今回、ゴジータの出番あまりありません。
そんな訳で初投稿です。
「じゃあ、緑谷は雄英に受かったんだな?」
緑谷出久というオールマイトが見込んだOFAの後継者が現れて数ヶ月。時季は既に三学期の終わりに差し掛かり、中学生が高校受験に挑む頃、ゴジータの所に一本の連絡が入ってきた。
それは、オールマイトから告げられる緑谷出久の雄英合格の通知。新たに教師という立場になった嘗ての相棒の声は、電話越しだが何となく嬉しそうに聞こえた。
『どうにかね。あ、言っておくけどこれは厳正且つ公正な基準の下での結果だから。私のコネとか贔屓とか、一切していないからね?』
「そりゃそうだろうよ」
念入りに公平さを強調してくるオールマイトだが、出久の頑張りを自身の目で見てきたゴジータとしてはその念押しは杞憂とも取れた。
ゴジータは緑谷出久という少年の頑張りを見ている。周囲が個性持ちで溢れ、自分だけが無個性という環境の中、それでもへこたれず自分を鍛え続けてきた彼の精神的タフネスは、ゴジータから見ても大したものだと思える程だ。
そんな彼がオールマイトに認められ、新たに力を受け継いだ。今はまだ使いこなせていないみたいだが、近い将来必ず緑谷出久というヒーローの存在は日本中に認知される事になるだろう。
あと、何気に陰キャ気質な所もゴジータ的には好印象だった。
『ただ、OFAを受け継いだばかりの所為か、まだ完全に自分のモノに出来ていないみたいなんだ。試験の際に見せた最後の一撃も、片腕と両足を折ったみたいだしね』
「それはまた……」
携帯の通話口から聞こえてくる気落ちした相棒の声にゴジータも同情する。やはり同じ元無個性だったとは言え、オールマイトと緑谷では色々と素養が異なっているのだろう。自分の体を壊してしまう程の超パワー、緑谷出久が使いこなすにはまだまだ時間が掛かるという事か。
尤も、そんな彼を教え導くのがオールマイトの役割だ。自分もちょくちょく世話を焼くつもりでいるし、その辺りは今後うまくやっていくしかないだろう。
……話を戻す。
「でも、ナイトアイにも話を通した事だし、結果的には万々歳だな」
『あ、その節はありがとうございます』
一時はナイトアイに個性の譲渡を話してなかったことに色々と焦りを覚えたが、ゴジータとオールマイトが緑谷の知らない所で揃って頭を下げた事で何とか説得することが出来た。この件に関しては他にも色々とすったもんだな経緯があったが……今回は割愛とする。
「じゃあ、緑谷が雄英に通う頃にアンタも新任の教師として雄英に赴任する事になるわけだ。大変だぞー、これから色々と」
『はは、問題児だったらしい君が言うと説得力が違うな。……では、そろそろ私は打ち合わせがあるからこれで、緑谷少年との約束は後で三人で機会を調整していこう』
「了解、緑谷にも後で連絡しておくよ」
“じゃあ”と最後に言葉を交わすと、オールマイトからの通話が切れる。これでまた一つ心配事が減ったなと、彼のこれ迄の苦労を聞かされたゴジータとしては、それが何となく嬉しく思った。
さて、今度は俺の番だと緑谷にお祝いの連絡を入れようとした所で……ふと、背中に小さな衝撃が走る。
唐突。しかしてその衝撃に心当たりのあるゴジータはウンザリとした様子で背中に抱き付く者を一瞥する。
「おいゴジータ、テメェいつまで電話してんだよ。いい加減私の相手しろやコラ」
「─────ミルコ、吃驚するから後ろから抱き付くのは止めてくれ……」
ゴジータの背中に張り付くのは、トップヒーローの一人である【ラビットヒーロー】ミルコ。本日は休日なのか、私服姿での登場である。
因みに、今日はゴジータも休みだったりしている。本日はただの買い出し、その外出先でのまさかのエンカウントである。
「なぁ、お前オールマイトとチーム解消したんだろー? なら、今度は私と組む番だよな? な!」
「しないよ。そもそもアンタ、チームを組むのは弱虫のする事だとか何とか言ってただろ」
「いーんだよそれはもう!お前は空を飛べる! そのお前の背中に乗ってアタシが現地で暴れるヴィランを蹴り倒す! サイドキックから続くWin-Winな関係じゃねぇか!」
「うん、先ずWin-Winという言葉の意味から調べようか」
後輩が相手とは言え、仮にもNo.1ヒーローを足の代わりにしようとする辺り、ミルコというヒーローは図々しい且つ豪胆だった。思い返されるサイドキックの時代、自分の背中に乗ったり張り付いたり抱き付いてくる先輩からの無意識なスキンシップはゴジータ(陰キャ)の精神にこれでもかと深い傷を叩き込んでいた。
「ともあれ、当分の間俺は誰とも組む気はないよ。申し訳ないが、聞き入れてくれ」
「チェー、ンだよ後輩の癖に。No.1になってからでかい顔しやがって。わぁったよ、今回はこれで引き上げてやるよ。それはそれとして甚田、肉まん奢れ肉まん!」
「いや、普通先輩が奢るモノでは? てかいい加減離れて」
「いーだろこれくらい! 金もってンだろ? サイドキックで世話になった恩返しくらいしろよ! あと離れるのは断る。お前の背中はなんか乗り心地が良いからな!」
(み、ミルコがゴジータの背中に張り付いているぅぅッ!?!?)
(こ、これはゴシップ!? ゴシップ案件なのか!?)
(ちくしょぉうううっ! オイラだって、オイラだってぇぇぇぇっ!!!)
周囲の視線に気付く余裕はなく、色々と傍若無人な先輩に振り回されて、ゴジータの休日は消えていくのだった。
◇
その日、雄英高校は設立以来初となる前代未聞の危機に直面していた。入学試験を終え、除籍ありの個性把握テストや戦闘訓練と、入学初日から幾つもの困難を乗り越えてきたヒーローの卵達。
そんな彼等が次に目にするのは………本物の悪意、ヴィラン。初めて目の当たりにする悪の存在に、雄英の教師を兼任するヒーローは生徒を守る為に即座に応戦するも、ヴィランの仲間の内の一人である黒い靄のヴィランが生徒達を施設内に分断。施設の各所に散らばった雄英の生徒───1年A組は、入学から程なくして対ヴィラン戦闘を余儀なくされた。
外に助けを求めるべく、A組の委員長を務める飯田天哉を逃がし、その間ヴィランの猛攻に耐え続けたヒーローとその生徒達、個性を抹消する個性を持つ“イレイザーヘッド”の活躍により、チンピラなヴィランは殆ど問題にしていなかったが………。
「やれ、脳無」
全身に手をつけた不気味なヴィランの一声によって動き出した黒いヴィランにより、ヒーロー達はより窮地に立たされる事になる。
圧倒的力、個性抜きでも地面を割る怪力を持つヴィランの猛攻により、イレイザーヘッドは為す術なく倒され、同じく教師を兼任していたヒーロー“13号”もまた、黒い靄のヴィラン────黒霧によって自壊させられた。
頼れるヒーローも敗れ、絶体絶命の窮地。緑谷出久が起死回生の一撃を放つも、その一撃はショック吸収を持つ黒いヴィランによって防がれてしまった。もうダメだ、そう誰もが諦めかけた時………。
「もう大丈夫だ、少年少女達。何故って?」
「私が来た!」
平和の象徴、オールマイトが来た。No.2となった今も尚、人々からの信頼が厚い最高のヒーローの登場にヴィラン達は怯え、生徒達は安堵に息を吐く。
誰もがオールマイトの勝利を確信する中、緑谷出久だけは表情が暗かった。
「オールマイト、気を付けて! あの黒いヴィラン、僕の個性が全く効いていなかった! 恐らくは何らかの個性で………」
「成る程、それは有難い情報だ緑谷少年。恐らくアレはゴジータが倒した奴の発展型だろう。その個性は衝撃を緩和させる事に関係してるんじゃないかな?」
「えぇッ!? ご、ゴジータが既にあのヴィランを倒してた!?」
忠告するつもりが、更なる大きな情報によって緑谷の思考が混乱する。一方で何気に口止めを言い含められていた話を溢してしまった事に、オールマイトは若干焦っていた。
「さて、答え合わせと行こうかハンドマニア。私の指摘に食い違いがあれば、是非とも教えて戴きたいな」
「────調子に乗るなよオールマイト。ソイツはゴジータに差し向けた試作品とは違う。お前を殺す為に用意した本物の脳無だッ!」
「“脳無”……それが人造ヴィランの正式名称か」
「死柄木弔、あまり余計な情報は与えない方がいいかと」
「黙ってろ黒霧、どのみちコイツ等は此処で殺すんだ。結果は変わんないだろっ!」
格好が教師のモノだからそれに沿った煽り方をしてみれば、出てきた情報の数々。まず、今回の襲撃の主犯格と思われる手だらけのヴィランと黒靄のヴィランは、それぞれ死柄木弔と黒霧と言うらしい。
更に、これ迄は人造ヴィランとしか知り得なかった脳髄剥き出しのヴィランが、脳無という決められた個体名を持つというのも発覚した。これだけの襲撃をこなせる相手、相当なバックが付いていると予想したオールマイトは、緑谷達に避難を促す。
「緑谷少年、蛙吹少女、峰田少年。大変かも知れないがイレイザーヘッドを連れて皆の所へ逃げてくれ」
「お、オールマイトは?」
「すぐに行くとも、コイツ等を片付けてからな」
「やってみろよ……脳無ッ!」
「ゴガァァァァッ!!」
死柄木弔なるヴィランの呼び掛けに応え、脳無が吼える。オールマイトを上回る体躯を持ち、衝撃に強い耐性のある個性を持っているであろう凶暴なヴィラン、その膂力を以て瞬く間に間合いを詰めてくる怪物を相手に、オールマイトはギリギリまで引き寄せ………避けた。
「………は?」
「………え?」
体幹を横に置くように、流れるような挙動。標的が目の前から消え、そのまま体が泳ぐ脳無の顔面にオールマイトの拳が捩じ込まれる。
ヒーローの中でもトップクラスの膂力を待つとされるオールマイトのカウンター、ショック耐性を突き抜けて吹き飛ぶ脳無を目の当たりにした死柄木弔と緑谷出久は、これ迄とは明らかに違う動きをするオールマイトに愕然としている。
「こう見えて、おじさん良い歳してるからさ。あまり殴り合いとかは避けたいところな訳さ、だから申し訳ないがヴィランよ………此処からは、一方的に殴らせてもらう」
後輩たちが倒れ、子供達がヴィランの危機に晒されている。泣きながら自分を呼ぶ委員長に申し訳なく思う一方で、オールマイトは不甲斐ない自分に怒りを覚えた。
そんな、八つ当たりな気持ちを叩き付ける様にオールマイトはカウンターから起き上がる脳無に肉薄する。
「の、脳無! 殺れ、応戦しろ!」
平和の象徴。嘗ての元No.1ヒーローとしての矜持と責任がプレッシャーとして放たれる。その圧倒的存在感に後退る死柄木だが、ヴィランとしての意地が彼を奮い立たせる。脳無にオールマイトを倒せと命じ、脳無もそれに応えるが………。
当たらない。膂力をモノにした脳無の猛攻を、オールマイトは全て見切った様に避けていく。返し刀の拳が再びカウンターで入り、脳無の顎は弾けた様に跳ね上がる。
「バカな、何で脳無の攻撃が当たらない! アイツのパワーはオールマイトに匹敵してるんだろッ!?」
一方的な展開、予想すら出来なかった光景に死柄木弔は憤慨の声をあげる。オールマイトは
アイツ、騙したのか! 憤る死柄木とは対照的に、オールマイトの心境は明るかった。
確かに、目の前の脳無なるヴィランは強い。膂力の強さも自分を殺す為に用意したと豪語するだけあってかなり凶悪だが、それでもオールマイトにとって余裕で対処圏内だった。
(本当、頼りになりっぱなしだぜ、相棒!)
思い返すのはチームを組んで少し経った頃。
『あ? 俺とオールマイトが組み手?』
『そう、折角こんな立派な設備が地下にあるんだ。個人的な鍛練だけでなく、対人戦闘にもある程度精通した方が良いんじゃないかなっと思ってね』
『確かに、基本的に俺の動きはイメトレだけだし、オールマイトと手合わせする事で得られるモノがあれば理想的だな』
『私も、君のスタイリッシュな動きには前々から興味があったんだ。そういう意味でも、きっと互いの為になる筈さ』
思い付きで始めたゴジータとの組み手、遊びがあっても油断なく相手を見据え、的確に相手の隙を潰して完封する彼の戦い方はオールマイトに新たな手段を与えた。
力は衰え、個性を使える時間も格段に減っている。平和の象徴オールマイトが徐々に削れて消えていく中、オールマイトは《技》という武器を手に入れた。
度重なるゴジータとの組み手はオールマイトの目を養わせ、そんなNo.1ヒーローの動きを見てきたオールマイトの目から見て、目の前のヴィランの動きは緩慢に過ぎた。
「最後にヴィランよ、君にこの言葉を送ろう」
ショック吸収でも吸収しきれない打撃を浴びせられ、本来ある筈の再生の個性も機能しない。究極の脳筋、呆然となる生徒達の視線を受けながら、オールマイトは拳に力を込める。
「
加速し、連打をしながら溜めていた力を解放。叩き込まれた脳無なるヴィランの体は衝撃で膨張し、熱を帯び始めた瞬間弾け飛び、漆黒のヴィランは施設から吹っ飛び、雲を幾つか割りながら空の彼方へと消えていった。
………誰もが、言葉を失った。衰え、弱っている筈のヒーローは、まるで嘘のようにピンピンしている。ヴィラン側の切り札と思われていた脳無も、一太刀すら浴びせられず轟沈。大敗という言葉では足りない現実を前に、死柄木弔が激昂するよりも早く、黒霧の働きによって雄英から姿を消した。
「────やれやれ、やはり私も衰えたな。10発程度で終わらせるつもりが、調子にのって100発以上手を出してしまった」
無傷。あれだけの凶悪なヴィランを前に、オールマイトは無傷で完勝してみせた。衰え、個性の残り火となって尚、仁王立ちする平和の象徴。
その後、主犯格を逃してしまったオールマイトは、他のヒーロー達が到着する迄の間、施設に蔓延るヴィラン達を掃討し、無事ヒーローの卵達を死守するのだった。
◇
その後、雄英襲撃から一夜明け、本日は急遽休校。未だ諸々の件が片付いていない状況下で雄英高の会議室にて教師陣が一堂に会す。
「………さて、それじゃあこれからの話をしようか。現在雄英は世間から好奇と疑問の目を向けられている。ヴィランの侵入を許した我々に、果たして子供達を預けるのに足り得るのか? ってね」
雄英高の校長、根津校長は表情を崩さないまま皆に問い掛ける。
「通常ならば学校を休校し、ほとぼりが冷めるまで大人しくするべきなのでしょうが……」
「有り得ねぇっての! ここは天下の雄英だぜ? そんな乗り気の無さじゃあ、リスナー達も白けちまうぜ!」
「それに、自粛した所でヴィランが仕掛けてこない保証もない。何より、今年の雄英にはもうじき大会が控えている」
ヴィランという脅威に晒され、自粛という言葉が過るが、教師の誰もがそれを望んではいない。何よりこれから待っている雄英特有のあの行事には生徒達の今後の未来が懸かっている。
同じ意見を出し合う教師陣に頷きながら、根津校長は結論を下す。
「では警戒を上げつつ、学校行事は予定どおりに進めるという事で────」
「待ってください」
そんな校長の言葉を
「校長、その提案に一つ条件を追加させて下さい」
「条件、とは?」
「昨日の雄英襲撃の件で、世間の目は厳しくなっている。メディアからの追及も鬱陶しくなるだろうし、雄英体育祭を万全に挑むには例年以上の警備が必要だ」
「────と、言うと?」
「幸いにも、新たなNo.1ヒーローに我々は幾つもの“貸し”がある。本人もその事を負い目に感じている様なので、この際そこん所を徹底的に突きたいと思います」
何故だろう、包帯まみれでマトモに表情が見えないのに、相澤先生の顔が笑みで歪んでいる様に見える。
フッフッフと笑い声が聞こえる。見ればセメントスやミッドナイト、エクトプラズム、スナイプから不気味な笑みが浮かんでおり、他の教師達もヒーローとは思えない凶暴な表情を晒している。
室内のあちこちから聞こえてくる暗い笑い声、唯一分かっていないオールマイトはオロオロと挙動不審に陥っていた。
「では、雄英体育祭の警備責任者にゴジータを任命するという事で、異論はないね?」
「「「はい」」」
異様な空気となった会議室。一人取り残されたオールマイトは、その迫力に泣きそうになった。
「イッキシ! ……なんだろ、急に寒気と悪寒が」
Q.ゴジータ、一体何をしでかしてきたの?
A.主に破壊関係。どんなに手加減しても超パワーの所為でいつも何かを壊している。相澤先生が個性で消しても、素で力が強い為にいつも振り回されてきた。
特にセメントス先生とパワーローダー先生は必殺技開発関係でいつも苦労していた模様。
そんな問題児でも雄英首席で卒業させるのだから、大したものです。
緑谷出久を除き、雄英生徒で何らかの絡みがありそうなのは次の内誰?
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1.爆豪勝己
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2.轟焦凍
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3.波動ねじれ
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4.飯田天哉
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5.拳藤一佳
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6.雄英生徒全員