おれの宝物   作:Recent

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Fateコラボ(?)第二弾!!
もしもピンチのホビウタがドレスローザでとあるサーヴァントを召喚してしまったら…?というアイデアを受信してしまったので書いてしまいました。


歌姫と叛逆者

その漢は筋肉(マッスル)だった…

 

 

ーーードレスローザ 地下貿易港ーーー

 

SOP作戦は失敗した。

小人達の勇気も、勇敢な海の戦士の決死の覚悟も、圧倒的な力の前に粉砕された。

仲間を玩具にされ、その開放の為に奮戦した彼らはドンキホーテファミリーの最高幹部トレーボルの前に力尽き、全員が彼の粘液に拘束された。

 

トレーボル「べへへへ!ど、毒入りのグレープかと思ったら激辛のグレープとは!

小人はどこまでも馬鹿だな!んねー!」

シュガー「きたない、死んで」

トレーボル「死なねェ!! お前さっきびっくりして気絶仕掛けたんだからもっと緊張感もて!!」

 

切り札のタタバスコを食べさせられたウソップは悶絶したが、その顔を見て驚いたシュガーは気絶することなく、彼らを嘲笑っている。

 

ウタ「ギィ…ィ…」

 

麦わらの一味の“マスコット”ウタも、彼らと共に戦ったが力及ばず拘束されてしまっていた。

 

シュガー「何この玩具? わたしの命令に従わないなんて、どういうことかしら?」

トレーボル「んねー! だったらこいつらとまとめて燃やしちまうか?」

シュガー「そうね」

ウタ「ギィ……」

 

そして可燃性の粘液に拘束された彼らに、トレーボルはライターを放り投げようとするが…

 

 

ウタ(悔しい…、せっかく希望が見えたのに。ウソップも小人族の皆も…あんなに頑張ったのに…!

……あれ?)

 

そのとき、拘束されているウタの左腕が淡い光を放つ。

光はその腕に縫い付けられた黄色いひょうたんの様なマークから発せられ、徐々に強さを増していく。

 

シュガー「なにこれ? この玩具に光る機能でもあるの?」

ウタ「ギィ!?ギィギィ!!(わたしが聞きたいよ!? なんなのこれ!!)」

 

意味不明な事態に突然腕が光りだしたウタだけでなくシュガー達も困惑する。

 

 

???「過酷な圧政に耐え続けた少女よ、力を貸そう!

さあ、私の名前を呼びたまえ!」

ウタ「ギ、ギィ!?(だ、誰!!?)」

 

突然、ウタの頭に響く謎の声。

混乱し幻聴を疑うが、声は続く。

 

???「我が真名は●●●●●! さあ少女よ! 圧制者に鉄槌を下す為に、我が名を叫べ!」

ウタ「ギィィ…ギィ!(わ、訳がわからないけど…悪い人じゃないのかな。だったら!)」

 

直感で少なくとも悪人では無いと判断したウタは覚悟を決める。そもそも現状が最悪なのだ。ここから何があっても悪化することはないだろうと割り切り、声にならない声で彼の者の名を叫ぶ!

 

ウタ「ギィィーーー!!!(スパルタクスーーー!!!)」

 

ウタが叫んだ直後、ウタの腕に縫い付けられたマークが眩く輝く!

その光に、目を閉じることの出来ないウタを除く周囲の全ての人間は目を灼かれ、彼女から目を反らした。

 

シュガー「な、なんだったの…一体…?」

 

光が収まった後、至近距離で光を目にしたシュガーは状況を確認する為に涙目になりながら目を開けた。

 

…そして彼女はそれを目にしてしまった。

 

 

それは、筋肉(マッスル)だった。

 

 

くすんだ金色の髪、狂ったように朗らかな笑顔。そして鍛え上げられた青白い体には全身の至る所に傷が走っている。

 

腰布を除いて一切防具をつけず、手足に枷を嵌められたその男は、一見するとコロシアムの奴隷闘士のように見える。

だが、彼とこの国の奴隷闘士達では大きな違いがあるだろう。

ドフラミンゴファミリーの支配するこの国の闘士達の眼は、支配者を恐れ、諦め、妥協し、屈服した諦念に満ち濁りきっている。

 

だがこの男の澄んだ瞳には、そのような諦めの感情は欠片も無い。

 

彼こそはスパルタクス。弱者を守り圧制者を打倒するために大帝国に戦いを挑んだ大英雄である。

 

彼は自らを召喚した“玩具”を肩に乗せ、小さな“圧制者”へと歩み寄る。

腰を屈め目線を会わせ、シュガーへと静かに問いかける。

 

 

スパルタクス「問おう! 君は圧制者かね?」

 

 

シュガー「きゃあああああ!!!!!!」

 

 

至近距離で彼の笑顔と威圧感にさらされたシュガーはその恐怖で叫び、そして気絶してしまった。

 

そしてここに、10年間ドレスローザを支配し、そして12年間、一人の少女を苦しめ続けた呪いが解けた。

 

 

ーーードレスローザ 中心街ーーー

 

ウタ「と、とまって…とまってよぉ…」

スパルタクス「フハハハハハハ! いざ征かん!

圧制者を倒す為に!!」

 

人間に戻ってはいいが、そのままスパルタクスを名乗る謎の大男の肩に担がれたまま、彼とともにこの国を支配するドフラミンゴが待つ王宮へと進撃する羽目になったウタ。…彼女の抗議は欠片も聞き取ってもらえない。

 

ウタ「うぅぅ…たすけて……ルフィ…」

 

か細く、彼女がこの世で最も信頼する幼馴染の名前を呼ぶ。この喧騒では、人間に戻ったばかりで話すことすら覚束ない彼女の声など彼を抱えているスパルタクスにすら聞こえない…はずだった。

 

ルフィ「ウターーー!!!」

ウタ「ルフィ!」

 

彼を討ち取ろうと襲いかかる雑兵を覇王色の覇気で尽く気絶させ、反逆の英雄と彼に担がれた最愛の幼馴染のもとへ、未来の海賊王が現れる!

 

 

ルフィ「ウタを返せーー!!!」

 

ルフィの拳が、スパルタクスの顔面を捉える。

だが、岩をも砕く彼の拳を受けても、スパルタクスはわずかに仰け反っただけだった。

 

ルフィ「!!? 」

ウタ「る、ルフィ! まって、このひとは…」

スパルタクス「少年よ! 君がわたしのマスターの主人かね?」

ルフィ「主人…? 何言ってんだ? そいつはおれの仲間で、おれの大事だ友達だ!

返さねェならぶっ飛ばすぞ!!」

 

忘れさせられていた記憶を取り戻したルフィは、自分の仲間を、そして大切な幼馴染を連れ去ろうとする大男にかつてないほどの怒りをぶつける。

 

そんなルフィの真っ直ぐな感情を目の当たりにし、スパルタクスは嬉しそうに笑い、肩に担いでいたウタを優しく抱き上げ、ルフィへと差し出す。

 

スパルタクス「マスターよ、どうやら迎えが来たようだ。 さあ、行きなさい。」

ウタ「あ、ありが…とう……?」

ルフィ「ウタ!!」

 

唐突な行動に困惑しながらも、ここまで彼女を連れてきてくれたスパルタクスに感謝を伝えるウタと、ようやく再開できた幼馴染を抱きしめるルフィ。

 

ルフィ「ウタ…よがった……無事で本当に……」

ウタ「うん…しんぱいかけてごめんね…」

 

12年間共にいて、ようやく再び言葉を交わし抱き合うことのできた二人。その二人の様子を見ながら、反逆の英雄は告げる。

 

スパルタクス「誰よりも自由を愛する少年よ、我がマスターを頼むぞ。」

ルフィ「当たり前だ! おれは仲間を絶対に守る!!」

スパルタクス「マスターよ、過酷な圧政に耐え、決して心折れなかった強き少女よ。君と君の伴侶の将来に、幸多からんことを願おう。」

ウタ「えぇ、い、る、ルフィはそういうのじゃ…」

スパルタクス「さて、名残惜しいがマスターよ。最後にわたしの願いを聞いてくれ。」

 

顔を赤くして困惑するウタを置き去りにして勝手に話を進めるスパルタクス(狂人)。

 

スパルタクス「我が真名はスパルタクス。圧政に反逆する者なり。本来ならばマスターであっても我に命令すること能わず。されど此度の召喚は、マスターの、そしてこの国の人々の願いを受けたもの。

故にマスターよ、その左腕に宿る力を私に託してほしい。」

ウタ「力…?」

 

ウタは人間に戻ったあとも何故か左手の甲に貼り付き、光を放っている奇妙なひょうたん型のマークに目を向ける。

 

ルフィ「…! それ、おれが書いたやつか!」

ウタ「そっか、おもいだしてくれたんだ。そうだよ、これ、わたしたちの“しんじだい”のまーくだよ。」

 

マークを愛おしそうに撫でるウタと、懐かしそうにそのマークを眺めるルフィ。

 

ウタ「でも、たくすってどうすれば…?」

ルフィ「このマークはウタの宝物だ。勝手に持って行かせねェぞ!」

 

スパルタクスの言葉に困惑するウタを見て、ウタの宝物を奪わせまいとルフィが彼女を背中に庇う。

 

スパルタクス「マスターとその伴侶よ、心配するな。君たちの大切な物を略奪する気はない。

君はただ一言命じればいい。

決意を込めて“戦え”と!! “圧制者を討ち倒せ”と!!!」

 

ウタは、反逆の英雄のマスターに選ばれた少女はおずおずと問いかける。

 

ウタ「それだけでいいの…?」

スパルタクス「然り! 」

ウタ「…わかった」

ルフィ「ウタ…大丈夫か?」

ウタ「うん。ちょっとこわいけど、すぱるたくすはわるいひとじゃないから」

 

まだ慣れない大人の体でふらつき、ルフィに支えられながらも、ウタは真っ直ぐに立ち、スパルタクスと向き合う。

 

そして光を放ち続ける“しんじだいのマーク”の貼り付いた左手を突き出し、宣言する。

 

ウタ「おねがい、すぱるたくす。たたかって、あいつを、どふらみんごをたおして!!」

 

たどたどしく、だがそれ以上に力強く、人形として12年間を過ごした少女は反逆の英雄へ“命令”する。

 

そして左手の、“しんじだいのマーク”が輝く。

 

これは、幼少時代に競い合った少年から贈られた拙い、彼女の父親のかぶっていた麦わら帽子を模したマーク。

世界に忘れられた少女にとって数少ない、大切な人達との絆の証だった。

 

絆を取り戻した少女は、それを取り戻してくれた恩人のために、そこに宿った力を全てその恩人へと託す。

 

スパルタクス「ヌハハハハッ! 承知した!!!」

 

ウタの腕から発せされた光が全て、スパルタクスへと吸収されてゆく。

 

そして光を受け取ったスパルタクスの肉体が、その鍛え上げられた筋肉が肥大化してゆく。

 

ウタ「す、すぱるたくす…?」

ルフィ「うォォ! すっげェなマッチョのおっさん!」

 

肉体が肥大化し、もともと大柄だったスパルタクスの体は元の数倍に膨れ上がりる。

そして彼は目の前にそびえ立つ王の台地、そしてその上に存在する圧政の象徴たるこの国の王宮へ向き直る。

 

 

スパルタクス「おおッ、今まさにッ! 我が両脚は引力に叛逆せり!

人よ、刮目して仰ぎ見よ! この飛翔こそ解放の極致! 大逆境を覆す大理不尽! 自由なる翼ッ!

おおッ、今まさにッ! 我が両脚は引力に叛逆せり!」

 

そして彼は、圧政の象徴へ、そこにいるであろう圧制者の元へ翔び立つ!

 

スパルタクス「さあ圧制者よ! 我が愛を受け取りたまえ!

 

『極大逆境・疵獣咆哮(ウォークライ・オーバーロード)』!!!!」

 

 

重力に反逆し超高速で翔び立ち、ドフラミンゴ目掛けて飛翔したスパルタクスは王宮直上で彼の宝具の真名を開放し、圧制者を圧政の象徴ごと爆砕した。

 

 

ドフラミンゴ「な、何だこ…」

 

 

突然の強襲を受けたドフラミンゴは言葉を最後まで発することもできずに、その大爆発に巻き込まれた。

 

ウタ「すぱるたくす…」

ルフィ「マッチョのおっさん…」

 

一部始終を見届けたウタとルフィはただ呆然と、名前しか知らない大英雄の勇姿を見届けた。

 

 

 

 

その日、ドフラミンゴファミリーは彼らがかつて奪い取った城と共に完全崩壊した…。

 

 

後に、復興したドレスローザには2つの銅像が作られた。

一つは小人達と共に勇敢に戦った勇敢なる海の戦士、そしてもう一つは、圧制者を城ごと粉砕した偉大なる反逆者(マッスル)だった。

 

 




本当だったらドフラミンゴvsスパルタクスとかも書いてみたかったんですが、途中で力尽きました…

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