東の海、最弱の海と呼ばれるこの海に浮かぶ一つの小舟、白鳥を模したその小舟が大海原を進む
パタパタパタパタ
「頑張れ頑張れ〜ドットさん♪目指すはバラティエ、美味しいご飯♪」
『クェー‼︎』
いや正確にはその小舟は海を進んではいない、まるでスワンボートのような小舟は空を飛んでいるのだ
そんな空飛ぶ小舟に乗る陽気な少女、名はルミナ
彼女は今常連になりつつある海上レストラン“バラティエ“に向かう途中で凄く気分が良いのである
「うへへ♪ドットさん今日はねぇ♪グル眉コックがマウンテンプリンを作ってくれてるんだって♪」
『クェ?』
今日はバラティエの副料理長サンジがルミナの為に巨大なプリンを作ってくれる日であり三度の飯よりプリンが大好きなルミナはそれでご機嫌なのだがルミナは基本的にあまり人の名前を覚えようとしない
だいたい見た目と身体的特徴で勝手に呼び名を決める割と失礼なやつである
そんなルミナを運ぶ相棒とも呼べるスワンボート、ドットさんは首を傾げながらも懸命に翼を羽ばたかせバラティエへと飛んでいく
「あれ?ドットさんちょっと待って!何か弱々しい気配を感じる・・うん、でも数は沢山!ちょっと行ってみよう」
もしかすると遭難者なんじゃないかと確認を兼ねてその気配のする方向へと進路を変えるルミナ、ドットさんもルミナが指を指した方向を確認しその方向へと旋回していく
「うは〜派手にやられてるね〜!』
ルミナがその場に到着するのにそう時間は掛からなかった、そこでルミナが目にしたのはこれ以上の航海は出来ない程ボロボロの巨大なガレオン船だった
「よく見たら海賊みたいだし航海中の事故や事件は自己責任って事で」
ボロボロだが破れた帆に描かれているのは間違いなく海賊船の象徴ともいえる海賊旗が、これが一般市民が乗る船や商船だったら話は別だが相手は海賊、助ける義理は無いとルミナは進路をバラティエへと戻し旋回しようとすると
『頼む・・助けてくれ・・・頼む』
何やらガレオン船からか細い声でルミナに助けを求める声が
「あちゃ〜‼︎命令口調だったら無視してたけどお願いされちゃ仕方ないなー」
見ず知らずの海賊に命令される謂れも従う義理もないが縋るように助けを求められて無視するのも後味が悪いと再びガレオン船へと旋回しルミナはドットさんからガレオン船へと飛び降りると
「助けてくれって具体的にどう助けて欲しいの?」
実際には聞かなくても分かる、目の前の男は痩せこけて衰弱しているのだからもう何日も食べていないのだろう
ドットさんに載せている食糧を分けてあげるのもやぶさかではないが相手は海賊、無償で助けるメリットがないルミナは目の前の男が何を言うか待っていたが
「ピストル向けて飯を寄越せはないでしょうが‼︎」
急に怒鳴り出したルミナ、目の前の男はまだ何も言ってはいないが何故分かったんだというような顔でルミナを見ていると
「貴方名前は?」
「クリークだ」
痩せこけた海賊の名はクリーク、ルミナはまじまじとクリークを眺め
「んでゴリークは何でこんなに弱ってるの?」
ゴリラっぽい、ルミナの中でクリークはゴリークという名に改名された
ルミナの態度に腹を立てるクリークだが衰弱しているせいで本来の力が出ないクリークはルミナにピストルを突き付け
『んなくだらねぇ事聞く暇があるならさっさと飯を持って来い‼︎いいか‼︎これはお願いじゃねぇ!命令だ‼︎」
怒鳴りながらピストルの引き金に手を掛けるクリーク、衰弱して本来の力が出ないクリークだが目の前にいるのは弱そうな少女、この場の優位は自分にあると優越感からニヤリと笑みを浮かべるクリーク
「命令ね・・お願いでも取り引きでもなく命令ね、私誰かの命令に従う気はないから!じゃ‼︎バイバイ‼︎ゴリーク‼︎」
最早クリークに興味もないルミナはそう言ってドットさんに飛び乗ろうとすると
「この俺に逆らうんじゃねぇぇぇぇ‼︎」
パァァァァン!
最初何故ピストルで脅そうとしたのが分かったのか理由は知らないがピストルを突き付け脅せばルミナは必ず従う、そう確信に近い予想で脅したのだがルミナはクリークに恐怖心どころか眼中にすらないといった顔をして去ろうとした事でクリークの琴線に触れピストルの先から凶弾がルミナに向けて放たれた
「は?」
目の前の光景に呆然とするクリーク、とてもじゃないが理解出来ないといった顔だがそれも無理はない
ピストルの弾が向かった先そこにはもうルミナの姿は無くクリークは狼狽えながらも周囲を見渡し絶句する
「・・・俺は夢でも見てたのか?・・それともあのガキは海を彷徨う亡霊か」
消えたのはルミナだけではなかった、仮に銃弾を避けたのならまだ理解は出来た。だがルミナの姿は何処を見渡しても見当たらないどころかルミナが乗っていた空飛ぶスワンボート、ドットさんまでもがまるで最初からいなかったかのように忽然と姿を消したのだ
理解出来ないクリークからようやく出た言葉はそれだけだったが
極限の空腹からくる幻覚だと自分に言い聞かせながらクリークは僅かに残る体力を少しでも温存させようと寝転びその目を閉じていくのであった
「はぁ〜・・・あのゴリラ見た目通り知能が足りてないのかな?普通助けを乞う相手にピストル向ける?まぁゴリラだから仕方ないよね!バナナの一本でも置いてきたら良かったかな?」
『クェ〜?』
「あ!ドットさんゴメン!今のはドットさんに話しかけたんじゃなくて航海日記を読み上げてたの!」
『クェ〜』
「帰ったら読んで貰うんだ♪私の航海日記♪」
『クェ‼︎クェ〜クェ‼︎』
「よ〜し♪ドットさんバラティエに向かって全速全身♪」
『クェ〜‼︎』
先程の出来事などもうどうでもいいのか自らが名付けたゴリークという名前すら覚えていないルミナ、基本ルミナは割とどうでもいい事は覚えない奴なので日々の出来事を日記に書いて記録しているのだが内容は割と適当である
それから暫くしてルミナの眼前に見えてきた海上レストランバラティエ
今日も船が停泊してて繁盛してるなぁと思いながらバラティエに近付いていき
「ドットさん着水モード」
『クェ〜』
ルミナの号令で高度を下げていくドットさんは海に着水する直前に翼を折り畳み海上を進む為の足かきを船底から出すと
キコキコキコキコ
懸命に足漕ぎをして海上を進むドットさん、もう完全にスワンボートである
そうしてバラティエに到着したルミナ、ドットさんからピョンとバラティエの桟橋に飛び降りると
「待ってたよぉ〜ルミナちゅわぁぁぁぁん‼︎」
「あっ!グル眉コック!プリンは?ねぇねぇプリンは?」
ルミナがやって来たのを察知したバラティエの副料理長サンジがバラティエから飛び出しクルクルと回りながらルミナを出迎えるがルミナ本人はサンジの事よりプリンが大事なようだ
「勿論麗しのレディーの為にとびっきりのプリンをご用意しました」
「ふぅ〜♪さすがグル眉♪今日も眉毛がグルってるね〜♪」
それは褒め言葉なのか?定かではないがご機嫌なルミナを見る限り悪い意味ではないのだろう、そして女性に紳士的なサンジもルミナの反応に顔がだらしなくなっていた
そんなにやり取りがありながらも店の中に案内されたルミナ、やはり今日も店は賑わっているみたいで席はほぼ満席といったところだがルミナの席はちゃんと空けているみたいで問題なく座れたようだ
「あっ!ポテトヘッドだ」
『いらっしゃいませイカ野郎、お客様ヘボイモ恐れ入りますがポテトヘッドじゃねぇつってんだろうが‼︎」
まるで魚屋のような格好をしたコック、パティを見かけたルミナは頭がポテトみたいだという理由でパティをポテトヘッドと呼んでいたが流石にこれは酷い、パティがキレるのも無理はない
「そんな事よりお客さんだよ?接客接客」
タイミングが良いのか悪いのかバラティエに新しい客が入って来た事でパティに仕事しろと指をさすルミナ、パティは舌打ちしながら気持ちを切り替え新しい客に接客スマイルを見せるのであった
そんな時であった
ドゴォォォォォォォォン‼︎
バラティエの船外から突如聞こえた砲撃音と揺れるバラティエ、まぁ騒がしいのはいつもの事なのでルミナも客も特に気にする事なく料理の提供を待っているとまた新たな客が店に入って来るのが見えた
どうやら2人組の客のようで身なりのいい格好をした男女のペアがルミナの前の席に腰を掛けると周りの客達がヒソヒソと騒ぎ出す
客達の話ではルミナの前に座る男はフルボディという海軍本部の大尉らしくこの辺では有名なようだ
「嘘・・何で」
そんなフルボディを見て狼狽るルミナ、別にフルボディが海軍本部の大尉だとかそんな理由ではない、ルミナが狼狽る理由それは・・・2人の席に既にワインが用意されているからだ‼︎
一方のルミナの席は何もない、あるのはコップ一杯の水だけ
ぐぬぬと憤りを感じフルボディを睨むルミナ、フルボディは事前に料理の提供前にワインを予約しているので当然といえば当然だがそんな事を知る由もないルミナはフルボディを睨む、逆恨みもいいとこだ
そんなルミナの視線を感じチラッとルミナを見たフルボディはルミナにウィンク、フルボディ本人としてはちょっとしたサービスのつもりだがルミナは挑発されたと憤慨、プクッと頬を膨らませ水をガブ飲みすると
「グル眉‼︎私もワイン‼︎いつものやつ‼︎」
何故か対抗意識を燃やして常連アピールするルミナ、料理を運んでいたサンジにそう言ってワインを持ってきて貰うと
「何かお気に召しましたか?レディー」
ルミナが少し不機嫌だと察知したサンジは丁寧にワインを注ぎながら
「これは当店からのサービスです」
そっとルミナのテーブルに差し出された皿、スモークチーズとサラミの盛り合わせを見てすっかりご機嫌になるルミナ、案外チョロい奴である
「ん〜ん、ワインありがと〜♪」
小動物のような仕草でチーズを齧るルミナ、サンジは丁寧に一礼をして厨房へと戻っていくとルミナはワインをちびちびと飲み始めた
それから少しして料理が運び込まれ、ルミナが舌鼓を打っていると
「うまい!このほのかな香りは・・北の大地ミッキュオの大地の香りか
かるい酸味にコクのある辛口このワインは・・イテュルツブルガー・シャタインだな!違うか?ウエイター‼︎」
どうやらフルボディはワインに詳しいようで今口につけたワインの品評を始めだしスープを運んできたサンジにワインの銘柄を自身満々に告げると
「クソ違いますお客様。ちなみに私は副料理長ウエイターは昨日全員逃げ出しまして」
どうやら違うワインだったようで周りの客からヒソヒソと笑われるフルボディ、ルミナはそれを眺めながら
(ヘェ〜このワインそんな香りがするんだ、てことはあのドヤ顔海兵北の大地の香りを嗅いだ事があるんだ。地面に鼻を近づけて大地の香りを嗅いだと・・犬じゃん‼︎あー政府の犬だったね)
素っ頓狂な思考を巡らせながらワインに口をつけるルミナ、そのルミナが飲んでいるワインこそフルボディが言っていたワインなのである!
思わぬ事で赤っ恥をかいたフルボディ、腹いせに虫をスープに落とし
「ウエイター‼︎」
大声でサンジを呼ぶとスープに虫が入っていると言いがかりをつけこの虫は何だ‼︎と文句を言うがサンジは虫に詳しくないと躱すと笑いを誘い周りの客達が笑い出した
更なる恥をかいたフルボディ、ワインはともかくスープは自業自得でしかないのだが
「そのスープちょっと見せて」
とフルボディ達のテーブルに近寄るルミナ、ルミナはスープに浮かぶ虫をジッと観察して
「あー!この虫グランドラインにしかいない虫だね、少なくとも東の海には生息していない虫だよ?おかしいな?たまたまグランドラインから飛んできてたまたまバラティエに紛れ込んでたまたまスープの中に落ちちゃったのかな?」
うーんと首を傾げるルミナ、それを皮切りに周囲の客達から向けられる呆れた視線それもそのはず、この店にいる客の中でグランドラインとくれば海軍本部の大尉であるフルボディしかいないのだから
つまりスープの虫はフルボディの自作自演、腹いせに虫を落とし店の評判を下げる筈が自らの評判を落とす結果になってフルボディ
そんなフルボディに
「まぁまぁ、ワインが違ったからってそんなに怒らなくても〜。あっ!私が飲んでいたワインあげるよ!まだ一杯しか注いでないから結構残ってるんだ!貴方の言っていた北の大地の香りのワイン」
そう言って自分のテーブルからワインを持ってきてフルボディに差し出すルミナ、ルミナ本人としてはこの場を丸く収める為の行動なのだが周りから見ればあまりにも滑稽、バラティエが爆笑の渦に包まれると
ガシャアン‼︎
ウエイターに馬鹿にされ客にも笑われた挙句子供から施しを受けるという屈辱と羞恥にまみれ我慢の限界に達したフルボディの拳がテーブルを叩き割り数々の料理が床に散らばると
パリィィン‼︎
ルミナの手からワインを奪いフルボディはそのままルミナの頭を殴り
ワイン塗れになってしまうルミナ
それと同時に騒つく店内、海軍本部の大尉が子供を殴ったのだから
無理はない
「この俺が誰だかわかってねぇらしいな」
拳を握り締め怒りを露わにするフルボディ、だがその行為がいけなかった
「テメェがどこの誰だとかそんな事クソどうでもいい!」
床に散らばる料理、ワイン塗れになってボケ〜っと突っ立ったままのルミナその両方を見て怒りに震えるサンジ
彼が怒るのも無理はない、それはサンジの過去の出来事が一因していて
海の上で食糧がどれだけ大切なのかまさに身をもって体験しているのだ
そしてこの店のオーナーでありサンジの父親ともいえる存在ゼフから女は絶対に蹴るなと教えられ騎士道精神をポリシーにしていたサンジ
だからこそフルボディの行いが許せない!
「なっ⁈こっちは金を払う客だぞ‼︎少々態度がデケェんじゃねぇのか⁉︎
コックの分際で‼︎」
当然フルボディも反論しサンジに食って掛かる、その様子をボケ〜っと眺めているワイン塗れのルミナは
(あれ?さっきウエイターって言ってなかったっけ?今度はコックって言ってる事が支離滅裂、まぁ虫男だから仕方ないよね)
確かにフルボディはさっきサンジをウエイターと呼んだ、だが次はコックと言った。ルミナがそう思うのも仕方ないが虫男は流石にあんまりだ!
「ねぇグル眉?シャワー借りていい?ワイン掛けられたのは別にいいんだけどパンツまでビショビショなのはちょっと我慢出来ないというか」
サンジのスーツを軽く引っ張りながらそう話しかけるルミナ、周囲の客達が「いやワイン掛けられたというかボトルで殴られたんだが」とか
「この状況でよくそんな事が言えるな」とか言っているがルミナ自身が気にしてないのだから仕方ない
「は⁈・・・ああいや、好きに使ってくれ」
サンジもまさかこの状況でそんな事言われるとは思わなかったので一瞬唖然とするがルミナは元からこんな奴、自由気ままというかマイペース
ほぼ常連となった今なら理解出来るが故気を持ち直したのだが
「おい‼︎何勝手に行こうとしてんだ⁈そこのコックもそうだがお前も俺に恥をかかせてくれたよな?お陰で海軍本部大尉の面子が丸潰れだ‼︎どう責任とってくれるんだ?」
シャワーを借りにこの場を去ろうとするルミナを呼び止めるフルボディ
確かにルミナが首を突っ込まなければサンジとフルボディだけの問題だったのだが首を突っ込んだ以上当然ルミナにも因縁を付けてくる
「え?海軍の面子?海賊相手にそんな事言われても知らないよ」
確かに海賊が海兵の面子を気にしても仕方がない、ルミナはフルボディに自分が海賊である事を告げさっさとシャワーを浴びようとその場を去ろうとしたのだが
「ほう!お前海賊だったのか!まぁお前みたいな貧弱そうなガキが海賊ってのは疑わしいが本人がそう言ってるんだ!じっくりと取り調べて真偽を確かめてやる」
店での素行こそ海兵らしくはないがフルボディにも海軍としての矜持はある。見た目こそ可愛らしい顔をしてはいるがそれ以外はどこにでもいそうな普通の少女、海賊だと言われて素直に信じられるものではないが本人がそう言っている以上海軍としては野放しには出来ない
それに恥をかかせた責任も取らせなきゃいけないのだから海賊じゃなくても仕置きは必要だ、公私混同もいいとこだがとにかく土下座させて謝らせるくらいしないと腹の虫は治りそうにない、故にルミナを連行する為頭を鷲掴みしようとするのだが
「汚ねぇ手でレディーに触れるんじゃねぇ‼︎クソ野郎」
ルミナとフルボディの間に割って入ってサンジ、当然の事ながらサンジとフルボディの確執は何も解決していないのでサンジがはフルボディに絡むのだが
「そこのガキは海賊だぞ⁉︎海軍本部大尉の俺が捕まえて何が悪い‼︎まさか海賊を庇う気じゃねぇだろうな⁈」
ルミナが海賊だと言った以上海軍であるフルボディの行いは間違ってはいない、間違ってはいないのだが
「海賊だろうと食いたい奴には食わせてやる!この子はこの店の客だ‼︎
コックが客を庇って何か問題があるのか?」
この店においては海軍だろうと海賊だろうとそんな身分や肩書きなんて関係ない食いたい奴がいるなら食わせる、例え海賊だろうとルミナはバラティエの客ならばコックであるサンジがルミナを庇うのもまた然り
どちらも正当性がある以上引くわけにはいかない、サンジとフルボディの睨み合いで周りの客達も息を呑み店内が緊張感に包まれていく
「あっ!シャワー浴びる前にドットさんから着替え持ってこなきゃ」
そんな緊張感などお構いなし、あくまでもマイペースなルミナに客達も『おい‼︎』と総ツッコミ、当の本人がこんな感じなのだからそうなるのも仕方ない
そんなルミナはスタスタと店外に出てドットさんから着替えを持ってくると再び店内へ、客はおろかサンジやフルボディまでもがルミナの挙動を静観していたがルミナは何事もなかったかの如くシャワー室へと直行
すると「何か反応してやれよ‼︎可哀想だろ‼︎」と客達からの総ツッコミを再びもらうルミナであった
「・・・・・」
「・・・・・」
ルミナが去った事で再び視線が交わるサンジとフルボディの2人、だが先程までの険悪な雰囲気・・・というよりどこか悲壮感漂う両者の視線
互いの正義は違えど共にルミナに関する事だというのにルミナ自身に完全にスルーされやり場を失った2人、流石に可哀想だと労いの言葉を掛け慰める客達も交じり謎の一体感が店内に広がっていく
「・・・さっきは悪かった・・・折角の料理を無駄にしちまって」
「あ、ああ・・俺も少し熱くなり過ぎた・・まぁその、海の上で食いもんを粗末にすんなって言いたかったんだ」
互いに少し冷静になれたのかはたまたルミナにスルーされた間柄なのか
2人の間に奇妙な縁が生まれ何故か和解が成立してしまう
だがこの結果は決してルミナのおかげではない‼︎ルミナはただシャワーを浴びたかっただけ、それ以外考えてなかったのだから決してルミナのおかげではない
そのルミナといえば
「さようなら北の大地の香り〜♪」
妙な鼻歌を歌いながらシャワーを浴びていた、なんとも呑気な奴である
だがバラティエの喧騒はこれで終わりではなかった
ガシャャャャャン‼︎
突如客室の天井が崩れ上から人が落ちてくる、何事かと見てみると何故かこの店のオーナーと麦わら帽子の少年が揉めているようでまだまだ騒ぎは終わりそうにないとバラティエの客は思うのであった
「おいサンジ、貴様また店で暴れてやがんのか?」
「うるせぇな糞ジジイ・・暴れちゃいねぇよ」
この店のオーナー“ゼフ“は麦わら帽子の少年との話を一旦切り上げサンジを咎めたのだがサンジはまだ暴れてはいない、ここへサンジ以外のコック達が「暴れる寸前だったけどな」とか「ルミナの嬢ちゃんに完全スルーされてたな」とか言われたじろぐサンジ、ルミナを庇ったのにルミナからスルーされた事は中々に堪えたようだ
「またあのガキ来てんのか⁈んでそのガキはどこにいる?」
「今シャワー浴びてんぞ」
「あのガキまた勝手な真似しやがって‼︎ここは俺の店だ!テメェの家じゃねぇんだぞ‼︎」
一応サンジから許可を貰ったとはいえゼフ本人から許可は貰ってはいない、ゼフが怒るのも無理はないが時すでに遅し
「へー勝手な奴がいるんだなぁ、よし!俺がガツンと言ってきてやる」
そんな話を鼻をほじりながら聞いていた麦わらの少年、名は“ルフィ”
ルフィは俺に任せろと言わんばかりに腕をグルグルと回しシャワー室を目指そうとするのだが
し
「テメェも何勝手な事してやがるんだ‼︎」
「レディーがシャワー浴びてんだ‼︎勝手に覗くんじゃねぇ糞野郎‼︎」
このルフィもまた自由奔放、割とやりたい放題のルフィだが流石にシャワー室に突入はマズい!ゼフとサンジ両名の蹴りで挟み撃ちされるルフィ、顔がグニィと潰れながら何かモゾモゾ言っているが何を言っているのか分からない
全く落ち着く暇もないバラティエ、騒がしいのは日常茶飯事なのだが
バァァァァァァン‼︎
これまでにないくらい激しく開かれた扉、扉を開いたのは海兵の男だがその海兵の頭からは血が流れており何やら不穏な空気が漂ってくる
急を要する事態らしく焦った表情の海軍はフルボディに3日前に海兵7人がかりで捕らえた海賊が逃げ出したと告げフルボディも驚愕の表情を見せる
話の内容を聞くに、その海賊はクリーク海賊団の一員らしくクリーク海賊団といえばこの東の海で最強と噂される海賊団だと客達も話していると
パァァァァァァン‼︎
ピストルズの発砲音がバラティエ中に響き報告に来ていた海兵が血を吐いて倒れ込むとコツコツと足音が聞こえ店内に痩せこけた男が入って来る
その男は乱暴にテーブルに着くと
「何でもいい・・飯持って来い‼︎」
鋭い眼差しで威嚇しながら飯の要求をする男、先程の話を振り返るとどうやらこの男がクリーク海賊団の男らしく客達も固唾を呑んで事の成り行きを見守っていると
「いらっしゃいませイカ野郎、代金はお持ちで?」
独特の接客スマイルを店男に近寄るパティ、海賊の乱闘騒ぎにも慣れた客達も流石にマズいと焦りの表情を見せるが
「鉛でいいか?」
ピストルを突き付け脅せば大抵の人は従う、彼らの海賊団はそうやってのし上がって来たのだろう。そしてこの海上レストランもまた同じように従うと男は思っていた
だがこの海上レストランはそう一筋縄ではいかない、何せ海賊も客として来るのだからバラティエで働くコックも荒くれ者達ばかり、当然ピストルを突き付けられた程度で怯むパティではなく
「代金はお持ちじゃないんですね」
「代金なら私が払うから何か作ってあげてイカ野郎」
金がないなら客じゃない!確かに商売である以上間違えていない!
パティはこの男を追い払おう為に戦闘態勢に入りかけるとシャワーを浴び終えたルミナがやってきて代金を立て替えるからこの男に料理を作れと言い出すのだが・・・ポテトヘッドじゃなかったのか?
「・・・・あ、姉御!」
「誰が姉御だ‼︎もう‼︎まーたチンピラみたいな真似してるの?何かゾンビみたいになってちょっと気持ち悪いよ?ギン」
どうやらこのギンという男、ルミナと知り合いのようでルミナを姉御と慕っているようだ。ルミナは姉御と呼ばれるのは不服のようだがギンを気にかけているようで、なんと名前をしっかりと覚えている‼︎
「ちょっと待て‼︎代金を払うなら客として扱うがな・・俺はイカ野郎でもなければポテトヘッドでもねぇんだよ‼︎そして何より何でコイツの名前はしっかりと覚えてるんだよ‼︎」
「ん〜?だって私は客、ヘボイモはコック!別に家族とか友達とか仲間とかじゃないんだし名前覚えるの面倒くさい」
「まぁそれはそうだがな〜・・・だから俺はヘボイモじゃねぇつってんだろうが‼︎」
「もう〜我儘だなぁ〜‼︎ポテトヘッドでもイカ野郎でもヘボイモでもなければ後はもう汗臭そうなコックしか残ってないよ?」
「お前ら・・おとといきやがれ‼︎」
汗臭そうなコック、さっきから失礼のオンパレードのルミナに対して
堪忍袋の尾が切れたパティに店を追い出されたルミナとギン
ルミナの計らいでようやく飯にありつける筈だったギンだがルミナのせいで結局飯にありつけなかったギン、少なくともルミナがギンの名前を覚えていなければギンは飯を食えていた筈、完全にとばっちりである
「ゴメンね?ギン!汗臭ポテトのせいでご飯食べられなくて」
自分は悪くない!悪いのはパティ‼︎全く悪気が無いからこそ質が悪い!
「謝らねぇで下さい姉御‼︎俺はこうしてまた姉御に逢えただけで腹一杯です」
もう何日も食べていないのだろう‼︎痩せこけた頬虚な焦点相当衰弱しているのが見てとれる。だけどこうしてルミナに逢えたと気丈に振る舞うギン、バラティエに来る途中同じような奴を見たがそんな事はもう忘れているルミナは
「お腹空かせて倒れそうな人放置するなんて酷いよね」
そうギンに言うがルミナはお腹を空かせて倒れているクリークを放置している、クリークは海賊であり脅してきたから助ける義理はないという理由はあるが目の前のギンも海賊であり助ける義理はないのだが
「ギンは海賊だけど私の友達だからね!私が助けてあげるよ」
そうルミナとギンは友達!例え海賊だろうと友達は助ける‼︎ルミナは私に任せろと胸を叩き
「ドットさんに積んでる荷物にマカロンがあるんだ‼︎」
そう言ってルミナは荷物をガサゴソと漁り
「・・・・・・あ〜・・・・まぁ・・いっか」
マカロンを見て何か思うところがあるのか少し悩んだ末ギンに渡す事にしたルミナ
「はいギン!これ高かったんだからちゃんと味わって食べるんだよ?」
そう言ってマカロンをギンに手渡すと
「姉御・・姉御・・・」
ルミナの優しさに触れ号泣するギン、ルミナは泣いてないで早く食えと内心思っていたが敢えて触れずギンの隣に座り込み背中を優しくさする
そんなルミナ達の前にそっと皿が置かれ
「食えよ!腹減ってんだろ?」
そう言いながらサンジがルミナ達の対面に座り込み口に咥えた煙草に火をつける
どうやらサンジは追い出されたルミナ達の為に料理を作って運んできてくれたようでギンの目の前に差し出された海鮮ピラフからは出来立ての湯気がホクホクとあがりゴクリと喉を鳴らしたギンは一心不乱にピラフを掻き込みながら再び号泣する
ギン曰くここまで人に良くしてもらった事がなくルミナを含めてサンジが2人目だとか、死ぬ程美味いとサンジの作ったピラフを絶賛するギン
それを聞いてニカっと笑うサンジとルミナ、穏やかな光景だがそれを上から覗いていたルフィが
「良かったなぁお前!飯食えて」
「「ああ?」」
ニシシと笑いながら話しかけてきたルフィ、突然上から見知らぬ男が話しかけてきたのだから反応もそれなりの反応になるサンジとギン
(私まだ御飯の途中だった)
そんなルフィの言葉でまだ御飯の途中だった事を思い出すルミナ、サンジが作ってくれたルミナの分の海鮮ピラフを手に取りモグモグと食べ始めると
「にしし!お前面白れぇ奴だな!俺の仲間になれよ」
笑いながらルミナを仲間に誘うルフィ、先程のパティとのやり取りや今のやり取りを見て悪い奴じゃないし面白い奴だとルミナを気に入って誘うのだがルミナは無反応
(何か話しかけてるけど私今御飯中だし仕方ないよね)
別にルフィを無視している訳ではない、まずは御飯を食べたい‼︎
ひたすら無言でピラフを食べるルミナを見てあまり面白くないルフィは
「お前が食ってるもん美味そうだなぁ!」
そう言いながら、正確に言えば言う前にルミナの皿に手を伸ばしピラフを奪い取るルフィ、大口を開けてピラフを丸呑みすると
「うんめぇぇぇ」
ピラフの美味さに顔がにやけるルフィ、それとは対照にピラフを食われて睨むルミナ
「ピラフ美味しかった?」
「おう!すげー美味かったぞ!」
「それは良かったね‼︎」
バチン‼︎
流石に食べているピラフを勝手に横取りされれば怒るのも無理はない
一言謝るなら怒りの矛を収める事は出来るが反省の色など全く見せないルフィ、これにはルミナも怒りのビンタをお見舞いするが
「効かないね〜ゴムだから!」
ドン‼︎と胸を張りドヤ顔になるルフィ、ルフィは悪魔の実の一つであるゴムゴムの実を食べて全身がゴムになるゴム人間となっていて打撃等の攻撃は効かないのである
だからルミナの怒りのビンタも痛くはない、ニシシと笑うルフィだが
「じゃあ海に落ちろ」
悪魔の実の能力者はカナヅチ、悪魔の実を食べた者は海に嫌われる呪いともいえる弱点を攻めるルミナ
ルフィを船外に落とそうと蹴り上げると
「危ね!何すんだ‼︎」
流石に海に落とされるとマズい!ルミナの蹴りをしゃがんで躱すルフィ
「お前パンツ見えてんぞ」
そう言われてルミナは顔を真っ赤にしながらスカートを押さえルフィを睨む、その顔は既に涙目だ
だがルフィに指摘されなければルミナは蹴り続けていたのでルフィの指摘は有り難い、だがそれはそれとして
「グル眉、ギン見た?」
「いや!俺は見てません‼︎」
「レディーに恥をかかせる奴は男じゃねぇ」
ルミナの問いかけに首を必死に振りながら否定するギンと遠い目をしながら煙草をふかすサンジ
「ねぇ?私を見て何色をイメージする?」
「「白」」
「黒っすね」
白と答えるルフィとサンジに黒と答えたギン、ルミナはふぅと溜息を吐くと
「白と答えた奴‼︎あぁ!ゴム男は確定としてグル眉も見たって事だね」
そう言われギクリと表情を強張られるサンジ、見たとは言っていないがギンのようにハッキリと否定はしてなかったサンジ
勿論ルミナとルフィの応酬はギンもサンジも見ていた、だがルミナの隣にいたギンは視覚的に見えない位置にいたがルミナの対面にいたサンジには見えていた、だがあくまでも不可抗力でありサンジに非はない
それはそれとしてルミナのイメージだが、ルミナは純白ともいえる程綺麗な白髪を肩下まで伸ばしており、それとは対照に黒いキャミソールと黒のヒラヒラとしたミニスカートを履いている、履いているブーツも黒とイメージが白か黒しかないのだから白と答えるのは仕方がないのだろう
「はぁ〜・・よく考えてみればこんなヒラヒラとしたスカートで蹴り上げれば見えちゃうのも仕方ないよね」
冷静に考えれば誰でも分かる単純な話この件についてはルミナが悪い
だがやっぱりピラフを勝手に横取りされた事はちゃんとケジメつけないと気が済まないルミナは
「じゃゴム男、デコピンで許してあげるから」
そう言って指をパチンと鳴らすルミナ
「何で怒ってるのかわかんねーけどデコピンは俺には効かないぞ」
う〜んと首を傾げ意味が分からないといった顔になるルフィ、美味そうだからつい食べてしまった、ルフィに悪気があった訳ではないのでルフィ自身はルミナの怒りの理由が分からないがとりあえずルミナのデコピンを受ける事にしたルフィ
パチン!
一見変哲もないただのデコピン、当然ゴム人間であるルフィにそんなデコピンなど意味はないのだが
「痛てぇぇぇ⁈何でだ⁈俺ゴムなのに⁉︎」
あまりの痛みに涙目で痛がるルフィ、その額は真っ赤になっていてルミナのデコピンはゴム人間であるルフィにも効いたようだ
「能力者だからって過信はしない方がいいよ?いい勉強になったね」
そう言ってルミナは再びギンの隣に座り
「あっ!そうだ‼︎グル眉‼︎プリン‼︎私のマウンテンプリン‼︎」
今日一のデザート、マウンテンプリンをサンジに要求するルミナ、サンジはそうだったとバラティエに一旦戻ると100人分はありそうな巨大なプリンを持って再びルミナの前に現れ
「バラティエ特製マウンテンプリン・愛と情熱のストロベリーソース仕立てでございますレディー」
そう言って優雅にマウンテンプリンをルミナに差し出すサンジ、ルミナは目をキラキラと光らせ
「プ〜リ〜ン〜♪」
喜びを爆発させながら早速プリンにパクつくと
「うみゃ〜♪プリンは正義だね♪どっかの三馬鹿風に例えるなら甘ったれた正義ってところ♪って食リポはいいや!」
謎の食リポを途中で打ち切ってプリンに貪るルミナ、そのスプーンのスピードはかなり速いが一口の量が少ないので実際のところ少ししか減ってない
「いやぁ〜デケェプリンだなぁ」
ルミナのデコピンの痛みから復活したルフィ、ルフィはルミナが食べているマウンテンプリンを見て興味津々に近付いて来ると
「ん?何?ゴム男もプリン食べたいの?」
本当は黙ってプリンを食べたいルミナだが黙っていたらプリンを横取りされる!先程のピラフで学習したルミナはルフィに聞く事でルフィの横取りを阻止するとルフィは当然のように頷き
「じゃ仲良く食べよ」
そう言ってルミナはルフィにスプーンを渡し
「ゴム男お前マジでブッ飛ばすよ?」
割とキレ気味でルフィに怒りだしたルミナ、急な変わり様にサンジとギンはどうしたんだと困惑気味な顔になりルミナの様子を見ていたがルフィ本人はスプーンを持つ手を止め冷や汗をかきながらルミナを凝視していると
『ねぇ?私仲良く食べよって言ったよね?確かにそう言ったよね?何で全部食べるのかな?しかも一瞬で‼︎」
そう言ってルフィを叱るルミナ、だがルフィはまだプリンには手を付けておらずプリンはまだ何も減ってはいない
「一体どうしたんだ?ルミナちゃん、そこのゴム野郎はまだプリンに手を付けてなかったが」
サンジがそう言うのも無理はない、プリンにはまだ手を付けていないのにルフィがプリンを全部食べたとまるで未来を見通すような事をルミナが言ったからだ
「いや、ピラフの一件があったからね。念の為少し先の未来を見てみたらゴム男がプリンを一瞬で丸呑みしたの」
そう説明するルミナに困惑するサンジとギン、少し先の未来が見えると言われてなるほど!と頷ける人間はそう多くはない、少なくとも東の海には
「少し先の未来が見える悪魔の実の能力者・・ってところか?ルミナちゃんは」
「姉御!悪魔の実の能力者だったんですね!流石です!」
そう言われキョトンと首を傾げるルミナ、ルミナはそんな悪魔の実を食べた覚えもないしギンに至っては何が流石なのか分からない
だがサンジの推察は当たらずとも遠からず、確かにルミナは本人が言うように少し先の未来が見える、正確には見えるだけの力ではなくもっと恐ろしい理不尽な力なのだが
「覇気って聞いた事ない?」
「覇気?・・いや聞いたことありません姉御」
そんなルミナの質問に答えるギンと同調して首を振るサンジ
「そっか・・まぁいいや‼︎ところでゴム男はいつまで固まってるの?」
覇気について説明するのが面倒くさいと思ったルミナは話を切り替え未だ固まっていたルフィに目をやり
「ゴム男‼︎いい?ちゃんと仲良くプリンを食べるんだよ?2人で仲良く‼︎プリンを食べる‼︎分かった?」
ルフィの目の前に移動して座り込んだルミナはルフィの両頬を摘みながら顔を至近距離まで近づけてルフィにも分かりやすく忠告すると
「あい」
ルミナの発する威圧感に圧され素直に頷くルフィ、ルミナはルフィの反応に満足いったようで手を離し再びプリンを食べ始めルフィもスプーンで少しずつゆっくりとプリンを食べ始めるのだった
因みにゼフもルミナ達の様子を見に来ていたがプリンを食べるスピードがあまりにも遅いので何も言わず店に戻って行ったのだがその事に気付いたのはルミナだけだった
それから時間が経ち漸くプリンを食べ終えたルミナとルフィ、ルフィはここに来た本来の目的である仲間探し、今はコックを探しているようでサンジを仲間に誘うのだがサンジには店を離れられない理由があるようでルフィの勧誘を断るのだがそれでも諦めきれないルフィは
「コイツも仲間になったんだし一緒に行こう‼︎」
ニシシと笑いながらルミナを指差しサンジに話しかけるルフィ
ルミナは唐突なルフィの衝撃発言に驚き
「え⁈私がいつゴム男の仲間になったの⁉︎」
「さっき仲間に誘っただろ?だからお前はもう俺の仲間だ‼︎」
「え⁈嫌だよ」
「俺も嫌だ‼︎」
「何が⁈」
「お前が嫌だと言うのが俺は嫌だ‼︎」
「理不尽‼︎だいたい仲間に誘ったからもう仲間とか、それ私の意志がどこにもないじゃん‼︎」
「そっか悪ぃ!じゃあ俺の仲間になれよ‼︎お前面白れぇ奴だし一緒に冒険しよう‼︎」
「いや聞き直さなくていいから‼︎私はゴム男の仲間にはならない‼︎それが私の意志‼︎」
「ニシシ‼︎お前やっぱ面白れぇな!仲間になってくれねぇかなぁ」
「・・・友達・・・友達ならいいよ」
「ニシシ‼︎そういやお前の名前なんて言うんだ?」
「ルミナ」
「俺はモンキー・D・ルフィ‼︎海賊王になる男だ‼︎」
「・・・・・・やっぱり友達になるの辞めていい?」
「は?何言ってんだお前馬鹿か?」
「だよね〜・・自分から言っちゃったんだし仕方ないよね?」
「よく分かんねぇけど俺とルミナはもう友達だ‼︎」
「はぁ・・先に名前聞いとくんだった」
ルフィとのやり取りの末友達になった事を後悔するルミナは
「よりによって煎餅ジジイと内緒おじさんの血筋だなんて・・ついてないわ〜」
「ん?お前俺の爺ちゃん知ってんのか⁈」
「まぁ・・・知ってるというか・・・あのジジイ絶対私の事殴ってくるんだよね、しかも本気で‼︎」
「ルミナちゃんを殴るだとぉ⁈おい!お前の爺さんどこにいるんだ‼︎俺が三枚におろしてやる」
ルフィの爺ちゃんはルミナを本気で殴ってくる!それを聞いたサンジは怒りに燃え上がりルフィに問い質すと
「いや知らねぇ、爺ちゃん海軍だし」
「海軍本部じゃない?あのジジイ昔から中将だし」
「・・・海軍本部・・中将?・・モンキーD・・・おい‼︎アンタの爺さんは海軍の英雄ガープなのか⁈」
「ん?おお!爺ちゃんの名前はガープだぞ!」
「「マジか」」
ルフィの爺ちゃんの名はガープ、海軍歴戦の英雄でありかつて海賊王ゴールドロジャーと何度も戦った知る人ぞ知る有名人、まさか目の前にいる麦わら帽子の男がその孫だとは思わないサンジとギンは驚きのあまり
若干引くが
「爺ちゃんの拳骨痛いんだよなぁ!ルミナも痛かっただろ?」
ガープの拳骨は痛い、幼い頃何度もその拳骨を受けてきたルフィは同じ経験者であろうルミナに共感を求めるが
「さあ?痛そうだなとは思うけど殴られる前に殴り飛ばしたり蹴り飛ばして逃げてきたから分かんない」
そうあっけらかんと話すルミナ、かの海軍中将を相手に逃げてきた
見た目から想像つかないルミナの底知れなさに戦慄するギンとサンジ
「あ、姉御・・・姉御が強いのは存じてますがアンタ一体何者なんです?」
ギンがまだクリーク海賊団に入る前、まだ名もないただのチンピラだったギンは名もない海賊団とトラブルを起こし窮地に立たされていた
個の力はギンの方が上だったが相手は海賊、数の利には抗えず次第にジリ貧になるギンだったがそんな時現れたのがルミナだった
その時のルミナ曰く海賊が暴れたせいでプリンを落とした、案外ショボい理由だがルミナにとっては一大事!涙目の少女が大勢の海賊相手に立ち塞がる、結果は誰が見ても一目瞭然少女が海賊に捕まり碌な目に遭わないと誰もが思ったその時突如海賊が気を失いバタバタと倒れていく
何が起こったのか?何故急に海賊達が気を失ったのか誰も分からない、だが一つだけ分かるのは涙目の少女が海賊達の前に立ち塞がった事、そのタイミングで海賊達が気を失ったのだからきっと涙目の少女が何かをやった、ギンは図らずも助けられた事に感謝・・などしないで邪魔をしたルミナに食って掛かるがプリンを落としたルミナの機嫌は相当悪い
詰め寄るギンを無視したルミナは空を駆けるように飛び上がり海賊船の真上に移動すると空中で脚を振り抜き
「嵐脚・威国」
振り抜いた脚から巨大な斬撃波を生み出し海賊船諸共海を真っ二つにするルミナ、あまりに常人離れした力にギンは腰を抜かしへたり込むとそこにルミナが駆け下りて来て
「冨・名声・力この世の全てを手に入れたかつての海賊王ゴールドロジャー、彼が放った一言は人々を海へと駆り立てた!俺のプリンか?欲しけりゃくれてやる!探せ‼︎そこにプリンを置いてきた‼︎ってね」
急に訳の分からない事を言い出したルミナについていけないギン、かつてゴールドロジャーが死の間際に言った言葉は有名でギンもそれは知っている、だがロジャーはプリンなど一言も言っていない
目の前の少女、見た目は可愛いらしいが決して強そうな雰囲気など感じない、だが常人離れした強さといい発言といいもう存在が滅茶苦茶だととてもじゃないが勝てる気がしないギンは
「プリン好きなだけご馳走様します」
なんとかご機嫌をとってこの場を切り抜けよう、そう思い発言したのだが
「プリン♪わぁ〜♪貴方見た目ゾンビみたいだけどいい人だね♪」
プリンを奢って貰えるだけで急に態度を変えるルミナは
「よし‼︎プリンの御礼に友達になってあげる!名前は?ゾンビでもいい?」
「ギンっす、てかアンタ人をゾンビ呼ばわりとか失礼な奴っすね!
しかもいきなり友達とかアンタ正気か?」
「正気だよ?だってゾンビ・・あ、いやギンって友達いなさそうだし?
まぁ友達のピンチとか?危なくなったら助けに行ってあげるし?世界政府や海軍三馬鹿にも喧嘩売ってあげるからさ!悪くはない筈だよ」
そう話すルミナだがとてもじゃないが正気じゃない‼︎正気と言っているが正気じゃない‼︎正気じゃなければ世界政府に喧嘩を売ったりはしない
そして三馬鹿、恐らくは海軍最高戦力である三大将の事を言っているのであろう
友達の為に全世界を敵に回すような発言をサラッと言うルミナに狂気を感じたギンは
「アンタのような危ない奴と誰が友達になるか‼︎」
「え⁈プリン一つで世界政府に喧嘩売る私のどこが危ないっていうの?」
「いやプリン一つで喧嘩売られる世界政府が可哀想だわ、アンタ世界最悪の犯罪者と言われている革命家ドラゴンより質が悪いぞ」
「それ世界政府からよく言われる〜、まぁ世界政府が言うなって話だけど」
「いやアンタホント何者なんだ?」
「私はプリンを求めあらゆる海を行ったり来たり、時に暴れる海賊ってとこかな」
「おう・・プリンを求める海賊ってのは多分この世にアンタだけだろうな」
「うん!別に私達は海賊王になりたいとかワンピースを手に入れたいって訳でもないしね」
「私達?」
「そうだよ?私別に孤高の海賊とか仲間がいない海賊とかじゃないもん!こう見えて一応副船長なんだ♪」
「アンタみたいな奴が副船長の海賊団ってどんな海賊なんだよ」
「え?知りたい?」
「いや、別に聞きたくはない」
「じゃ聞くなよ」
「くっ・・コイツ」
「そんな事より早くプリンご馳走様してよ」
「俺が言った手前こんな事言うのアレだがアンタ厚かましいな‼︎」
「だって海賊だもん」
「そりゃそうだがな・・まぁいいや!早くプリン食っておさらばだ」
「そうそう!プリン食べたらこんなとこ早くおさらばしないとね!私もギンも」
「いや!アンタはともかく俺は関係ないだろ⁈」
「そう?・・まぁいいや‼︎そんな事より早くプリン食べたい♪
そんなやり取りを交わしつつルミナはプリンをご馳走様になり気分ルンルンで海に出るのであった
それから3日後、ギンがいた島に世界貴族と呼ばれる天竜人がやって来た、天竜人にはいかなる理由があろうと逆らってはいけない、この島の誰もが跪き頭を下げる中天竜人のチャリオス聖はまるでゴミを見るような目で島民を見て
「ゴミがうじゃうじゃと邪魔だえ!アチキの目を汚した罪は重いえ!」
島民を見て機嫌を悪くしたチャリオス聖の一言で島民に銃を向け始める政府役人、理不尽極まりないが天竜人は絶対であり何をしても許される
いやそれが当然であり罪悪感など微塵も感じない天竜人の一言で何の罪もない島民達は次々に凶弾で倒れていく
跪いていたギンはこの理不尽さに顔を歪めながら必死に堪えていたが
たまたま天竜人の視界に止まってしまい
「醜い肥溜めみたいな顔してるえ!天竜人であるアチキがわざわざゴミ掃除をしてやってるというのにその顔はなんだえ‼︎泣いて感謝するえ」
自分は良い事をしていると自負するチャリオス聖の理不尽極まりない発言に怒りを隠しきれないギン、当然泣いて感謝等出来る筈もない
「お前アチキの言う事が理解できないえ?まぁゴミが天竜人の崇高なる言葉を理解出来るとも思えないがえ・・・死ぬえ」
あまりにも傲慢あまりにも理不尽、だがそれが天竜人でありそれが当然
なんの慈悲もなく命が散らされていく、それはギンも例外ではなかった
役人達に囲まれ一斉に撃たれるギン、蜂の巣にされては致命傷は避けられないだろう
「ほら‼︎だから言ったじゃん‼︎こんなとこ早くおさらばしないとって‼︎
私言った筈だよ?豚の肥溜めみたいな臭いがするドブのような奴が来るって」
唐突に声が聞こえる、銃撃を浴びて死ぬんだと覚悟していたギンがふと顔をあげると目の前にはルミナが
「アンタ・・なんで・・俺は天竜人に殺された筈じゃ」
「ギン何かヤバい薬でも打った?そんな顔してるし、まぁヤバい薬打ったならゾンビみたいな見た目でも仕方ないよね」
「打ってねぇよ!って天竜人は⁈」
「あぁ、何か後ろで喚いてるね」
「てか俺なんで生きてんだ⁈アンタが何かしたのか?」
「そうだよ?言ったでしょ‼︎友達なら助けてあげるって‼︎」
「だからって天竜人に喧嘩売るような真似する奴いないだろ‼︎」
「目の前にいますけど何か?」
「アンタ正気か⁈」
「自分可愛いさに友達見捨てろって?私、ウチの船長からそんな事教えてもらった覚えないし?何より私天竜人が大嫌いなんだよね‼︎」
「アンタ・・マジか」
「マジですとも」
そんなやり取りを交わすとルミナはチャリオス聖へと振り返り
「臭っ‼︎お前マジで豚の肥溜めみたいな臭いがするね!あぁだからそんなヘルメット被ってるんだね、そうゆうエチケットって大事だと思うよ
偉い偉い私が褒めてあげるよ‼︎」
「お前何様だえ‼︎可愛いからアチキのペットにしてやろうと思ってたけどお前不快だえ‼︎さっさと死ぬえ」
「お前がね」
そう言うやルミナは目で追えない速度でチャリオス聖の目の前に移動すると
「あぁお前臭いから触りたくないや‼︎」
そう言って拳を握るルミナの腕は黒く変色、漆黒の稲妻が迸り
「触れずに殴る‼︎とっても衛生的だと思わない?」
天竜人は嫌いだから殴る、でも触りたくないそんな時に便利な手段
だと思うルミナの一撃がチャリオス聖に突き刺さる
「いやぁ覇王色って使いこなすと便利だよねぇ!ねぇ?政府の犬共もそう思わない?」
チャリオス聖を殴り飛ばしたルミナは役人達を睨み威圧、ただそれだけで役人達は気を失い次々に倒れていく
「返事はない・・屍のようだ」
どこか聞いたことある台詞を吐くルミナ、倒れていった役人達もだが殴り飛ばされたチャリオス聖に至っては姿が見当たらない、ルミナの一撃で空の彼方に飛んでいったのだから返事がないのは仕方ない
「ギン終わったよ‼︎」
「・・・・」
「ギン終わったよ‼︎」
「・・・・・」
「返事はない・・ゾンビのようだ」
「誰がゾンビだ‼︎」
「お前だよ」
「アンタところどころ口が悪くなるな‼︎」
「だって海賊だもん‼︎仕方ないよね」
「何でも海賊のせいにすんな‼︎」
「まぁまぁ!とりあえずさ、助かって良かったねギン」
「あ、あぁ・・だがアンタどうすんだ?天竜人を殴ったんだぞ‼︎世界政府を敵に回したんだぞ‼︎」
「それが何か問題あるの?私としては世界政府を敵に回すよりギンが死ぬほうが嫌だけど?」
「嘘だろ・・アンタ何でそこまでして俺を」
「私がそうしたいって思ったから・・例え世界政府が相手だろうと私の意志は誰にも止められない」
「アンタ・・スゲェな」
「まぁウチの船長の方がもっと凄いけどね」
ふと過去の出来事を思い出したギン、ルミナが何者なのか?それは未だに分からないがただ一つだけ分かる事はルミナはとんでもなく頭がイカれたヤバい奴だという事だ、だが世界政府を敵に回す事を恐れず自分の意思を貫こうとするルミナの豪胆さは惹かれるものがありギンはそれ以来ルミナを姉御と慕うようになった
そんなギンの質問に対するルミナの返答に興味深々なルフィとサンジはルミナをジッと見ながらルミナの返答を待つと
「私が何者なのかって?聞いて驚け‼︎プリンを求め世界を股にかける大海賊‼︎人呼んでプリンに愛された少女‼︎ルミナとは私の事だ‼︎」
となんともふざけた紹介をしながらドヤるルミナ、本人は言い切った感で満足気だがサンジはちょっと何言ってるのか分からないといった表情でルミナを見つめギンはまた訳の分からない事を言い出したと溜息、ルフィはコイツ馬鹿だなぁと思いながらツボにハマり爆笑、なんともいえない空気に包まれるが
「っと‼︎姉御と再会出来て忘れるところだった‼︎俺行かなきゃなんねぇところあるんす‼︎サンジの旦那‼︎美味い飯ありがとう‼︎姉御もお元気で‼︎麦わらのアンタもこれから大変だろうがまぁ頑張れよ」
と大事な用事を思い出したギンは大急ぎで小舟を出しバラティエを発つのであった
「・・・・マカロン食べてなかったから返して貰おうと思ったのに・・・まぁいっか」
今生の別れというわけではないが別れの言葉としてそれはどうかと思うがルミナはこんな奴なので仕方がない
それから暫くして目的の場所へ辿り着いたギンは
「案内します首領・クリーク‼︎海上レストランバラティエへ」
その言葉を聞いて邪悪な笑みを浮かべるクリーク、手にはギンから渡されたルミナのマカロンが
「案内しろギン」
マカロンを貪りながら凶悪な顔付きで何かを企むクリーク、それが何を意味するのかまだ分からないがきっと碌な事ではないのだろう
バラティエの騒乱はまだまだ終わりそうにはない
プルプルプルプル プルプルプルプル ガチャ
「あールミナかい?今度のお茶会勿論来てくれるんだろう?アンタの好きなプリンいっぱい用意しておくからねぇ」
「俺はアンタが用意したマカロンが楽しみでねぇ!今からウズウズしてるんだよぉ」
「あ⁈マカロンが無いだとぉ⁈事と次第じゃアンタでもただじゃおかないよ‼︎」
「マンママンマァ‼︎そうかい友達の為にねぇ・・・それで?俺のマカロン食った奴は何処のどいつだい?俺が今からぶっ潰してやるから教えなルミナ‼︎」
騒乱はまだまだ終わりそうにはない
人物設定
ルミナ
推定年齢17歳位
純白の白髪と黒づくめの服が特徴の少女で相棒の空飛ぶスワンボート
ドットさんで海を自由に行き来する
自由奔放マイペース、他人の命令は絶対に聞かない、自分がやりたくない事は絶対やらないがお願いされたりプリンが絡むと割とチョロくなる
動物系悪魔の実の能力者で貧弱な見た目に反して身体能力が高く割と怪力
????の実 ??種 モデル????
ルミナが食べた悪魔の実で??を操る能力を持つ
戦闘能力
覇王色・武装色・見聞色の覇気と六式を主にした体術を操る
殴るより蹴り主体の技を好むがルミナの海賊団の船員曰くヒラヒラした短いスカートで戦われると目のやり場に困ると苦情が来ている
過去の出来事が原因で世界政府と天竜人を激しく嫌っている為、世界政府関係者、海軍上層部、天竜人には口が悪くなる
世界政府から世界最凶の悪魔と呼ばれていて本来の懸賞金は63億7000万と破格だがとある理由で懸賞金もなければ手配書すら発行されないが故に全くの無名
ドットさん ルミナの相棒ともいえる空飛ぶスワンボート
元々はただのスワンボートだったがとある科学者が人工的に悪魔の実を食べさせた結果ドットさんが誕生した
動物系悪魔の実 トリトリの実モデルスワンの能力で空を飛ぶ事が出来ルミナの航海になくてはならない存在、元がスワンボートなので海上を泳ぐ事も出来るがキコキコと音が煩いのが唯一の悩み
ルミナが乗った際、武装色の覇気を纏わせると黒鳥となり敵に突撃する攻撃「突撃ドットさん」という技を持つ