魔法少女リリカルなのは~生まれ墜ちるサイヤ人は悪魔の子~(更新一旦停止) 作:生まれ変わった人
今回はあのキャラたちをフライングで出します。
どんな生物の生存も許さない灼熱の世界があった。そこはどの地点も活火山の粉塵とマグマに覆われた前人未踏の侵入禁止世界に認定されている。
人が歩ける場所はその世界の二割しかない砂漠地帯しかない。物資の発掘としても移住先としても全てが困難で見放された世界があった。
だからこそ、こんな話は誰も信じないだろう。
今、その世界で一人と一匹の世界まるごと大決戦が幕を開けていたことを……
「ドララララララララララァ!」
「オラオラオラオラオラァ!」
火山爆発の轟音にも負けない二人分の怒号が辺りに響き渡る。火山の爆発音が彼らの叫びに呼応するかのように爆ぜる。
マグマが飛び散る中でもスーパーサイヤ人3のカリフと自我を持ったジャネンバは高速で拳をぶつけ合う。
一秒間に十? いや、百は下らない連撃を打ち合う。拳がぶつかり合う度に火山帯が衝撃で崩れ去り、大地が崩壊していく。
この時点でも既に人々の理解、人智を越えた攻防戦が繰り広げられていた。
「うぶっ!」
「ゴホッ!」
たとえ互いに拳をモロに喰らったとしても攻撃の手だけは止まることは無い。二人の間で血飛沫を撒き散らせながら互いをぶつけ合う。
一見して拮抗している打ち合いだが、その実、カリフの方が圧倒的に不利だった。
(このままじゃあ……水分が!)
それは体内に蓄えられている水分……体力の差だった。
彼は普通の人間……地球人は元よりサイヤ人としてもそもそもの作りが違っている変異体だ。そうとは言っても彼は生きた生物……このマグマ溢れる灼熱帯にこうして耐えていられるのは体中から溢れ出る水分の恩恵だ。
身体とは鎧だ。
生きとし生ける者は全て“タンパク質”の鎧で必要器官を守っている。だが、その鎧は熱で熱せられると硬直する習性がある。過度な熱は身体を硬直させて動きを封じる。そして更に酷くなれば心臓までもが硬直する恐れがある。
それを防ぐのが“汗”と“体液”の役目だ。
体温上昇を防ぐために汗は吹き出す。熱気の吸入を防ぐために唾液や鼻水の分泌で熱を冷ます。
身体は感情を持たないもう一つの生命……もう一人の“生きる意思”が具現化した鎧なのだ。
それこそがジャネンバとの大きな違いだった。
(こいつ……汗をかいていない!)
(気温は八十度をゆうに超える……プログラム体の私ならともかく水分を常時消費し続けるお前には辛かろう)
カリフの動力は水分とカロリーの相互作用が必要になってくる。だが、ジャネンバは今までに収集した魔力だけで動くことができる……つまり、カリフの燃費の方が消費が大きい。
それは互いに理解していることだった。
(脱水症状が表れる前にカタを付ける……)
(このまま耐えしのいで体力を削れば勝機は充分……)
((狙うは短期決戦のみ!/長期決戦だ!))
カリフは力を溜め、ジャネンバは精神を統一させる。
必然的にカリフは攻め、ジャネンバは防ぐ形になった。
だが、そんなことは互いに百も承知。自分のペースへと持ち込む主導権争いの戦いへと発展していった。
「ドラァッ!」
「!?」
今まで受けてきた一撃よりも威力の高い一撃を腕に受けて激痛に顔を歪め、動きが鈍らされた。その一瞬を狙ってカリフは気弾を片手に造り、ジャネンバへ向けた。
「さっさとくたばれっ!」
「ヌッ!?」
ガードの間から迫ってくる閃光に目を見開き、反射的に後ろへと飛翔して退く。そんなジャネンバにカリフは気弾を飛ばし、縦横無尽に避けようとするジャネンバを追尾させる。幾ら逃げてもまるで意思を持っているかのように追いかけてくる。
火山に強引に突っ込んで突っ切っても気弾もしつこく追いかけてくる。
だが、ジャネンバも逃げるだけではない。自身に向かってくる気弾に向き直り、何も無い空間から剣を作り出す。尚も向かってくる気弾に対し、剣を一振り。
「フン!」
振り下ろした剣は気弾を一刀両断し、真っ二つに斬られた。二つに別れた気弾はコントロールを失い、別々にあらぬ方向へ飛んでいき、火山にぶつかって大爆発を起こした。
二カ所それぞれで同時に幾つもの火山を消し去るほどの爆発を背にジャネンバは表情を変えない。独りでに剣をあらぬ方向へ構えたかと思えばその地点にカリフが現れ、蹴りを放ってきた。
「ダラァ!」
「見えているぞ」
気弾で注意を逸らしていたにも関わらずに瞬間移動で現れたカリフの攻撃を涼しい顔で受け止める。剣と蹴りがぶつかった瞬間に耳につんざく金属音と衝撃波が辺りを伝う。
「くらぁ!」
「……!」
ジャネンバはカリフを蹴りで吹っ飛ばして遠くへと飛ばす。勢い良く弾き飛ばされたカリフも途中で踏ん張って遠くへ飛ばされることは何とか防いだ。
肩で息をする二人は笑みを止めずに互いに間合いを測る。
「本当にオレの戦い方に酷似……いや、それどころかアレンジしてる所があるか……」
「だからこそお前の先読みが比較的に容易なのだ。お前は中間距離でモーションも速度も速いフォーク、スプーン、ナイフを使い、遠距離ではエネルギーをそのまま放ってくる」
「……」
「この法則さえ頭に入れておけば後は集中して攻撃くらいは防げる……私の方が有利だ」
敵の大胆な勝利宣言。相手からすれば屈辱でしかないが、カリフもそれは理解しているからこそ何も言わない。
「そして……お前の重大な弱点は人間だということだ……いや、人間ではなかったな……異端のサイヤ人」
この後、ジャネンバの口から衝撃的な事実が語られることとなる。
◆
アースラのブリッジ
世界の管理と共に世界の均衡を保つための空飛ぶ法の方舟
今まさに第一級指定ロストロギアに反応が見られた今、事態の収拾に駆けつけてきた部隊がブリッジへと向かう。
アースラの通路を三人の武装部隊が速足で歩いている。
「時間は?」
「救援信号をもらってから十分は経過しました」
「上はロストロギアの危険性をあまり理解していないようだ。レジアスが口添えしてくれなかったらもっと到着が遅れていただろう」
一人は紫のロングヘアーの片手に球状のデバイスを付けた女性、もう一人は青のロングヘアーで物々しいローラーブーツとグローブを模したデバイスの女性、そしてもう一人は長刀に似たデバイスを構えた厳かな雰囲気の男性だった。それぞれ三人は既に武装しており、雰囲気もどこか一線を画していることが窺えるほどだった。
すれ違う局員たちは立ち止まって敬礼するのだが、今はそれに返している時間は無い。
「状況は?」
「あまり芳しくはないようです。対象をあの“第一級危険地区”へ誘導させた、とまでしか……」
部下の女性からの報告に男の局員は難しい顔をする。今から十分前に緊急信号を受けて少数の最精鋭として選ばれたのがその男自身の舞台だ。
それなりに他の部隊よりも任務もこなし、命懸けの経験を積んだ自覚はある。
だが、今回は管理局でも管理を諦めた危険地帯が舞台となるのだ。幾ら自分たちが戦闘のプロだとしても本質はただの人間なのだ。火山溢れる灼熱帯での任務など到底無理なのだ。今のバリアジャケットでも性能が追いつけないのも確実だろう。
それ故に彼らの行動も限られていた。
「これからどうします?」
「ここの最高責任者は?」
「リンディ・ハラオウン提督です」
「それなら彼女と連携を取ろう。皮肉にも危険地区というのが幸いしてアルカンシェルの砲撃は許可されている。それだけが上の奴らの賢明な判断だ」
可能性はまだ残っている。二人のそれを伝えて士気を上げることに努めながらようやく目的のブリッジへの扉が見えてきた。彼らは覚悟を決めてその部屋へと向かう。
「いいか。今回のヤマは今までとは比べ物にならないほどの激戦になる。心してかかるぞ!」
「「はい!!」」
危険な任務の前の鼓舞に覚悟を改めながら三人はブリッジへと入り……驚愕した。
「な!?」
「これ……一体……」
そこで見たのは、少年少女を含めたブリッジに着任しているクルー全員が倒れていた異様な光景だった。
突然の光景に三人は驚愕するも、彼らはプロだ。すぐに気を取り直して倒れた人たちに駆け寄っていく。
三人は全員を抱きよせて容体を確認して一息吐く。
「バイタル安定……ただの気絶です」
「よかった……」
「だが、ここで何が……」
とりあえず全員は気絶しているだけだと確認できると安心し、目の前の状況を把握しようと見回していた時だった。彼らの声に反応して身を起こす人物がいた。
「あ……あなたたちは……?」
「!? 君、大丈夫!?」
「は、はい……」
女性が起き上がってきた少年……ユーノの身体を支えてあげる。対するユーノは突然の来客に軽く混乱しているように視線を近付いてきた三人の大人へ右往左往させる。
「あの……あなたたちは……?」
「もう心配しなくてもいい。私は先程ロストロギア・闇の書の鎮静のために来た武装隊・ゼスト隊隊長のゼスト・グランガイツと言う者だ」
「同じく、ゼスト隊のメガーヌ・アルビーノと言うわ。よろしくね」
「ゼスト隊、クイント・ナカジマです」
「ぼ、僕はユーノ・スクライアです……」
敬礼での自己紹介にユーノも緊張して自己紹介するとゼストがユーノに聞いて来る。
「ユーノか……教えてくれ。ここで何があったのか」
「え?」
状況を聞かれたユーノ自身も記憶が曖昧な様子で周りを見渡す。だが、それも一時の忘却でしかなかった。
「あ……カ、カリフ……」
「カリフ? それは人の名前なのか?」
ゼストたちの会話に釣られて次々となのはやフェイトたちを含んだクルーたちが目覚める。
「う……」
「ん……あれ……?」
「寝てた……のか?」
皆が何が起こったのか分かっていない状況の中、皆が意識を戻してきたことにゼストたちは安堵した。
そんな中、リンディを解放するクイント
「う……」
「大丈夫ですか? リンディ提督」
「あなたは……?」
「申し遅れました。私はゼスト隊所属のクイント・ナカジマと言う者です。先程、緊急信号を受けて参りました」
「そうですか……それはよか……」
リンディはそこまで言って何かを思いだそうとしていた。自分は確か何をしていた?
「?……提督?」
(そういえば……何か忘れているような……)
クイントの声さえも聞こえなくなるほどに自分の記憶を辿る中、やっと直前の出来事を思い出してきた。
『君は……人間なのか?』
『人間なのか……か。ハナからそう素直にに聞けばいいんだよ』
『あの戦闘能力と先程の再生能力は明らかに人外の力そのものだ。それを解明しない限り君はあのロストロギアと同様に危険な存在と見なされる』
『違うよクロノ! 幾らなんでもそんな……!』
『いや、それは間違っていない』
『『『!?』』』
『そうか……じゃあ君は一体……』
『まあそれについてだがよぉ……』
『また生きてたら教えてやるよ』
リンディの記憶はそこで途絶えていた。見ていたテレビを横から消されたかのようにそれ以降の記憶がパッタリと途絶えているのだから……
「そうだわ……その後に何か衝撃を感じて……」
「そうですか……それで、そのカリフという子はどなたですか?」
クイントがリンディを介抱しながらブリッジ全体を見せるようにするが、リンディはすぐにさっきまで気にしていた違和感の正体に気付いた。
『いない』のだ、特別なオーラを纏っている非常識で大胆な存在が……
「うそ……どこに……」
リンディが呟いた時、クルーの一人が緊迫の様子で叫んだ。
「大変です! 対象物の世界でとてつもない衝撃の嵐が飛び交っています!」
「な!?」
「なんですって!? 火山噴火という可能性は!?」
「それが……規模が火山噴火の倍のエネルギーです! それに範囲も広がって……いえ、移動しているようにも……!」
「大至急モニターを!」
「もうやってます!」
突如として発生する謎の爆発と思われるエネルギーの暴走の確認。最初は噴火かサイクロンなどの自然現象による力のうねりかと思えばそれでも規模が大きすぎる。
そんな奇妙な報告を受けたリンディは妙な胸騒ぎに耐えながらもエイミィが映す火山世界の様子を凝視する。
そして、それはリンディだけでなく他の子供たちや騎士たちまでもが感じていた。
「どこ……どこなの……」
「気温は……九十度……人が戦うどころか呼吸だってできないはずだ……」
皆が不安をよぎらせながら切り替わっていく外のモニターを凝視して……絶句した。
「そんな……!」
「マジかよ……」
「なんてバカなことを……!」
激しい火山地帯の中、ジャネンバと空中戦を皆を絶句させるには充分過ぎる光景だった。その中でもゼスト隊の反応が顕著だった。
「こ、子供!?」
「あんな所で戦ってるの!?」
外見からしても年端もいかない子供が過酷な環境下で謎の怪物と一戦交える光景は大人としても戦闘員としても異質だと思うのは当然のことだ。
さらに彼らの戦闘そのものが常軌を逸し、それどころか異常とも言えるものだった。
二人がぶつかり合う衝撃だけで火山は砕かれ、マグマは吹き飛び、剥き出しになった地盤もさらに崩壊、さらには地割れさえも引き起こしている。当の本人たちの姿でさえほんの一瞬だけ止まった時にしか確認できず、乱打も腕と足がブレて見えなくなるくらいにしか理解できなかった。
魔力反応がない砲撃の雨粒も突如として現れるフォークやナイフ、スプーンでさえも惑星レベルで地形を変形させるほどだった。
「これは……戦っているのか?」
「あのロストロギアと思われる怪物に対してあの子が連続して撃つ砲撃からは魔力反応がない……」
「だけど、威力からして全てがSSSランク級……どうなってるのよ……」
今までの常識という基盤を盤ごとひっくり返された気分を実感させられている。
生身の人間が魔力無しで飛び、砲撃を放つだけでも信じられないと言うのに規模が天災レベルときたものだ。戦闘に関して長い間から携わっているからこそ分かるその戦いははっきり言ってこの世の物では無い。
だが、事態は彼らの心の整理をさせる暇など与えない。比較的にカリフの異常性をある程度考慮できていたスタッフたちは既に行動に移っていた。
「どうします!? 援護射撃いけますか!?」
「いえ、あれだけ高速に……それも肉薄していては彼に当たってしまいます。それにアルカンシェルも通じない相手に有効だとは思えません……今は状況が好転するまで機を待ちます! 音声を拾ってください!」
「了解しました!」
慌ただしくなるスタッフたちに触発されたかのように気絶から目を覚ましたなのはたちはバリアジャケットにスタイルチェンジしてそれぞれのデバイスを構える。
「リンディさん! 私たちも外に……!」
「止めなってフェイト! 外は灼熱地獄なんだよ!? 幾らバリアジャケットを着てても限界があるんだよ!」
「なんであんな所で戦えるのよ……」
アルフの言は正確に的を射ていた。それもそのはず、今の世界の気温は日常生活では味わうことのない灼熱帯なのだ。そんな所へ出ようものなら皮膚は焼け、熱気で肺も焼けるのがオチである。
長年に渡ってアリシア蘇生のために生物学と医学を学んできたプレシアの理解さえも越えたことをカリフは実践していた。
そんな時、画面の二人は互いに見つめ合いながら距離を置いて停止した。それに何やら話しているようにも見える。
「止まった?……いや、話しているのか?」
「スピーカーのセット完了! 音声入ります!」
エイミィは返事も効かずに音声を拾っても咎める声は無い。ブリッジが静寂に包まれ、遠い世界での会話が響く。
『……攻……らいは防げる……私の方が有利だ』
「何の話だ?」
「分からん……だが戦闘中に口が回るほど奴が有利だということを誇示しているのかもしれん……」
流石に少ない会話だけでは今起こっていることを推理するには証拠として不十分。そのまま固唾を飲んで耳を傾ける。
『そして……お前の重大な弱点は人間だということだ……いや、人間ではなかったな……異端のサイヤ人』
「サ……なんだって?」
「サイヤ人……と言ったのか?」
サイヤ人――――――なのはたちにとって初めて聞く単語であり、なんとなくだが、それが何らかの民族の名前だとしか分からない。
なのはたちは今まで触れることも触れられることも無かった真実に一歩だけ足を踏み入れた。
『お前……オレの記憶までも……』
『闇の書に取り込まれた時にお前の『全て』を基盤に造られたのだから当然だろう?……身も心のあり方も純粋な戦士にして好戦的、侵略と略奪を生業として様々な惑星や異星人を滅ぼした呪われし一族……宇宙最強の戦闘民族サイヤ人……と、これくらいは今しがた理解したところだ』
「戦闘……民族……カリフが?」
「侵略……略奪って……ウソやろ……?」
年端もいかない彼女たちには衝撃的すぎるほどの残酷な真実……これまでに少なからずカリフに助けられて者たちにとっては信じたくない真実ではあるが、同時にカリフという存在の異常性を裏付ける決定的な証拠とも言える。
自分たちと同じくらいの少年の血塗られた真実を意外にも彼女たちは受け入れることができた。
『~~っ! いちいち癪に障る話し方だなテメェは!』
『何を言う。私は“お前”だぞ?』
『お前はお前だ!』
再び互いに拳をぶつけ合う二人を中心に火山地帯は衝撃で火山は削れ、マグマが吹き飛んで地盤が丸裸にされる。
再び驚天動地の戦いが再会される光景にフェイトたちは歯噛みする。こんな大変な事態の時でさえ自分たちは何もできないことが悔しい。
「カリフが……!」
「リンディさん! やっぱり私たちも……!」
思わず悲痛な声を上げるフェイトに釣られるかのようになのはがリンディに向き直って談判する。
だが、リンディはすぐに返事することさえできなかった。もはやこれは自分の常識、手に負えるような事案ではない。
ジャネンバは闇の書のプログラム、蒐集した魔法の全てを受け継いでいる。その上、地形を容易く歪めてしまうほどのパワーを秘めている。
このまま闇の書の機能であらゆる世界に逃げられるような事態になってしまえばもはや管理局の手には負えなくなる。それどころか全ての管理世界の滅亡までもが実現してしまうことも充分に有り得る。
いや、もはやそう成りかけているのだ。
唯一の可能性は同じ様に底知れないパワーを秘め、自分たちの常識と理解をことごとく破壊し尽くすほどの力を持ったカリフだけだ。
つまりはカリフこそが将棋で言えば王将、チェスで言う所のキングだと解釈できる。彼が負けてしまえばその場で全ての世界、人々の命運も尽きることとなる。
そんな状況で自分にできることは?
(彼の邪魔をせずに最大限のサポートをするか否か……彼の負担を減らすことが今回の勝利の最大にして必要最低条件!)
これほどまでに分の悪い勝負など今までに携わったことがない。だけど今は自分が皆を導かなければならない。
決心を新たにしたリンディの決断は早かった。
「なのはさんにフェイトさん……皆さんはまだ動けますか?」
「はい! まだまだ行けます!」
「大分休めました! 魔力もあります!」
皆の心強い声にリンディは情けなく感じながらも勇気づけられた。
まだ、この場で諦めている人間はいない。
それなら精一杯足掻こう。足掻いて足掻いて……生き残ることだけを考えるしかない。
「ゼスト隊の皆さん、突然で申し訳無いのですがご協力してもらえないでしょうか?」
「は、はい! それは勿論なのですが……」
「環境が劣悪過ぎて現場に行けるかどうか……」
彼らも分かっている。今の灼熱帯では人の活動は不可能……ましてや乱打戦など本来あり得ないことだ。そんな所へ飛びこんでいっても愚の骨頂としか言えない。
ここでスタッフの一人がその世界の地図らしきものを展開させて叫ぶ。
「この世界には一部だけですが生物が活動できるような環境の場所が点在しております。そこへおびき寄せるということは……」
「だが問題がある……そのことをどうやってカリフに伝えるか……」
「それなら多分大丈夫かもしれないわ」
プレシアの言葉に全員の視線が向けられる。
「本当ですか!?」
「戦闘のワンシーンを映せてもらえないかしら?」
「は、はいただいま!」
エイミィが即座に戦闘中を映し、カリフをズームして映すとプレシアがある一点を指差す。
「その首にかけている物……私の作った通信と言語翻訳の機能を持ったデバイスよ。そこに作戦と地図を送れれば何とかなるはずよ」
「後の結果は神のみぞ知る……か」
「そうね……たとえ伝えたとしてもそこからはあの子次第……私たちは待つしかないのよ」
あまりに人任せでギャンブル性が高いかもしれないけど現状ではこれがベストだと言うのが現実だ。
不安性の高い話だがそれでも信じるしかない。
聞きたいことはたくさんあるけど今はそれを全てひっくるめて彼の未知の力を信じるしかない。
「それでは、大まかな作戦を提案します……」
魔法を司る法の番人
悠久の時を生きた騎士たち
三人の空中魔導士
今、彼女たちは再び戦いの渦中へと飛び込もうとしている。
◆
一方の外の世界では事態は急変しつつある。
ジャネンバとの会話が落ち着いたこととは裏腹に火山活動はより一層激しくなっていた。
いつしか二人は舞空術を止めて灼熱の岩盤の上に立っていた。
「……」
「……」
互いに睨み合う二人だったが、最初にその沈黙を破ったのは……
「ぷっ」
「……?」
意外にも鼻で笑ったカリフの方だった。汗だくで血を流して意識は朦朧としているはずなのに場違いにも“笑った”のだ。
それが意味する所はまだ心に余裕……勝機を失っていないということで間違いは無かった。
「何が可笑しい?」
「そりゃ可笑しいさ。記憶を共通してても性格はやっぱりオレとはまるっきり違うな」
「?」
「やっぱ“お前はオレにはなれない”……お前は根本から間違ってる」
「ほう……?」
眉を吊り上げながら興味深そうに耳を傾けていると、対するカリフは愉快そうに笑う。
「そもそも武術とはその字の通り“戈を止める術”って誰かが言ったんだが、最初はその意味が分からなかった……」
「……」
「そもそも武術とはか弱い人間が編み出した“模倣”だ……体躯、体力、身体能力の全てを上回る動物や昆虫の真似で生み出したものだ。例えばカマキリが鳥を威嚇して追い返す姿を真似たのが蟷螂拳だ。こう……シャーってな」
「……」
手で鎌を模ってコミカルな動きを見せる一方でジャネンバはただ黙って見つめる。
「武術とは弱い存在が編み出した“強者から身を守る術”でしかない。いくら真似しようが結局は“物真似”でしかない。それだけでは捕食者には勝てない」
「何が言いたい?」
「武術はいわば“枷”だ。本来の力を抑えて敵を“沈黙”させるための術でしかない」
「……続けろ」
興味を抱いたジャネンバが催促する。
「お前はオレのフォークやナイフを“中間距離用の攻撃手段”と思っているだろうがそれが決定的な勘違いだ」
カリフは拳を天に掲げ、力強く握る。
「あれは所詮は食器……“食べる”ための道具であって“殺す”ためではない」
「……ならどうする?」
「つまりだ……オレはもうお前に“倒す”なんて生温いことはしない……“捕食する”ことにした」
「……っ!!」
カリフの空気が一気に変わった。肌で感じるほどの威圧が更に増して地形さえも容易く変えてしまう。
「悟空やベジータのように力技だけでねじ伏せるような時代遅れな戦い方は普段はしないと決めてたんだが……もう止めだ」
構えを解き、見た所さっきとは違って隙だらけに見えるが、同時にリラックスしているようにも見えた。
(この殺気……まさかこれが奴の真のスタイル!?)
「か弱い武術が“枷”ならば悟空たちのような力技の原始的暴力は……“鍵”だ」
「どういうことだ……!」
「力+力=所詮は暴力……武+武=所詮は武術……暴力=最強、武術=最弱をそれぞれ足そうが割ろうが答えは同じだ……だが、最強+最弱……力+武はどうなると思う?」
「くっ!」
カリフは生前、ブロリーよりも圧倒的に弱い力しか持てない宿命を課せられていた。だからこそカリフは独自の、悟空ともベジータとも違う力を模索する必要があった。
そして考えに考えついた結果が“動と静”の融合だった。
相反する力は決して同一ではない。そんな力が合わさればどうなるか……
カリフはそこに興味を抱き、技を磨いてきた。
カリフはどんな物でも利用する。己の力が足りなければ他の力を代用する。
そんな考えだからこそ行きついたカリフなりの“真の強者”の姿が“暴力と武術の融合”だ。
それを今、カリフは解き放とうとしている。
「最初に言っておく……戦いに勝つのは力が強い奴でも、ステータスが勝っているような奴じゃない……“強い奴が勝つ”んだよ!」
「それが……お前の真のスタイルか……! どこまでも足掻く……!」
「食器はもう使わない……あれは“食べる”ための武器だが“殺し”には向かない……さっきまでより優しくはないぞ!」
また新たなる展開を迎えたこの戦いはいつしか闘争へと変質していた。
「曲りにもオレは宇宙最強の戦闘民族だ……嘗めんじゃねぇ!」
超戦士たちは眠らない……彼らは命を賭して戦い、勝つまでは……