超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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ヒロアカアニメ、続く度に心が締め付けられていく。

そんな訳で初投稿です。

※追記。
Mt.レディやシンリンカムイのデビュー時期を考慮して修正しました。

今後もご指摘がありましたら宜しくお願いいたします。




記録16

 

 

 

「悪いな緑谷、結局学校では満足に鍛えてやれなかったな」

 

「い、いいいいえそんな! ゴジータが謝る事なんて!」

 

 人気の無い浜辺。夜明け前のその場所は、緑谷出久がオールマイトから個性を受け取った場所であり、ゴジータと約束を交わした場所。

 

 本当なら施設の整った雄英で面倒を見てやりたかったが、現在ゴジータは体育祭に向けて警備の準備に忙しく、普段のヒーロー活動と重なって中々緑谷との約束を果たせずにいた。

 

 仮にもNo.1ヒーローが約束を違えるのは流石のゴジータも気が引けた。だから妥協案として、ゴジータは早朝の時間の空いた日に緑谷との一対一の組手をする事となった。

 

 相変わらず緑谷の攻撃は一度たりともゴジータには当たらず、影を捉える事も出来なかったが、緑谷自身は全く気落ちはしていない。元々この組手は緑谷出久に個性の扱いを馴れさせる為の慣熟期間であり、体育祭に向けての最終調整に過ぎないからだ。

 

 緑谷はあくまでオールマイトの弟子、であれば自分が必要以上に手を出すのは間違っている。O.F.A.10%の力、それが今の緑谷に許された許容限界値。肩で息をしている相棒の弟子に、ゴジータは改めて告げる。

 

「さて、今日で本当に俺からの約束は終了だ。O.F.A.の力にも少しずつ慣れ、今ではそれなりに動けるようになった。これで意図して100%の力を使わない限り、お前の体は簡単には壊れないだろう」

 

「は、はい! これもオールマイトやゴジータのお陰です!」

 

 純粋に尊敬の眼差しを向けてくる緑谷にこそばゆくなるが、大事な話はそれだけではない。ゴジータは()()()()()()と理解しつつ、それでも自分が言うべき事だと、緑谷に指を突き付けて言い含める。

 

「いいか、O.F.A.の100%はお前が体を鍛えながら徐々に慣れさせていくようにしていけ。仮に危機的状況に陥っても、安易に使うのは極力控えろよ?」

 

「は、はい!」

 

 返事は良い。“返事は”。

 

「相澤先生からも似たような事を言われているから何度も言いたくないが………助けられた人間ってのは、助けたヒーローの背中を見つめるもんだ。自分を助けたヒーローが死にかけているのを見て、助けられた人間は素直に“ありがとう”と言えると思うか?」

 

「っ、そ、れは………」

 

 緑谷出久が理想に思うのは、笑って人々を救ってみせるヒーロー。泣いていた子供も、暗い顔をする大人も、皆笑顔にしてしまう最高のヒーローだ。

 

 そんなヒーローに近付く為には、自分の身を守る事も大事。人を助けるという事は、自身もまた窮地に身を置くことを意味している。その言葉の意味を改めて重く受け取った緑谷は、ゴジータの顔を真っ直ぐに見据えた……。

 

「いいか、ヒーローに与えられる最も嬉しい言葉が“ありがとう”なら、最も悔しい言葉は“ごめんなさい”だ。その事をよく覚えておけ」

 

「────はい!」

 

「よし、じゃあ行ってこい。明日はいよいよ体育祭だ。俺も見ているから、しっかりやるんだぞ」

 

「はい! ありがとうございました!」

 

 一礼して浜辺を後にする緑谷を見送り、ゴジータは一先ずこれで釘を刺せたかと安堵する。

 

 緑谷出久とオールマイトは良く似ている。それは二人が元々は無個性というだけでなく、その精神性と狂気と呼べる程の危うさまでもが、驚く程に酷似していた。ナイトアイがこの事を知れば、()()()()で個性の譲渡を勧める程に。

 

 だが、これはあくまで彼等の問題。外野の人間が指摘をしても、意思決定は二人に委ねるしかないのだ。

 

 ………それに、まだオールマイトにO.F.A.が宿っていた頃から僅かに感じた“気配”。それが今の緑谷に渡ってから徐々に大きくなっている気もする。これは二人が無個性だから感じる違和感なのか、それとも別の要因が関係しているのか。

 

 いずれにせよ、O.F.A.に関する情報が極端に少ない今、確証を得るにはゴジータに取れる選択肢は静観しかない。そういう意味でも、今回の雄英体育祭への警備主任としての参加は丁度良かった。

 

 体育祭でもし緑谷が譲渡されたO.F.A.に対して不信感を抱いたなら、その時は相談に乗ってやろう。相棒の弟子なのだ、それくらいの面倒を見てやる気概はゴジータも持ち合わせていた。

 

「さて、それじゃあ俺も打ち合わせに行こっかな」

 

 ………と、その前に。

 

「────オールマイト、一体いつまで其処にいるつもりだ?」

 

 これ迄ずっと、木陰の中から此方を様子見していた人物に声を掛けると……。

 

「ぐぎぎ、ズルいぞゴジータ。私も緑谷少年に色々と教えたり導いたりしてみたかったのに!」

 

 悔しそうにハンカチを噛む、嘗ての相棒が恨めしそうに此方を見ていた。

 

「いや知らんがな」

 

 そんな相棒に、すっかり気安くなったゴジータの言葉は、何処までも辛辣で友愛に満ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────そして、当日。ヴィラン襲撃の事件による不安をはね除け、雄英体育祭は遂に開催された。観客席には訪れた多くの見物客や現役のヒーロー達が詰め掛け、各マスメディアはヴィラン襲撃の被害に遭った一年A組をこれでもかと露骨にピックアップしてくる。

 

 そんな中、会場の外では出店が多く立ち並んでいる。何れも雄英高校から認可の下りた正式な店舗、各出店はわたあめや焼きそば等お馴染みの品目で溢れていた。

 

「うわー、分かっていたけど凄い人気ですね。雄英体育祭は。毎年こうなんですか?」

 

「まぁな。お前は出身が北海道だから馴染みがないかもしれんが、雄英体育祭は毎年こんなもんだ」

 

「でも、本当に開催しちゃって大丈夫なんです? ヴィラン襲撃の件に未だ懐疑的な声だってあるんでしょ?」

 

「だからこそだ。たかがヴィランの襲撃なんぞ恐るるに足らんと、それをアピールする意味での今回の開催。故に今年の警備は例年よりも遥かに────」

 

「あ、すいませーん、たこ焼き一つくださーい」

 

「聞けよ」

 

 そっちから話を振っておいてそれは無いだろうとツッコむ樹木ヒーロー“シンリンカムイ”。先輩からの話を途中で聞き流すマイペースなヒーロー“Mt.レディ”、両者ともに今年の春から劇的にデビューを果たした新人達。

 

 そんな彼等が今回の雄英体育祭の警備に任命されたのは、偏にキャリアの為かそれとも───。

 

「はいはーい! 500円ね!」

 

「─────え?」

 

 高っ。意外といいお値段しているたこ焼きに固まるMt.レディ、数秒の逡巡の後に彼女が出した答えは……。

 

「あの、今持ち合わせがなくってぇ……」

 

 普段は図太い性格の彼女は、自前のプロポーションと流し目による色仕掛けで、値切りを交渉し始めた!

 

「じゃ、じゃあ只で!」

 

 そして、そんな色仕掛けに屈した出店の店主は勢いで無料で渡すことにしてしまった。これには色々とがめついMt.レディもニッコリ。

 

「ありがと───ったぁ! 誰よいきなり!」

 

「いや、ありがとうじゃねーよ。ちゃんと金を払え」

 

「ッ!?!?」

 

 有り難く差し出されたたこ焼きを受け取ろうとして、その脳天を手刀で叩かれる。突然の予期せぬ衝撃に、両手で押さえながら恨めしそうに振り返ると、現役のNo.1(ゴジータ)新人ヒーロー(Mt.レディ)を見下ろしていた。

 

「ご、ゴゴゴゴジータさんっ!? なんで!? 担当区は此処ではない筈じゃあ!?」

 

「いや、俺普通に警備の責任者だから。普通に全区画担当だから、最初の顔合わせの時に説明したろ?」

 

「───────」

 

 ヤッバイ。緊張してて聞いてなかった。その昔、とある事情で一方的に面識のあったMt.レディは、憧れのゴジータと同じ仕事場に入れることに浮かれ、今回の仕事の詳細を聞き逃していた。

 

「あのあの、その……」

 

「さては聞いてなかったな………はぁ、仕方ない」

 

「───っ! 」

 

 吐き出される溜め息、明らかに失望されたその態度にMt.レディは少なくないショックを受けた。嘗て憧れたヒーローから失望され、らしくない自己嫌悪に陥っていくMt.レディに、シンリンカムイとデステゴロは見守る事しか出来なかった。

 

「おっちゃん、たこ焼きを四つくれ。二千円でいいな?」

 

「お、おお、まいどありー!」

 

 すっかり意気消沈となったMt.レディを放置し、ゴジータは出店の店主からたこ焼きを四つ程購入。何をするのかと様子を見守っていると、その内の一つをMt.レディに差し出してきた。

 

「ほれ、その様子だと仕事ばかりで碌に飯食ってねぇんだろ? 警備とは言え体力を使う仕事だ。時間の合間に食っておけ」

 

「え、イヤでも私、本当に持ち合わせがなくって……」

 

「普段ヒーロー活動で頑張っている同業者を労ってやるくらいの甲斐性はあるつもりだ。アンタはまだ新人みたいだし、これくらいのお節介は別にいいだろ。ほれ、シンリン先輩とデステゴ先輩も」

 

「あ、ありがとう」

 

「いやデステゴ“ロ”な? いい加減ちゃんと呼んでくれよ」

 

 Mt.レディの事を日頃のヒーロー活動で疲れた良くあるミスだと認識したゴジータは、たこ焼きを奢ることで自分なりの労いをすることにした。嘗ては多くの人達にフォローされてきたゴジータは、こうして良い先輩後輩の関係が生まれるのだなと、一人たこ焼きを頬張りながら納得していた。

 

 一方で、No.1ヒーローから奢ってもらえた事に色々と思考が追い付いていないMt.レディは、手渡されたたこ焼きを見つめたまま固まってしまっている。

 

「そういや聞いたぜシンリン先輩。アンタって俺と相棒が活動自粛していた頃、ヴィラン退治やら災害救助に大分活躍してくれたらしいじゃないか」

 

「きょ、恐縮です!」

 

「いや何故敬語? 頑張ってくれるのは嬉しいが、あんまり無理すんなよ。ヒーロー活動も身体が資本だからな」

 

「お、お気遣いありがとうございます!」

 

「だから何で敬語? そんでそっちの………Mt.レディだっけか?」

 

「ッ!?」

 

 自分のヒーロー名が呼ばれ、Mt.レディの意識は一気に現実へ引き戻される。

 

「新人で実際のヒーロー活動に戸惑う事も多いと思うが、あまり張り詰めるなよ。何かあったらすぐに頼っていいからな」

 

 じゃあ、と。たこ焼きを食べ終えたゴジータは空となったプラスチックの容器をゴミ箱に捨て、次の区画へ向かう。

 

 そんな彼を、Mt.レディが一瞬だけ呼び止め。

 

「あ、あのゴジータ!」

 

「ん?」

 

「が、頑張って下さい!」

 

「おう、サンキューな」

 

 まるでファンのように慕ってくる彼女に、ゴジータはサムズアップで応えて飛翔。一瞬で空の彼方へ消えていった。相変わらず凄い人だと、恍惚とした表情で見送るMt.レディ。

 

「さぁ! ちゃっちゃと食べて警備行くわよ!」

 

「ちょっとコイツ現金すぎない?」

 

「まぁ、今回ばかりは大目に見ましょう」

 

 すっかりやる気を取り戻したMt.レディ。分かりやすいその性分に呆れながらも、今日一日だけの三人の警備は続く。

 

 

 

 

 

 






ゴジータのヒーロー関係プロファイル。

その1

デステゴロ

本作に於けるゴジータと古い知り合いの一人。出会いは後藤甚田が雄英一年生の頃、とある事情により雄英体育祭に出れなかった頃に出会っている。

ゴジータが雄英体育祭を欠席した事実を知る人物でもある。

様々な経緯を経てゴジータがヒーローになった時は素直に喜び、その活躍を応援しているファンの一人でもある。


その2

Mt.レディ。

その昔、とある災害に巻き込まれた際にゴジータによって救われた人物。当時まだ学生で経験が浅く、個性の力も上手く扱えない彼女は降り注がれる土石流に呑まれ、危うく生き埋めになるところだった。

明確な死を前に泣きじゃくる彼女は黄金の炎を纏うゴジータによって救われ、その姿を脳内に永久に刻まれる事になる。

現在は都内に事務所を構えているが、要請があれば対ヴィランだけでなく、災害救助にも積極的に参加している模様。事務所にはゴジータのグッズが幾つも置かれており、相当なゴジータオタクを匂わせている。

しかし、彼女が一番欲しがっている某衣装チェンジのレアカードだけがどうしても手に入らず、本人はどんな手段を使っても手に入れて見せると息巻いている模様。

因みに、年齢はMt.レディの方が年上。



最後に緑谷逃げて超逃げて。
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