超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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相変わらず面白いヒロアカ、そんな訳で初投稿です。


記録18

 

 

 

 ─────走る。障害物として設置された仮想敵や、巨大な落とし穴を乗り越え、今日まで個性と己を鍛え続けてきた緑谷出久は、前を行く二人のクラスメイトに追い付き追い越すべく、最後の関門である地雷原(仮)を突き進む。

 

翡翠色の放電が全身から迸り、踏めば炸裂する地雷の爆風を利用し、加速し続けること数秒。遂に両者の背中を捉えた緑谷は、ここで初めて彼等から妨害を受ける。

 

「邪魔だ! クソナード!!」

 

「お前の相手は後だ、緑谷!」

 

爆破と氷。視界を覆う衝撃と冷気を前に、緑谷は停滞でも迎撃でもなく、前進を選んだ。

 

更に向こうへ(Plus Ultra)、雄英の校訓を胸に刻んで爆破の衝撃と凍てつく冷気を前に、緑谷出久は一歩踏み込んだ。

 

瞬間三人を中心に地雷が爆発し、その音と衝撃に二人の距離が開く。閉ざされた扉を抉じ開けた様な錯覚を覚えた緑谷は、そのまま己の脚に力を込めて一直線に駆け抜ける。

 

周囲の歓声も、MCであるプレゼントマイクの言葉も、今の緑谷には届かない。このまま突っ走れと叫ぶ自身の心にだけ耳を傾け、背後から猛追してくる二人を引き離す。

 

そして────。

 

『来たぁッ! 多くの関門と難関を潜り抜け、最初にゴールに辿り着いたのは、ヒーロー科一年A組の緑谷出久だぁッ!!』

 

 最後の会場に続く一本道を走り抜けると、会場に備え付けられた巨大なモニターに自身の名前と姿が映し出されるのを目にした緑谷は、自分の実力が充分に発揮できた事やその末に得られた結果に、感情が爆発しそうになった。

 

が、その感情は会場を埋め尽くす歓声と共に引いていく。追い付いた爆豪と轟も、急に静かになった会場に面喰らっていると……。

 

「お、おい、アレって………エンデヴァー、だよな?」

 

一人の観客席にいるヒーローが呟くのを皮切りに、ざわめきは広く伝播していく。一体どうしたんだと観客達が向ける視線に顔を向けると。

 

「オールマイトもいるぞ」

 

「そんで二人の間にいるのって………ゴジータじゃないか!?」

 

No.3ヒーロー、エンデヴァー。

 

No.2ヒーロー、オールマイト。

 

No.1ヒーロー、ゴジータ。

 

日本のヒーロー界の頂点に君臨している三人が、横並びになって腕組をしている。ただそこにいるだけで圧巻で、圧倒されそうな存在感。何でヒーローのトップ3が揃い踏みなのか、彼等の迫力を前に誰一人疑問の言葉が出せていない一方で。

 

(何故……)

 

(一体……)

 

(どうして……!)

 

(((こうなった!?)))

 

 日本の平和をその背に背負っている三人のヒーローは、揃ってほぼ白目を剥いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(おい、どうするんだ貴様! 折角焦凍の様子を見に来たと言うのに、貴様の所為でいらん注目を浴びてしまっているではないか!)

 

(うっせぇ知るか! て言うか息子の応援に来たって言うならコスチューム脱いでから来いや! 忍ぶという気遣いが出来んのかテメーは!?)

 

(本当に目上の人間に対する礼儀がなっとらんな貴様は! 俺はあくまで警備の補充要員に過ぎん、貴様がボロを出すまでの間の、な。尤も、この分だと俺の出番は近しいようだがな)

 

(ハッ、そりゃあそうだろうが。アンタの所の事務所は数を武器にしている。数十人規模のサイドキックを従えてりゃ、大抵の事は出来るだろうよ。尤も、俺みたいな新人ヒーローと張り合っている時点でアンタの程度が知れるがな)

 

(そ、其処までにしようよ二人とも!周りのヒーロー達も怯えちゃっているから! コラ! メンチを切り合わないの!!)

 

 ほぼ白目を剥きながら睨み合うゴジータとエンデヴァーを諌めるオールマイトだが、彼の制止の呼び掛けの声は届いた様子がない。何故ゴジータとエンデヴァーが此処まで険悪な関係になってしまっているのか。初めて目の当たりにする光景に、流石のオールマイトもどう仲裁するべきか悩んでいた。

 

雄英体育祭の主役である生徒達を差し置いて注目を集めてしまった事、流石にこのままでは不味いと退出を促すオールマイトだが、どういう訳か二人の間に因縁があるらしく、オールマイトの声も中々聞き入れようとしなかった。

 

故に、互いに引かない二人に引き摺られる形で観客席にまで来てしまった訳だが……。

 

(小僧、あまり図に乗らん方がいいぞ。お前の様な青二才が座っていられる程、No.1ヒーローの座は安くはない。己の恥を晒す前にさっさと退くがいい)

 

(退かせてみろよ。アンタに出来るものならな)

 

(──────俺じゃない)

 

「………なに?」

 

 睨み付けてくるエンデヴァーに、不敵な笑みを浮かべるゴジータ。互いに引かない意地の張り合いだったが、その張り合いはエンデヴァーが唐突に引き下がることで幕を引く。

 

「お前を、お前達を超えるのは俺じゃない。俺の息子が、必ずお前達を超える。そうなるために育ててきた」

 

「エンデヴァー、君は……」

 

「アンタ、何を言って………?」

 

背を向け、その場から立ち去るエンデヴァー。一度だけ二人に向けて振り返るその横顔は狂気染みたモノに歪んでいた。一抹の不安さと不気味さを残して去り行くエンデヴァーに、二人は声を掛ける事が出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雄英体育祭の次なる種目、ポイントとなるハチマキを奪い合う騎馬戦は、個性の使用を勧めるだけあって白熱した展開となっている。歓声が会場を震わせるのを尻目に、改めて警備に勤しむゴジータは先のエンデヴァーの異様な雰囲気が気になっていた。

 

(エンデヴァーの息子、か。確か轟……焦凍だっけ? 今年雄英に推薦トップで入学したっていう。そうか、あの子が彼の……)

 

思い返すのは先の警備の下見に雄英に赴いた時出会った、紅白に分けた髪と顔の左側に火傷を負ったクールなイケメン風の少年。初対面の時から何かと闇深い印象だったから覚えているが、彼がエンデヴァーの息子だと知ると、ゴジータの頭に嫌な予想が思い浮かぶ。

 

“個性婚”。親同士の個性を混ぜ合わせ、より強い個性の子供を“作る”という名目で、個性社会の黎明期に行われた行為。現在は既に風化し、個性目的で結婚することを忌避されており、禁止とされている悪しき風習。

 

もし、あの時エンデヴァーの言っている事がその事を意味しているのなら、万が一それが世間に露見した際、ヒーローの世間に対する信用の失墜に繋がりかねない。仮にもエンデヴァーはNo.3のトップヒーローの一人、そんな彼が個性婚で子供を自分の目的の為だけに作っている(・・・・・)奴だと世間が知ればそれは、その制裁はバッシング処では済まなくなるだろう。

 

勿論、これはあくまでゴジータの推論であり、断言できる要素は何一つない妄言だが、先のエンデヴァーの様子を見る限り一概に否定出来ない。

 

(い、いやでも! 家庭の方は円満かもしれないし! 仮令(たとえ)生まれる子供の個性を狙った結婚だとしても、後から愛ある家庭に変わったのかもしれないし!)

 

そんな可能性に過ぎない話を、ゴジータはそういう風に思い込むことで否定しようとする。そう、エンデヴァーがあんな態度を取るのも、偏に息子の焦凍に対する愛情があっての事。焦凍君の将来性を考えたからこそ、あの様な態度になってしまったのだろう。

 

焦凍君の顔の火傷? ………個性訓練の際に出来た傷なんじゃないかなーと、ゴジータは思った。と言うかそうであって欲しい。これで本当に自分の考えている通りだったら、今後エンデヴァーに対する見方が色んな意味でネジ曲がりそうな気がする。

 

(─────と、あまり関係ない事ばかり考えてもいられないな。一先ず警備を続けとこ)

 

 今頃騎馬戦の方は終わりを迎えている頃だろうか、歓声は止まり、プレゼントマイクから次の種目を準備している間に簡単な休憩を挟む報せが届く。

 

恐らく、例年通りなら体育祭最後の種目は生徒達による個性ありの試合になるだろう。殴ってよし、蹴ってよし、投げたり絞めてよし等の何でもあり。過剰攻撃以外何でもありな体育祭。悔しくも高校一年の時は参加できなかったが、続く二年三年の頃には連覇を成し遂げていたゴジータにとって、今回の目玉種目は最終種目だと予め予想を立てていた。

 

さて、どうやって緑谷の応援に向かうとするか、それとも会場の屋根付近から密かに見守る程度に留めておくべきか、昼休憩に備えて今の内に相棒の弟子をどう見てやるか───なんて考えながら会場の方へ足を進めていると………。

 

「そして、追い詰められた母はある日俺の顔に煮え湯を浴びせた」

 

「───ん?」

 

 何だろう、向こうの通路から不穏な言葉が聞こえた気がした。恐る恐る通路口から覗き込むと、自身が気に掛けていた緑谷と轟が向かい合う形でそこにいた。

 

二人の間にある空気は険悪の類いではない。が、別の意味で緊迫したモノになっている。偶然二人の会話を聞いてしまったゴジータだが、火傷を負った自分の顔に手を当てる轟を見て、ゴジータの足は止まってしまっていた。

 

「────お前がオールマイトとどういう関係にあるかなんて関係ねぇ。俺は、母さんから受け継いだ()だけでテメェに勝つ。俺が言いてぇのはそれだけだ」

 

しかし、自分の言いたいことを言い終えた轟が此方に近付いてくる事を察したゴジータはその場から跳躍して姿を消す。幸いゴジータの存在は気付かれる事はなく、轟はその場から立ち去っていく。

 

「僕は……多くの人達に支えられ、導かれて此処にいる。恵まれただけの人間だ。でも、それでも僕は言うよ。“君に勝つ”、それが今の僕に出来る最大の敬意だと思うから」

 

その際、ビビリながら拳を握り締め、歪に笑みを浮かべる緑谷を一瞥すると、今度こそ轟は振り返る事なくその場を後にする。

 

 緑谷もその場から離れていく。気配が遠退く二つの気配に安堵しながら降り立つゴジータだが………。

 

「いやー、マァジかぁー。轟さんちの焦凍君の家庭環境。あの色々とキマった表情を見るに………ガチっぽいなぁ」

 

轟焦凍が抱える闇、自身の顔に火傷を負わせた母に対する憎悪ではなく、其処まで母を追い詰めたエンデヴァーこそ元凶であることを分かっているから、母を憎まずにいられたのだろう。

 

優しい子だ。そして、その優しさ故に拗れてしまった彼の歪みを解きほぐしてやるのも………ヒーローの役目だ。

 

但し、その役目は自分ではない。轟焦凍の歪みを糺せるのは父親でもNo.1ヒーローでもない、彼と正面からぶつかってやれる─────友達だ。

 

そして、その友達として並び立てる者もまた、雄英には数多くいる。嘗ての自分がそうだったように、凝り固まった彼の価値観も、きっとなんとかしてくれるだろう。

 

問題は……。

 

「エンデヴァー。アンタ、マジで何やってんだよ………」

 

 家族を追い詰め、伴侶を追い詰め、息子は自分達を超える為の存在。そう言い切るエンデヴァーに、ゴジータは落胆せざるを得なかった。

 

「こりゃあ、波乱がありそうだな。お前はどう思うよ、ボンバーマン」

 

「誰がだ! アンタのボキャブラリーどうなってんだ!?」

 

 鬱屈とした空気を無理矢理にでも変える為、ゴジータは今まで隠れていたであろう人物に声を掛ける。すると、奥の通路から掌から爆発を発しながら爆豪勝己が現れた。

 

「いやなに、お前のクラスに色々と拗らせた奴がいるなーってよ。首席入学者であるお前の忌憚なき意見って奴が聞きたいだけさ」

 

「………関係ねぇよ」

 

「あ?」

 

「クソデクも半分野郎も、何を抱えてんのかなんて俺にはどーでもいいんだよ!今回の雄英体育祭では、俺が優勝するって決めてんだ。完膚なき勝利と言う形でなァ………!」

 

「お、おぉ、向上心があるようで結構」

 

「ケッ、見てろよ。俺はもっと強くなる。今よりずっと強くなって、いつかオールマイトやアンタを超える最強のヒーローになってやる! 覚悟してろや!!」

 

そう息巻いて、会場内へと戻っていく爆豪。勝ち気を通り越して追い詰められた様子の少年に、ゴジータは頭を掻いて……。

 

「………なんか、拗らせてる奴多くね?」

 

そう、愚痴を溢さずにはいられなかった。

 

 一先ず、警備を続けよう。自分は他のヒーローより自由に動ける分、担当を任されている区画が多い。この後は三年生の所にも顔を出さなくちゃいけないのだと、自分もこの場から離れようとした時、ゴジータの携帯に着信が入る。

 

事務所からだ。オールマイトとのチームアップを解消した後、何人か優秀な事務員を紹介してもらったゴジータは、此方からお願いした形で新たに立ち上げた自分の事務所にて働いて貰っている。

 

そんな、色々と頭の上がらない事務員からの連絡。何事かと思い出てみると………。

 

「此方ゴジータ、どうした? ────なに? 保須市でヒーロー殺しが現れた? 被害者は………インゲニウム、だと?」

 

 それは、嘗てゴジータが雄英生一年の時、職場体験先で世話になったヒーローの名前。そんな彼が、ヒーロー殺しなるヴィランの襲撃を受けて重傷。衝撃的な報告にゴジータは驚きを顕にしていた。

 

 

 





「次回、ステインの髪がキューティクルに!?」

「更に向こうへ、Plus Ultra!!」
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