魔法少女リリカルなのは~生まれ墜ちるサイヤ人は悪魔の子~(更新一旦停止)   作:生まれ変わった人

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長い間ほったらかしにしてしまって申し訳ございません。

またこれからこっちの執筆も頑張っていくので見捨てないでください。

それでは新年初の作品をどうぞ!


最厄のクリスマス

「だぁ……くっそ……」

 

海鳴市海上

 

海の上で波に揺られながら浮かぶ子供・カリフがいた。

 

身体には火傷と数多の擦り傷、打撲痕が残って痛々しい。

 

口元に流れていた血を勢いよく吹きだして吐き出す。

 

だが、カリフには痛みに伴う苦痛とも打ち負けた屈辱とも違う感情が頭の中を支配していた。

 

「戦いながら成長するバケモノか……くく……」

 

絶体絶命のピンチ

 

そんな状況にも関わらずカリフの口元は笑っていた。

 

人生最高の瞬間

 

今のカリフはまさに“今日”と言う日をこんなにも素晴らしく感じたことがないほどに……

 

「これが……恋ってやつか……」

 

全然洒落てないと思いながらもその場から舞空術で身を起こして気を探る。

 

「サンタのプレゼントにしては中々に気が利いている……と言いたいとこだがなぁ……」

 

カリフは少し残念そうにしながら頭を掻きむしって言った。

 

「ちょっとおイタが過ぎるようだな……」

 

 

 

 

同時刻、海鳴市

 

クリスマスでの聖なる夜を祝う一年に一度の一時を過ごしている……はずだった。

 

だが、とある広場には辺りに鮮血が散って、人が出血を倒れている。

 

「両手を頭の後ろに組んで床に伏せろ! 繰り返す! 両手を頭の後ろに組んで床に伏せろ!」

「……」

 

ジャネンバは銃を構えた警官に囲まれ、無表情でキョロキョロと見回している。既にジャネンバから離れるように周りの市民も避難を始めて遠目で緊張の面持ちで見つめていた。

 

そして、警官たちも銃を構えているというのに未だに緊張が解けない。

 

「反応が無いが、言葉は通じているのか?」

「分からない……そもそも人間なのか? コスプレの変人ならまだいいんだが……」

 

ジャネンバの無差別襲撃事件では幸いにも死者は出ておらず、重傷者くらいだ。

 

だが、目の前の存在が何を考えているのかが全く分からない。そもそも正体が不明である。

 

そんな不確定要素を抱えた正体不明の生命体が急にこっちに向かってきた。

 

「!? 動くな! 止まらんと撃つぞ!」

 

誰かが警告するが、悲しきかな。彼等は事実上、銃は撃てない。

 

この法治国家である日本での発砲は警官であっても許可が出るまで撃つことは禁じられている。なにより、興味本位の一般市民が集まってくるこんな状況での発砲で一般人に当たる可能性も大きい。なにより怪我して倒れている一般人からジャネンバを離すことが最大の目的なのだから。

 

そんな状況を理解しているかのようにジャネンバは動きを止めない。

 

二、三メートルにまで近付いたときだった。ジャネンバは腕を軽く振った。

 

「?」

 

行動の真意が分からない警官たちは首を傾げていた時だった。突如、彼らの胸から横一直線に鮮血が舞った。

 

「うわぁ!」

「ひぃ!」

 

斬られずに済んだ警官や一般市民は声を出すことなく倒れていく警官を見て悲鳴を上げる。

 

普段の生活では決してお目にかかれない出血を目の当たりにしてその場にいる全員は理解した。

 

―――これはヤラセでもイベントでもない。本当の事件なんだと……

 

「なんだよあれ!」

「やべえって、やべえよ!」

「ねえ、もう逃げようよ!」

「皆さん落ち着いてください! この場からゆっくりと離れてください!」

 

次第にパニックが広がる広場

 

「ヌヌ……」

 

その真ん中でジャネンバはまるで何かを探しているかのように辺りを見回していた。

 

 

 

 

海鳴市内のあるビルの屋上ではなのはたちが集まっていた。

 

下で起こっている惨劇を目にして顔を蒼白させている。

 

「ひどい……」

「助けなきゃ!」

 

フェイトがいの一番にジャネンバの元へ向かおうとするもそれをクロノがそれを制す。それに対してフェイトが憤慨する。

 

「クロノ!? そこをどいて!」

「それはできない。君はむざむざ命を捨てに行こうとしているのを黙って見ていることはできない」

「でも、早くしないと街の人たちが危険だよ!」

「だが、魔力を奪われた君が行った所で何ができる!?」

「!?」

 

クロノの一言にフェイトも歯を噛みしめて項垂れる。クロノの言う通り、この場にいる全員は魔力をジャネンバに喰われてもうバリアジャケットさえも維持できずに普段の姿に戻っている。

 

さらに襲撃されたアースラも宇宙空間の中で修復を進めているも、まずはジャネンバを別の世界へ送ることを最優先に、移転装置の修復を急いでいる。

 

だが、襲撃の際に破損した物の中には魔力炉も含まれており、時間もかかり、結界も張ることができない。

 

修復に十分はかかると推定されているが、あまりに長すぎる。

 

「どないしよう……シグナム!」

「……幸いにも奴は未だに殺しはしておりません。その真意は分かりかねますがこのまま運が良ければ……」

「運なんて関係あらへん! あの子は私が止めなアカンのや!」

「それでも、行ってはなりません。我が主」

「リィンフォース! だけど……!」

「聞きわけを! 我が主!」

「!?」

 

必死の騎士たちの説得にはやてが無理を押し切ろうとする中、リィンフォースがやって来てはやての肩を掴んで叫ぶ。はやてもそれに身体を震わせる。

 

静かになったはやてにリィンは諭すように続ける。

 

「奴は今、生まれたばかりで“悪”と“善”というのを知りません……生まれたばかりの子供が初めて見るおもちゃをいじくって遊んでいるようなものです」

「それなら、なおさら私の出番や! あの子を正しい方向へ導いてあげな……!」

「だからこそあなたを行かせるわけにはいかないのです。奴は学んでいる最中ですが、そこがあまりに危険なのです……」

「どういうことですか?」

 

ユーノが訝しげに聞くが、それに対してプレシアとリンディが考えに至った。それに気付いてかリィンが二人に頷く。

 

「気付いたようだな。そう、子を育ててきたあなたたちなら分かるはずだ。あれは赤ん坊と大差ない存在だ」

「どういうことだい? プレシア」

 

アルフが聞くと、それに答える。

 

「……子供は様々な経験から学んでいくものなの。おもちゃの使い方、遊び方は手で触って学んでいくんだけど、それだけではまだ学べないことがあるの」

「な、なんだいそれって……?」

「……物は“壊れる”ということ……」

 

その答えに全員に衝撃が奔る。

 

それに続くようにリンディが続ける。

 

「おもちゃで遊んでいると、行動はエスカレートしていく。おもちゃを触ったり噛んだりしていたものがいつしか叩きつけたり、壁に投げたりして……」

「赤ちゃんってそういうことは起こってからじゃないと分からないの……“おもちゃ”も“人”もやり過ぎれば壊れるということに……」

 

もうここまで言われればなのはたちでも想像でき、焦りを募らせる。

 

その話が本当なら、ジャネンバは今、手加減とかそんなんじゃなくて、ただ“遊んでいるだけ”

 

なのはたちは気付いていないが、今のジャネンバは空腹だ。赤ん坊でも食べ物で遊ぶことは珍しくない。

 

だが、ジャネンバはそんじょそこらの人間なんかではなく、れっきとしたプログラム体

 

学習能力は人の何倍もあり、すぐに学ぶだろう。

 

 

 

 

“食料”は遊ぶものではなく、食べる物だということに……

 

「くそ! こうしちゃいれないよ!」

「アルフ! 行ってどうする気だ!」

「決まってんだろ! あいつを止めなきゃ罪も無い人たちが死んじゃうんだろ!? 行くしかないだろ!」

「奴に敵うのか!?」

「だけどやらないよりは……!」

 

 

アルフが勢いのままに飛び出すのを周りが必死に抑える。

 

このまま手をこまねいていては時間を無駄にしていくだけだ。

 

だけど、向かっていけば間違いなく……

 

そんな時、広場がざわついたのが聞こえた。

 

「なんだ!?」

 

ヴィータが広場を見下ろそうとビルの縁側に手をかけた。そこで見たのは……

 

「マジかよ……おい!」

 

信じられない物を見たように目を見開き、一同には脇目も振らずに昇降口を降りていく。

 

「ヴィータちゃん! あぁ……もう!」

 

シャマルが毒づく中、ヴィ-タを追いかけていく。

 

それに騎士たち、なのはたちも続いて行く。

 

この時、下では既に戦いが始まっていた。

 

 

 

 

 

なのはたちが気付く少し前のことだった。

 

未だにジャネンバが街中を徘徊していた時、場は騒然としたものだった。

 

負傷した警官、逃げ惑う人々、そして取り残されたすずかとアリサ

 

二人はなのはたちとは別の場所に転移されていた。

 

だが、その場所が最悪だった。

 

「何で……なのはたちは? どこよ……」

「ア、アリサちゃん……」

 

恐怖で動けないアリサの手を取って逃げようと促すすずかの力も弱々しい。

 

すずかだって恐怖を感じているのだから当然だ。

 

逃げようにも恐怖で足がすくんでしまう。

 

警官がジャネンバから市民を遠ざけようとしているが、そう簡単に拭えるような恐怖ではなかった。

 

もはやこの場は阿鼻叫喚蔓延る危険地帯と化してしまった。

 

その原因であるジャネンバが再び人ごみへと歩み寄っていく。

 

だが、明確な原因は目の前の二人の少女にあった。

 

「ヌ……ギ……」

 

あの場所、あそこで殴り合った男と一緒に見た顔を見つけたジャネンバは真っ直ぐアリサとすずかたちに近付いて行く。

 

「うそ……なんでこっちに来るのよ!?」

「アリサちゃん……」

 

逃げても無駄

 

本能的にそう感じてしまった二人は足を震わせ、腰を抜かせてしまった。

 

「きゃあああぁぁぁぁぁ!」

「来たぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ジャネンバの行く道を作るように一般人は逃げ惑う。

 

しばらく歩き、呆気なく近くにまで来てしまった。

 

「……」

「う……」

「あ……ぁ……」

 

見下ろされる二人は体も動けなければ言葉を発することもできなくなっていた。

 

目の前の恐怖に意識を保つことしかできず、泣いていた。

 

「ヌギ……」

「「ひっ!」」

 

ジャネンバの手がこっちに迫ってくる。

 

周りの一般人もこの後、幼い女の子の無残な未来を予想して悲鳴を上げる。

 

警官も拳銃を抜こうとするも子供が傍にいて無闇に撃てない。

 

もはや希望も風前の灯

 

ジャネンバの手が彼女たちに触れ合う所で二人は目を瞑った。

 

 

 

 

 

そんな時だった。

 

ジャネンバから一キロ離れたビルの上

 

長い金髪の少年が捨てられていた缶を上空に放り投げて……

 

「テメェの相手は……こっちだろうがっ!」

 

―――力の限り缶を蹴った。

 

蹴られた缶は光り輝き、人ごみの元へとミサイルのように飛んでいった。

 

空気摩擦で高温になっていく缶は人々の頭上を越え、ビルの隙間を縫った。

 

そして……

 

 

「ヌガァ!」

 

ジャネンバの頬にめり込み、燃える。

 

「グギ……ギガ……」

 

燃えた缶が回転し、炎の弾丸としてジャネンバの頬の肉えぐるように、ドリルのように食い込んでいく。

 

「ウ……ゴ……」

 

カリフの気が注入された缶によって重みを増した缶はゆっくりとジャネンバの体を押し返す。

 

そのことに気付いたアリサたちも混乱していた。

 

「なに……これ……」

 

不意に呟いたその答えもすぐに解消された。

 

その瞬間に人ごみの中から一つの影が飛び出し、ジャネンバの元へと向かって行く。

 

一般人には突然、突風が起こったとしか思っていないが、アリサたちには分かった。

 

「オレを差し置いて……」

「!?」

 

声にいち早く反応したのはジャネンバだった。

 

未だめり込む缶のせいで片目しか開けられなかったが、その刹那……姿を捉えた。

 

「何してんだてめえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

今さっき倒したばかりの金髪の少年が

 

 

 

 

この世に生まれて初めての“痛み”を感じさせた拳が……

 

 

 

 

目の前に迫って来たのを……

 

 

カリフの拳は吸い込まれるようにジャネンバの頬を打ち抜いた。

 

「ウゴ……ゴブ……!」

「オオオオオオオオオォォォォォォォォ」

 

宙に浮かぶジャネンバの体を拳をめりこませたまま……

 

 

「ラアアァァァァァァァァァァァァァァァァ!」

 

そのまま投げ飛ばした。

 

その瞬間、ジャネンバの体は弾かれるように跳んでいってすぐそこの公園の噴水の中へ弧を描いて落とされた。

 

薄く氷の張った噴水の薄い氷を突き破って沈んでいくジャネンバに一般人も唖然となった。

 

大人くらいの体躯の化物が小学生くらいの少年に殴り飛ばされたのだ、夢の出来事だと思われてもしかたない。

 

カリフはスーパーサイヤ人3の状態で腰を抜かせているアリサたちに近付いていった。

 

「おい、速くここから離れろ。巻き添えくっちまうぞ」

「あ、あんた……頭……血……」

「ん? あぁ、これか」

 

アリサの指摘に自分の額から流れている血に気付いて手で無造作に拭き取る。

 

アリサは生々しい出血を初めてなのだろう、血を拭って少しでも冷静になってくれればと思ったのだがそれも贅沢な話だと思う。

 

「すずか、まさかお前も腰を抜かせたクチか?」

「あ、えっと……」

「あ~もう分かった。運んでやるよまったく……」

 

ここにいられても邪魔だからさっさと追いやろう。思うと同時に二人の体を持ち上げて肩で担ぐ。

 

「ひゃっ!」

「ふえ!?」

 

突然のことと恥ずかしさからか変な声が漏れるがそんなことカリフにとってはどうでもよかった。

 

二人を担いで歩きながらなのはたちを探していると、タイミングがいいことに真っ先にヴィータの姿を捉えた。

 

そこから続くようにはやてやフェイトと知っている顔が自分を見つけたことも分かり、都合が良かった。すぐさま皆の元へアリサたちを運んでやる。

 

「カリフ!?」

「アリサちゃん!」

「すずかちゃん!」

 

フェイト、なのは、はやてが駆け寄ってくる中、カリフは何も言わずに二人を肩から降ろす。

 

「シグナム、こいつら頼んだ」

「あ、あぁ……」

 

シグナムは二人を受け取り、降ろしてやる。

 

フラフラながらもなんとか立てる所まで回復した二人はなのはたちに詰め寄られる。

 

「大丈夫!? 怪我とかない!?」

「うん……なんとか……」

「カリフくんが助けてくれたから……」

「そうなんだ……よかった……」

 

友達の無事に安堵するなのはたちだが、カリフはクロノと向き直る。

 

目的は今後の作戦についてである。

 

「おい、あれを別の世界に移せるか? 強制的に」

「今は厳しい。さっき奴の襲撃で転移装置が破損したらしいけど直に治る」

「時間は?」

「……早くて五、遅くて十分てところだ」

「なら五分だ。それまではオレが引き止めてやる」

 

その言葉にクロノは申し訳なさそうに俯き、他の面子は驚愕する。

 

「お前……あれの相手をするつもりかよ!?」

「無理だよ! だってカリフ、こんなに……こんなにボロボロなのに!」

「じゃあ他に何か方法はあんのか!?」

 

ヴィータとフェイトの制止に反論すると全員が黙りこむ。

 

それはつまり、他に方法がないことを意味していた。

 

「魔力もねえ、結界も張れねえ! かといってここでやり合えばお前らはもちろん関係のない奴にまで危険を及ぼす……ここで奴を止められるのはオレしかいねえだろうがよぉ!」

「でも……すっごく強いんでしょ!? 大丈夫なの!?」

 

なのはが言う通り、今まで出会った中で最強の敵だと思っていい。

 

もしかしたらそんじょそこらのロストロギアなんかよりも危険な相手だと本能で悟っていた。

 

「正直言えば強すぎる。生まれたばかりなのにオレの体術と武術を少しずつ学んでやがった……スペックも大したもんだよ……勝てる想像がまるでできねえ……だが、同時に付け入る隙もできたのも事実だ」

 

やはりいつもと違って弱気な発言だが、同時にどこか自信に満ちた声でもあった。

 

話を聞く限り相手は反則級を越える超反則級の存在

 

だが、それを相手にカリフはどこか勝機を見出した目をしていた。

 

「お前……何か策があるのか?」

「策じゃねえ……だが無謀な特攻でもねえ」

 

シグナムのように昔から戦い続けている騎士たちには分かる。

 

今のカリフからは絶望ではなく、僅かな可能性を見出した希望の光を宿していることを。

 

そして、その可能性を諦めていない断固たる決意も感じ取ることができた。故に騎士たちはカリフを止めることはできなかった。

 

(恥ずかしいな……こんな幼子が死の恐怖を感じながら勇気を振り絞っているのに……何が烈火の騎士だ……)

(カリフ……お前はまだ諦めていないのだな……強いなお前は……)

(はやてちゃんと同じ歳の子に全てを任せて見ているしかできないなんて……私たちもまだまだね……)

(その顔……勝機があるからだよな?……信じてもいいんだよな?)

 

シグナム、ザフィーラ、シャマル、ヴィータはもう何も言えなかった。言う資格が無いと判断した。

 

はやてたちを一歩後ろに下がらせる。

 

「何すんのシグナム!? まさかカリフくんに戦わせるんか!?」

「申し訳ございません。罰ならいくらでも受けます! ですがここであなたに危害を及ぼすこととなれば……彼の意志を無駄にしてしまいます!」

「だ、だけど……!」

「頼むはやて! 皆も……言う通りにしてくれ!」

 

ヴィータが何もできない無力さに歪めた表情で一心不乱に叫んだ。

 

「ヴィータちゃん……」

「ヴィータ……」

 

皆が必死のヴィータの姿に胸を締め付けられる。

 

―――シグナムたちも本当は歯痒いんだ

 

―――友のために剣を振るうことさえできない無力さを恨んでいる

 

分かっている。この場の全員がそう思っている。

 

皆の心が締めつけられ、何も言葉が出せないでいた時だった。

 

「てめえ等……勘違いすんな。オレはこの戦い、死ぬために戦うんじゃねえ」

「ウガアアァァァァァァァァァァ!」

 

ダメージから回復したジャネンバが噴水から飛び出し、怒りに身を任せて向かってくる。

 

「!?」

「あぶない!!」

 

なのはたちも、周りの一般人も、警官も鬼の形相で向かってくるジャネンバに悲鳴を上げる。

 

そしてカリフの後ろから拳を振り下げ、頭を砕かんと狙った。

 

 

 

はずだった。

 

「激情に駆られてコースが単純だ」

「ヌガ!?」

 

拳は後ろ向きで受け止められ、空いている左でカウンター気味に肘鉄を顔面に食らう。

 

固くとがった先端がジャネンバの鼻を砕いた。

 

「ヒギャー!」

「そしてもう一つ……言っておこう」

 

痛みでのけ反ったジャネンバの懐に入り込み、足を引っ掛けて柔道の足技で地面に倒す。

 

顔を手で押さえつけられたまま地面に叩きつけられ、その衝撃でバウンドさせられた。

 

「ウギ……!」

「この一瞬で体術を覚えたのは流石だ。あらゆる無駄な動きも削減されている。故に、予測も容易い!」

 

落ちてくるジャネンバの体に掌底を叩きこむ。

 

「ウゴッ!」

「無駄のないコースでオレの警戒が薄くなっている箇所を正確に狙っているおかげで回避も楽にできるぜ! スカタン!」

 

苦悶の声を上げるジャネンバだがこれでは終わらない。掌に気を溜め、ジャネンバを打ち抜くと同時に気弾をジャネンバの体に撃ち込んだ!!

 

「グガアァァァ!!」

 

打撃と砲撃の二段ダメージを喰らったジャネンバは吐血しながら気弾の爆発と共に公園のベンチに落ちていった。

 

ベンチを破壊しながら倒れ込むジャネンバにカリフは中指を立て、この場の全員に聞こえるくらいの声で豪語した。

 

「生まれたばっかのヒヨッコが粋がってからに! 今まで踏んで来た場数の違いって奴を教えてやるぜこの野郎!!!」

 

ベンチの上で倒れ込んだジャネンバ

 

 

彼の眼はが赤く輝き、血を吐く口から牙をちらつかせる。

 

 

 

 

 

史上最悪のクリスマスがついに幕を開けた。

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