魔法少女リリカルなのは~生まれ墜ちるサイヤ人は悪魔の子~(更新一旦停止) 作:生まれ変わった人
突然だった。
本当に突然のことで頭の中で理解が追いついていなかった。
ただ脳裏に浮かんだのは本能的な恐怖と得体のしれない力への絶望だった。
「あぁ……」
「カ、カリフ……」
急に消えてしまった少年にフェイトたちが動揺している所でジャネンバは無言で片手を前にかざして横に動かす。
「……」
その手を追う様に後からキラキラと光る線が出来上がった。
『『『!!』』』
それを見ていた面子の中で戦慄を覚えたのは騎士たちとリーゼ姉妹、そしてクロノ
この中でも多く戦闘に携わる者の培われた勘が感じ取った悪寒
「逃げっ……!」
皆を逃がそうとしたのだが、既に遅かった。
横一直線の光は強くなり、自分たちに目がけて飛んできた。
ビルの床を削り、猛スピードで突っ込んでくるエネルギーに魔法も回避も間に合わない。
呆然と立ち尽くすなのはたちにエネルギーが襲いかかろうとしたときだった。
「スプーンとフォークの……」
突如としてなのはたちに見覚えがある巨大なスプーンとフォークの幻視(ヴィジョン)が現れて奇妙な形へと変わる。
「ツインシールド!」
そして、スプーンとフォークはなのはたちを包み、エネルギー波から身を守った。
なのはたち全員はスプーンとフォークのドームに包まれたことに驚愕する。
「な、なによこれ……」
「スプーンに……フォーク?」
アリサやすずかたちにも伝わるくらいの表現力を伴ったイメージを持つ食器に二人は驚かされていた。
「この技……さては……」
「おせーよ……バカ共」
クロノの推測に答えるかのように声の主が悪態を吐く。
自分たちの後ろにいるということが分かって皆は振り返る。
「カリフ! よかった……」
「それより大丈……!?」
フェイトとなのはが心配してカリフを見た時……二人は言葉を失った。
いや、二人だけでなくその場の全員が言葉を失っていた。
「カリフ……お前その傷……」
驚愕するシグナムの視線の先には頭から血を大量に垂れ流し、腕は抉られたカリフがいた。
今までに見たことも無いダメージを負ったカリフに全員が衝撃を受けていた。
「あ……血が……」
「怪我しとるんか!? 大丈夫!?」
「カリフくん……」
「な、何がどうなってるのよ……」
「アリサちゃん……」
特に血に耐性の無いフェイト、はやて、なのは、アリサは衝撃を隠しきれず、すずかはアリサに血を見せないように胸に抱く。
カリフもいつの間にかいつもの黒髪の状態に戻っている。
「やりやがった……あの野郎、最初の一撃でオレの首をへし折ろうとしたのかと思ってたんだがよぉ……とんでもねえ。オレの首だけを“引きちぎろう”としやがった」
首を抑えながら憎々しげに話すカリフにシャマルが慌ててクラールヴィントを伸ばす。
「すぐに治療を始めます!」
「頼む……それに怪我も増えたからな」
そう言うや否やカリフの両手が血を拭き出して裂けた。
この突然のことに一同も体を震わせる。
「その傷……」
「やっぱこの姿での防御はあまり意味が無かったな……」
そう言いながらスプーンとフォークのシールドを見ると、そのシールドが無残にボロボロにされていた。
一つだけでも隕石くらいは防げるスプーンやフォークが二つ合わさっても完全に防御できることができなかった。
それほどまでに相手の攻撃が強力だったということだ。
「お前等はこのビルの床突き破ってどっか見えないとこにでも隠れてろ。オレは少しの間に応戦してみる」
「奴とやり合う気か!?」
ザフィーラと同様に周りの面子が目を見開く。
「そんな……無理だよ! アンタあいつにボロボロにされてんじゃないか!」
「恥を忍んで言うが、最初のはオレの油断で起こったことだ。それならスーパーサイヤ人3にさえなれば食い下がってやるよ」
「スーパーサイヤ人……まさかあの金髪の姿か!?」
クロノの言葉に無言で頷いた後、ジャネンバがいるであろう方向に向かってエネルギーを溜める。
「無茶だよ! カリフ一人でなんて!」
「私たちも……!」
「一人より大人数の方がええ!」
「あ”ぁ?」
フェイト、なのは、はやてがデバイスを構えると、カリフは憤怒の表情でなのはたちに向き直る。
「碌にオレとも善戦できねえ、戦闘経験もねえガキ共が偉そうにホザくんじゃねえぞ! てめえ等が出た所で瞬殺が関の山ってことくらい分かんねえのか!?」
「で、でも……」
「お前等と議論してるヒマはねえ! シグナム! こいつ等連れて去れ!!」
「あ、あぁ!」
シグナムを始め、戦闘経験のある守護騎士、クロノたちいはなのはやアリサたちを確保して空へと飛ぼうとする。
「クロノくん!?」
「シグナム! 待って! カリフくんが!」
「母さん!」
三人は抗議するが、三人は険しい表情で告げる。
「言いたくないけど、今回はカリフの言う通りだ。僕たちがいては足手纏いになる」
「そんな……」
クロノと同意見なのかシグナムも無言で肯定するだけだった。
二人の言葉になのはたちは押し黙り、不本意ながら従うことに決める。
それを確認したカリフは再び構える。
「いいか? オレが合図したら前だけ見てこの場から離れろ。スーパーサイヤ人3になるときの余波にも耐えられんだろうお前等は」
全員が固唾を飲み、飛行魔法のスタンバイを始める。
「……カリフ」
フェイトはカリフの抉られ、負傷した腕を見て不安になる。
シャマルの治療で包帯程度の応急処置で済んだものの見ていて痛々しい。
「あのね……カリフに言いたいことが……」
「後にしろ。今はそんな余裕はない」
こんな時にも何もできない自分が恨めしくなる。
だが、確かに今はそんな場合じゃない。
フェイトは気持ちを切り替えてすぐに逃げられるように構える。
「3……」
皆の額から汗が滴る。
「2……」
呼吸も息苦しい。
「1……」
でも……
「はぁっ!」
もうやるしかない
カリフはスプーンとフォークのシールドを中から砕き、一気にスーパーサイヤ人3になる。
なのはたちは脇目もくれずにその場から離脱する。
「ヌヌ?」
ジャネンバはカリフに気付いて臨戦態勢に入るジャネンバと激突する寸前、カリフは瞬間移動で瞬時に後ろに回り込む。
だが、ジャネンバは慌てることなく片手でカリフの回し蹴りを受け止める。
「ドラァ!」
「ヌギ!?」
だが、受け止められた蹴りを引っ込めるどころか強引に力を入れてジャネンバの顔面に腕ごと叩きこむ。
顔から吹っ飛ばされたジャネンバは後転しながら吹っ飛ばされ、すぐに制止する。
カリフを見据えると既に目の前にはエネルギー弾が飛んできていた。
「ヒッヒ……」
ジャネンバは笑みを浮かべながら自身に向かってくるエネルギー弾を目の前に出現させたワープゾーンに吸収させる。
歪んだ空間はエネルギー弾と共に消え、カリフの後方に再び現れる。
「ちっ!!」
空間の歪みから自分の放ったエネルギー弾が弾き出され、反射的に上半身を逸らす。
間一髪、目先から来た弾丸のようなエネルギーを神がかった反射神経で避ける。
だが、そうしている間にジャネンバは自分の体を分解、その場から消えた。
(気が……消えた!? いや違う! 細かくなっただけで奴の気はまだ存在……!)
一瞬でも考えたのが悪かった。
「!?」
突如、何かの粒子みたいなのがカリフの背後に集まり、体を形成していく。
そこからジャネンバが現れるのは一秒もかからず、奴の手にはエネルギー弾が握られていた。
「このやろ……!」
「ケケー!」
カリフの苦し紛れのパンチすらも飲みこむかのようにエネルギー弾と拳がぶつかり合い、大爆発を起こした。
海鳴の海に花火が散った。
「カリフ!!」
フェイトたちはジャネンバたちの視界に入らないくらいに遠く離れた場所にいた。
戦いはアースラのコンピューターを通し、クラールヴィントが映す映像で見ていた。
輪を描き、その輪の中の映像は信じ難い攻防戦を映していた。
『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!』
『ケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケ!』
踊る肉弾戦は苛烈を極め、互いに攻撃と防御を繰り返すこと数十回
一秒間に百の拳と蹴りが繰り出され、それを読み、防ぎ、かわす。
その攻撃が続く度に鳴り響く打撃音と衝撃波からその一発一発の威力も尋常ならざるものだと考えられる。
達人級をはるかに超越した超人級の戦い
「くそ! あたしらは見てることしかできねえのかよ!」
「ヴィータ……」
歯噛みして仲間一人の加勢すらできず、それどころか安全な場所に隠れてカリフだけを死地に追い込んだ。
自分たちの行動をそう捉えたヴィータは地面に拳を叩きつけて己の無力さを恨む。
そんな光景に皆も歯痒そうに歯を噛みしめる。
「お願い……守ってください」
そんな中でアリシアは姿さえも見たことも無い神に両手を組んで祈りを捧げる。
彼女たちは知らない。
これはとうの昔に神を越えた者たちが起こす戦いだということ
もう神の手に余る事態だということを……彼女は知らなかった。
「気円斬!!」
「ムム!?」
海上での戦闘はより一層苛烈を極める。
気の円盤を両手に止めながらジャネンバへと突貫する。
気円斬に危機感を抱いたジャネンバは今までのように素直に受けることはせずに自らの体を大袈裟に避ける。
だが、今度はカリフがその先を読んでいた。
「そんな態勢で次があるとでも!?」
「ハッ!?」
カリフは“闘争”というものを網羅している。
ジャネンバのような予知能力に対し、カリフには長年培ってきた“経験”というものがある。
例えば“どんな攻撃をどこに撃ち込めばどういう動きを見せるか”とか……
複雑な相手の動きを戦い方の中からパターン、身のこなし、一挙一動の動きと相手の威圧から相手の癖を見抜いて想像する。
経験と野性を超越した勘からジャネンバの動けない態勢を算出し、実現させた。
そのまま体を捻って後ろ回し蹴りをジャネンバの背中に叩きこむ。
「グギャア!」
「せいやあぁぁぁぁぁぁぁ!」
気合の掛け声と共にジャネンバにめり込ませた踵の一点に気を込め、一気に振り抜く!!
勢いに負けてジャネンバの体は勢い良く吹っ飛ぶ。
だが、カリフもこれで終わらせる訳が無い。
瞬間移動で瞬時にジャネンバの向かってくる所へ先回りする。
「!!」
「つっかま~え……たっ!」
キャッチし、皮肉ると同時にジャネンバの頭を足で挟んで体をバク転させる。
捕まったジャネンバもカリフと一緒にバク転させられるも、ジャネンバは首を掴まれている。
「オブゥ……!」
首から何かが砕ける音が聞こえてもカリフは止まる所か勢いを瞬間的に上げて海の中へとジャネンバを投げつける。
成すすべなく投げられたジャネンバは海へ叩きつけられる。
落下地点を中心にビルに相当する水柱と津波が発生してもカリフは怒涛を上げる。
「死にやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
そこからは一心不乱に連続エネルギー弾を海に投げつける。
着弾したエネルギー弾は海底で爆発し、眩い光が海から飛び出した。
津波も光に飲みこまれ、爆発して無力化する。
災害を越えた災害が海上を埋め尽くすが、その発端となるカリフは手を休めない。
「でやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
相手が相手なりに油断はしない。
むしろやり過ぎるくらいでないと対抗し得ない。
「オラァァァァァ!」
既に弾数は100に飽き足らず1000まで突破しようとしていた。
「これで……どうだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
遂に弾幕の嵐を止め、カリフは両手に特大のエネルギー弾を形成する。
二つは見た目から生易しい物ではないと分かる。
サイズは普段のドッジボールのような物ではなく、さながら一つの建造物くらい
両手から離れ、互いに離れた場所へ移動させて小規模の疑似太陽を創り出す。
「即・滅・殺!」
全力で振りかぶり、二つの太陽を海に投げる。
太陽は巧みな動きで飛びまわり、対象的に海の中を奔走して互いにぶつかり合う。
太陽の衝突部には小さな人影が挟まれ、堪える。
「ギ……ヌギギ……」
両手でそれぞれ二つの太陽を抑え、拮抗している。
ここでカリフは指を鳴らした。
「テラフォーミング!!」
パチンと気持ちのいい音が鳴り響いた瞬間に二つの太陽から光が漏れ、大爆発を起こす。
海の中から膨大なエネルギー波が膨張し、爆発を起こす。
「はああぁぁぁぁぁぁぁ!! 負けて死ねっ!!」
ドーム状の光が辺りを照らす中、カリフは駄目押しで更なる追撃を図ろうと気を溜める。
再びその手を振り降ろそうとした時……
「ケケケケケケーーー!!」
「なに!?」
突如としてカリフの背後に粒子が集まってジャネンバが現れた。
カリフの『テラフォーミング』を受けてもなお健在
力押しで攻めてきた。
「調子に……」
カリフもそんなことを気にする暇も無く溜めていた気を……
「のってんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
反射神経の成せる技だけあって問題なくジャネンバの元へ気は向かっていく。
だが、ジャネンバは口元を緩めた。
「!?」
その瞬間、気は例のワープホールへと吸い込まれて消える。
やがて空間の歪みはカリフの懐に現れる。
「くっそ!!」
やがて来る自分の攻撃を再び気弾で相殺しようと手を歪みに向けた時だった。
「クケケ……」
「なに!?」
ジャネンバの体がカリフの首を軽く閉めた状態で現れた。
気を溜めていた腕も防がれた状態でジャネンバは開いた手にエネルギーを溜める。
カリフは何も考えることなく動ける右手だけが動いた。
片手だけで反撃ができないこと、これからやってくる二つのエネルギーに対して最善手を無意識に実行していた。
ジャネンバ、空間を越えた自分のエネルギーが体に叩きこまれる瞬間、カリフは右手でスプーンのヴィジョンを作った。
その瞬間、海上で再びエネルギーの大爆発が起こった。
「ぐはっ!」
爆発の中から体の焼け焦げたカリフと防御として二つのエネルギーを受け止めたボロボロのスプーンのヴィジョンが海へ落ちていく。
「ぐ、ご、がはッ!」
しばらくは海の上をバウンドし、勢いが弱まった所で海の中に沈む。
「……」
ジャネンバはその光景を見届け、海から出て来ないことを十秒見届けた所で視線を外す。
―――先程までいた人間は逃げた
―――見つからないなら探せばいい……それにしてもさっきの人間……
―――美味かった
ジャネンバは舌を舐めずりながら歪んだ愉悦の表情を浮かべた。
怪物は初めて“食欲”と“美味”を覚えた……
◆
「エイミィ、何か手はないのか?」
『だめ、こっちの機能は防衛プログラムに壊されて……そっちの結界を維持するだけで精一杯……』
「手立て無し……か」
現在、クロノたちは結界内の物影に潜んでいた。
魔法でのサーチャーもリスクが大きすぎるとのことで使っていない。
さっきから聞こえてくる爆発音が皆の不安を掻き立てる。
「あの……やっぱり私……」
「だめだよなのは。それだけは」
ユーノがなのはの手を掴んで留めるが、なのははやるせない表情でユーノを見据える。
「でも! こんな所で見てるだけなんて……!」
「さっきの爆発見たでしょ? あんな戦いの中に入っても僕たちは……何もできない」
「ユーノくん……」
ユーノの手が震えているのがなのはの腕から分かる。
何もできない悔しさは皆同じである。
そのことを悟ったなのはは再び大人しくなる。
「多分、アースラの転移はすぐに回復するわ。その間に彼が耐えてくれればあるいは……」
「……なんですかそれ? カリフを放っておくんですか!?」
「アリサ……ちゃん?」
リンディの問いに今まで黙っていたアリサが口を開く。
アリサの必死の形相にすずかは呆気に取られる。
「あなたの所からなんで他の人たちを呼ばなかったんですか!? なのはやフェイトやはやてたちが戦っていた時! 大人の人を送れたはずじゃないんですか!?」
「ア、アリサ……これは私たちが自分で……!」
「フェイトもフェイトよ!! 私たちに黙ってこんな危ないことしてたの!?」
「アリサちゃん、今はそんな場合じゃあ……!」
アリサの剣幕にはやてが宥めようとした時だった。
「静かにして物影に隠れて!!」
シャマルが尋常じゃない雰囲気で叫ぶと、一同は身を硬直させる。
緊迫した状況だったのが幸なのか不幸か、咄嗟に指示に従うことができた。
近くの岩影へ滑り込んでその場にうずくまる。
ヴォルケンズはアリサたちを抱えて隠れて辺りの様子を窺う。
(シャマル? どうしたん?)
(……あまりその場から動かずにあそこを見てください)
念話を聞き、シャマルの視線をその場の全員が追う。
そこに見えたのは……
(そ、そんな!!)
(なんで、あいつがこんな所に!?)
そこには上空を飛んで移動する移動する異形の生物……ジャネンバが悠々と飛んでいた。
奴はカリフが足止めしていたはず……それがここにいる誰もが最悪のケースへと考え至る根拠となった。
(ウソ……だろ……あのカリフが……)
(待てアルフ……それはまだ早計過ぎる。もう少し様子を見よう)
クロノが宥める間もアリサたちには何も聞こえていない。
アリサもすずかも目に見えて疲労している。
「何がどうなってるのよ……もう訳分かんない……」
「……」
「楽しいクリスマスは?……夢なら覚めてよぉ……」
さっきまでの威勢もすっかり失せ、泣き言まで吐くまでに二人は弱っていた。
しばらく注意深く見ているとジャネンバは急に止まって辺りを見渡す。
その後目を閉じてその場に止まる姿になのはたちは疑問を覚える。
(なんだ? 何を……)
相手の意図が分からない……慎重に事を進めようとしたときだった。
『え? 何これ……なんであのバケモノからこんな……』
「どうした?」
インカムから聞こえてくるエイミィの驚愕にクロノは怪訝に思って小声で問いかける。
『あのバケモノに……魔力が集まってるんだよ! いや違う! 周りの魔力を吸収させられてる!』
「なんだと!?」
『『『!?』』』
クロノの他の魔法関係者はインカムからの答えに絶句する。
だが、なのはとはやてのように魔法少女になりたての二人には話が分からない。
「ユーノくん、吸収って?」
「……今、この場はなのはたちの世界に影響を出さないための時間軸を送らせた魔力シェルターだよ? あいつはその魔力を吸ってるんだ」
「え? でもこないなところで魔法を消されたら……」
はやての質問を遮ってクロノは必死の形相で躍り出て叫んだ。
「止めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「クアアアアアアアアァァァァァァァァ!!」
クロノの叫びはジャネンバに届くこと無く……
ジャネンバの体を中心に光が発せられ……
海鳴市を丸ごと包みこんだ。
◆
結界の外の海鳴市
街灯はいつもよりも輝き、多彩な色で埋め尽くされている。
街に広がるクリスマスソングとチャリティーで集まった人たちの奏でる聖歌
プレゼントを抱えて笑う親子、レストランでは少しの贅沢としてシャンパンを開けるカップルにケーキやプレゼントを売るサンタの催し
雪も降って今年のクリスマスは最高のムードに仕上がっていた。
だが、
「うわ!」
「きゃあ!」
そんな幸せな時間に海鳴の街を地震が襲った。
外にいる人たちはその場でよろけ、建物にいる人たちは各々に物影の下に隠れれる。
しばらく揺れが続いたが、やがて治まる。
街の人たちはホッと一息安堵して再び楽しい時間を過ごす。
地震なんてもはや日常茶飯事であるための収束だった。
「あれ? なんかあっち騒がしくね?」
「う~ん、なにかあったのかな?」
「きっと地面が割れたってとこか?」
「かもね」
楽しげに笑い合うカップルの話は街の賑わいに消される。
だが、まだ彼等は知らないのは無理が無い。
今から数分後に……この街で起こることを……
全世界に衝撃を与えることを……
楽しい夢の聖夜が消えたことに……
気付くことはできなかった。
「ね~、あれもコスプレ?」
「さぁ……でも結構リアルじゃね?」
「うっわ~……場違い過ぎんだろ」
「や~! こっち向いてー!」
地震の後の賑わっている所では人々は円を描くように散らばって興味深く観察したり、携帯で写真を撮る人たちが集まっている。
そして、囲まれている中心には角を生やした異形の存在……
「……ヒッ!」
ジャネンバが民衆に興奮の笑みを送った。