白箱探偵社の最高傑作   作:mofumofu1155

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Admission~入学~

4月。

 

新しい生活が始まり、人々の期待と不安を心地良い風が運んでくれる移り変わりの季節。

 

学生は学年が上がったり、進学したりと今までの環境から巣立ち、社会人は今までの立場から変わり大人として日本に貢献するために羽ばたく。

 

この始まりの時期に、多くの人がアップデートされた世界を楽しみにしている。だけど、中には今来の環境が変わってしまうことを恐れている人もいるだろう。

 

人間は本人すら知らない無意識の間に変化を嫌う性質がある。従来の安全な住処を勝手にリフォームされるのは不安で仕方がないだろう。

 

それ自体が臆病とは言わない。それは自分が人間だということを立派に証明する要素だ。

 

そんな柔らかでほのぼのとした雰囲気に俺も初めての学校生活に向けて準備をしている。

 

「ネクタイは…曲がっていないな。」

 

服屋の試着室にある縦長の鏡の前に立ち、自分の身嗜みを確認する。

 

人間の第一印象は会って数秒で決まると科学的に説明されている。ちょっとした服装の乱れで悪印象を持たれることは現代社会では珍しくない。

 

出来るだけ良い印象に見られるようにしっかり整えておきたい。

 

等身大に映し出された鏡の世界の自分を見ても、ネクタイはしっかり伸びており、制服もシワなく新品らしさを出してくれている。大丈夫そうだな。

 

髪もいつも通り、綺麗な癖毛をしている。…ワックスやリンスを使っても生まれつきのこの髪型を変えることができない。おそらく、遺伝子レベルで構成されているのだろう。

 

新生活に合わせて、髪型を変えようかなと考えたが、それで自分の容姿に違和感を感じるかもしれないから断念した。そのため、この15年間変わっていない髪型と癖毛と共に学校に行くことに。

 

「8時5分か。そろそろ行くか。」

 

未だ操作に不慣れなスマホで時間を見るとちょうど良い時間になっていた。

 

俺は昨晩用意したスクールバックを肩に担ぎ、壁にかけている茶色のマフラーを首に巻く。

 

これは………大切な人が作ってくれた最初で最後の思い出の品だ。もう4年間は愛用しているな。

 

そうして準備を終えた俺はこのホテルから去る。

 

坂柳理事長から依頼を受けて1ヶ月。俺は白箱探偵社に戻り、構成員に任務の内容を伝えることにした。爺さんはとっくに知っていたが八神達は情報を得ていないため、しっかり連絡を取った。他の依頼もあるのでスケジュールを変更してもらったり、溜まっている依頼を解消したりと中々に大変な30日間だったのは記憶に新しい。

 

この事件は未だに白箱探偵社でも解決できていない唯一の事件だ。他の構成員もやる気を見せており、八神と天沢は年齢を偽装して俺と一緒に入学しようとしていた。だが、この依頼は単独で調査した方が効率も良いし勘付かれる確率が減るため、八神と天沢には外部でゴエティア教について調べてもらうことに。

 

俺は普通に入学試験を受け、無事に合格することに。坂柳理事長は俺のことを知っているが、他の教員は正体を知らない。そのため、一般的な学生という印象を試験官に与えるためにしっかりと参加した。

 

だが、高度育成高等学校に入学するための条件はテストや面接だけではないらしく、本当の試験は既に終えていたようだ。この学校が特殊なのは合格の評価からだったようで。

 

そうして合格通知を受け取った俺は一々京都まで帰るのが面倒くさかったため、東京のホテルに入学式が始まるまで泊まることにした。1週間程度だったが、最上階からの景色や充実した設備と料理はとても良かった。次行く機会があったらまた来たいものだ。

 

そんな過去を振り返りながら、俺はホテルでチェックインを終え、愛車を停車している地下駐車場へと向かう。

 

蛍光灯を光源に少し無気味な雰囲気の駐車場から1週間前自分が停めた場所へと歩む。

 

高級ホテル用の駐車場なのか停められている。社会人の年収10年分以上はありそうな車がぞろぞろと。

 

強盗をするよりここで車を1つ盗む方が儲かるだろう。だからか整備が厳しい。

 

まあ、もし俺のバイクを盗むゴミがいたら、地の果てまで追いかけ必ず捕まえてやるが。持てるコネと力の全てを行使して。厳重な防犯対策をしているのでそんなことはないだろうけど。

 

そんなことを考えて少し心配していたが、大丈夫そうだ。俺の愛車である”Vincent-HRD Series C Black Shadow”は何事もなかったようでその黒いボディから宝石のような光沢を輝かせていた。

 

Vincent-HRD Series C Black Shadow。バイク好きなら皆知っているだろう。イギリスに存在した伝説のメーカーであるヴィンセントで製造されたヴィンテージバイク。俺のは1931年製のもので7230万円で購入した世界でも希少な高級品だ。

 

「さっさと準備しないと。」

 

時間も時間なので、ポケットから鍵を取り出しエンジンをかける。バイクが出す独特の排気音を聞き、シートに腰を下ろし、ハンドルに手を伸ばす。

 

後は、出発できるようにバイクの向きをちゃんと変えて、操作するだけ。

 

レバーを握り、レバーを押し下げてギアを入れる。そして、アクセルを捻り、レバーの力を少しずつ抜いていく。そうすると、少しバイクが進むので、それに合わせてレバーを完全に離す。マフラーがゆらりゆらり風に身をまかせ揺れていることを感じ、走れるようになることを確認する。

 

「それじゃあ行くか。」

 

 

 

「到着っと。」

 

高度育成高等学校用の駐車場にバイクを駐車させる。

 

周りを見渡すと息子や娘を見送るためか数台の車が停まっていた。この学校は入学したら3年間外出することができない。そのため、彼らは最後の会話を楽しんでいる。

 

何人かはバイクで入学してきた俺を物珍しい目で見ている。

 

先程、東京の栄えている建物を見ながら道路を走っている時も警察に呼び止められた。折角、春の温かい風を感じながら走っていたのに、興が醒めてしまった。まあ、俺にも問題があるので、あまり文句は言えない。

 

検挙理由は無免許運転を疑われたからだ。大型二輪免許は18歳からなのに、学生服の俺がバイクを走っているの見かけたのだ。それは捕まるわけだ。

 

だけど、俺は免許を持っているんだ。

 

特殊免許制度。最近政府が法定した特別な制度で、年齢が足りていなくても実力や精神面、安全性の確認が認められると特別に免許を取得することができるというものだ。

 

俺はその試験に無事に合格し、まだ15歳ながらバイクを運転できているわけだ。

 

まあ、この試験に合格している人が少ないので、疑われるのは仕方がない。警察もしっかり仕事を果たしたまで、誰も悪くない。

 

しかし、この手のことで止められるのはよくある。なんとかしてほしいが、最近できた制度なのでいきなり完璧にするのは難しいか。せめて、それ専用のシールなどを作ってくれたらいいのだが………

 

ニャ〜

 

「うん?」

 

愛らしい鳴き声が聞こえた先を見ると、黒猫がこちらを縦長のスリット状の瞳孔で見つめていた。

 

溝近くのアスファルトの上に短い手足を一生懸命伸ばして寝ている姿は微笑ましい。日向ぼっこをしているのかとても気持ち良さそうだ。

 

「邪魔しちゃいけないな。」

 

人間だって楽な時に邪魔されるのは何よりの苦痛だ。俺も本を読んでいる時に騒がれるのは本当にやめてほしい。それと同じ状況にいる猫さんの妨害をするなんてできない。

 

俺はそのまま猫さんを放置し、校舎へと向かうことにした。

 

(そもそも、この学校で猫を飼ってもいいのか?寮で飼育するのは流石に厳しいと思うが。まあ、外から侵入してきただけだろう。)

 

それにしても大きい。

 

高度育成高等学校は日本政府が管理している学校だけあって、最先端の設備でできている。

 

校舎全体を見たわけではないが、大学以上の規模なのは予想がつく。

 

そうして、赤いレンガの道に従って歩いたのだが、何故か駐車場の時以上の視線を集めている。なんでだ?

 

バイクを運転している高校生という存在以上に今の俺は注目されてしまっている。周囲の同級生が俺を見ながら何かを話しており、少し騒がしい。何かやったか?服装の乱れ程度でこの視線の集まりはおかしい。少し周りに視線を向けて違いを探す。

 

…もしかしてマフラーか?確かに温和な気温になってきたこの時期にマフラーをしている人は珍しい。そのせいで注目を浴びてしまったのか。…それでもこの視線の集まりは多すぎると思うが。

 

マフラーが原因なら外せばいいと思うが、それはできない。これは俺の憧れの人が作った大切な物だ。たとえ夏になっても外すつもりはない。

 

その後も注目の的になったが、気にしてもキリがないので受け流すことにした。

 

「俺のクラスは………Dクラスか。」

 

満員電車並みに混雑していた塊を掻き分けて、クラス分け表を確認した。

 

坂柳理事長にはどこのクラスでもいいと伝えたので、どこのクラスか分からなかったが、A・B・C・Dの4つの中でDクラスのようだ。

 

アルファベットでクラス分けをするなんて珍しいものだ。普通は数字なのだが…まあ、特殊な学校だから何かあるのだろう。

 

それに、上空の”あれ”が鬱陶しくて仕方がない。

 

そんなことを考えながら俺はDクラスの教室へと向かう。

 

 

 

…つもりだった。

 

「…ここにも無い。はあ〜どこにいったの本当に。」

 

校舎へと向かう途中でとある女子生徒を見かけた。

 

彼女は何かを探しているのか、体を下に傾けて一生懸命地面を見渡している。

 

周りの生徒も彼女を見かけるが面倒事に関わりたくのか、知らんふりして校舎の中へと向かっていった。

 

俺もそのまま無視しても良かったが、仕事柄のなのか無意識かの感情なのか、困っている彼女を放っておけないと思い、助けることに。

 

「あんた大丈夫か?」

 

「はっ……あんた誰?」

 

女子生徒は話しかけたことが嫌だったのか不機嫌な顔をしてこちらを見上げてくる。

 

突然知らない人に驚いたり、助けられることに対する申し訳なさなどとは違い、拒絶の反応。人と話すのが苦手というより嫌いという感じだ。

 

「何か探し物があるんだろ?手伝うよ。」

 

「別にいい。1人で探せるから。」

 

これ以上の会話は不要なのか、こちらに向けていた視線を再び地面へと下ろす。

 

なんというか無愛想な女子だな。そんなに他人と関わるのが嫌いなのか。

 

困っている本人から必要ないと言われた以上、近づくのは邪魔になるだけだろう。

 

しかし、彼女はとても中々探し物が見つからないことにイライラしているのか乱暴に草むしりをかけわている。とても冷静とは言えない慌てている様子だ。探し物の探索は苦戦しているようで、このままやっても探すのは困難だろう。

 

「それにしては苦戦しているようだが?」

 

「うっさ。もう少しで見つかるから。」

 

「何を根拠にそう言ってるんだ?こんな校舎の裏側を捜索している時点で察しはつく。どうせ、自分が通った道を探しても見つからなかったから、僅かな希望を信じてこの辺を見ているんだろ?」

 

「…………ッチ。」

 

図星を言われて何も言い返せないのだろう。風に消えそうな声量で舌打ちをした。

 

少し追い詰めた言い方だったかもしれないが、彼女が張り詰めた見栄を破るには必要なことだ。

 

これで1人で探せるという社会的な言い訳は消え、人と関わりたくないという私的な理由だけになった。

 

「あ〜もう!そうだよ!見つからないんだよ!面倒くさいな本当!」

 

「面倒くさいのはお前もだよ。」

 

いつも通りに追い詰めてしまい怒らせてしまった。やっぱりやり過ぎてしまったか。

 

ここまで女子にしつこく絡む俺は中々の物狂いだな。普通なら協力するか・お断りするかの二択だったのに捻れに捻れてしまった。嘘をついてまで人と距離を空けようとする彼女と断られているのにしつこく関わろうとする俺のせいで。

 

「人と協力するのが嫌かもしれないけど、時とタイミングによって頼ることも大切だ思うぞ。」

 

「説教すんなし。後、勝手に決めつけるな。」

 

「じゃあ嫌いじゃないのか?」

 

「…嫌いだけど。」

 

「ほらな。」

 

なんとも捻くれている生徒と出会ってしまった。天沢や八神と比べたら面倒さは感じないが。まさか、人生初の学校生活で話しかけることになるのがこの娘になるなんて。

 

「それで、何を失くしたんだ?」

 

「……匂香。ピンク色の。」

 

彼女も拒むのを諦めたようだ。ムシャクシャした様子で面倒くさそうに答える。自分で言うのもあれだ面倒くさい真似をしてしまった。

 

それにしても匂香か。派手な髪型から現代風の人物だと思ったが、随分和風な物を持っているんだな。

 

「桃色だったら探しやすいと思うが。」

 

「私もそう思ったけど無いんだよ。」

 

「道端の草むらとか木の近くは?」

 

「そこも探した。でも見つからなかった。」

 

「いつ頃に失くしたことに気づいたんだ?」

 

「バスを降りた時にはあったはず。そこからは分からないけど。」

 

「なるほど…」

 

出来る限りの場所は探したみたいだ。今も校舎裏を探しているがおそらく無いだろう。そもそも通っていない場所に探し物があるのは人為的な行動が干渉しなければ不可能だ。この初日から名門校に入学する生徒がそんな非社会的なことをするとは思えないが。

 

「多分、誰かが拾ったんだと思う。」

 

「確かにその可能性はあるな。優しい人が拾って先生に届けたかもしれないし。」

 

こんなに探しているのに見つからないのはおかしいだろう。これが小さなキーホルダーとかなら分かるが匂香なんて目につくものが見当たらないのは異常だ。盗んだ人がいる可能性は少ないし、誰かが拾ったという線が正しいだろう。

 

「ちなみに聞くが、匂香には何を入れてたんだ?」

 

「確か………アカバナ?ヒョウタンボクだったはず。」

 

「アカバナヒョウタンボク?」

 

アカバナヒョウタンボクって確か…

 

「もういいよ。後で先生に聞いて確認するから。」

 

彼女はいくら探しても見つからないことに痺れをきたし、ここから去ろうとする。

 

先生に届けらていることを期待しているようだが、それは間違いだ。

 

先生に聞いても多分手掛かりを得ることはできないだろう。何故なら、彼女の匂香は誰かに盗まれたのだから。

 

「匂香の場所が分かったかもしれない。」

 

「本当?」

 

「ああ。ついてきてくれ。」

 

俺は犯人が潜伏しているであろう場所へ彼女と共に向かう。

 

俺が先程通った場所。

 

俺の宝物を停めている場所へと。

 

[newpage]

 

「ここって、駐車場?」

 

「そうだ。ここに匂香を盗んだ犯人がいる。」

 

そう彼女に伝え、俺は溝の中を覗き込む。

 

先程まで容疑者が休んでいた場所の近く。こちらに向けて可愛らしい声をかけてくれた小さな犯人。

 

ピンク色の匂香に夢中になりながら、突然現れた俺へと驚愕の視線を向ける黒猫がそこにはいた。

 

「えっ、なんて猫が?」

 

彼女はまさかの犯人の正体に驚きの表情を見せる。

 

「アカバナヒョウタンボクは猫のフェロモンを刺激する匂いをしているんだ。」

 

「マタタビみたいな感じ?」

 

「ああ。それで猫が魅了されたんだ。」

 

「でも、どうしてここが分かったの?」

 

「先程ここで猫が日向ぼっこをしているのを見かけたからな。警戒心を強い猫が日向ぼっこをするほどリラックスしていることからこの辺りが縄張りなのは予想がつく。また、猫は暗くて狭い所が好きという習性がある。後は、その条件に当てはまる所を探せば解決というわけだ。」

 

車によって日陰ができた狭い溝。これほど格好の場所はない。

 

「あんた頭良いよね。」

 

「ただ豆知識が好きなだけだ。」

 

これで依頼?は完了だな。…無理矢理受理した依頼かもしれないけど。

 

「ほら猫ちゃん〜それ返してね〜。」

 

「…………………」

 

まるで別人レベルの豹変ぶりを見せてきた。俺と猫の態度の違いに天と地程の差があるのだが。てか、そんなに可愛い声出せるんだな。

 

「何その目。ちなみに今の姿を他人に見せたら殺すから。」

 

「…承知しました。」

 

彼女の目は本気だ。本当にこの情報を拡散したら殺しに来るかもしれない。それほど鋭くて怖い目をしていた。女子がしていい目ではなかった。

 

彼女は俺に死の警告をすると、黒猫から匂香を返してもらおうと手を伸ばす。

 

「おい、猫は今興奮状態で危険——

 

ニャアァー!!

 

「きゃっ。」

 

少し遅かった。俺が注意する前に彼女が荒ぶっている猫に触れたことで、溝から出て行ってしまった。彼女は突然の攻撃に驚き、尻もちをついてしまう。

 

「大丈夫か?」

 

「大丈夫よ。だけど猫ちゃんが。」

 

外敵から宝物を守るために猫は圧倒的身体能力を見せ、一瞬で近くの木の頂上を目指して登る。

 

「どうしよう?これ登らないといけないの?」

 

猫が登った木は綺麗に垂直に育っており、猫はまだしも人間が登るのはきつい。その道を通じている者なら可能だが、彼女の肉体を見る限り厳しいだろう。

 

なら、俺がするしかない。

 

「これ持ってて。」

 

「ちょっと!えっ?」

 

俺は彼女に鞄を渡し、壁のように立つ木に向かってジャンプする。そして、樹皮に触れた腕と脚に力を入れて、クライミングのように駆け上がる。

 

あまりの早さに猫も対応できなかったのか、急いで隣の木に飛び移ろうとするが、残念だ。それをする前に俺が捕まえる方が早い。

 

「捕まえた。」

 

猫を抱き抱え、彼女のいる下へと戻る。

 

後は猫から匂香を取り返すだけ。

 

俺は興奮状態の猫を落ち着かせるために首に右手の人差し指を向けて、キーボードを優しく打つような感覚で刺す。

 

「うそ。」

 

それを受けた猫は人格が変わったと錯覚するほど、大人しくなり、その隙に匂香を回収する。

 

「…ありがとう。」

 

「どういたしまして。」

 

こうして入学初日からの小さなトラブルは解決した。

 

「あんたうざくて面倒くさい変態だと思ってたけど…助けてくれたことは…感謝してる。」

 

「中々ひどい評価だな。」

 

自覚はあるが、他人から直接言われると辛いものがある。

 

「…あんた名前は?」

 

「綾小路清隆。」

 

「そう…私は姫野ユキ。」

 

「へえ。可愛らしい名前だな。」

 

「ぶっ飛ばすぞ。」

 

初めての自己紹介がこのタイミングになるとは思わなかった。

 

それにしても入学する前からこんな想定外のことが起きるなんて。全く予想のできない生活だ。これからどうなることやら。

 

そんなことを思っていたその時。

 

キーンコーンカーンコーン

 

聞きたく無い音が聞こえてきた。本来なら教室で聞くはずだったメロディーを。

 

「…もしかして。」

 

「ああ…遅刻だ。」

 

初めての学校生活初日は見事な遅刻で幕を上げた。本当にこんなことになるなんて。

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