ロー「終わったか」
ゆっくりと、背中に背負った荷物を気遣うようにゆっくりと麦わら屋が地面へと降りてゆく。
ルフィ『トラ男、ありがとう』
ロー『…俺は何もしてないぞ』
ルフィ『しししし、お前と同盟を組んで、本当に良かった』
王の台地から、ドフラミンゴの下へ行くために麦わら屋に抱えられながら飛び降りる羽目になったときのことを思い出す。
終始ふざけた態度をしているあいつが、あの時だけやけに真摯で真面目に俺に礼を言った。
ロー「……、俺は何もしてねェよ。だからまあ、これで貸し借りは無しにしておいてやる。」
聞こえないと分かっていながら、麦わら屋に呼びかける。
声は歓声に遮られ、ルフィに届くことは無かった。
ドレスローザを歓声が包む。
偽りの王が倒れ、絶望の檻が消え去った。
10年間、苦しみ続けてきた国民たちは今、ようやく安堵と共に喜び合っている。
中でも玩具にされた者、家族や親しい人を玩具にされた者たちは互いに抱き合い、今日という日の奇跡を喜び合う。
ルフィ「ぶへェ〜〜〜〜」
ルフィの口から空気が抜けてゆく。限界を超えて戦い覇気を使い切ったルフィは、もはやギア4の姿を保てず地上へと落ちてゆく。
それでも背中に背負った彼の仲間を傷つけないよう、疲れ切った体であるがゆっくりと地面に降り立った。
ルフィ「ウタのやつ、まーた夢ん中か。」
そう言ってルフィは、腕の中に抱え直したウタの顔を見つめる。麦わら帽子を被り、安心しきった顔で眠る幼馴染の寝顔は、昔よりずっと大人びていた。だけどその幸せそうな寝顔が12年前、フーシャ村で歌を歌った後によく眠ってしまっていた幼馴染の顔と重なって見えて…。
ルフィ「ししし。」
ルフィはウタを起こさないよう、小声で笑う。そして両腕に幼馴染の重さを感じながら歩いてゆく。
周囲の喧騒から遠ざかるように。
自分は海賊だから。自分は救世主(ヒーロー)なんかでは無いから。
ルフィが命懸けで戦ったのは、友達が、そして何より自分の仲間がドフラミンゴのせいで泣いていたから。
彼にとって戦う理由はそれで十分で、結果的にこの国を救っただけだとルフィ自身が理解している。
だから今の自分に感謝の言葉や称賛の言葉は必要ないのだと、ドレスローザの民衆から離れてゆく。
だが彼は何も手に入れなかった訳では無い。
彼は彼にとって、何者にも替えがたい報酬をもう手に入れた。
だからもうこれ以上の物は要らないと、腕の中の“宝物”を優しく抱きながら、仲間たちのところへ歩き去って行った。
これにて私にとってのドレスローザ編(ホビウタ時空)は完結です。
しばらく誤字脱字を修正してから、活動報告に今回の話を書くきっかけや裏話なんかを書こうかなと考えています。