超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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メタファーでしんみりとした気持ちをスパーキングZEROでぶち上げる。

これが最近の自分のルーティン。

そんな訳で初投稿です。




記録102

 

 

 

 ───1ヶ月前、蛇腔跡地。

 

 歓声の声が聞こえてくる。A.F.Oに取り込まれた死柄木弔を遂に討ち果たしたゴジータは、振り上げた腕の先にある済み渡る青空を見て、満足そうに笑みを浮かべていた。

 

「────済まないな、ゴジータ。君に何もかもを押し付けてしまった」

 

 気付けば、ボロボロな身体のオールマイトが何故かステインを引き連れて此方に歩み寄ってきていた。………いや、本当に何でステインいるの?

 

「『別に、気にしてねぇさ。やるべき事を出来る人間が、偶々俺だった。ただそれだけの事さ。そっちこそ、中々に大変だったみたいだな』」

 

 気の動きで向こうでの戦いを認識していたゴジータは、オールマイトの晴々とした顔色を見て、何となく察していた。

 

「『その様子だと、やりきったみたいだな』」

 

「あぁ、お陰様で私の個性───O.F.Aは出し切った。もうスッカラカンさ」

 

 口振りは兎も角、その口調は明るかった。成すべき事をやり遂げ、それと同時に自身の中にある個性の残滓を全て使い切った。

 

そう語るオールマイトは後悔なんて微塵もない、ヒーローとしての笑顔が張り付いていた。

 

「ただ、一つだけ心残りがある。死柄木弔───いや、志村転弧は……」

 

「『アイツは、産まれそのものからA.F.Oに操られていたよ』」

 

 ハッキリと告げられるゴジータの言葉に、笑みを浮かべていたオールマイトが凍り付く。

 

 あの時、自身の裡に死柄木弔とA.F.Oが侵入してきた時、ゴジータは知った。

 

 死柄木弔────否、志村転弧は産まれた経緯の時点でA.F.Oの道具としてきた。ヒーローを憎む父の下に生まれたのも、【崩壊】という個性すら、A.F.Oの手によって生み出されてきた。

 

オールマイトと言う存在を追い詰める為、O.F.Aを手に入れ自身の器にする為、死柄木弔(志村転弧)の人生は、何処まで行ってもA.F.Oの代替品でしかなかった。

 

 死柄木弔の行いは決して赦される事はなく、またこの顛末は仮に全て公に晒したとて妥当だと多くの人々は思うだろう。

 

だが、志村転弧としての彼の生は……。

 

「私が、もっと早く気付いていれば……」

 

「『たらればの話は止めようぜ……と言っても、納得出来ねぇよな』」

 

 彼は、産まれそのものから利用されてきた。生まれの家庭も、環境も、個性すら与えられたモノ。

 

 作為的に家族を殺し、そうなるように自分を追いやり、遂にはその人格さえA.F.Oに喰われた。

 

決して救われることの無いヴィラン、それが死柄木弔というヴィランの最期───。

 

「『だからよ』」

 

 ────と、そう思っていた。

 

 ふと、空から何かが降ってきたのに気付く。フワフワと透明な膜に覆われたソレ、その中には乳幼児相当の赤子が声を張り上げて泣いていた。

 

「『一か八かに賭けてみた』」

 

 そう言いながら降りてくる赤子を抱き止める。瞬間、覆われていた膜は弾け、赤子の泣き声が辺りに響き渡っていく。

 

 その光景に、オールマイトは目を飛び出る程に見開いた。

 

「ご、ゴゴゴゴ、ゴジータ君? そ、そその子は?」

 

「『察しの通り、志村転弧さ』」

 

 そう言って、不敵に笑うゴジータにオールマイトは驚嘆の雄叫びを上げて。

 

「フフ、それでこそゴジータだ!」

 

 厄介ファン筆頭ステインは後方理解者面で頷いていた。(尚、その後は素直に大人しくタルタロスへ収監された模様)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────1ヶ月後、後藤甚田の家にて。

 

「やれやれ、やっと落ち着いたか」

 

 お腹が減っては泣き、お漏らし等の生理的現象で泣き、赤子としての権利をこれでもかとフル活用し、その全てに対処した後藤甚田は、今はスヤスヤと眠る赤子を一瞥すると、足音立てずにその場から一時離れ、居間へと戻る。

 

「お疲れ様甚田、はい。夕飯出来てるわよ」

 

「悪いな葵さん。ワザワザ来てもらって」

 

「気にしないでよ。私はほんの少し貴方の負担を減らしただけ」

 

「それでもさ、ありがとう」

 

 用意された暖かい夕飯に舌鼓を打ちながら、甚田はこの1ヶ月の出来事を思い出す。

 

あれから、世界は日本を中心に活発に動き始めた。世界各国から蛇腔周辺の土地を復興するべく支援を送られ、その度に今回奮戦したヒーロー達に称賛の声が届けられた。

 

 中でもアメリカ大統領の興奮は凄じく、直接現地に乗り込んでゴジータに何度も何度も握手を求めてきた程だ。側近の人達は皆涙目だった。

 

 他にも支援の中には物を操れる個性持ちが数多く派遣された事により、各専門家達の協力もあって、更地となった街は通常とは桁違いの速さで復興されていき、早ければ三年で蛇腔跡は元の街並みへと戻るだろうとされている。

 

「それよりも甚田、貴方にお客様よ」

 

「客?」

 

 夕食も食べ終え、そろそろ赤子の所へ向かおうかと思っていた矢先。唐突に姫野葵から告げられる来訪者に首を傾げると、玄関口から聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

 何だと思いながら玄関へ向かうと。

 

「や、ジンタン。先日振りだね」

 

「トッシー? どうしたん急に」

 

 スーツ姿の八木俊典が、慣れ親しんだ様子で佇んでいた。

 

「漸く此方のゴタゴタが片付いて、偶々此方に寄ったんだ。良かったら少し話せないか?」

 

「あー、今はちょっと難しいかなぁ」

 

 折角の先輩ヒーローからの誘いではあるが、生憎今此方は絶賛子育ての真っ最中。眠っている子供を残してはいけないと、やんわりと断りを入れようとするが……。

 

「行ってきなさい。あの子の事は私が見ておくから」

 

「葵さん」

 

「この1ヶ月、ずっとあの子に掛かりきりだったのよ? たまにはお友達とお話くらいしてきなさいな」

 

「──ありがとう、葵さん。そんじゃトッシー、少し外へ行こうか」

 

「ありがとう。葵さんも、心遣い感謝します」

 

 色々と見透かされた気分になりながらも、素直に葵の好意に甘えることにした甚田は、俊典と共に近くの道路へ散策に出掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───本当に、君には色々と世話になったな」

 

「開口一番にそれかよ。もう耳にタコだぜ」

 

 夜空に浮かぶ月、その明かりを頼りに道を往く二人。新旧No.1ヒーローの二人の会話は、幾度と知れない平和の象徴の感謝から始まった。

 

「何度口にしても足りないさ。君が起こした奇跡は運命すら捩じ伏せ、一つの命を再誕させた。言葉だけで語り尽くせるモノじゃない」

 

「お陰で公安の人達は何人か病院送りになったけどね」

 

 あの日、ゴジータは一か八かの賭けとしてA.F.Oに取り込まれた志村転弧の救出に乗り出した。

 

 虹色の光───【ソウルパニッシャー】による浄化のエネルギーをベースに、邪悪なるものを討つ力へと昇華させた【龍拳】による抽出作業。

 

死柄木弔に至るまでの経緯や経験、あらゆる要素を根刮ぎ削ぎ落とす事で漸く成し遂げた奇跡。それが、今の自分の家で育てている赤子の正体である。

 

 お陰で、事の顛末を知った公安は泡を噴き出しながら事実の隠蔽に奔走し、何人かの役員はそのまま昏倒、病院に担ぎ込まれる事態になった。

 

 オマケにゴジータが新たに編み出した瞬間移動なる反則技はお願いだから使わないでくれと、ギャン泣きされながらキレ散らかされた。

 

「前者は兎も角、後者はトッシーも人の事言えないだろ。何だよ見てたら覚えたって。界王拳の事といい、アレ相当難易度高い技の筈なんだけど?」

 

「ハハハ、君の教え方が良かったからじゃない?」

 

 少し申し訳なさそうにしながら、それでも笑って誤魔化す俊典だが………この男、実は時間の合間に甚田から教わった瞬間移動を僅か1日そこらで修得しているのである。

 

人が命懸けで編み出した瞬間移動を、たった1日で修得されたのは流石のゴジータも予想出来ず、蛇腔決戦でも見せなかった困惑顔を晒していた。

 

尚、倒れた何名かの公安に代わりホークス迄もがこの話の事案に関わり、情報隠蔽に携わったのだが……、そんな彼の笑顔がひきつっていたのも記憶に新しい。

 

「で、でも緑谷少年も最近気の解放を覚えてきたから、私だけに限った話ではないのかも知れないよ?」

 

「ンなわけないでしょーが。なに? 無個性の人って実はそういう方面に特化した人達なの? 個性という異能を持たない代わりに、セブンセンシズに富んでいるの?」

 

 実は無個性の人達ってポスト聖闘士なんじゃね? 自分よりも早い内に気の解放に至った緑谷にグヌヌ顔を晒す爆豪、あの様子だと近い内に再戦もあるのかもしれない。

 

「けど、だからこそ今一度君に訊ねたいんだ。ゴジータ、君は本気であの赤子を育てる気なのかい?」

 

 立ち止まり、そう語り掛けてくるオールマイト(・・・・・・)ゴジータ(・・・・)は不敵の笑みを浮かべて応える。

 

「当然さ。自分の行った結果にはキチンと責任を取らないとな」

 

 あの日、ゴジータによって救われた赤子は後藤転弧(・・・・)として後藤甚田の養子として迎え入れられる事になった。

 

助けたい。あの時、A.F.Oに取り込まれた転弧を見て咄嗟に思ったゴジータの………後藤甚田の本音。

 

 助けたいと思い、助けたいと願った。それがあの時の奇跡に繋がったと言うのなら、その責任を果たすのがヒーローとして、大人としての責務である。 

 

「それに、星の都には新たに二人も抱える事になったからな。これ以上迷惑は掛けられないさ」

 

 星の都は近い将来、二人の孤児を抱える事になる。その内の一人が元死穢八斎會組長の孫娘である壊理と、先の蛇腔決戦でゴジータが保護した姫野葵のクローン体。

 

 壊理は兎も角、本当は姫野葵のクローン体は別の施設で保護される事になる筈だが、意外なことに姫野葵自身が自分が後見人になると宣言。殻木球大の悪行を明らかにした事で、自身が異形型として生まれた経緯を知ったのに、それでも彼女を引き取ると葵は口にした。

 

『だって私、妹欲しかったんだもの』

 

 そう言って微笑む姫野にゴジータは言葉を失い、敵わないなと悟った。そうして、二人の孤児を引き取った事で色々と忙しくなる星の都にこれ以上迷惑を掛けるのは忍びないというのもゴジータの本音だった。

 

「俺ならガキの扱いはある程度慣れてるし、壊理ちゃんなら施設のチビ共と仲良くなれるだろ。彼女も………葵さんなら何とかしてくれそうだしな」

 

 御幸も恵も、子供達の面倒を見る事に率先としている。何なら二人の父親も社会復帰の一歩として手伝ってくれるらしい。二人は凄まじく嫌な顔をしていたけど。

 

 閑話休題。

 

「人手はなんとかなるし、後の問題は資金位だけど……ま、それも俺の稼ぎで充分賄えるからな。実質ノーダメよノーダメ」

 

 そう快活に笑うゴジータだが、オールマイトの顔色は優れない。

 

「………でも、その代わり君は個性を喪ったじゃないか」

 

 蛇腔決戦にて、ゴジータは初めて己の個性を発動させ、そして失った。

 

 今の彼にはあの時の様な圧倒的力はないし、特徴的な紅い髪もなければ野生染みた尻尾もない。ゴジータ曰く、あの個性はあの時一度きりのモノなのだとか。

 

「良いのさ、アレで」

 

 しかし、そんな代償を支払ったにも関わらずゴジータは笑う。

 

「アレは過去から未来への道標、今の俺がいつか辿り着く生涯の境地。謂わば未来からの前借り見たいなモノさ、それをいつまでも未練がましく持ち歩く訳にはいかねぇさ」

 

 個性を使いきった事で無個性となったゴジータだが、其処に未練や悲壮感は全く感じられず、寧ろスッキリとした面持ちで霧散していく自身の個性が消えていくのを見届けた。

 

仮令(たとえ)個性を失ったとしても、これ迄自分が培ってきた力は変わらない。生まれの責任に囚われ、憧れを呪いとして自身を縛っていた過去が消えないように。

 

 だから、自分も頑張っていける。これからもゴジータとして、我武者羅に強さを追い求める事が出来る。

 

「オールマイト。俺はさ、ワクワクしてるんだ。今の俺がどこまで強くなれるのか、これからの未来にどんな強い奴と出会えるのか、楽しみで仕方がねぇんだ」

 

 個性終末論。それは日々進化を遂げる個性という異能に人類の制御が出来ず人類史は終焉を迎えるというオカルト。

 

それは、半分当たっているのかも知れない。

 

 ゴジータという存在は、この世界に一つの転換期を迎えさせ、蛇腔決戦の戦いを目にしたものはゴジータこそが特異点なのではないかと、不安に思う者も少なからず存在している。

 

それは確かなのだろう。けれど、八木俊典(オールマイト)は同時に安堵していた。

 

「全く、呆れた向上心だな」

 

 目の前の彼は、決してそんな事にはならない。眼を輝かせて未来に思いを馳せる彼は、永遠の挑戦者なのだから。

 

 嘗て、未来が不安だった少年は果てのない未来に希望を抱く青年となった。

 

 それは奇しくも、彼が憧れる摩訶不思議な物語の主人公と同じモノで、後藤甚田(ゴジータ)は無自覚にその境地へと至っていた。

 

「あぁ、本当に楽しみだなぁ」

 

 笑みを浮かべ、二人が見上げる夜空には無数の星々が瞬いていた。

 

 

 

 

 

 

 






次回、最終回(予定)





登場人物紹介。

後藤転弧

蛇腔決戦の時、ゴジータの龍拳によってA.F.Oから切り離された赤子。

その赤子には個性がなく、記憶もない。公には孤児としてゴジータの養子として迎え入れられる。

そんな彼がこの後どんな生き方をしていくのか。

それはきっと………。




姫野葵(クローン体)

壊理と同じく星の都で世話になる女性。殻木球大によりゴジータの足止めの為だけに生み出された存在。

彼女の寿命は、身体は、果たしてどうなるのか。彼女の未来はどうなるのか分からない。

けれど、子供達に囲まれる姿の彼女はとても嬉しそうで、最近では拙くても家事をするようになった。

そんな彼女の名前は姫野茜。姫野葵の妹として、星の都の一員として、今日も懸命に生きていく。

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