Awakening-或るウマ娘の物語-   作:BuddPioneer

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第肆話ーWinning Liveー

 レースが終わったら、必ずあるもの。そう、ウイニングライブである。ここで、私にはある悩みがあった。そう、重賞のウイニングライブでセンターを務めたことはないのである。一応G1にも出るから、ちゃんと振り付けの練習はしてきた。不安では無いけど、そもそも、重賞初制覇がこの天皇賞・秋なのである。緊張するなと言われる方が無理だろう。

 結論から言うと、私は最後までやりきった。初めて踊るG1のセンター。みんなの視線が一線に集まる。というか、観客の数が私が出ているレースの比じゃない。熱気も半端じゃないくらい伝わってくる。

 こんな中にいる私。ステージに立った時から、私の足はガックガク、心臓もバックバク。口はコイのようにパックパク。でも、イントロが流れ出したら、自然と身体が動く。歌詞も自然と口から出ていた。キレッキレとまではいかないけど、自分の中ではほぼ完璧に近いライブだったと思う。そんなわけで、無事にライブを終えた私だったが、まだ「G1を制した」という実感が無かった。

 

 ライブを無事に終えた私は、舞台裏の椅子に座って少し休んでいた。何というか、嵐のように訪れて、嵐のように去っていった、という印象しかなかった。実は夢でしたー!というオチも考えて、何度かほっぺをつねってみたけど、結局夢ではないと分かった。でも、何度思い返しても、私が勝った、と思うことはできなかった。

 

『私、本当に勝ったのかな・・・?』

 

 そう思いながら、ウイニングを終えた私は、控え室に戻るため、廊下を歩いていた。そこで、あるウマ娘とすれ違う。

 

「あ。」

 

 そのウマ娘とは、

 

「ごきげんよう。ギャロップダイナさん、だったかな?」

 

「し、シンボリルドルフ生徒会長・・・。」

 

 シンボリルドルフ生徒会長その人であった。私とルドルフさんは、その場で相対する。しばしの沈黙の後、ルドルフさんが動いた。そして、私の肩に手を置いてこう言った。

 

「優勝、おめでとう。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

 突然の事態に、私の脳が理解できていない。

 

「ではまた。」

 

 そういうと、ルドルフさんは去っていった。私は、しばしの間立ち尽くし、目をぱちくりさせていた。

 

 しばらくの間、私はそこでフリーズしたままだった。だけど、そのフリーズは突如として打ち砕かれる。

 

「どーん!」

 

「おっぶぅっ?!?!?!」

 

「どーしたのさ?廊下で棒立ちしちゃって???それよりも、今日のレース、スゴかったじゃない!私は6着だったけど、ダイナちゃん、1着になっちゃうなんて!」

 

 アカネダイモンちゃんに後ろから追突されたのだった。突然の追突に、私は変な声を出してしまう。

 

「よっ。今日のレース、スゴかったぞ。」

 

「ありがとうございます、ニホンピロウイナーさん。」

 

 いつの間にか、ニホンピロウイナーさんも来ていて、私を労ってくれた。

 

「前回の安田記念ではアタシが勝ったけど、今回のレースでは、4着かな。まあ、見事にしてやられた、って感じだったよ。勿論、次回は負けないけどね。」

 

 2人とも、私の勝利を祝ってくれた。この時、私はアカネダイモンちゃん、ニホンピロウイナーさん、そしてシンボリルドルフさんの3人に祝われたことで、私はようやく理解しつつあった。そう。

 

私は、このレースに勝ったんだ、と。

 

 勿論、結果は知っていた。でも、心までは結果の理解に追いついていなかったのである。でも、今、ようやく、私は理解できたんだ。

 

「2人とも、本当にありがとうございます。私、ようやく理解できたんです。このレースに勝ったんだ、って。」

 

 この時の私の表情は、本当に眩しいくらいの、心からの笑顔だったと思う。

 

「礼は別に要らないよ~。次は私も負けないけどね!」

 

「どういたしまして。勿論、アタシも次は負けるつもりなんてないよ。」

 

 2人が言葉を返す。何て言えばいいんだろう。やっぱり、この2人と一緒にいると、何処か落ち着くところがある。

 

「ふふっ、次も私が勝っちゃうかもしれませんよ?」

 

 私も気がついたら、言葉が出ていた。この後も、みんなで一緒にレースに出て、そして、着順に関係なく心の底から笑い合いたい。私はそう思うようになっていた。勿論、勝ちたいけどね!

 

「よーし、次のレースも一緒に頑張るぞー!」

 

「「おー!」」

 

 私の言葉に、2人が言葉を返す。私たちのレースは、これからも終わることはないだろう。だって、これからも、レースは続くんだから。

 

<完>




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