超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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最近、アニメのヒロアカ見るのが辛くなってきたので初投稿です。


記録15

 

 

 

 今年の雄英は、波乱に満ちていた。

 

新一年生が入学して数日、ヒーロー科の一年A組はヴィラン連合という敵組織に襲われ、雄英が設立されて初となる脅威に晒された。担任の教師達やオールマイトの奮闘により大事には至らず、無事にヴィラン襲撃という危機を乗り越えた。

 

そんな、彼等、彼女等の前に現れた新たな脅威。それは……。

 

「遅い! お前の個性は確かに万能に近しいが、全能には程遠い! 一人で脅威に立ち向かう時、為す術なく死ぬぞ! お前に足りないのは経験と適応力だ! 頭でっかちで通用する程ヒーロー稼業は甘くないぞ!」

 

「は、はい!」

 

「それと電気小僧! お前はただ電気をブッパすれば満足か!? 一発屋を目指したいなら他当たれ! 違うと言うのならまず自分の許容量(限界値)の底上げを目指せ!」

 

「ひゃ、ひゃいぃぃ!」

 

「硬くなることしか出来ないだぁ? 阿呆! 自分の力も極めて無いヤツが生意気抜かすな! それしか出来ないならそれだけを突き詰めろ! 何物も通さない盾になれ! それはヒーローの一つの本質、護る事に特化した力! 悩むのは其処まで至ってからにしろ!」

 

「お、オォッス!」

 

 ゴジータ。オールマイトを超えた新たなNo.1ヒーローであり、体育祭の間だけ雄英の警備を任された人物である。オールマイトからも認められ、既に周知の実力者として見られるようになった。

 

No.1ヒーローゴジータ。超ヒーローとして知られる彼が、雄英に来ている。一目だけでも会って話がしたいと、希望に胸を膨らませて会いに向かった有精卵達を待っていたのは……。

 

「そこの獣坊主! 個性が獣になるからって思考まで獣に近付けるな! 思考を常に回転させろ。鈍らせるな! それだけでお前は他の奴より一歩先んじる!」

 

「は、ハイですゾォォッ!」

 

 No.1ヒーロー直々によるシゴキだった。

 

シゴキ、と言うよりも雄英の一年生全員に対してゴジータが怪我の無いように相手取るだけの、“なんちゃって組み手”。一人が倒れたら即次の生徒が挑む基本的に一対一(タイマン)の方式だ。

 

当然、雄英入学したての有精卵(一年生)が勝てる道理はなく、ヒーロー科普通科問わず全員が地に転がる有り様となっていた。

 

一人に対して凡そ十秒。それでも生徒一人一人に対して的確なアドバイスをする辺り、流石No.1ヒーローだと言えるだろう。

 

「わ、分かっていたけど………やっぱすげぇよNo.1」

 

「格が………違いすぎる!!」

 

 そして何が一番恐ろしいかって、誰よりも動いている筈のゴジータが土埃一つ付けず、汗一つ流さずに生徒達の相手をしているという事。手加減し、手厚く丁寧に接し、その上でアドバイスを送り生徒のやる気を引き出していく。

 

日本のヒーロー達の頂点に君臨する男は、自分達の想像の遥か上を行っていた。生徒達からの羨望の眼差しを受けて全く動じないゴジータに、改めて雄英の一年生は自分達の幸運に感謝した。

 

「ハンドガール────拳藤だったか? 攻め手の勢いは感心するが、自分の手で相手を隠しちまったら世話ねぇぞ、もうちょい工夫を凝らせ」

 

「は、はい!」

 

「とは言え、有言実行出来るそのガッツは大したもんだ。これからも頑張れよ」

 

「────っ、あ、ありがとうございます!」

 

「………なんか、B組のあの娘に対してだけコメント違くね?」

 

「ちょっとー! No.1ヒーローが贔屓して良いんですか~?」

 

「うっせ、俺は教師じゃねぇんだ。面識ある子にコメント残す位大目に見とけ!」

 

 加えて、意外なノリの良さ。テレビで見ている時はカッコ良さ故に近付き難い雰囲気を纏っていたが、実際は結構悪のりもイケる口らしい。清濁併せ呑む………なんて大した事は言わないが、生徒に過ぎない自分達に対して対等に接してくれるゴジータに、生徒達は色んな意味で見直していた。

 

「────さて、これで大体対応し終えたか。後残っているのは……」

 

「俺だ」

 

そんな時、生徒達の中から見るからに強気な少年がゴジータの前に現れた。疲れている生徒達にぶつかっておきながら謝罪すらせずにズンズンと近付いてくる少年、謝れよと糾弾してくる他生徒の声を無視して、勝ち気な少年はゴジータの前に歩み出る。

 

「次の相手は俺だゴジータ。その鼻っ柱、正面からへし折ってやるよ」

 

「か、かかかかかっちゃんんんん!?」

 

No.1ヒーロー相手に萎縮する処か挑戦状を叩き付けてくる好戦的な笑みを受かべた勝ち気な少年、その愚行とすら取れる態度に緑谷は口の下顎に指を引っ掻けながらガタガタと震えていた。

 

「ほう? 随分と挑戦的じゃないか。いいぜ、元気のある奴は嫌いじゃない」

 

「オールマイトすら認めたNo.1ヒーロー、アンタの強さは知っている。俺は他の雑魚どもとは違ぇ、同じように見ていると痛い目に遭うぜェ……?」

 

「へー? ならお前は俺に出させてくれるってのか? 本気を」

 

「当たり前だわクソがッ!」

 

 加速………両手の掌から発せられる爆破の勢いで、一気に間合いを詰めてくる少年。爆速で迫る少年の思考には、既に次の行動へのプロセスが組み込まれていた。

 

回避、防御、受け流し。これ迄ゴジータが見せてきた行動の中からあらゆる対応を即座に構築する。性格は既に色々とアレな少年だが、その分析能力と知性の高さは緑谷出久並みである。

 

(さぁ、どうすんよNo.1! 避けるか、防ぐか、それとも受け流すか!? どちらにせよその顔に絶対一撃は喰らわせてやる!)

 

自分は他とは違う。幼い頃から授かった強い個性と、自身の能力の高さ故に増長した少年の自尊心。次に自分の一撃がゴジータに入れば、その時点で自分は他の連中より格が違うことが証明される。そうすれば………。

 

(其処で見てろやクソデク! テメェは永遠に俺より下なんだよ!)

 

 脳内に浮かぶのは、忌々しき過去。誰よりも弱い癖に、誰よりも優しい幼馴染み。自分の事を顧みずに他人を気遣い助けようとする緑谷が、少年────爆豪勝己には目障りで仕方がなかった。

 

これは、その傷つけられた自尊心を満たすための挑戦。さぁ、次はどうするかと爆豪が獰猛に笑みを浮かべた次の瞬間………!

 

「ほい」

 

 パチン。と、爆豪の目の前で小気味の良い音が弾けた。瞬間、爆豪の体から力が抜け落ち、グッタリと力尽きたように気絶している。

 

「お、おい爆豪の奴、急にどうしちまったんだ!?」

 

「気絶………しているのか?」

 

白目を剥き、力無く倒れる爆豪。突然の学友の気絶に困惑する他の生徒達がどよめく中、一人の生徒が肩を震わせる。

 

「まさか今のは………“猫だまし”か!?」

 

「知っているのか尾白!?」

 

「あぁ、俺の見立てが確かなら、ゴジータがやったのは猫だまし。昔、日本の国技である相撲の技が始まりとされる脅かしの技だ」

 

「いや、にしては猫だましって……ネーミング可愛すぎない?」

 

 真剣な顔付きで語り始める尾白なる尾が生えた個性持ちの少年。武術を識るだけあってその知識は豊富だが、猫だましという可愛らしい技名に、耳がプラグとなっている少女は若干引き気味だった。

 

「実際は、そんな可愛らしい代物じゃないよ。ゴジータに肉薄している爆豪の精神は極限状態にまで高まっていた筈だ。其処へ意識外からの音、端から聞けば大したモノじゃないが、当人からしたら────目の前でプレゼントマイク級の音の爆弾を浴びた様なモノだ」

 

「そ、そんなにか?」

 

「勿論、普通の人間にはほぼ無理だ。極限状態と言ってもそれはあくまでそうなった時の刹那しか通じない。今の目の前で起きた出来事の中で一番恐ろしいのは、あの一瞬の中で爆豪の意識の隙間を見切ったゴジータだよ」

 

額から汗を流して解説する尾白に、周囲の少年少女が息を呑む。卓越……なんてモノじゃない異常なまでの技の冴え、あの爆豪ですら一蹴してしまうゴジータに少年少女達の視線が羨望から畏怖の類いに切り替わる。

 

一方、対するゴジータはと言うと……。

 

(いや止めて、人の前でタネ明かしされるの結構キツいんだから!)

 

淡々と語られる自分の戦い方を解説する尾白少年に、その瞬間は色んな意味で目が離せなかったゴジータだった。

 

「さ、さぁこれで本当に最後かな?」

 

「………俺が」

 

 話題を変える意味を込めて、他に手合わせを希望する生徒はいないか。これまで見てきて何だかんだ粒揃いの生徒達に感心するゴジータが改めて周囲の生徒に訊ねると。

 

一人の少年が手を上げた。白と赤の頭髪、一見すればクールなイケメンの少年。しかしその左顔には痛々しい火傷の痕がこびりついている。無感情に無表情、けれどその瞳の奥にある何かに気付いたゴジータは……。

 

(……うん、なんか物凄く地雷の臭いがするぞぉ)

 

 取り敢えず、誠心誠意向き合う事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雄英高校三学年。一、二年の期間を経てプロヒーローに最も近いとされる卵達。中でも廊下を歩く三年は雄英の中でもトップの実力を有していた。

 

「ねーねー通形知ってる!? 今雄英にゴジータが来てるんだって!」

 

「テンション高いね、ねじれ。そんなに噂のゴジータが気になるのかい?」

 

「うん、だって翼が無いのに空を飛べるんでしょ? 金髪に変身するんでしょ? 手からビームが出るんでしょ? どうやるのかな? どうなってるのかな? 天喰くんは気にならないの?」

 

「ぼ……俺は、別に。ミリオはどうなんだ?」

 

 不思議な雰囲気を醸し出している少女と、引っ込み思案な少年。そんな二人を引き連れる様に歩く金髪の少年……通形ミリオ。

 

三人の話題に上がるのは、現在雄英に来ているとされているNo.1ヒーローの事。既に噂で広まっているゴジータの有無は、“ビッグ3”と呼ばれる彼等の耳にも届いていた。

 

「え、俺?」

 

「ミリオのインターン先って、サー・ナイトアイだろ? 嘗てのゴジータのインターン先と一緒の」

 

「ゴジータの事について、何か聞かされていないの?」

 

「………あー、うん。ソウデスネ」

 

しかし、興味津々な少女に対してミリオの反応は悪い。興味がない? いや、あのミリオに限ってそんな筈はない。珍しく歯切れの悪い返事をする親友に二人が首を傾げていると……。

 

「何て言うかその………トテモユニークナヒトデスヨ」

 

なぜか片言になる親友に、やはり二人は首を傾げる。

 

 脳裏に浮かぶのは、今まで見たこと無い程に冷静に激昂するナイトアイと、そんな彼に怯えた様子で頭を下げる二人のトップヒーロー。

 

『ミリオ、分かっていると思うが………この事は他言無用だ』

 

『さ、サー!!』

 

彼等の名誉を護るため、口を閉ざすことにした通形ミリオ君だった。

 

 この話題は色々と危ない。露骨でも話を逸らそうとミリオが二人に違う話題を持ち掛けようとした時、曲がり角から急に現れる少年と僅かに接触する。

 

「あ、ごめんね!」

 

「……………」

 

咄嗟に謝るミリオだが、相手の紅白の少年は呆然とした様子で通路の先を歩いていく。変わった様子の少年に三人は訝しく思うが………。

 

「今のって、一年の子かな? 大丈夫かな? なんか心ここに在らずって感じだけど」

 

「ミリオ、多分今の子は推薦入学の子だ。噂で聞いたことがある」

 

「え、じゃあ彼があのNo.3の?」

 

 遠ざかっていく背中、既に声を掛けるには遠い位置。ただならない様子に心配に思う三人だが……対する少年、轟焦凍は不思議な気持ちに包まれていた。

 

『………悪いが、お前の相手は出来ねぇよ』

 

『ッ!………それは、俺がアンタより弱いからか……?』

 

『うんにゃ、本気でやってねぇからだよ。俺が教えることが出来るのは、本気でやっている奴だけだ。自分の限界を勝手に決めて、三味線引いている奴に教えられるモノはない』

 

『っ!』

 

『舐めるなよ、これでも俺はNo.1ヒーローだ。本気か全力かの違いなんて見て分かる』

 

『………俺は、俺は!』

 

『まぁ、お前が何を抱えているのかは知らないが………そう、自分を追い詰める必要はねぇよ。此処は雄英、お前がなりたいモノも、ちゃんと見付けられる筈さ』

 

ポンッと、頭部に感触が伝わってくる。ゴツゴツしてて、固くて、けれど温かい。凍った心が少しだけ溶けた気がした。

 

「頭を撫でられるのは………初めてだな」

 

人の手は、あんなに温いモノなのか。これまで焼けるような熱さしか知らなかった轟焦凍にとって、ゴジータの出会いは僅かではあるが、確かに影響を与えていた。

 

 

 

 

 





オマケ。あり得ない場面。

「焦凍の頭を初めて撫でたのはお前じゃない。このゴジータだ!」

「貴っっっ様ァァァァァッ!!!!」


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