカリフの会話が終わり、転送されようとしていた。
魔法陣が光るり、カリフを包む中でフェイトは声を上げた。
「カリフ!」
「?」
フェイトは今まで見せたこともないような無邪気な表情で言った。
「またね!!」
再開の意味を込めて言った別れの言葉にカリフは……
「縁があればな」
曖昧な、しかし、力強く答えてその場から消えた。
光が治まるころには二日間嵐を巻き起こしていた少年はもういない。
「行ったか……」
「だね」
クロノとエイミィの一言にフェイトは寂しさを胸に抱くが、カリフは応えてくれた。
また会おうって……
なら、その時までにはもっと強くなろう。
あの遠い背中に一歩でも近づくために……
「カリフ……私…頑張るから」
「ん? 何か言った?」
「ん、なんでもないよ。アルフ」
母さん…今日も私たちは元気です
街外れの路地裏で何の前触れも無く現れた魔法陣は淡い光を放つ。
そして、光が治まるとそこにはカリフだけが残っていた。
「ふぅ……本当に地図通りに転送してくれたな……」
カリフはその場所に見覚えがあったのか路地に出てそう洩らした。
そのままカリフは迷う素振りも見せずに住宅街の路地をどんどん進み、一軒の家の前へと立ち止まる。
「ここ……だな」
そう呟きながらインターホンを押してしばらく待つ。
そして家のドアから小さな影が出てきた。
「はーい」
車イスに乗ったままドアを開けて可愛らしい声で出迎える少女にカリフはいつもの調子で返した。
「ちわー、三河屋でーす。八神さんちでよろしいでしょうかぁ?」
この時、物語の歯車が一つ組み合った。
そして、もう一つの終わったとされる物語は未だに続いていた。
闇に落ちたとされるその命
一度は道を踏み外し、後になって気付かされた自分の罪
汚れたのならとことんまで汚れ、大切な物を守ろうと奮闘した。
(フェイト……アリシア……ごめんなさい…私は最低な母親だったわ……)
娘を見捨て、傷つけ、彼女の心に後悔が無いとは嘘になる。
だが、フェイトの未来を考えればこのくらいは些細なことだ。
プレシアは傍に感じるアリシアの気配を辿って抱きしめた。
(アリシア……ここでお別れよ……本当はもっといたいけど……)
涙は流さない。今までの罪を思えばそれが当然なのだから
プレシアの意識が、存在が薄れ始めるのを感じた……
(そう簡単に諦めたらダメなんじゃねーかぁ?)
え?
(まだオメエは死んじゃいねえ。この場所もオラが連れて来た所だ)
誰? 目を開けて見渡してもいつもの暗い空間しかない。
だけど声だけは頭に響いてくる。
(色々と気になるだろうけどよ、時間がねえから勝手に聞くぞ)
な、何を……
(オメエ……その子と一緒に帰りたくないんか?)
……なんだ、そんなこと……
(およ? もしかして違うんか? 他に願いとかあんのか?)
こっちの考えていることが分かるのね……いいえ、私だってできたら帰りたい……フェイトに謝りたい……
(そっかそっか! おーい神龍、まずは願いなんだけどよ―――)
でも……それは無理な話
(この人をいき―――っておっとっと……無理? なんで?)
今さら帰っても何も残ってない……今さらフェイトにどんな顔して会えっていうの……それにこの子だけを一人残していけない……
(あー、そのカプセルに入ってる子かー。ずっと眠ってるだけでまだ死んじゃいねえから一緒に戻ればいいと思うけど……)
この子は昔の事故でずっと寝たきりの状態なのよ……なんとか一命は取り留めたけどこの子の脳の一部が麻痺してずっとこんな感じ……植物人間なの
(ヘー……そういうことなんかー)
……ここまで救いようのない女なんてそう滅多には―――
(よし、じゃあ治してやる)
そういな……い?
(ちゅーことは願いはオメエとその子を元の世界へ帰すことと、その子の麻痺を治す。これでいいな?)
えっと……何を言って……
(おー良かったなー! それくらいなら神龍も何とかできるって……!)
話を聞きなさい!
(おわっ! そんなにでけえ声出すなよー。おめえの声はこっちに響くんだから)
今のアリシアは治らないの! ミッドチルダやクラナガンのどの病院に行っても治せないと医者たちが匙を投げてきた!
それをあなたが治せるの!?
(オラは治せねえぞ。オラ医者じゃねえもん)
なら無責任なことは言わないで……そのために私はアルハザードを求めたのに……
(だけど神龍ならなおせっぞ! どんな病気も一発で完治だ)
そんな神みたいな真似できるなら苦労なんて……
(ならやってみるよ! 神龍! まずはあの金髪の子の病気を治してやってくれ!)
―――容易いことだ
何!? 今別の声が……!
それにこのカプセル周りの光……何が起こって……
(それよりもその子を見てみろよ。言われた通り治したぞ)
そ、そんな馬鹿なこと! 最新の医療と魔法を誇る医者たちが治せなかった病気がそう簡単に……!
嘘……脳波が安定して……いえ、脳だけじゃない。バイタルも活発になって……!
なんで!? どんなに治してもこんな……こんなことなんて……!
―――今は突然の脳の覚醒と意識が混同できていないだけだ……すぐに目を覚ます。体は衰弱しているのを忘れるな……
あ、あなた……別の人なの!?
―――我が名は神龍……お前の願いを一先ずは叶えてやった。
神龍……ねえ、まさかここはアルハザードなの!?
―――ここはどこでもない場所……アルハザードなではない。それにアルハザードには使者の蘇生術など存在せぬ……
そんなことまで知ってるなんて……あなた“たち”は一体……
―――それと少しサービスとしてお前の身体に巣食う病も治してやろう
わ、私の病って……なんでそれを!?
またこの光……!
―――願いは叶えてやった。これでお前の病気は消えたはずだ
こ、こんな短時間で……あなた達、本当に何者……?
(よし、じゃあもうお前を元の世界に戻すか。神龍!)
―――承知した
お構いなしか! こっちの話も聞きなさいよ!
(ワリいな。できるだけ神龍に力は使わせたくねえんだ。でないと邪悪龍がまた復活しちまうかんな)
訳のわからないことを……それに私はまだ帰るなんて一言も……それにフェイトのことも……
(そんならカリフにでも相談してくれ。アイツ何だかんだ言って面倒見がいい奴だ。ベジータみてえにひねくれてっけど)
カリフ……あなた何でその名を!?
―――時間切れだ……間もなくお前は強制的に元の世界に帰される
待って! せめて……せめて名前だけでも!
(オラか? オラはな孫悟空だ。カリフに今度会いに行くって言っておいてくれ!)
孫……悟空
(じゃあな! もうその子を……フェイトっちゅう子を離すなよ!)
この瞬間、プレシアの意識は薄れ、代わりに世界は光に満ち溢れた。
暖かく……眩しい光がプレシアを……アリシアを包み込み、後には誰も居なくなってしまった。