超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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そろそろ原作に突入しそうなので初投稿です。


記録10

 

 

 

「ス────フ────」

 

 滴り落ちる汗を拭いもせず、男は部屋の中央にて立ち尽くす。目を閉じ、空想に浸りながらイメージするのは無数の影達。

 

それは、宇宙の帝王だった。

 

それは、完全なる人造生命体だった。

 

それは、宇宙を恐怖に陥れる魔人だった。

 

それは、邪念の集合体だった。

 

それは、幻魔の怪物だった。

 

それは、伝説の悪魔だった。

 

どいつもこいつもふざけた力を持ち、悪鬼羅刹という言葉では足りない程の凶悪さを秘めた化物達。そんな奴等を率いる様に、七つの宝玉を埋め込んだ邪悪なる龍の頭目は嗤う。

 

絶望。そこに一切の希望はなく、欠片程の慈悲もない。正しく、巨悪。しかし、そんな彼等を前にしても空想の中の男は怯まない。

 

『そんじゃ、いっちょいくぜ!』

 

不敵に笑い、黄金の炎を纏って絶望達に相対する。嗚呼、これこそが自分の憧れ。自分が目指す天下無敵のヒーロー。

 

【ゴジータ】。その名に恥じない男になる為、後藤甚田もまた戦う。眼前に現れるのは、一つの銀河を壊滅に追いやった伝説の悪魔。翡翠と金が混じった闘気を滾らせ、その悪魔は嗤いながら自分に指を差してくる。

 

『先ずは、お前から血祭りに上げてやる……!』

 

恐怖と狂気を撒き散らす破壊の権化。圧倒的とも呼べる存在に対し、甚田もまた不敵に笑う。

 

上等。此処で怯めば、自分は一生彼に追い付けなくなる。追い掛ける事が出来なくなってしまう。それだけはあってはならないと、迫り来る暴威を前に後藤甚田(ゴジータ)は正面から戦いを挑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃー、良い汗かいたー」

 

「お疲れゴジータ、はいジュース」

 

「お、サンキューオールマイト」

 

 地下室でのトレーニングを終え、リビングに戻ってきたゴジータをオールマイトが出迎える。投げ渡されたジュース缶の蓋を開けて一息に飲み込むと、口の中に仄かに甘い柑橘類の風味が満ちていく。

 

冷たい飲み物に喉が潤おうと、ゴジータは体力の回復を実感しながらソファーに座る。

 

「しかし、折角のお休みなのに鍛練だなんて……本当にストイックなんだね君は。もっとこう、他に趣味とかないの?」

 

「人助けを趣味にしているオールマイトが言う? 良いんだよ俺はこれで。そもそも鍛練に没頭したくてこの田舎を選んだ位なんだし、体を鍛えることこそが俺にとっての休日なんだよ」

 

 実際、最初の頃はヒーローとして誰かを助けることよりも、後藤甚田はゴジータとして常に強くなる事を目標としていた。我ながら利己的な理由だが、彼の名を名乗り、彼の力を持つ以上、余所見をしている暇はないと思ったからだ。

 

そんな彼も雄英の学生として日々を過ごし、同級生や先生方、他のヒーロー達の在り方を知って、その求道者染みた思考を徐々に軟化させ、今のような感じへと変わっていった。

 

施設の恩師も「変わったね。良い意味で」と安堵し、施設の他の子供達も何処か安心していた様子だった。

 

様々な経緯をへて自分なりのゴジータを貫く事を決めた後藤甚田だが、それはそれとして体を鍛えるのは楽しくて止められず、今日も休日の日に鍛練に没頭してしまっていた。

 

オールマイトから出てくる言葉もそんなゴジータを案じての言、故にゴジータは不愉快に感じることもなく、心配するなといった感じで応えた。

 

「そうかい? 君が言うなら納得するけど……あまり、無茶はしないでくれよ? 万が一君が倒れたら、ヒーロー界の損失だ」

 

「そん時はオールマイトの出番、てな訳だ。悪いな、折角の引退時を引き延ばしちゃって」

 

「コラ、そう言うことは冗談でも言わないの」

 

ゴジータの冗談にオールマイトは僅かな怒気を滲ませるが、彼自身それが冗談であることは分かっている為に、程々で済ませているが………此処にサー・ナイトアイがいればゴジータのふざけたユーモアのセンスにそれはもう怒り狂っていた事だろう。

 

「っと、冗談と言えば例の脳ミソ剥き出しのヴィラン。あれから何か進展あった?」

 

 先日、アメリカから帰還する際にゴジータが遭遇したという脳ミソ剥き出しの黒い怪物。翼を生やしていたりして明らかに普通じゃない状態のヴィランに、ゴジータは何の冗談だと思った。

 

その後、軽くあしらった後に無力化させて捕縛。一先ずオールマイトの知り合いという塚内警部に連絡をして、事情を話し、暴れる様子がないことから連行。現在はその実態を調べている最中なのだとか。

 

「今の所はなにも。ただ、君が倒したあのヴィランは我々の間で【人造ヴィラン】と仮称される事になったそうだ」

 

「【人造ヴィラン】? そりゃまた意味深な。じゃあなにか? アレって人工生命体か何かなのか?」

 

「いい線行ってるぜゴジータ。その通り、現在あの人造ヴィランなる個体は何者かの手によって手が加えられた……その名の通り人造のヴィランらしいんだ」

 

「おいおいマジか。何処の闇の組織が動き出したんだ? R&R(レッドリボン)か? それとも生き残りのツフル星人の仕業? はたまたショッカーか?」

 

「うんゴメン。全く分かんないや」

 

やや興奮気味に話すゴジータだが、彼の口にしている組織に何一つ心当たりのないオールマイトは困惑するしかなかった。ともあれ、これで先の襲撃は何者かによる意志が働いていたことは間違いない。

 

「現在、塚内君達警察の方々が都心を中心に怪しい動きをしている輩がいないか調査中との事さ。君にも後日改めて詳しく話を聞かせて欲しいとの事だけど……」

 

「それくらいは全然構わないさ。俺達の代わりに情報を足で稼いでくれているんだ。俺の情報で僅かでも助けになるなら、喜んで協力するとも」

 

普段からヴィラン退治や自然災害に備えて活躍しているヒーローは、組織的に動くヴィラン達に対してどうしても受け身に回る事が多い。そんなヒーロー達の欠点を埋めるように、各国家の警察組織はヒーローと協力体制を築いている。

 

警察組織特有の人海戦術を以て調査、情報を精査する事で敵組織の所在を掴み取り、ヒーローと結託してこれに対処する。そんな組織の垣根を超えた協力と言うのが、割と甚田にとって熱いものを覚えるモノだった。

 

────因みに、ゴジータもオールマイトも大抵は一人で片付けてしまう事が多いので、そういう話をした事は殆どない。特にゴジータは同期達の警察と協力してヴィランを捕まえたという話に指を咥えて羨ましく思っていたりしている。

 

閑話休題。

 

「……さて、そろそろ私も行くとするよ」

 

「あぁ、そう言えば来週からだっけ? 雄英に行くのは」

 

 リビングに並べられた荷物の数々。それはオールマイトが此処に来る際に持ってきたモノ、ゴジータとチームを組んで数ヶ月。その荷物の中にはこれ迄の日常の思い出も詰まっていた。

 

「あぁ、ナイトアイの協力もあって無事に教員免許はゲットした。次の春からはいよいよ私も先生デビューさ!」

 

ナイトアイのスパルタ指導によって、無事にオールマイトは教員免許を取得。能力的に新米教師である彼は、次の春から晴れて副担任を任される事となった。自分の後継を探す為、教師になることを決めたオールマイト。そんな先輩兼相棒の新たな門出にゴジータも笑顔で見送る事にした。

 

「筋肉ムキムキのマッチョが先生とか、生徒達萎縮しちゃうんじゃないの?」

 

「止めなさい。実はちょっと気にしてるんだから」

 

 笑い合う二人、出会ってから今日まで一年と経っていない間柄なのにその関係性はまるで古くからの戦友を相手にしている様だった。互いにNo.1の座に至った者同士、初めて体験した助け合う間柄に互いが親友の様に思っていた。

 

「ありがとうゴジータ、君には本当に世話になってばかりだ。本来なら私が色々と手助けするつもりだったのに」

 

 現在、とある巨悪のヴィランがオールマイトの体に負わせた深い傷。胃を摘出し、呼吸器官の大部分をやられた彼の体は、ゴジータが造った仙豆擬きのお陰でかなりの快復を遂げる事になった。

 

体つきは前より太くなり、抉られた傷の痕も大分薄くなっている。血反吐も吐くことはなく、体格も前より少しずつ大きくなっている。

 

 そんな経過に伴い、活動時間となるオールマイトの制限時間も大幅に改善され、その力も全盛期程でないにしろ復活の兆しを遂げている。

 

その結果、一度は袂を分かった友と和解を果たし、新たな関係性を築く事が出来た。最初は自分がお節介を焼くつもりだったのに、これではまるで逆ではないか。

 

しかし、それを恥とは思わない。何故なら……。

 

「言っただろオールマイト、余計なお世話は───」

 

「ヒーローの本質。だったな」

 

 彼も────ゴジータもまた、オールマイトとの出会いに感謝をしていたからだ。ヒーローとして未熟である自分が、ふとした切っ掛けでNo.1になってしまった。

 

そのしがらみを枷にせず、自分なりのヒーロー像を見いだす切っ掛けを与え、未熟な自分を支えてくれたヒーローとしての大先輩。

 

ゴジータもオールマイトと同様に感謝をしている。だから………そろそろ、この関係性も一度終わらせる事にしよう。

 

 オールマイトが教師になれば、必然的にヒーローとしての活動は自粛せざるを得ないだろう。その代わりを担うゴジータはそんな人々の不安を一身に背負い、その期待に応えなければならない。

 

けれど、彼ならばその重圧すらも軽く背負ってしまう事だろう。オールマイトは、今も余裕の表情を浮かべているゴジータに確信している。

 

故に、このチームは此処で終わり。寂しくもあり、惜しみはするが………後悔はない。

 

「じゃあ、頑張れよ、No.1(後輩)!」

 

「そっちもな、No.2(先輩)!」

 

 来た時と同じ様に握手を交わし、家を出るオールマイトを見送る。互いに僅かな寂しさを残す一方………。

 

「まぁ、会おうと思えば秒で会えるんだけどね」

 

「いや空気読んで!?」

 

中々台無しな事を口走る。

 

 その後、田舎の農家や近所の方々に野菜やら果物を大量に受け取ったオールマイトは、そのまま電車に乗り、自身の新たな戦場に向かうのだった。

 

「………さて、俺ももうひと頑張りしますか」

 

そんな相棒の背中を見送ると、ゴジータは地下室へ戻り鍛練を再開するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────そして、春。新たな時代の訪れと人の出会いを予感させる季節に差し掛かり、日本は大きく動き出そうとしていた。

 

「“没”個性処か“無”個性なお前に、一体何ができるんだ!? あぁ!?」

 

「それを決めるのはかっちゃんじゃない、僕自身じゃないか!」

 

ある者は憤り、ある者は足掻き。

 

「はぁ………あぁ、ダメだ。俺には出来ない。ゴジータ、お前の理念、理想は俺には眩しすぎる。偽物が蔓延るこの社会で、偽物を信じるなんて事は……俺には出来ない! だから、早く! 俺を殺しに来てくれ、ゴジータァァァァッ!!」

 

あるものは嘆き、憂い、血を流す。

 

「……平和の象徴、希望の象徴。どっちも目障りで鬱陶しいな」

 

ある者は静かに憎悪し。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいね。あの個性、是非とも欲しい」

 

ある者は不気味に嗤う。全てをこの手に、何もかもが己の為だと自負する自己の化身。

 

全てに嗤い、全てを嘲笑うその者の潰れた視線の先には………。

 

『さぁ、再び来ましたこの男! 初登場にして全ての話題をかっ浚った次代のニューヒーロー! まぐれと囃し立てられたこの男の実力を疑うものはもういない!』

 

薄暗い闇の中で、一際輝く黄金の炎。その主の名は……。

 

『チームを解消し、休止明けも変わらず絶好調! 新たなNo.1! 【超】ヒーロー、ゴジータァッ!!』

 

 大歓声の上がる客席の向こうで、次代のNo.1の拳が天を衝く。

 

それは、どうしようもなく時代の流れを現している様で、男の目にはこの上無く滑稽に見えた。

 

 

 

 

 






Q,ゴジータとオールマイト、チーム解消したの?

A,しました。チームを解消した後もヒーロー活動を頑張り、No.1の座を自分の者にしました。これにはオールマイトやナイトアイもニッコリ。

おや、エンデヴァーの様子が?

Q,昔のゴジータってどんな感じ?

A,“ゴジータであること”に固執し、少し思い詰めてましたが、当時の学友達と先生達のお陰で自分のヒーローとしての在り方を見つめ直し、自分なりのゴジータを目指す事を決めた。

やっぱり環境って大事。

もしゴジータが雄英の先生として赴任するなら、誰と絡んで欲しい?

  • 1.緑谷出久
  • 2.爆豪勝己
  • 3.轟焦凍
  • 4.飯田天哉
  • 5.相澤消太
  • 6.麗日お茶子
  • 7.A組全員
  • 8.オイラに決まってんだるるぉぉ!?
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