魔法少女リリカルなのは~生まれ墜ちるサイヤ人は悪魔の子~(更新一旦停止)   作:生まれ変わった人

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負けて死ね

「娘さんの体には何の異常はありません。ですが筋肉の衰えが目立ちますね」

 

はやての主治医である石田先生は何もはやてだけを診ている訳ではない。

 

目の前の患者……プレシアを前に幾つかカルテを取り出して説明する。

 

「やはりですか……最近まで事故の後遺症で歩けない状態が続いたもので……」

「この時期にお引越しだなんて珍しいですね。色々と不慣れかもしれませんが頑張りましょう。きっとアリシアちゃんも喜ぶと思いますよ」

「そうですね……」

 

プレシアが起きた後のこと、アリシアの意識はすぐに戻り、記憶の破損もどこも無いようだった。

 

『ママ』の一言でプレシアは今まで我慢してきた物を全て流して愛娘を抱きしめた。

 

そして一通り泣いた後、プレシアは念のために作っておいた銀行口座から金を下してアリシアが本当に完治したかを確認しに病院へと向かった。

 

結果……本当にどこにも異常は見られなかった。

 

運動系統も言語系統も何の問題もなく正常だった。

 

それだけでも驚くべきことなのに更にプレシアを驚かせることがあった。

 

「しばらくはアリシアちゃんを入院させてリハビリしましょう。そうすればまた元気に動き回れますよ」

「はい……それとですね。私の診察なんですが……」

「プレシアさんですか?」

「はい……それで病気とかは……」

「病気なんてとんでもない! どこも異常もない健康そのものでした。それどころか他の人よりも内臓の年齢も若かったくらいですよ。何か特別なこととかされてます?」

「い、いや……そんなことは……」

「同じ女性からしても羨ましい限りです」

 

これがプレシア最大の驚愕……不治の病の完治

 

この病気は長年プレシアを苦しめてきた原因不明の難病だったはず。

 

最新の医療と魔法でさえもこの病気の撲滅が叶わなかったのに、この世界での入念な診察の結果は異状なし……病気が綺麗に消えていた。

 

それどころか最初から病気なんて無かったような状態にまで修復までされていた。

 

夢のような幸福が一気に押し寄せてきてまるで実感が無い。

 

あまりに現実離れした事態にプレシアは乾いた笑みしか浮かべることができなかった。

 

そんなプレシアに微笑みかける石田先生

 

そんな時だった。

 

「石田先生おります?」

 

後方のドアから若干訛った声が聞こえた。

 

プレシアは石田先生に吊られて後ろへ振り向いた。

 

そこにはボブカットの女の子を乗せた車いすを赤い三つ編みの目つきが鋭い女の子が押して部屋に入ってくる様子だった。

 

「あ、もしかしてお取込み中でしたか?」

「いえ、私の用はこれで終わろうと……」

 

プレシアは女の子のために荷物をまとめてイソイソと診察部屋から出ようと椅子から立ち上がる。

 

その時だった。

 

「っ……!?」

「な……!?」

 

後から入ってきた少年の姿にプレシアは呼吸を忘れて立ち尽くした。

 

だが、それは少年も同じく小さく唸って驚愕を隠しきれていない様子だ。

 

プレシアも、目の前の男の子もお互いのことをよく知っている。

 

プレシアはそれでも平静を保って再び出口へと向かっていく。

 

「どうも、お手数おかけ致しました」

「いえ、これが私の仕事ですから」

 

互いに挨拶を交わし……少年とすれ違う瞬間に声が聞こえた。

 

「どういうことか説明してもらうぞ。プレシア」

「そう来ると思っていたわ……カリフ」

 

互いに二度と会わないはずだった二人が予期せぬ邂逅を得る。

 

この出会い、吉と出るか……凶と出るか……

 

 

病院の屋上

 

カリフとプレシア、そしてヴォルケンリッターの面々が集まっていた。

 

カリフはプレシアから事の詳細を聞こうと屋上へ呼び出した。

 

ヴォルケンリッターの面々はヴィータがプレシアから魔力を感じて警戒し、シグナムたちを呼び出した。

 

現在はやては診察中だからしばらくは二人にしても問題はないと判断した。

 

最初のころは管理局の魔導士と誤解されたのだが、カリフから待ったの声があったのでそのまま事の成り行きを見守ることにした。

 

「さて、じゃあ聞かせてもらおうか」

「そうね……到底信じてもらえはしなさそうな話だけど」

「あったことをそのまま話せ。今さら何が起こっても不思議は無いしな……ていうか虚数空間に落ちなかったか?」

「落ちたんだけど……気付いたら別の場所に飛ばされてたらしいのよ」

 

何だか自信なさげな返答にカリフたちは表情を顰める。

 

「大分頼りない返事だな」

「だから信じてもらえないって……というか私も未だに半信半疑なんだから……」

「まあ嘘は吐いてなさそうだ……その話が本当なら行けたのか? アルハザードに」

「アル……!? ごめんなさい……」

 

あり得ない単語にシャマルは驚愕はしたもののカリフの視線で黙らされた。

 

そして話は続く。

 

「で、もしやと思って気を探ったんだが……」

「アリシアも昏睡状態から回復したわ。私の病気も……」

 

聞けば聞くたびに頭を抱えたくなる。

 

何が起こっても驚かない自信があったのだが、何だかもうそろそろ頭の整理を付けないといけなくなってきた。

 

でも、考えられる可能性はあった。

 

あり得ないことを何でも可能にしてしまう規格外な存在を……

 

「続けて」

「目を開けても何もない空間の中に取り残されたと思っていたら声が聞こえたの」

「声? 誰の?」

「確かお互いを『孫悟空』と『神龍』と呼んでいたわね」

「ぶほっ!」

 

やっぱりというか、何でこうも自分に試練を与えるのが好きなのか……

 

「カリフ?」

「いや……何かもう分かった。やっぱりあいつ等だったか……」

「やっぱり知ってるのね。伝言をあなたに残して私とアリシアをこの世界に帰したのよ」

「伝言?」

「今度そっちに行くって……えっと、本当に大丈夫? あなたのそんな顔初めて見たわよ」

 

カリフは自分でもどんな顔になっているのかもう分からない。

 

自分に面倒を押し付けているのを怒るべきか、目的がなんなのか困惑すべきか……知っている奴が相変わらずで気が抜けたというか……

 

「き、気のせいだ。まあ気にするな」

「そ、そう?」

「まあそうだな……お前は今後どうする? 管理局に見つかったら不味いだろ?」

 

話をすり替えてプレシアに聞くとプレシアも考えさせられてしまう。

 

なにせ、行くあてなど無いのだから。

 

「そうね……このままアリシアを置いていく訳にもいかないし……」

 

悩むプレシアをしばらく眺めていると、カリフは頭上に電球を光らせてシグナムたちに向き直る。

 

「オレからの提案だがよぉ、この未亡人を共犯者にしようかと思ってんだけどどうよ?」

「「「「はぁ!?」」」」

「共犯?」

 

突然振られた提案にシグナムたちは驚愕する。

 

まさか相談もされずに共犯者を見つけた、などと言えば誰もが驚く。

 

「いやいやいや! 急に何を言い出すんだ! この者を蒐集に協力させるのか!?」

「まあそうなるな……とは言ってもあまり戦闘には参加できなさそうだけどな」

「そういうことじゃない! 急に信用ならない者を引き入れるなどできないと言ってる! もしかしたら管理局のスパイかもしれないんだぞ!」

 

珍しくシグナムが怒るが、カリフは我関せずに続ける。

 

「こいつは魔法関連の知識が豊富だからな。何かあれば色々と戦力にはなる。それに最近ははやてを一人にしている期間が長いだろう?」

「それはそうだけど……」

「はやての身辺を調査している奴らもいるかもしれん。こいつは仮にも管理局から長い間逃げていた奴だからそういうことには長けているだろう?」

「え、えぇ」

 

カリフの振りに戸惑いながら肯定するプレシア

 

説得によってシグナムたちもプレシアの必要性は理解できたものの、本当に信用できるか決めかねている。

 

それを感じてカリフは毅然と言い放った。

 

「こいつの性格や素性についてはオレが保証する。何かあったらオレが全て責任を負う。だから今はプレシアの力も必要なのだ」

 

カリフはプレシアの技量を高く評価しているが故にプレシアの協力を求める。

 

魔法など未だ素人同然の自分よりかは役に立つのだと分かってほしいのだから。

 

返事を待っていると、さっきまで頭を抱えていたシグナムが溜息を吐いた。

 

「……お前ほどの男がしそこまで言うのだ……信用してもいいのだな?」

「シグナム!?」

 

シャマルが驚愕するも、シグナムも心苦しそうな表情で答える。

 

「私たちは圧倒的に人が不足しているのだ……今はカリフが管理局の動きを教えてくれているから疲労は最小限で済んでいるが、それでも未だ厳しいのが現状だ……正直、味方が増えるのはありがたい」

「でも、そんな簡単に信用しちまってもいいのかよ?」

「そこでプレシア女史と言ったか……あなたの身柄はカリフに預けてしばらくは監視、そこから人となりを見極めたいのだがよろしいだろうか?」

 

ここまでの会話を聞けば、とても重要で、法に触れるようなことをしているということは理解できる。

 

だが、目の前の人物はそんな悪人には見えない。

 

何より、カリフは下種な目的のために力を貸すような子ではない。

 

どの道、追われている自分にとっては渡りに船といった話だ。

 

「カリフ、後であなたたちの目的を教えてもらうわ。もしくだらない理由で何かしようものなら……」

「出ていくなりなんなり好きにしな。どうせ管理局には行けないお前を放置してもそれほど問題じゃない。他に質問は?」

「……良いわ。あなたがそこまで言うのだから胸糞悪い理由で動いている訳じゃなさそうね」

「では……」

「あなたの条件を飲みましょう。色々と教えてくれたらの話だけど」

 

そう言うと分かってたようにカリフが笑うと、そこから説明が始まった。

 

はやて、守護騎士、闇の書のことなど……

 

そして、話を聞いたプレシアはアリシアと同い年のはやてに感情が移入してしまい、予想通り協力を申し出たのは言うまでもなかった。

 

 

プレシアとの話の後、シグナムたちは再び管理局と一線を交えていた。

 

結界に閉じ込められて外部からは連絡が取れない

 

一方、カリフは外から結界を注意深く監視していた。

 

だが、思考は他のことを考えていた。

 

(カカロット……お前はオレにどうしろと……)

 

昔から理解不能な師匠に対して物思っていると、そこへカリフのペンダントに通信が入る。

 

『カリフ聞こえる? ユーノだよ』

「ユーノ……このタイミングで連絡してきたってことは……」

『うん、僕も今ここにいる』

 

思考を瞬時に切り替えて通信を返す。

 

『ここに来ている確認だったんだけど、やっぱり……』

「いらん心配はいい。それよりもお前の研究結果はどうだ?」

『うん。大分資料が見つかってきたから正体も分かりかけてきた。あともう少し時間をくれれば大丈夫』

「……そうか……それと、最初に言ったことは覚えているな?」

『……覚えてるけど……』

 

通信機の先の声が落ちこむような感じだった。

 

それに対してカリフは溜息を吐く。

 

「なら今後も忘れるな……いずれバレる時が必ず来る。お前が黙っていようともオレは嘘をつけないからな」

『……それなら僕も同罪だ。闇の書の主……八神はやてのこともつきとめているのに君にだけ罪を被せるなんて……』

「固く考えすぎだ……お前はオレに脅されているだけだからな。お前だけは何としてもバレるな。たとえオレがどうなってもな」

 

淡々と告げる確固たる決意にユーノは通信機を通しても分かるほどに歯を噛みしめていた。

 

(こいつもこいつでひょっろちいけどいっぱしの男だな……)

 

無理を言っているのは分かるが、今は通してもらう。

 

カリフはユーノを少しだけ見直していた時だった。

 

(……そんでもって、こいつらも来たか……あのクソ猫どもが……)

 

その瞬間、新たな気が今まさに戦いが繰り広げられている結界の傍にまで近付いてきたのを感じた。

 

「ユーノ、ここまでだ」

『どうしたんだい?』

「いや、少し……な」

『そう? 気を付けて』

「てめえももしバレたら首を落とすからな」

『あはは……努力するよ……』

 

苦笑しながら肝に銘じているユーノとの通信を切り、カリフはその場から消えたのだった。

 

 

その頃、シャマルは困惑していた。

 

先程まで執務官と名乗る少年にデバイスを突きつけられ、カリフと別れたことを少し後悔した。

 

闇の書を持っていたので、言い逃れもできない状況だったが、ここで以外な助けが入った。

 

「闇の書の力を使え……早くしないと仲間がやられるぞ」

 

目の前の仮面の男が急に現れ、執務官を蹴り飛ばしてくれた。

 

そして、こうして自分に結界を破るアドバイスを送っている。

 

しかし……

 

「あなたは一体……何者ですか?」

 

急に現れて闇の書を完成させろなどと一般では考えられないことを言い、素顔も見せない。

 

そんな人物にシャマルも素直に従えずに困惑していた。

 

「そんなことを気にしている場合か? 早くせねば仲間の騎士たちがやられるぞ」

「う……」

 

だが、男は名乗らずに催促だけする。

 

そして、それがこの状況の中で適切だということも分かる。

 

結界内で戦っている仲間の救出か、男との対立か……どう行動すべきか悩んでいたときだった。

 

「そんなに壊してえならよぉ……手伝ってやるぜぇ……」

「む!?」

「カ、カリフくん!?」

 

突然、シャマルの背後から伸びてきた手が男の仮面を鷲掴んだ。

 

その正体にいち早く気付いたシャマルに瞬間移動で来たカリフが言った。

 

「今からこのバリアーをぶっ壊す。巻き込まれたくなければすぐに撤退しろとシグナムに伝えろ」

「で、できるの!? あの強固な結界を!」

「できるかどうかじゃない! 『やる』んだ!」

 

そう言うと、掴んだ手で男を持ち上げる。

 

「な、何を……!!」

「そんなに壊してえならよぉ……てめえがやれぇ!!」

「うあ!」

 

そして、その男をダイレクトに『投げた』

 

男はまるでミサイルの如く、結界に勢い良くぶつかり、苦悶の声を上げた。

 

「ぐあ……!」

 

背中を叩きつけられた男は結界にめり込むように貼り付けられ、カリフはそこに気弾を撃ち込んだ。

 

「これで……くたばれ!」

 

手を握った瞬間、男の傍に近寄っていた気弾が光を放ち……

 

「BITE THE DUST(負けて死ね)」

 

辺りを爆風と衝撃波で埋め尽くした。

 

規模は小さいとはいえ、とんでもない威力だったらしく結界に穴が空いた。

 

そして、固い物ほど壊れたときは脆く、結界の穴から生まれた罅が次第に広がっていく。

 

そして、そこから積み木崩しのように結界が崩壊していった。

 

「やった! シグナムたちも脱出完了! 私たちも行きましょう!」

「よし、じゃあオレはさっきの親子を拾ってから帰る。鍋は適温にまで温めておけよ? 肉と野菜はキッチリ入れておけよ?」

 

相変わらずのマイペースさにシャマルも苦笑を浮かべながらいつも通りのカリフに安心する。

 

これなら普通に切り抜けるだろう。

 

ここで、シャマルはカリフを信用して先に飛びたったのだった。

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