おれの宝物   作:Recent

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【注意】
この回には、ウタウタの実の能力についてのかなり自己流の解釈が入っています。ご不快になられる方もいるかもしれませんが、私の解釈するウタウタの能力はこうなのだと、おおらかな心でお読み下さい。


6話 天空に響く歌声

夢を見ていた。

 

12年振りの微睡みの中で、私は懐かしい光景を見た。

まだ幼いルフィが人形の私を背負って森の中を駆けている。

 

ルフィ『●●ー、エースー!助けてくれー!!』

 

ルフィと私を追いかけ回していた熊は、二人の少年によって倒される。

 

エース『情けねェなルフィ、あんな熊一人で倒しやがれ』

●●『まあまあ、ルフィはウタを守ってたんだ。無茶を言ってやるな』

 

ルフィがいて、エースがいて、●●がいて、私がいる。

コルボ山での日々は、シャンクス達と離れ離れになり、ルフィしか頼れる人がいないと思っていた私のモノクロの世界に色をくれた。

彼らが私を仲間だと、妹だと言ってくれた。私をただの“モノ”ではなく人間として扱ってくれた。だから私は、辛くても寂しくても、耐えられた。

 

でも、そんな幸せはあっさりと壊れてしまった。

そして●●は…

 

ーーーーーーーー

 

〜王の台地〜

 

●●「…タ、ウタ!」

 

肩を揺すられる。懐かしい夢を見ていた気がするけど、はっきりと思い出せない。

 

人間に戻って12年ぶりに歌を歌った。12年ぶりに能力を使った。

ルフィをちょっとだけ手助け出来た私は、満足して意識を手放した。そうしてなんだか懐かしい夢を見ていたんだけど…?

 

ウタ「うぅん、るふぃ…?」

 

なんとなく、私に呼びかける声の雰囲気がルフィのように聞こえて応えたのだけれど。

 

●●「あいつじゃなくて悪いな。だけど、緊急事態だからしっかり起きてくれ、ウタ。」

ウタ「……?」

 

私を優しく揺り起こしたのは、どこか懐かしい雰囲気を纏った青年だった。癖のある金髪にシルクハット、左目に大きな火傷を負った青年。私とは初対面の筈なのにその顔に浮かぶ笑顔は親しげで…!?

 

ウタ「さ、ぼ…?」

サボ「お、もう気づいたか。昔からお前は勘が良かったからな!」

 

サボ!そうサボだ!

私とルフィにとっての、もう一人のお兄ちゃん! 

 

ルフィと私とエース、そしてサボ。3人と1体で交わした兄弟盃を私は今でも鮮明に覚えている。

だからこそ驚いた。だって彼は…。

 

サボ「お互い色々、積もる話はあるが、時間があまりなさそうだ。見てみろ。」

 

王の台地から、なんだか太ましくなったルフィが空を飛んで、ドフラミンゴを追い詰めている様子が見えた!よし、そのままあんな奴ぶっ飛ばしてちゃえ!

そう思っていたら何故だか、ドフラミンゴの周りの地面や建物が“糸”になってルフィの攻撃を防いだ。しかもその糸がルフィに襲いかかる。

 

サボ「悪魔の実の能力の“覚醒”だ。悪魔の実の能力は稀に“覚醒”して、自分以外にも影響を与えるらしい」

 

サボが説明してくれた。

ルフィが切り札を切ったけど、相手もまだ奥の手があったらしい。

それでも鳥カゴを止めるため、ドフラミンゴを仕留めるために大技を叩き込んだルフィだが、止めの一撃を放つ前に、覇気切れで墜落しちゃった。

 

ウタ「ルフィ!!」

サボ「ルフィなら大丈夫だ。死んだ訳じゃないし、どうやら助けも向かったらしい。」

 

あ、確かに知らないおじさんに担がれたルフィがその場を離れてゆく。

でも、よく見ると別の方向から変な笑い方のごついおじさんがルフィに向けて突っ込んで行くのが見えた。どう見てもルフィを助けに行く、という風には見えない。

 

サボ「俺はあのバージェスを止めてくる。ドフラミンゴはルフィが必ず倒すだろうから、お前はルフィの仲間と一緒にいろよ」

 

一方的に要件を言うと、こっちが何か言う前に王の大地を飛び降りて行った。

一緒にいたコアラさんがプンスカ怒ってたけど、まあサボは思慮深く見えて結構勝手なところがあるからね。コアラさん、苦労するなぁ…。

 

 

 

徐々に収束する鳥カゴをなんとかしようと、ゾロ達はカゴを押す為に別行動に。私はウソップやコアラさんと一緒に避難しながら逃げ惑う人達を誘導する。

 

ウソップ「力ある者は街の東西へ行けー!!!」

 

トンタッタ族のお姫様の力で一時的に回復した戦士たちや民衆達。彼らの奮闘で鳥カゴが僅かな間だが止まったとき、多くの人達は歓喜していた。

だけど私は素直に喜べなかった。

 

ウタ「…これ、じゃあまだ、だ…め」

 

 

見聞色の覇気。12年間、見ることと聞くことしか出来なかった私はルフィ達との冒険の中でいつしか、その力を覚醒させていた。

とはいえ出来ることははぐれた仲間(主にゾロだ)の位置を皆に大まかに伝えたり、遠くからくる敵の存在を皆に知らせるくらいだった。

 

2年間、私はサニー号をトビウオライダーズやはっちゃん、それに一味を崩壊させた元凶でもある王下七武海“暴君”くまと守る合間に、シャッキーのバーでアルバイトをしながら鍛えてもらった。

私が無意識に見聞色の覇気を使っていたことを知ったシャッキーは、私に覇気の使い方、そして人形でも戦える手段を伝授してくれた。

何故かバーテンダーをさせられたのは、初めの頃は釈然としなかったけどね!

 

 

ともかく、そうやって身につけた見聞色の覇気で私はこの島全体の声を拾っている。多くの人の歓喜や希望。だけどそれ以上に、もう皆疲れ切っている。カゴを押してる人達も、マンシェリー姫の能力が切れかけてバタバタと倒れている。

収束の中心である新王の大地近くまで辿り着いた人達も、そこでルフィを探しながら、時間を稼ぐため挑んできたコロシアムの猛者達を片手間に蹂躙するドフラミンゴを見て絶望し、足を止めている。

 

私の見聞色で感じられるルフィは、まだ覇気が回復していない。

トラ男君と一緒にいるみたいだから、まだ無事なのはわかるけど、ルフィが復活するよりも皆が鳥かごで切り刻まれる方が早そうだ。

 

ウタ「どうし…よう」

 

まただ。また私は何も出来ない。

皆の役に立つために、2年間修行したのに。ウソップのお陰で人間に戻ることができたのに。せっかく、ルフィに思い出してもらえたのに…!

 

ルフィに預けられた麦わら帽子のつばを握る。

ルフィの宝物。私のお父さんが、ルフィの憧れる偉大な海賊が、ルフィへ預けた大切な帽子。

 

私を忘れた大好きなお父さん。賑やかで楽しかった、私にはとっても優しかった赤髪海賊団の皆。

会いたいなァ。もう一度、あの人達に会いたいよ。

 

恐怖で足が縺れる。混乱の中でウソップ達とはぐれてしまって、どうにか人の流れを潜って脱出したが、ウソップ達とはかなり離れてしまった。

 

とても、心細くて。涙が出そうで。

 

 

ドレスローザを再び絶望が覆ってゆく。

力尽きる戦士達、再び動き出す鳥カゴ。未だ健在なドフラミンゴ。

あと一歩の所で届かない勝利に、ドレスローザの人々が諦念と絶望を抱き膝を折ってゆく。

 

そんな絶望に、私も膝をつきそうになったけど…。

 

ルフィ『ウタ、帽子預かっといてくれ』

ルフィ『今からドフラミンゴをぶっ飛ばして来るからよ。それまで、もうちょっとだけ、待っててくれ』

 

ルフィの、私の大好きな幼馴染の、私達の船長の言葉を思い出す。そうだ。ルフィなら!こんな絶望、ぶっ飛ばしてくれる!

ルフィが回復するまでのあとちょっとなんだ!国中の皆に、あとちょっとだけ頑張ってと伝えたいのに!

 

何か無いだろうか、そうだ、さっき王様が皆に声を届けるために使っていた電伝虫とか!

でも周囲を見渡しても、そんな都合よくあるわけがなくて。

そもそもまだ上手く話せない私じゃあ、皆に説明なんて出来ないよ!?

 

もしここがウタワールドなら、いくらでも遠くに声を届けられるのに…?

 

 

サボ『悪魔の実の能力の“覚醒”だ。悪魔の実の能力は稀に“覚醒”して、自分以外にも影響を与えるらしい』

 

 

唐突に、ついさっき再開したもう一人の兄の言葉を思い出した。

悪魔の実の“覚醒”。能力が自身だけでなく、周囲にも影響を及ぼす、能力者の次の段階(ステージ)。

 

できるか分からない。そもそも、物心ついた頃から既に能力者だったとはいえ、私はこの12年間、全く能力を使っていなかったのだ。

だけど、ここで勇気を出さなければ!ここで一歩を踏み出さなければ、私の大切な仲間が、私の大好きな幼馴染が死んでしまうから!だから…!!

 

 

気づいたら私は、瓦礫の丘の上に立っていた。

これからやることは部の悪い賭けだ。負けの目の方が遥かに多い。成功しても、私は真っ先にドフラミンゴに目をつけられ、殺されるかもしれない。

 

脚が震える。これは緊張か、それとも恐怖だろうか。人間の感覚が久々過ぎて、よくわかんないや。

 

大きく息を吸い込む。

つま先でトントンと、地面を叩く。

 

これから私は歌う。ここは私のステージ。

 

歌う曲は“私は最強”。

この曲は、もし自分が人間に戻れたら、皆に聞いてもらおうと私が書き溜めて、ブルックに清書してもらった曲の一つ。

 

これは応援歌。自分自身と、そして私の大切な仲間たちへ向けた、励ましと、鼓舞の歌。

こんな状況だからこそ歌うべきだと、私が決めた。

 

♪さぁ 怖くはない♪

♪不安はない♪

 

声量も技量も、とても満足のいくものじゃない。それでも再び歌うことが出来た万感の喜びと、仲間への感謝を込めて。

絶望に屈して膝を負った人々に希望を届けるために、力の限り歌う。

 

だからこそ今、奇跡は起きる。

 

初めは歌声だけだった。

だが、瓦礫の丘に響いた歌声に反応するかのように、美しく明るい楽器の調べが響き渡る。

エレクトーンが、ドラムが、トランペットが。彼女の周りに展開した様々な楽器の音色が、彼女の歌の伴奏を務める。

 

楽器の伴奏に導かれるように、彼女の歌声が、悪意の檻に閉ざされた天空(ソラ)に響き渡った!

 

 

TO BE CONTINUE




次回、ドフラミンゴ戦決着!(予定)
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