超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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初めて予約投稿してみました。

そんな訳で初投稿です。


記録12

 

 

 

 超常社会。世界の総人口の八割が何らかの個性を持つとされ、超常が日常となった世界。緑谷出久はそんな個性社会の中において残る二割に該当する個性無しの人間として生まれ落ちた。

 

周囲が次々に何らかの個性に目覚めるなか、一人“無個性”の烙印を押された少年の心境は計り知れない。しかし、それでも少年は憧れを諦める事は出来なかった。

 

【ヒーロー】。己が個性を武器に戦い、あらゆる脅威から人々を守り、救う正義の味方。恐れを知らず脅威に立ち向かい、笑顔で誰かを救うその姿に……少年はどうしようもなく憧れた。

 

無個性の自分と、ヒーローに憧れる自分。夢見がちだと笑われ、虐げられてきた少年は一時その夢を諦めた方が楽になると、心が折れ掛けた時があった。

 

そんな時、()の言葉を聞いた。長らくNo.1ヒーローだった平和の象徴を超え、無名から一気にヒーロー達の頂点に君臨した新たなNo.1ヒーロー。

 

泣いても良い、悔やみ、挫折し、膝を折っても良い。其処から立ち上がる事が出来れば、それだけで人は英雄(ヒーロー)になれる。そして、たとえその先にどんな困難の壁が立ち塞がったとしても、可能性という扉で抉じ開けてしまえば良い。そうすれば、無敵の自分に会えるのだと。

 

 嬉しかった。無個性の自分でも、なりたいものを目指して良いんだって、そう言われた気がして………気付けば、少年は走り続けていた。

 

その日から少年は憧れるだけの自分から卒業し、憧れに近付けるように努力を重ねた。ヒーローの情報を集める為のネットサーフィンの時間を消し、体力と筋力を付ける時間を作り、増やした。

 

そんな突然の心境の変化を遂げた息子に困惑しつつも、母親は応援して可能な限り支えた。しかし、たとえ自分が変わったとしても周囲の人間達が変わる事はなく、寧ろ急に肉体改造を始めた無個性の学友に不気味ささえ覚えた。

 

特に、爆破という強個性を持った幼馴染みからの罵詈雑言の激しさは増していき、酷い時は教師の目が届かない所で暴行された。諦めろと、無個性が夢を見てるなと、あらゆる暴言を叩き付けられた。

 

 それでも、少年は諦めようとはしなかった。以前なら弱腰ですぐに下を向く少年が、この日初めて爆破の少年に牙を剥いた。自分の事を決めるのは他人ではない、自分なのだと、少年は口にした。

 

それからも続いた度重なる苛めにへこたれず、少年は自分を鍛え続けた。食生活を支えてくれた母のお陰で体つきは以前よりも太くなり、背も少しだけ伸びた。未だにソバカスだけが消えないのが悩みだが、それでも同年代より頭一つ程、体格に恵まれるようになった。

 

 それでも、個性という壁は厚い。どんなに体を鍛えても、所詮は子供の付け焼き刃。平均よりも身体能力が上がったと言っても、所詮は平均よりも上というだけ。

 

爆破の少年は鍛えた少年を嘲笑うかのように、更に上へと昇っている。無個性の自分がどんなに鍛えても、爆破の少年は容易く凌駕してくる。そんな彼に爆破の少年は何度も罵ってきた。

 

どんなに鍛えた所で、無個性がヒーローになる事はない。そう現実を突き付けてくる幼馴染みに、少年はそれでも諦める事は出来なかった。まだ自分は、出会えていない。無敵の自分に………!

 

 そんな日々が続いたある日、少年に転機が訪れる。幼馴染みの爆破の少年に自殺教唆紛いの事を言われ、流石に凹んだ帰り道、運悪くヴィランに襲われた少年は其処で運命の出会いを果たす。

 

【平和の象徴】。長い間人々の平和と安寧を守り、ヒーロー達の頂点に座していた男。No.2になっても変わらない少年少女の憧れのヒーローが、少年の前に現れた。

 

堪らず少年は訊ねた。貴方のようなヒーローになれますかと、無個性でも、何の力も持っていなくても、ヒーローになれますか。そう訊ねてくる少年に平和の象徴が口にしたのは─────覚悟の問いだった。

 

命を懸けられるか? 人を、誰かを救うことは即ち己自らも窮地に身を置くという事。襲い来る恐怖を笑って誤魔化し、それでも胸を張って立っていられるかと、既に薄くなった凄惨な傷痕を見せつつ、制限時間により些か小さくなった平和の象徴………オールマイトは訊ねた。

 

少年は………答えなかった。答えられなかった。力を持たない自分が、果たしてその責任ある場所に立てるのか。ヒーローを目指す以上決して避けられない現実を前に────終ぞ、少年はオールマイトの問いに応えられる事はなかった。

 

 やはり、自分はヒーローになれないのだろうか? 鍛え初めてから敢えて考えてこなかった疑問、憧れのヒーローに現実を突き付けられ、意気消沈した少年はその時、ある騒動に気付いた。

 

商店街が燃えている。燃え盛る炎の中心では先程オールマイトが捕まえた筈のヴィランが暴れまわっていた。何故、どうしてと思考を巡らせている内に少年は一つの答えに辿り着く。

 

─────僕の所為だ。

 

あの時、立ち去ろうとするオールマイトに無理矢理掴まり、その所為であのヴィランを逃がしてしまった。自分の愚かな行いの所為で、関係のない人を巻き込んでしまった。

 

 もう、少年は自分を責めることしか出来なかった。無個性で、何も出来ない自分。こんな自分が、誰かを助けることなど出来る筈もない。ごめんなさい、ごめんなさいと、口元を押さえて踞ることしか出来なかった少年は………ふと、見てしまった。

 

泣きそうな顔。恐怖と苦痛に表情を歪め、助けを求める幼馴染みの顔を見た瞬間─────気付けば、少年は走り出していた。

 

叫びながら暴れるヴィランとそれを体を張って止めようとするヒーローの間に割って入り、背負っていたカバンをヴィランへ投げ付ける。運良く目に当てて怯ませた隙に幼馴染みを助けようと踠く少年に、体を張るヒーローは笑みを浮かべて爆破の少年の救出に成功する。

 

直後、幼馴染みを奪い取ろうとするヴィランの前に平和の象徴が降り立ち、自慢の拳の一撃を以てこれを撃退。約一名のヒーローが病院に送られる事となるが、事件は無事に解決される事となった。

 

 その後、飛び出したことを他のヒーロー達に叱られ、帰り道の途中でも幼馴染みから良く分からない罵倒を受けた。あの後だというのにタフだと感心する少年だが、憤る幼馴染みに対して少年は晴々とした気持ちになっていた。

 

これで、夢を諦められる。これからは身の丈にあった目標が持てると、生きていけると思っていた。これ迄の努力と母の献身を無駄にしてしまうけど、きっとこれで良かったんだ。

 

諦め掛けていた。きっとこれで良かったんだと、無個性の自分にしては頑張った方だと、大人ぶって夢を捨てようとした時。彼の前にオールマイトが現れた。

 

「お、オールマイト!? どうして此処に!? マスコミに囲まれていた筈じゃあ!?」

 

「なぁに、私に掛かれば彼等を振り切る事くらい訳ないさ! ………それよりも少年、私は君に二つほど言わなければならない事がある」

 

「────え?」

 

「謝罪と提案さ。私は、君の事を見くびっていた。私の言葉を受け入れた君は、その上で誰かを助けようとする。その行いは誰にでも出来る事じゃない」

 

「で、でも僕の所為でかっちゃんを、皆を危険な目に!」

 

「それを言ったら私もそうさ。捕まえたヴィランを落として逃げられるなんて、嘗ての相棒に知られたら指を差されながら爆笑されるだろうさ。………でも、君はその責任から逃げなかった。恐怖に立ち向かった! あの時、私が駆け付ける迄の間、確かに君もまたヒーローだった!」

 

「ッ!!」

 

「だから改めて謝罪しよう、少年。そして訂正させて欲しい。君は─────」

 

 気付けば、少年の目から大粒の涙が流れ落ちていた。

 

「ヒーローになれる」

 

それは、少年が今までで一番欲しかった言葉。ごめんなさいと謝る母、無個性と罵る幼馴染み。無駄な努力だと思われてきたトレーニングの日々は………決して、無駄ではなかった。

 

これ迄の努力と、憧れの気持ちを認めて貰えた気がした。それが、どうしようもなく嬉しくて。

 

 少年─────緑谷出久はこの日、オリジン(原点)を得た。

 

そしてその日、平和の象徴であるオールマイトから見初められた出久は彼の個性を受け継ぐ為に彼の監修の下でトレーニングをする事になり。

 

「と、いうわけで、こちら特別ゲストのゴジータ君になります!」

 

「オッス、オラゴジータ。ワクワクすっぞ」

 

「ドベラッファァァッ!!??」

 

待ち構えていたNo.1とNo.2ヒーローを前に、既に色々と限界を迎えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────で、あれが例の後継者って訳か」

 

「そういうこと、どうだい? No.1ヒーローから見て彼は……」

 

 とある浜辺の公園。無断に放棄されていた粗大ゴミの山を一人で片付けようと必死に踠く少年を見て、オールマイトは隣に立つゴジータに訊ねる。

 

「正直、不安しかないな。確かにあの歳にしては鍛えている方だが……同年代の子にはあれ以上の体躯を持つ奴はゴマンといる。中でも異形系統の個性持ちと比べたら、身体能力の差はダンチだろう」

 

そんなオールマイトに対してゴジータはただ冷静に、客観的に意見を口にする。確かにあの年齢で彼処まで鍛えたのは見事と言えるだろう。憧れに近付きたい一心で努力を重ね、今も自分よりも一回り以上大きい冷蔵庫を一人で運んでいる。

 

その努力と根性は認めよう。

 

「中々手厳しい。けど、それだけじゃないんだろ?」

 

HAHAHAと笑うオールマイトに、ゴジータもまた笑う。確かに才能という点では目の前で足掻く少年は落第点も良いところだが、嘗ての相棒の話を聞いてそれだけではないとゴジータも理解する。

 

緑谷出久という少年は、良くも悪くもイカれている。自分の事を顧みずに誰かの為に危険に身を晒すなど、並みの人間に出来る事じゃない。

 

人を含めた生命体は、恐怖に対しては臆病になるモノ。それはどんなに訓練を施された人間でも例外ではなく、プロのヒーローだって恐怖に縛られる事はあるだろう。

 

けれど、緑谷出久という少年は恐怖に駆られながらも前に出た。偏に、助けを求める人を助けようとする為に……。恐らくオールマイトは其処にヒーローたる素質を見たのだろう。

 

ゴジータも、大体はオールマイトと同じ見解だ。あの緑谷出久という少年はヒーローとしての素質は充分備わっているだろう、その危うい所も師であるオールマイトが矯正するだろうし、自覚すれば自重も覚えるだろう。

 

仮に自重出来なくとも、その時は………まぁ、自分がフォローに回れば良いか。

 

「ま、俺はあくまで見届けるだけさ。アンタの弟子である以上、俺が頻繁に手を出すのはちょっと違うと思うし」

 

「別に良いのに………じゃあ、彼を私の後継だと認めてくれるのかい?」

 

「認めるも何も、決めたのはアンタだ。俺はあの緑谷出久ってヒーローにちょくちょく余計な世話をするだけ、師弟仲良く二人三脚で頑張りな」

 

 あくまで、緑谷出久はオールマイトの弟子。相棒の個性を受け継いで第二の平和の象徴として育てるのか、それとも別の道として導くのかは二人の問題だから口出しはしない。ただ、一つだけ言えることがあるとすれば………。

 

「それよりもオールマイト、アンタこの事はナイトアイに伝えたのか?」

 

「……………」

 

止まった。ゴジータが危惧していたナイトアイへの連絡、それを怠っていたらしいオールマイトはいつぞやのゴジータよろしく笑顔のまま固まり、顔を逸らしていく。

 

「おい、まさかアンタ……話してないのか!? 嘘だろ、嘗てのサイドキックでこの間仲直りしたばかりなんだろ!? 何で俺より先に伝えてねぇんだよ!?」

 

「だ、だってナイトアイもインターンの子を引き受けているみたいで忙しそうだしさぁ! 塚内君も例の人造ヴィランに掛かりきりだし、君以外頼れるヒーローがいないんだもん!」

 

「いや“もん”じゃねぇよ!? あの人自分がこういう件からハブられると露骨に機嫌が悪くなるの知ってるだろ!? しかも俺あの人に色んな意味で恨まれてるし、マジで勘弁してってば!」

 

「断るッ!! 何がなんでも巻き込んでやるぅぅッ!!」

 

「ギャー! 抱き付いてくんな! ていうか、そんなに困ってるんならアンタの師匠に頼めば良いでしょうが! グラントリノだっけ? その人に頼めば良いだろ!」

 

「あの人おっかないからヤダッ!!」

 

「駄々っ子かっ!?」

 

(お、オールマイトとゴジータが、仲良く喧嘩してるぅぅぅぅッ!?!?)

 

 朝っぱらからじゃれ合う二人のトップヒーロー。重度のヒーローオタクでもお目にかかれないレア過ぎる光景に、緑谷出久は早くも多幸感で気絶しそうになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃ、そういう訳で改めて………No.1ヒーローをやっているゴジータだ。宜しく緑谷出久」

 

「ここここここちっこちちちら、こちらららこそ宜しくおにゃがいしまっしゅっ!!」

 

「いや噛みすぎ噛みすぎ、落ち着けって」

 

 その後、一先ずは一緒にナイトアイに事情を説明しに行く事で終わりにした二人は、改めて緑谷出久の前に降りてきた。No.1とNo.2、圧倒的な存在感を放つヒーロー二人に出久は必死に堪えながら挨拶に応じる。

 

トレーニングの為にネットに入り浸る事を止めた緑谷だが、何もヒーローオタクを止めた訳ではない。未だに様々なヒーローを追いかけてはいるし、オールマイトのグッズだって集めている。最近ではNo.1とNo.2のヒーロー二人が衣装替えをしている例のブツは、どちらも最高レアのカードを揃えているし、その情熱は全く失われていない。

 

そんな、憧れである二人のヒーローを前に動揺するなと言うのは酷だろう。

 

寧ろ個性では? そう思える程震えている緑谷に苦笑いをしながらゴジータは落ち着くよう促しながら話を振った。

 

「そんで、緑谷はやっぱ雄英目指すのか?」

 

「は、はい! オールマイトやゴジータの母校ですし、小さな頃からの夢だから……その、絶対受けて合格しようと思ってたんです!」

 

「そうか………」

 

 雄英高校はゴジータの活躍も相まって、ここ数年の倍率はエライ事になっている。それを知らない緑谷出久ではないし、それを踏まえて受かろうとする少年にゴジータは素直に感心した。

 

雄英高に挑む生徒はどれも恵まれた個性の持ち主達、そんな中で一人無個性で挑むのは彼自身とてもプレッシャーに感じる事だろう。それでも絶対に受かるんだと意気込む緑谷出久がゴジータにはとても眩しく見えた。

 

「………よし、ならこうしよう。お前が本当に雄英に入れたら、その時はこのゴジータが直々に指導してやる」

 

「ええぇぇぇッ!? ご、ゴジータがッ!?!?」

 

「おう。どんなに忙しくても、必ず時間を作ってお前の面倒を1日見てやる。オールマイトの個性は俺が一番近くで見ていたからな。色々と助言をしてやれるかもしれん」

 

「そ、それは………でも、確かにその通りかも知れないオールマイトとゴジータは短い間だけど共に肩を並べてヒーロー活動した間柄特にゴジータはオールマイトと唯一肩を並べられるヒーローそんな人が僕の面倒を1日だけでも見て貰えるなんて幸せってレベルじゃねーぞでもそれはあくまで雄英に合格してからの話であってもし落ちたりすれば元の木阿弥なら僕がやるべき事はやはりトレーニングしかないんだろうけど……ブツブツブツ」

 

 ブツブツと一人で呟き始める緑谷にゴジータはオールマイトを見る。苦笑いを浮かべる相棒にマジかと愕然する一方、よっぽどヒーローが好きなんだとゴジータは何となく共感した。

 

だって、緑谷がヒーローに憧れるように後藤甚田もまた憧れを抱いているのだから。

 

「まぁ、取り敢えず最初のお前の目標は雄英に受かること、だな。頑張れよ、ヒーロー志望!」

 

「は、はいぃ!!」

 

 そんな緑谷に己を重ねながら拳を突き出してくるゴジータに、緑谷も慌てて拳を重ねた。

 

「ちょ、狡い私も混ぜてよー!」

 

二人のトップヒーローに見守られながら、緑谷出久の新たな一日が始まる。

 

 

 

 

 

 

 






Q.ゴジータは出久君の面倒見ないの?

A.気が向いたり、機会があればちょくちょく手を出す模様。今はヒーロー活動が忙しいから、ちょっと難しい。



「次回は一気に時間が飛ぶぞ!」

「具体的には多分USJ襲撃まで!」

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