あと某掲示板の限界ウタ概念がかなり刺さったので、ちょっとその概念も話に取り入れようと思います。
ーーースリラーバーク ーーー
私の名前は“ウタ”。正確には本体の影だけど、わたしにとってもこの名前は特別だから今のわたしは“ウタ”だ。
名前と記憶を思い出したわたしは、他の動物ゾンビ達からこっそり離れて、周りの状況を探るために耳を澄ませる。
もともと人形だった本体の“わたし”はとても耳が良かった。
まあ、そもそも人形に耳なんて無いんだけど、聴覚はあったからそこは深く考えないようにしよう。
頑張ればかなり遠くでも、一味の仲間の心音を聞き取ることもできた。
しかも今のこのゾンビの体はなかなか高性能みたいで、人形の時より更に耳が良いみたい。この屋敷とメインマストを繋ぐ庭からでも、集中すれば一味の皆が何を話しているのか何となく聞き取れた。
ウタゾンビ「声も出せる。匂いも感じるし、お腹は減らないけどご飯も食べれる…」
10年間、人形の体で過ごした本体の“わたし”がどれほど願っても手に入れられなかった物を、影の“わたし”がこんな風に手に入れてしまったことに戸惑うし、申し訳無くも思う。
ウタゾンビ「せっかく話せるんだし、一味の皆に、ルフィに会いたいけど…」
今のわたしはいつもの人形ボディじゃない。見た目はウサギみたいなゾンビなんだ。たとえ話せたとしてもわたしがウタだなんて信じてもらえない。
ウタゾンビ「……嫌なこと思い出しちゃったな」
わたしの一番古い記憶。本体の“わたし”が麦わら帽子を被った赤い髪の海賊に必死にしがみつき、しかし無下に振り払われた記憶が蘇った。
???『なんだお前は、動く人形か?』
まるで知らない“モノ”を見るかのような訝しげな眼。
???『悪いな、俺達は海賊だからお前を連れて行ってやれないぞ。
“娘”でもいればプレゼントしてやったんだが、生憎うちはむさ苦しい男所帯なんだ。』
諭すように本体の“わたし”に語りかけ、わたしを振り払う“お父さん”だった人…。
……そこから“わたし”の記憶は曖昧だ。
どうやったかはっきり覚えていないけど、本体の“わたし”は彼の船に忍び込んでフーシャ村まで、ルフィのもとまで辿り着き、ルフィに“ウタ”と名付けて貰えた。
影の“わたし”には、本体が人形だった時の記憶しかない。でも、本体の“わたし”が本当は人形じゃないことはわかっている。
???『待って!!やだよォ!!置いてかないでよ!!!
ベックマン!! ルウ!! ホンゴウさん!!
なんで!!? なんで誰もわたしを覚えてないの!!?
わたしを置いてかないでよォ!!!
シャンクスーーー!!!!』
誰にも聞こえなかった本体の“わたし”の心の声。
彼らは人形になる前の“わたし”にとっての家族だったのだろう。その彼らが何故“わたし”を忘れたのか、そもそも何故“わたし”が人形になったのかはわからない。
でもこの記憶は“わたし”にとって最悪のトラウマだ。
…もう大切な誰かに忘れられるのは、あんな知らない“モノ”を見る目で見られるのは嫌だ。
ウタゾンビ「塩を食べれば、影(わたし)は本体のところに帰れるんだね…」
聞こえてきた会話から、ゾンビの弱点が塩で、これを口にすればソンビに入れられた影は元の持ち主のところへ戻るみたいだ。
本当なら今すぐ元の体に戻ったほうがいいのかもしれないけど。
ウタゾンビ「非力な人形じゃあ無理だったけど、今のわたしなら、皆の助けになれるかな…」
ルフィ達も本体の“わたし”と同じように影を奪われた。それに幽霊船で出会ったあの面白おかしい骸骨さんが、自分の影を取り戻すために戦っている。
それにナミが攫われて、何故かあのライオン顔の男と結婚させられそうになっている!!
ウタゾンビ「…ごめんね本体の“わたし”!
早く帰ってあげたいけどちょっとだけ、皆の手助けをさせて!」
…これは言い訳なのかもしれない。
本体から離れて、本体が出来ない事を、本体が10年間望んでも得られたかった事が出来ると時間を手放したくないわたしの醜いワガママなのかもしれない。
だけど…!
たとえ仲間に気付いてもらえなくてもいい。それでも本体の“わたし”を、役に立たない人形を仲間だと呼んでくれた大切な人たちの力になる為に、今わたしに出来ることをやらないと!
決意を抱いて、わたしは駆け出した!!
TO BE CONTINUE
補足説明:
原作には“影は生まれたときから本体に従うもう一つの魂”という説明がありました。そこから考えると、ホビホビの実の能力で玩具にされたウタにとって、人間だった頃の影と玩具になった後の影は別の存在なのではと作者は考察した次第です。
ですのでゾンビウタに入っている影は、玩具になる前の記憶は無く、はっきりと覚えているのはルフィに名付けられてからで、その前の記憶は曖昧です。