超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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記録 最終回

 

 

 

「それで、何故お前はあの時ステインを外へ投げ出すだけで外へ脱走しようとしなかった?」

 

 厳重に外界との繋がりを断ち、ヴィラン達の檻として再稼働を果たした冥府の門───タルタロス。

 

先の大規模ヴィラン組織との戦闘、それに少しでも関わりのあった者を調べ上げていく事にした警察は公安との協力を得ながら、日々その仕事に追われていた。

 

 そんな中、塚内は捜査中にとある囚人に行き着いた。それはA.F.Oによって一度は壊れたタルタロスを、一人だけ投げ飛ばし、以降は誰一人外へ出さなかった……オールマイトの助力となった影の立役者。

 

「マスキュラー。あの日、何故お前は此方の手助けをした?」

 

 マスキュラー。そう呼ばれ、両手を拘束されたヴィランは真剣な眼差しで向き合う塚内に、深い溜め息を吐いて笑う。

 

「おいおい刑事さん、ワザワザこんな所に来てまで聞くのがそれかよ」

 

 特殊素材使用の強化ガラス越しの面会、相手の素性からマトモに取り合うとは思えなかった塚内だったが。

 

「ステインに頼まれたからか?」

 

「あの野郎、普段から呪詛を振り撒きやがってヨォ、軽くノイローゼになりかけたぜ。其処で、祈りの時間を減らすから手を貸せと言われて………つい」

 

「貸したのか?」

 

「ほぼ条件反射だった」

 

 常日頃、ゴジータとオールマイトに感謝の祈りを捧げてきたステイン。その狂信者ブリに思わずといった様子で手を貸してしまったマスキュラーは、塚内の問いに頭を抑える。

 

「ンで? そんな話を聞いてどうする。処刑の日取りでも決めんのか?」

 

「………いや、今回のお前の所業は、結果的に此方の利となった事で帳消しになる」

 

「寛大だな」

 

 ケラケラ笑うマスキュラー。

 

「………じゃあ、質問を変えようか。何故、お前はあの時、逃げるだけじゃなく他の囚人達の封殺に乗り出していたんだ?」

 

「無駄だからだよ」

 

 塚内の気になったもう一つの理由、その真意をアッサリと応えるマスキュラーに、一瞬言葉をつまらせる。

 

「無駄…とは?」

 

「外には奴がいる。ここにいる大半は奴の事を知らねぇみてぇだからヨ、親切に教えて上げただけさ」

 

 マスキュラー。ゴジータが独立した直後、初めて倒されたヴィラン。

 

そんな彼の胸元には、拭っても消えない拳の痕が刻まれていた。

 

 尚、そんな殊勝な態度のマスキュラーは温情として暇潰しの相手としてステインとの相部屋を用意された。

 

「ほう、やはり貴様もゴジータのファンか。24時間語り尽くそう」

 

「これもう温情という名の悪意だろ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大規模なヴィラン組織との抗争が終わり、幾ばくかの月日が流れました。

 

蛇腔病院のあった街並みは、各国の支援のお陰で滞りなく進み、復興も二年足らずという驚異的な速度で完了した。

 

 その間、僕達も様々な出来事に直面し、中でも青山君自ら暴露したA.F.Oとの繋がっていた件に関しては、クラスの全員が驚き、動揺した。

 

 雄英への数々の攻撃、林間合宿まで続いたヴィランからの襲撃は、全て自分の手引きによるものだと青山君は涙ながらに独白を溢した。

 

多くの人を巻き込み、クラスメイトを危険に晒し、平然としている自分が嫌になった。A.F.Oという巨悪が斃された事で次は自分が罪を償う番だと、担任である相澤に公安への引き渡しを申し出た。

 

 誰も、何も言えなかった。幾ら罪の意識に苛まれ、元凶が倒された後だと言っても、青山君のしてきた事実は変わらないし、その事実を知った僕達の気持ちも簡単に晴れるモノではない。

 

『そんなのもういいじゃん! 全部悪いのはA.F.Oって奴なんだろ!』

 

 沈黙を破るように青山君を庇う峰田君に僕も同じ思いだった。

 

 けれど、それでも青山君はケジメだからとその気持ちを変えず相澤先生と共に警察へ出頭、その後は公安へ身柄を預ける事になった。

 

 ………まぁ、その3日後位に解放されたんだけどね。

 

というのも、あの頃の公安は某No.1ヒーローの所業により過半数近くの役人が心労により病院へ搬送。理由の一つは彼の新たに身に付けた【瞬間移動】なる技の隠蔽と情報操作。

 

 何でも冥王星から帰ってくる際に編み出した技で、その範囲は現在分かっているだけでも太陽系レベル。相手の力の度合いによっては銀河レベルで効果範囲が広がってくるらしいのだ。

 

 前から無視していた物理法則を更にぶっちぎるNo.1、しかも一方でオールマイトも瞬間移動を会得しているのを本人自ら自慢気に話しているのだから、公安の人達の心労は計り知れないと思う。

 

 そして、どちらかと言えば此方の方がヤバイのだが………一部では知られている彼が作る仙豆擬きなる豆なのだが、どうやら完成したらしいのだ。

 

 何せ公安へ行く時は片目片足の松葉杖状態だった相澤先生が五体満足で戻ってきたのだ。その時の衝撃は……申し訳ないが青山君の罪の告白より大分やばかった。

 

 身体の欠損すら治してしまう仙豆(真)、作られる頻度や数は流石に限度があるとされているみたいだけど、正直そんなモノはデメリットになり得ない。

 

お陰で帰ってきた相澤先生は心労で凄まじく疲弊しており、青山君に至っては肉体が再生する場面を直に目にしてしまったらしく、顔を青くしていた。

 

 そんな、気軽に国家機密レベルのモノをポンポンと生み出す我等がゴジータに、公安所属のホークスも遂にブチギレ、人前であるにも関わらず方言マシマシで怒声をあげていたらしく、最後辺りは他の役員の人と一緒にギャン泣きしていたらしい。

 

『もう、アイツに関して驚くのは止めよう。心臓が幾つあっても足りん』

 

 そんな事もあって人手の足りない公安に青山君だけを拘束していられる余力はなく、身柄は一時警察へ預かりとなりその警察も蛇腔決戦での後始末関係に追われていた為、青山君の事情を家族と共に聴取した後、雄英側に判断を任せる事にした、とのこと。

 

 ………今思い出してもおかしい。どうして自首しに行った彼が、諸々を削られた状態で帰ってくるのか。流石はNo.1ヒーロー、やることが途方もない!

 

 と、そんなこんながあって雄英側………根津校長先生と相澤先生との話し合いの後、青山君は晴れて僕達と一緒に学校生活に戻る事となった。

 

 本人は罪の意識で苛む事になるが、それすらも糧として前に進めという相澤先生の叱咤を受け、青山君は改めてヒーローを目指す事になった。

 

 法的に見れば甘いかも知れないし、他の人が知れば批判は避けられないだろう。けれど、人には厳しく罰するのと同じくらい、時には赦す事も必要なのだと僕達は知った。

 

 ────因みに、僕達も瞬間移動やら仙豆という機密を知ってしまった為に箝口令を敷かれる事になりました。(笑)

 

 いや、(笑)じゃないが。

 

──閑話休題──

 

 世界には白と黒で分けられるモノは数少なく、寧ろ灰色のモノの方が多い。超常社会という世界に生まれ、個性という異能に目覚めた人々は尚更そういうものに直面していくのだろう。

 

 ヴィラン連合の人達も、個性や生まれに翻弄され、望まぬまま悪として生かされてきた者もいる。解放戦線の人達も………多分、そうなのだろう。

 

 だから、一人一人が改めて考えなくちゃいけない。ヒーローとヴィランという枠分けするのではなく、その垣根を取り払い、本当の意味で向き合う事が今後僕達に求められる未来なのかもしれない。

 

 だから、卒業後は麗日さんはヒーローだけではなく、他に個性のカウンセラーとして活躍し、障子君もヒーロー活動だけでなく、異形型個性の人達の相談役として幅広く活躍している。

 

 けど、最近はヴィランの事件発生は減少傾向にあり、ヒーローはヴィラン退治よりも災害救助に向かわされる事が多い。

 

と言うのも、ゴジータという規格外が現れた事で犯罪に手を染める人が減ってきたと言うのが、専門家の見解。

 

 まぁ、何処で何をしようが必ず現れる最強のヒーローとか、ヴィラン側からしたら恐怖でしかない。世界中、場所問わず。人質を取ろうが何しようが、一瞬の内に解決してしまう。

 

 そんなゴジータのヤバすぎる活躍もあって、世界中でヒーローだけに頼らない社会を目指す事を目標に掲げ、個性による犯罪、個性によって振り回される人達への救済活動を本気で取り組むようになった国が増えつつあった。

 

 だから、もしかしたら僕達ヒーローが本当の意味で必要としなくなる社会が出来上がるかもしれない。

 

 それを寂しくない、と言えば嘘になる。でも。

 

「デク、ここにいたのか」

 

「あ、相澤先生。スミマセン、もうすぐですか?」

 

「それもあるが……なんだ、緊張してるのか? 今日から一端の教師なんだ。確り頼むぜ、緑谷先生」

 

「はい、頑張ります!」

 

 きっと、世界中の誰かが、誰かのヒーローなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、君はどんなヒーローになりたいの?」

 

「ぼ、僕は、小さい頃から個性の所為で家族から危ない奴だと言われてて、長いこと地下で幽閉されてたんだ」

 

「でも、蛇腔決戦の後、近くにいた家族は僕を置いて逃げ出した。幸い騒ぎのお陰で僕も家から抜け出せたけど、それ以上に僕は許せなかった」

 

「僕をこんな風にした家族を許せない。それに関わる奴らも、全部許せないって、そう思った」

 

「でも、その時に近くにいたお婆ちゃんが、手を差し伸べてくれた。こんな老い耄れでも、誰かの助けになれるのなら、って」

 

「あの時の僕を怖がらず、震える手で、それでも助けてくれたお婆ちゃん。僕は、そんなヒーローになりたい」

 

「なれるさ。君なら、そんなヒーローに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 個性という異能を持っても、人はそう簡単には変わらない。

 

どんな悲劇が起きても、世界が廻り続けるように。

 

でも。

 

「ヤッバイ、寝坊したー!?」

 

「もう、いつまでも夜更かししているからよ」

 

「だって、昨日は久し振りのゴジータ特集やってたんだもん」

 

「アイ姉ちゃん、ゴジータ大好きだもんね」

 

「全く………ホラ、お弁当忘れちゃダメよ」

 

「ありがとう茜先生! 行ってきまーす!」

 

 それでも、人は進み続ける。生まれも、異能も抱えて、それでも人は懸命にその足を進めていく。

 

「あーあ、アイ姉ちゃんも高校生かー。御幸兄ちゃんも海外からまだ帰ってこないし、ヒマだなー」

 

「仕方ない。そんな君には恵お姉さんが遊び相手になってあげよう」

 

「えー、恵ちゃんすぐマジになるんだもん。大人気なさすぎ」

 

 人の営みは続いていく。

 

「………ねぇ、転っちゃん。転っちゃんは将来どんな大人になりたい?」

 

 超常は日常に、架空(ゆめ)は現実に。世界人口の約八割が異能を持った超常社会。

 

「僕はね……!」

 

 それでも、未来に【希望は】確かにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────それでも、とんでもない悪い奴が出てきたら?

 

大丈夫。

 

仮令(たとえ)どれだけ悪い奴が現れても、仮令(たとえ)それが、どんなに高く聳え立つ巨大な壁であっても。

 

「バカな、貴様、一体何者だ!?」

 

きっと、彼が何とかしてくれる。

 

「俺か? とっくにご存知なんだろ?」

 

 それがどんなに危機的状況で、窮地であっても。

 

彼は、笑って乗り越える。

 

何故なら───。

 

 

 

 

 

「俺は、貴様を倒す者だ!!」

 

 

 

 

 この世界には、ヒーローがいるのだから。

 

 

 

 

 

 

 






捕捉説明。

Q.その後、緑谷達はどうなったの?

A.ほぼほぼ原作通りとなっております。ただ、緑谷君の個性は失っておらず、教師とヒーローの兼任生活となっております。

Q.星の都の皆は?

A.色々あったモノの、無事にそれぞれの道へ進める事になりました。

城鐘御幸は海外で企業を起こし、姫野葵は茜の強い後押しもあり、宇宙開発に再び挑むようになりました。

ゴジータの修行場として使用していた重力制御と、それを囲っていた特殊外壁、その技術を応用し、宇宙空間での最適な環境作りに成功を納め、近い内に人が住める外宇宙航行に適応したコロニーも作るかもしれない。

Q.オールマイトはどうしたの?

A.当然ながら引退し、ヒーローランキングには殿堂入りという事になりました。

しかし、世界中のアチコチでマスク・ザ・マイトなる正体不明のヒーローが日夜活躍しているのだとか。

「新世界の創造には何が必要だと思う? そう、破──「子供達の笑顔さ!!」 ヒデブッ!?」


Q.ゴジータはどうしたの?

A.色んな所で活躍してます。

時には、某聖王国の皇女の窮地を助けたり。

時には、白兎の冒険者の師匠になったり。

時には、死に戻りを繰り返す少年の手助けをしたり。

 当たり前の様に世界の枠組みを越え、様々な人と悪と向き合いながら、ヒーローらしく、自分らしく、ゴジータとして今日も戦っていきます。

これで、ゴジータ(後藤甚田)の物語は終わり。

今までのご拝読、ありがとうございました。


後はオマケで幾つか短編を書いてこの物語を締めようと思います。

それでは。


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