魔法少女リリカルなのは~生まれ墜ちるサイヤ人は悪魔の子~(更新一旦停止)   作:生まれ変わった人

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戻ってくるニチジョウ

世界の大半がボロボロの更地と化し、既に最初の面影もなくなってきた。

 

遠くではエネルギー波による地響きと衝撃波に耐えながらなのはたちの行く末を見守るアルフたちがいる。

 

「なのは……フェイト……」

「はやて……」

「主……」

 

ジャネンバにマグマをぶつける作戦は成功し、退避を完了させていた面々は遠くで起こる輝くエネルギーとマグマの爆発を見守る。

 

あの場所にそれぞれ大切な人たちが戦っている。

 

事の成り行きを心配な面持ちで待つ。

 

火山爆発でさっきまで戦っていた場所がマグマと火山灰が舞い散る灼熱帯と化していた。

 

もはやあの場所で無事である確証など……

 

「……」

 

だれもが不吉な未来を頭によぎらせてしまった……その時だった。

 

「なんだ!?」

 

けたたましい轟音と共に火山灰が吹き飛んだ。

 

そして、何か人影が自分たちの元へと向かってきている。

 

ある程度近付いてきた時に遂にその姿を確認した。

 

「あれは……カリフ!?」

「それだけじゃない! なのはやフェイト、それにはやても!」

 

恐らく爆発から逃げてきたのだろう……既にスーパーサイヤ人3の状態が解かれていつもの黒髪に戻っていたカリフがなのはたち三人を脇に抱えて飛んでくる。

 

きっちり四人を確認できた皆は驚愕から一変して歓喜した。

 

「いよっしゃああああああぁぁぁぁぁぁ!」

「凄い……凄いよ!」

「まったく……心臓に悪すぎる」

 

アルフとユーノは抱き合ってピョンピョン跳ねて全員の生還を喜び、クロノは腰を下ろしながら苦笑する。

 

「はやてえええぇぇぇぇぇぇ!」

「よかったぁ~……本当によがっだ~……」

「やったか……」

「あぁ……本当に大した奴だ」

 

ヴィータは泣き、シャマルは涙を浮かべてへたり込む。

 

シグナムとザフィーラも静かながら生還してきたことを喜ぶ。

 

そして、ゼスト隊の三人は半ば呆然とする。

 

「し、信じられん……あの後にまた三人を抱えて逃げて来たのか……?」

「とんでもない子ですね……あれで魔力も無い子供だなんて……」

「えぇ……あんな子初めて……」

 

初めて目の当たりにしたカリフという少年の底力に脱帽さえ通り越した。

 

今まで見てきた中で一番と言ってもいいほどの実力の持ち主だった。

 

なにせ暴走し、自我を持ったロストロギアに単身生身で立ち向かい、そして勝ってしまったのだから……

 

自分たちでは及ばない次元の戦いを演じたカリフの帰還によって場が緊張から解かれるのを遠くからなのはたちも確認できた。

 

「た、助かったの……」

「魔法っていつもこういう感じなんかな~……」

『立派に大義を果たされました。お疲れ様です。我が主』

「カリフ、もう大丈夫だから。ね?」

 

フェイトが自分たちを抱えて飛んでいるカリフに下ろすようにと頼む。

 

「……」

「カリフくん!?」

 

だが、何の反応も返ってこない。

 

なのはたちも不審に思っていたその時だった。

 

抱えていた拘束を解いた直後に体が傾き、カリフのみが下へと落下していく。

 

「ちょ! 嘘やろ!?」

「だめ! 間に合わ……!」

 

その瞬間に隣のフェイトは輝き、ソニックフォームへと変わる。

 

スピードが一番速い彼女はすぐにカリフの元へと追いつき、腕を掴むが落下の勢いが止まらない。

 

「うぐ……くぅっ!」

 

逃げるために加速した分の重量が加わっているため華奢なフェイトでは腕を掴んだだけでは止められない。

 

フェイトはカリフの前に回り込んで落下する身体を受け止める。

 

「うううぅぅぅぅ……!」

 

それでも落下は止まらずに硬い岩盤でできた地面に近付いてきている。

 

今のカリフがこのスピードで地面にぶつかってしまえば最悪な事態になりかねない……そう思ったフェイトは踏ん張りながらカリフの頭を抱きしめる。

 

「~~っ!」

 

フェイト自身も覚悟を決めたのかキュっと目をつぶって腕の力を強めてカリフを衝撃から守ろうとする。

 

そんな時、フェイトの背後にネット状の魔力が形成される。

 

フェイトたちはネットに勢いよく突っ込んだ。

 

ネットが二人を包み込み、衝撃を和らげる。

 

トランポリンのように全ての衝撃を受け止めて落ち着いた頃に皆が飛行魔法で飛んできた。

 

「フェイトー! カリフー!」

「大丈夫かい!?」

 

メガーヌがデバイスを起動させているのだから彼女のおかげだろう。

 

「フェイトちゃん! 大丈夫!?」

「私よりもカリフが!」

 

はやての問いにカリフの姿を見ると、それは凄惨なものだった。

 

全身が血に塗れているのはもちろん、エネルギー波によって服どころか肌も一部酷い火傷を負っている。

 

そして、脇腹には刺されて抉られた傷から夥しい血が出ている。

 

カリフを抱きしめているフェイトは涙を浮かべて呼びかける。

 

「カリフ! 目を開けて! もう大丈夫だから!」

 

身体が血に塗れるのも構わずに意識が戻らないカリフに焦りを感じる。

 

「落ち着けテスタロッサ! シャマル、カリフの治療を」

「分かった!」

「じゃあ僕は診察してみる!」

 

ユーノも加わって魔法による治療が始まった。

 

カリフの下と上に魔方陣が現れてカリフの身体を挟む。

 

身体を透りぬけながら完全に上下位置逆になった所でユーノはホっと息を吐く。

 

「骨が幾つか折れてるけど呼吸器と消化器系は無事だよ。フェイト、彼に水を飲ませてあげて」

「ま、任せて!」

「フェイトちゃん!」

「なのは、ありがとう!」

 

なのはがあらかじめ用意していた水を渡すとお礼を述べながら急いで受け取ってキャップを開ける。

 

「ほら、水だよ……」

 

口を開けて水を少しずつ注いでやる。

 

フェイトが飲ませやすいようにカリフの頭を膝の上に乗せようと態勢を変えた時だった。

 

「ぶっ!」

「きゃっ!」

 

動いて少し多めに注いでしまったためにカリフは呼吸を一瞬詰まらせてしまってすぐに吐き出してしまった。

 

水と一緒に血を勢いよく上に吐いたためにフェイトだけでなくなのはたちまで驚いてしまった。

 

そして当の本人はむせて咳をする。

 

「げほっ! ごほっ! ごほっ! けほっ!」

「あぁ! ごめん!」

 

苦しそうに咳をするカリフにフェイトは焦ってひたすら謝る。

 

それでも苦しそうに咳をしてのた打ち回ろうともがく。

 

「がはっ! げほっ! うえっ!」

「口の中の血をゆすいで上げて! このままじゃあ嘔吐しちゃう! ユーノくんは何とか抑えて!」

「「はい!」」

 

二人はシャマルの言われるままに口の中の血をゆすいだり、バインドで体を押さえたりと献身的に看病してくれた。

 

そして……

 

「はぁっ!」

 

呼吸と共にカリフの意識が一気に目覚めて目を勢いよく開けた。

 

「カリフ!」

「意識が戻った!」

「本当か!?」

 

意識が回復したことによりその場の全員が喜びに湧き立つ。

 

「はぁ……あぁ……」

 

だが、再び目を閉じてしまい、シャマルが焦る。

 

「カリフくん! 声聞こえる!? 私よ! シャマル!」

「……」

「カリフ! 僕はユーノ! 君の近くには皆いるよ!」

「……」

「私だよ! フェイトだよ! 目を開けてよ!」

 

三人の呼びかけにカリフは反応を見せずに目を開けない。

 

その場の皆も一斉に呼びかける。

 

「私も、なのはもいるよ!」

「はやてやで! お願い起きて!」

「使い魔のアルフだ! いつものような元気はどうしたんだい!」

「クロノだ! 君がこんな所で死ぬような奴じゃないだろ!」

 

四人が呼びかけても反応は無い。

 

「てめぇ! もし死んだりでもしたらただじゃあおかねえからな! 」

「起きろ! まだお前には借りを返さねばならんのだ! それまでに死ぬなど許さんぞ!」

「主はやてを……我らを後悔させる気か!? 起きろ! 起きてくれ!」

 

騎士たちも呼びかけるがそれでも反応が返ってこない。

 

それを見ているゼスト隊の三人は悲しそうに表情を歪ませる。

 

そして、カリフの意識を繋ぎ止めようと各々が只ひたすらに呼びかける。

 

「……ぇ」

 

騒がしくなってきた周りに誰かが小さく呟いた。

 

「……せぇ」

「……え?」

 

近くのフェイトだけが異変に気付いた。

 

周りはただ必死に叫び続ける中で何かが聞こえた。

 

カリフの眉がヒクヒク動き始めたことも含めて……

 

「カリフ!」

「カリフくん!」

 

周りから名を連呼される。

 

額に青筋が現れる。

 

「あの、みんな落ち着いて……!」

 

フェイトがいち早く異変に気付いて鎮めようとした時

 

遂にキれた。

 

「さっきからうっせえんだよボケェ! 少しは寝かせろよゴラァッ!」

『『『!?』』』

 

怒りのままに叫ぶと周りの騒音が一斉に消えた。

 

「くそ……こっちは疲れてんだよ限界なんですよ……少し寝かせろよチクショー」

 

口から血と一緒に憎まれ口を叩くカリフに全員が固まる。

 

「あーもう、目が覚めちまったじゃねえかー。今は普通に深夜だからな? にしてもあちいなここ」

「えっと……カリフ……大丈夫なの?」

「? あぁ……れ? フェイトか? あれ? 倒れてんのオレ?」

 

驚愕するフェイトと皆の姿に呆然としていると、自分の顔に何か冷たいものが当たった。

 

上を見るとそこには目を潤ませて表情を崩すフェイトが見下ろしている。

 

「あれ? えっと……」

「うぐ……ひぐっ……」

 

大粒の涙を零すフェイトに思わず面を食らって押されてしまった。

 

何も状況が分かってないカリフはとりあえず声をかける。

 

「お、おい……」

「ぐじゅっ……ヒック……ばがぁ……ばかあああああぁぁぁぁ!」

「ファッ!?」

 

べそをかいてたと思ったらまさかの大音量攻撃ときた……それだけでも今のカリフには精神的にも身体的にも辛いものがあった。

 

だが、疲弊しているカリフにフェイトがさらなる追い打ちをかける。

 

「なんで死のうとしたの!? どうしてあんな無茶な戦い方したの!? なんで……!」

「え、えっと……なに言って……」

「本当に……本当に死んじゃう所だったんだよ! カリフの馬鹿ああぁぁぁぁぁぁ!」

「おいなんだこいつ! 誰か!」

 

カリフが何か言っているけど関係ない!

 

今は何が何でも言いたいことは言わせて欲しい!

 

この機会を逃すとまた離れていきそうだから……

 

「にゃはは……悪いけど……」

「怒っとるんはうちらも同じなんやで」

「ごめん、何も言えない」

「フェイト! もっと言ってやれ!」

「あたしらおちょくったバチだバーカバーカバーカ!」

「自業自得だ」

「「「ノーコメント」」」

「このくそったれ共がぁ!」

「カリフ!」

「ぐっ!」

 

舌打ちするカリフに自然と語調が強くなってしまうけど、今はこれでいい……

 

私にはどうしても許せないことがあったから……

 

「あの時、本当に死ぬ気だったんだよね……あんなに弱気なカリフなんて見たことなかったから……」

「……」

「怖かった……から……」

 

言いたいこと言ったら今度は不安が私の心に満ちていく。

 

何も言ってこないのは本当に死のうとしてたんだ……あの時の母さんみたいに

 

あの時はただひたすらそのことしか頭になかった。

 

「まあ……それくらいしなければ太刀打ちできるような奴じゃなかったからな……詫びるってのが無茶な話だ……」

「ううん……私も言い過ぎた……」

 

私もちょっと言い過ぎちゃった……最低だ。

 

カリフも落ち着いたから後でまた謝ろう……“あの時”のことも一緒に……

 

「よし、これで一通りの治療は終わったわ」

「いつの間に……そういえばなんか楽になって……」

「気のせいよ。私は表面的な怪我の治療だけ。そのお腹の傷も帰ってからじっくり治さないといけないんだから」

「面倒だな。ホッチキス持って来い。それでいいよもう」

「ちゃんと針で縫いなさい」

 

注文の多いカリフにシャマルが叱るように言い聞かせ、ユーノもバインドを解く。

 

「ところでよぉ、この態勢なんとかしようか?」

「態勢……?」

 

なんだろう? 近くのユーノやシャマルも苦笑している。

 

「フェイトちゃん大胆なの……」

「いい絵やな~。ニヒヒ……」

 

なんだか周りの視線がおかしい……皆が私とカリフ……というか私を見てくる。

 

「えっと、え?」

「テスタロッサ……流石にお前の歳でその……膝はちょっとな……」

 

膝? シグナムがなんだか別の方向を向いて困っているけど……

 

「とにかく、そろそろ降りる」

 

そう言ってカリフは私の膝から頭を……膝に頭……

 

「あ……」

「やべぇ……全然起きれる気がしねえ……」

 

そう言えば私……カリフの頭を膝に置いてて……っ!?

 

「あ……私……ああぁぁぁぁぁ~!」

「今頃気付いたの!?」

 

忘れてた……! 今までずっとカリフの頭が私の膝に……膝枕!

 

「ち、違うの! ただカリフを受け止めて、それで動けなくて……!」

「知ってる知ってる……早くおりっぞ」

「はう~……」

 

なんでそんなに冷静なの!? 映画とかだとこういう時って男の人は喜んでたよ!? 私のなんてダメだとか!……もう馬鹿!

 

「~~っ!」

「膨れたリスのほっぺが赤くなってんな」

「ヴィータ。今はそっとしとこな?」

 

後ろで膨れて涙を浮かべるフェイトのことなど気にせずにカリフは何とか魔法でできた蜘蛛の巣のようなネットから転がって降りようとする。

 

あまりにシュールな光景に誰もが苦笑する中、カリフは転がって地面に着いた。

 

「おい。もっと水ねえの?」

「あ、ちょっと待って」

 

なのはがいち早く新しいペットボトルの水を持ってくると、カリフはかろうじて動く手で受け取る。

 

キャップを開けるのが面倒だったのかキャップを握り壊した。

 

だが、その後の動作が厳しい状況だった。

 

飲むのに苦労するカリフに見かねてなのはとはやてが未だに唸っているフェイトに声をかける。

 

「フェイトちゃん。水が飲みたいって」

「飲めばいいよ!」

「でも一人で飲むのも苦労しとるんや。ここは手を差し伸べてやるべきやで」

「……他の人が」

「私やユーノくんたちはこれからアースラに連絡するから無理」

「私もそろそろリィンとのユニゾン切れそうやからできんわ。うちの子たちも恥ずかしながら献身とかやったことないんや。この場で一番相応しいのはフェイトちゃんなんやで」

「うぅ~……」

 

気持ちが傾いたフェイトは恥ずかしそうに唸った後、ブツブツ何か呟く。

 

「今は私しかいないから……仕方ないよね?」

「えっと……そんな重く考えなくても」

「やるよ。これは私にしかできないから」

「あぁ、はい」

 

何だか覚悟を決めたかのような面持ちにけしかけたとはいえ若干引くなのはたち二人

 

フェイトは残っていたペットボトルを持って顔を紅くしながらカリフの前で屈む。

 

「まだ水飲めないんでしょ? ほら、これ飲んで」

「マジか……でも今はその好意に任せよう。流石に今回は疲れた」

「うん……お疲れ様」

 

周りの皆は笑顔、もしくは苦笑しているだろう。

 

さっきまででは考えられなかった大円満が私たちを囲んでいる。

 

前の事件のように悲しい悲劇は起こらなかった。

 

私たちが、皆が頑張ったからこそこんな幸せを掴みとれたんだ。

 

 

 

こうして私たちの事件は終わった。

 

これからはまたいつもの日常が戻ってくるんだ。

 

そしたら、カリフに謝ろう……今はカリフを休ませて……

 

 

 

 

 

 

 

 

―――フェイト……

「え?」

 

小さな声が聞こえた。

 

その瞬間、私は後ろに弾き飛ばされた。

 

「あぐっ!」

 

弾き飛ばされて地面に打ち付けた所が痛い……

 

でも、一体何が……

 

 

 

 

 

「げほっ! がふっ!」

 

目の前で咳と共にビチャビチャと嫌な音が聞こえた。

 

気がした、なんてそんなものじゃなくて本当に聞こえた。

 

「あがっ……がは……!」

 

なんで? 全部終わって……また皆で一緒になれるんだよ?

 

なのになんで……カリフ……

 

 

 

 

そんなに血を吐いてるの?

 

それに胸から剣が突き抜けて……先が赤く濡れてる……なにそれ?

 

何がどうなって……

 

「カァリィフゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」

 

その瞬間、カリフの近くの地面から手が出てきて……誰かがでてきた。

 

全身が崩れかかっているのにその“誰か”はカリフと繋がっている剣を持って這い上がってきた。

 

そのペットボトル……踏まないでよ。

 

それはカリフに飲ませようとしてた物なのに……いや……

 

「これで……やっと私は……!」

 

そして、急に私の前で

 

 

 

赤い水が辺り一面を濡らした。

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