超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

1 / 106

息抜きにまたこんなん書いてしまった。

許して、許して……。


記録1

 

 

 

 

────超常社会。その事の始まりは、中国のとある病院にて発光する赤子が生まれたというニュースだった。

 

以降、世界各地にて超常的な能力を有する人間が発見され、その原因は不明とされつつも時は過ぎ、いつしか超常は日常へと浸透され、夢は現実のモノへと変化していく。

 

世界の総人口の約八割が、何らかの特異体質である超人社会は現在、混乱渦巻く世の中にて誰もが空想して憧れた一つの“職業”が脚光を浴びていた。

 

【ヒーロー】、超常たる能力を有する個人が起こす事件事故に対抗するべく、有志の人々が立ち上がった事を機に世界から認められた超人気職業。

 

悪意と暴力を振り撒く(ヴィラン)から人々を守る─────警察とは全く別形態の法の力を持つ彼等の存在は、人々に認められる形として超常の能力を持つ“個性社会”と同時に、世界に浸透していった。

 

これは、そんな超常の力を持つ個人達の中でも、【(スーパー)】と称された一人のヒーローの────活動記録である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「センセー、さよーならー!」

 

「はーい。個性を使ったり寄り道せず、気を付けて帰るのよー」

 

 子供達の声で賑わう小学校。最後の授業も終え、帰りのチャイムと共に学校を後にするチビッ子達は、現在担任の先生の言葉を素直に聞き入れるお年頃。

 

今日は授業も午前で終わり、帰宅中の子供達は余った午後の時間の間に友達と遊ぶ約束をしながらそれぞれ帰宅を目指す。

 

そんな中、一人の少年が家に続く横断歩道に差し掛かった時、朗らかだった表情を一変させる。

 

「────げっ、今日もいる」

 

「いや、開口一番に“げっ”は酷くない?」

 

 横断歩行者の誘導旗を持って下級生達を誘導する一人の男、少年はこの男が嫌いな部類に入る程に苦手だった。

 

逆立った黒髪、民族衣装の様な格好をした独特な衣服を身に纏っているが、はだけた胸元からは鍛え抜かれたであろう見事な肉体が垣間見える。

 

“ヒーロー”。個性という個人が有する能力を法的に使用する事を許された存在、少年の目の前に立つこの男もそんな超人の一人だった。

 

「こんな所で油売ってないで、さっさと敵の一人でも捕まえてこいよ。それでもヒーローか」

 

「いやいや、将来を担う若い雛鳥達を見守るのも、ヒーローの大切なお仕事さ。そう邪険にしないでくれよ」

 

「うるせー能無し。そう言ってこの街にやって来たけど、一度だってヒーローらしいことしてないじゃないか! 俺知ってるんだからな! お前みたいな奴の事“キューリョードロボー”って言うんだろ!」

 

「いや、ヒーローは基本的に歩合制だから、言う程お給料貰ってないんだけどね」

 

 目を鋭くさせ、男にアレコレ難癖を付けてくる少年に、男は苦笑いを浮かべていた。しかし、ヒーローは敵に対しての抑止力としての側面が確かに存在している以上、少年の言葉は暴論とは言えなかった。

 

「いいからさっさと敵を倒しに行けよ! 他のヒーローは皆やってるぞ!」

 

「いやぁ、俺って力尽くとか苦手で。敵だって痛がったり、泣いたりするだろ? 俺も殴った拳とか痛いし、あんまりそう言う事はしたくないかなーって」

 

「なんだよそれ! 敵を倒せないヒーローなんてヒーローじゃないだろ!」

 

「いやいや、何も敵を倒す事だけがヒーローの全てではないぞ少年。こうやって君たちの事を見守るのもヒーローの役目、それにこう見えて俺は災害救助の時とか結構重宝されてるんだ───」

 

「うっせぇバーカ! この役立たず!」

 

敵を倒せと追求してくる少年に、男はただヘラヘラと笑いながら言い訳してくるだけ。自分がどんなに話しても積極的に敵を倒そうとしない男に、少年は軈て相手をするのもイヤになり、最後に男に罵声を浴びせて立ち去って行った。

 

「相変わらず、元気だねー」

 

そんな少年の背中を微笑ましく男が見守るのも束の間。

 

「ま、まってエリザベース!」

 

「ワフン! ワワフン!」

 

男から少し離れた所で、一匹の大型犬と老婦人が駆けていく。散歩の途中で手綱から手を離してしまったであろう老婦人は愛犬の名を呼んで制止を促す。

 

しかし、お気に入りの散歩によって少々テンション高めの大型犬のエリザベスは止まらない。軈てその大型犬が交差点へと差し掛かった時───それは起きた。

 

トラックが迫る。規模的に“トン”はあるでろう運搬車の接近に、老婦人は目を見開いた。このままでは愛犬が危ない。誰か助けてと叫ぼうにも周囲には誰もいない。人通りの少ない所だから散歩コースにしていたのに、完全な失敗だ。

 

誰か、誰か助けて。このままでは愛犬のエリザベスが、見るも無惨な挽き肉に変えられてしまう。誰でもいいから助けてと、口を開けて叫ぶ老婦人────

 

「っと、今のは危なかったなー。大丈夫か、ワンコ」

 

────よりも早く、事態は既に変化し、終わっていた。暴走していた愛犬は突然現れた男の腕に抱えられ、巨大な運送用のトラックは男の()()()()()()()()()()のだから。

 

「はい、お婆さん。愛犬を大事にするのはいいけど、自分の事も考えな。可愛いワンコに振り回されているとあっちゃ、ご家族も心配するぜ?」

 

「は、はい。ありがとうございます」

 

 その光景に半ば放心しながらも、老婦人は愛犬の手綱を手に取り、来た道へ戻っていく。大型犬の方も余程衝撃的だったのか、以降は大人しくなって老婦人と共に帰路に就く。

 

そんな飼い主と飼い犬を見送ると、男はトラックを地面へゆっくりと下ろし、手の甲でドアを軽く叩き、運転手の安否を確認した。

 

「おーい、運転の人、大丈夫かー?」

 

「あ、え? 今、視点が高くなってた様、な?」

 

「おーい、大丈夫? どっかぶつけたり気分が悪くなってたりしていないかー?」

 

 運転をしていて、脇道から大きな犬が飛び出してきたかと思ったら、体が車体ごと浮いた。そんな奇妙な体験を味わったドライバーは目を点にさせて愕然としている。

 

そんな運転手は声を掛けられるとハッと我に返り、ヒーローらしき男から厳重な注意を受けると、その後は安全運転を心掛け、スピードも落として去っていく。

 

そんな、何事もなかった日常に満足しながら、男は再び()()()()()()は離れている横断歩道へ戻っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だよアイツ、敵を倒せないヒーローとか、ヒーローである意味ないじゃん!」

 

 不機嫌な様子を隠しもせず、年相応の癇癪を起こしながら、少年は先程の男への悪態を吐き続ける。

 

自分達のいる町は、敵もいなければヒーローもいない。良く言えば平和で、悪く言えば退屈なド田舎だ。

 

だから、最初にヒーローが新たにこの町へやって来たと知った時は大いにはしゃぎ、期待した。自分達の身近にヒーローが来てくれると、子供ながらに喜んだ少年は友人達と共にヒーローを迎え入れた。

 

 最初は、とても嬉しかった。やって来たヒーローはそのコスチュームから異彩を放っており、鍛え抜かれた肉体も合わさって、上手く言葉に出来なかったが………兎に角、格好良かった。

 

しかし、その感動も長くは続かなかった。男は日がな一日中パトロールと称して町中をフラフラしているだけで、仕事をしているかと思ったらお年寄りの荷物持ちや、低学年の子供達の見守りをする程度。

 

地味。折角自分の町にやって来たヒーローは、やることなす事地味なだけの、ただの見栄えだけの存在だった。

 

もう、自分達の友人の中に男に期待するものはいない。せめて自分だけは彼を応援しようとするが、当の本人は全くその気にならず、ただ無為に日々を過ごしているだけ。

 

本人は災害救助を活動の主だと言うが、それも今となっては疑わしい。

 

ヒーローなのに戦わず、敵も倒せない。そんな奴がヒーローを名乗るのはおかしい。

 

「あんな奴、さっさと出ていけばいいのに」

 

そうしたら、今度こそ強く格好いいヒーローが来てくれるはず、と。根拠のない理屈を思い立つ少年だが………。

 

「おいおいなんだよこの湿気た町は、完全にド田舎じゃねぇか」

 

見上げる程の巨漢が、退屈そうに其処にいた。

 

 少年は知らなかった。今日(こんにち)、ヒーローが飽和状態となるまで存在しているように、悪意もまた吐いて捨てる程あるのだと。正義の味方が身近にあるのと同じく、おぞましき悪意もまたすぐそこに存在しているのだと。

 

「ったく、こんなんじゃあ暴れ足りねぇな。………まぁ、ガキの一人や二人殺せばヒーローもやってくるだろうよ」

 

「──────あ」

 

ニヤリと、捕食者の笑みを浮かべて自身に視線を向けてくる男に、少年は子供ながら理解した。

 

この男はヴィランだ。それも、ただのチンピラの様なモノではなく。本当の、本物の─────秩序の、敵。

 

「っ!」

 

「お?」

 

殺される。その事を本能で察した少年は背負っていたランドセルを男に向けて放り投げ、一瞬だけ視界を塞いでその場から全速力で逃げ出した。弱冠9歳の子供にしては、この判断力は大正解と言えるだろう。

 

「おっと、待て待て待てって、折角第一町人と出会えたんだ。もっとコミュニケーションを楽しもうぜ」

 

 男の体から筋肉繊維が生える。それを鎧の如く身に纏うと身体能力を爆発的に向上させ、逃げ足の速い少年の前へ容易く先んじる。

 

凶悪な笑み、獲物は絶対に逃がさないという肉食動物とは違う悪意に満ちた笑み。この瞬間、少年の抵抗の意思は完全にへし折れ、涙を浮かべながらヘタリ込む。その座った所には湿った水溜まりが出来ていた。

 

「おー、怖いか? 小便漏らすほどビビったか? 安心しろォ、俺はガキをいたぶる趣味は……まぁ無いこともないが、お前は比較的楽に殺してやるからよぉ」

 

 嗤う。死にたくないと足掻く子供を、無駄だと嘲笑う悪意が、この世界には存在している。なんで、なんで自分がこんな目に。そう叫びたくて仕方がないのに、恐怖で震えて声が上手く出ない。

 

代わりに出てきたのは、か細い疑問の声。

 

「─────を─────だ」

 

「あぁ?」

 

「この町に来て、何をする、つもりなんだよぉ」

 

涙声で、どうして自分の住む町にやって来たと訊ねる少年に、男はやはりニヤリと嗤う。

 

「ストレス解消ォ。此処んところ、本気で遊んだ事がなくってさぁ、もうこの際なんでもいいからぶっ壊したくなった訳よ。シケた詰まんねぇ町かと思ってたが、気が変わった。この町は徹底的にぶっ潰す」

 

「な、なんで………」

 

「そりゃあ、お前。ガキは良く泣くだろ? ホラ、彼処に学校があるじゃんか。つまり彼処を中心に暴れたら、ガキどもの悲鳴の大合唱は確実じゃん」

 

心底楽しそうに嗤う男に、少年は怒りよりも恐怖が勝った。この男は狂っている。他人との共存より、己のエゴを追求し、そして周囲を巻き込んで破壊の限りを尽くす。

 

目の前にいるこの男こそ、正真正銘のヴィランだ。

 

「んじゃあ、改めて記念すべき被害者のガキよ。お前は精々派手に………死んでくれや!」

 

膨らんだ巨腕が振り下ろされる。コンクリートの大地は砕かれ、更に下にある地盤が割れる。轟音と砂塵が舞う最中、ヴィランの男は違和感に気付く。

 

手応えがない。本当なら指先から脳髄まで肉と骨の砕ける感触がダイレクトに伝わってくるのに、それが全くない。

 

「────いない、だと?」

 

 個性? 分身、或いはそれに関連する何かの個性かと男は一人考えるが、それはない。

 

何故なら、その原因となる者がすぐそこにいるからだ。

 

「なんだよ。なんだよなんだよ、ちゃんといるじゃねぇかヒーローがッ!」

 

「お、お前……」

 

吼え猛る敵の声に怯えながら、少年は自身を抱える男を見る。それは、先程まで自分がこれでもかと罵倒した横断歩道にいたヒーローの男。うだつが上がらず、日頃から地味な所しか見ていない、ヒーローらしからぬヒーロー。

 

そんな奴が、自分を敵から守っている。あの恐ろしいヴィランを背に、自分を庇っている。

 

「よぉ、大丈夫だったか少年? 危なかったなぁ」

 

「あ、あぁ………あの!」

 

「でも、俺が来たからもう安心していいぞ。オールマイトやエンデヴァー程ではないけど、俺もヒーローだからな」

 

命の危機に瀕し、そして救われる。人生で二度もあるものじゃない体験をした事で、少年の緊張状態は極限のモノとなり、それ故に言葉を口にする事は難しい。

 

少年が言いたいのは礼の言葉か、それとも逃げの言葉か。いずれにせよ、普段見せている彼の姿を見ていてはあのヴィランに勝てる姿は想像できない。

 

格好付けてないで早く逃げろ。そう言いたい少年の心情を知ってか知らずか、ヒーローはヴィランへ向き直る。

 

「ヒーローなら、俺の相手をしてくれよ! 俺と一杯遊んで、楽しもうぜェッ!」

 

 ヴィランの選択した行動は突進。避ければ背後にいる子供に直撃し、必然的にヒーローには受け以外の選択肢は無くなってしまった。己の筋肉を操作しての突進攻撃、その大きさと迫力から少年は顔を青ざめさせる。

 

が。

 

「ッ!!??」

 

 筋肉の肥大化で極限まで高めたぶちかましを、ヒーローの男は片手で受け止めてみせた。受ければヒーローですら死は免れないヴィランの突進、これまで幾人ものヒーローを地に沈めてきた自慢の一撃が、造作もなく受け止められている事実。

 

ヴィランの脳裏に浮かぶのは、平和の象徴と謳われる最強にして最高のヒーロー。このヒーローはまさかあの怪物と同格のパワータイプだと言うのか。

 

「だからって、止まれるかよォっ!!」

 

 関係ない。相手が平和の象徴に匹敵する力の持ち主だろうと、今更ヴィランの男が自分の生き方を変えられる筈がない。この身は爪先まで屑に染まった出来損ない、その思考回路ゆえに人間社会に馴染めず、他者を壊す事でしか生を実感できない愚かな存在。

 

ならば、最後までその在り方を貫き通す。止められた掌に向けて、男は地につけた脚に力を入れようとして………吹き飛んだ。

 

「───な、あ? んだ、コレ?」

 

 炎が吹き荒れた。ヒーローの全身から湧き上がるように溢れる黄金の炎、幻想的且つ力強いその輝きにヴィランは一瞬目を奪われ。

 

「ハッ、炎まで使えるとかエンデヴァーかと思ってちと焦ったが、大した熱さじゃねぇ。こんな虚仮威しに、俺が怯むわけ………ッ!?」

 

炎自体に熱さは感じない。ならば改めて自慢のパワーをぶちこんでやると息巻いて……今度こそヴィランの足は立ち止まる。

 

その目に映るのは………困惑と畏怖。鎧のように自身を包んでいる筋肉すらも震え、微動だに出来なかった。

 

怖じ気、震え、愕然となるヴィランに対して……少年の顔にはもう、恐怖は無かった。

 

あるのは、目の前のヒーローに対して抱く憧憬だけ。

 

「すっげぇ………」

 

 逆立った黒髪に黄金の光が宿り、頭髪と同じ黒だった瞳が翡翠色に瞬いている。

 

「─────俺はオールマイトでもエンデヴァーでもない。俺は貴様を倒すものだッ!

 

 

 

 

 

これは、穏やかなヒーロー生活を願って活躍する………とある一人のヒーローの、活動記録である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





本名“後藤甚田”

個性【超】
分類は一応変身タイプに分類する。

一度変身すると全ての身体能力が大幅に向上する。


尚、素で力が強かったりするが個性の影響なのかは不明。

空も自由に飛べたりして、中々に狡い個性である。

……本当に個性かこれ?



ヒーロー名は【ゴジータ】

本人曰く、最初に個性が発現した際、これしか頭に浮かばなかったそうな。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。