超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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仕事がキツくて初投稿です。




記録19

 

 

 

「インゲニウムが………重傷………」

 

 雄英体育祭も終盤。騎馬戦も終わり、上位4チームが最後の種目に挑む一方、レクリエーションで盛り上がる会場の空気を他所に、事務所から告げられる恩人の悲報にゴジータは内心動揺していた。

 

ヒーロー“インゲニウム”、ゴジータが学生の頃、職場体験の際に世話になった面倒見の良いヒーロー。当時から自身を()()()()()()()追い詰めていた甚田を、少なからず気に掛けた人物。

 

この頃から既に他のヒーローとは隔絶した実力を有するゴジータに、インゲニウムも一度は心がへし折れたが、後藤甚田の危うい部分を見てからは何かと世話を焼いた苦労人。

 

そんな恩人とも呼べる人物が、ヒーロー殺しによって重傷を負っている。場所は都心の某大手の病院、現在は一流の医療スタッフ達による集中治療中との事。

 

 峠こそ越え、危険な状態からは抜け出せてはいるが、恐らくヒーローとしての再起は絶望的だと、事務員からの報告はそう締め括られる。

 

これは、またもやこの豆の出番か。ゴジータがコスチュームの胸ポケットにしまっていた箱を取り出して開けると、中には残り二粒の仙豆擬きがあった。

 

警備の主任を任された時、念の為に自宅から持ってきた仙豆擬き。大怪我をした生徒が出てきた時を想定して持ってきたが、本来の目的とは違う用途で使うことになりそうだ。

 

だが、現在インゲニウムは手術を受けている真っ最中で、とてもではないが豆を頬張る余裕はない。命の危機から脱したのなら、体育祭が終わった頃にでも向かうとしよう。オールマイトから教わった焦った際の心の落ち着かせ方を試しながら、ゴジータは自身の胸中を落ち着かせる。

 

世話になった恩人を必ず助けることを誓いつつ、ゴジータは改めて警備の仕事に戻るのだった。

 

そして………。

 

「あ、あのゴジータ! 今お時間良いですか?」

 

「お前は……拳藤? なんだどうした、お前はレクリエーションに参加しないのか?」

 

 警備の最中、会場へ続く通路口でレクリエーションに参加している生徒達を見守っていると、一人の少女が此方に気付き、迷いながら走り寄ってきた。

 

拳藤一佳。先のヴィラン人質の件から、何かと顔を合わせているヒーローの卵である。

 

「いえ、現在参加している最中なんですけどその………今借り物競争中で、私の課題をクリア出来る人がゴジータしかいないから」

 

何やらモゴモゴと口ごもり、快活な彼女らしからぬ態度だが、要は借り物競争に自分の手を貸して欲しいとの事。子供の競技に自分が参加して良いのか悩み所だが、チラリと進行役のミッドナイトを見る限り、レクリエーションだから問題ない様だ。

 

サムズアップしてくる嘗ての教師。それなら良いかとゴジータも納得すると、不安そうにしている拳藤の側に寄る。

 

「分かったよ。けど俺も仕事中の身だ。申し訳ないが、速攻で終わらせるぞ」

 

「え? きゃっ!?」

 

 抱き抱えられ、拳藤が困惑の声を上げるのも束の間。ゴジータの超スピードにより会場内を瞬く間に駆け巡り、順位的に下だった拳藤は一瞬の内に一位へ返り咲いていた。

 

「ほい、おしまい。じゃあな」

 

「え、え、………あれ?」

 

そしてそのままゴール。あまりにも一瞬だった為、何がなんだか分からない拳藤。そんな彼女を丁寧に下ろすと、ゴジータはポンポンと頭を叩いて正気に戻す。

 

『一位おめでとう拳藤一佳ちゃん! て言うかゴジータ、アンタそんなファンサービスが出来るならもうちょっと堪能させて上げなさいよ! 一佳ちゃん呆然としてるじゃない!』

 

「出来るわけ無いだろうが、No.1ヒーローとはいえ、いい歳した野郎が長時間女子高生の体に触れるとか、普通に問題案件だわ」

 

 後藤甚田(陰キャ)的に考えても、女子との密着は心臓に悪い。幾らミルコの過剰なスキンシップを経験してきたと言っても、中身は未だ恋愛未経験のクソザコ陰キャ。生の女性に長時間触れていられる程、精神的タフネスさは持ち合わせていないのだ。

 

今回は一瞬の接触の為に耐えられたが、緊急の案件以外女性の柔肌に触れたことの無い後藤甚田にとって、今の時間は色んな意味でキツかった。華がないとブー垂れるミッドナイトを尻目に、ゴジータは別の所へ向かう為に空へ向かって飛翔し、瞬く間に消えていった。

 

一方その頃。

 

「ゴジータに………お姫様だっこ、されるだと?」

 

 血走った目でモニターを食い入る様に見つめるMt.レディ、彼女の周辺にはデステゴロとシンリンカムイ以外、誰も寄り付かなかったという。

 

「………もしかして俺ら、今後も組まされる事があったりする?」

 

「その可能性は、極めて高いかと」

 

若手実力派のヒーローの達観に満ちた言葉に、デステゴロはやれやれと肩を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、レクリエーションも終えて遂に雄英体育祭最大の見せ場がやってきた。雄英生徒達同士によるガチンコバトル、個性の使用を認められた日本中が注目する場面。多くのヒーロー達が見守る中、ヒーローを志す卵達がそれぞれの想いを抱きながらぶつかった。

 

多くの卵達が鎬を削る中で、一際輝くダイヤの原石達。中でも緑谷出久、爆豪勝己、轟焦凍の三人はその個性故か多くのヒーロー達の目に止まった。

 

爆豪は爆破の個性で相手を蹂躙し、轟は氷の個性で封殺。緑谷は最近になって個性の扱いになれてきた所為か、一回戦で危ない場面はあったものの圧倒的パワーで完勝。

 

いずれも障害物競走や騎馬戦で活躍した卵達。今度はどんな戦いが見れるのか、プロヒーロー達の注目が集まる中始まる第二回戦。

 

結果は────。

 

「結果は………まぁ、その様を見れば一目瞭然だわな」

 

「あ、あははは………」

 

 体育祭の会場、そこに備え付けられた医務室のベッドで寝かされている緑谷を見て、ゴジータは呆れた顔を浮かべるしかなかった。

 

先の二回戦、優勝候補である焦凍と戦うことになった緑谷は、大会直前に教わったフルカウルを駆使して奮戦。推薦入学者を相手に善戦以上の戦いを見せた。

 

O.F.Aの力を10%引き出しての戦闘。オールマイトの10分の1程度とは言え、それでも単純なパワーでは他より頭一つ抜きん出ている緑谷は、持ち前の分析能力も駆使して徐々に轟を追い詰めていった。

 

このまま行けば緑谷が勝つ。以前までは何かをする度に身体を壊していた同級生が、今では推薦入学者を相手に圧倒している。クラスメイト達が驚き、爆豪が面白くなさそうにしているなか、試合の行方は予想だに出来ない方へ進みだす。

 

「“君の力じゃないか!” この啖呵まではかっこよかったんだけどなぁ……」

 

「う、うぐぅ………」

 

 本来の全力を出さずに戦う焦凍を見て、遂に緑谷の中にある何かが切れた。どんな経緯で生まれ、どんな境遇で育ち、母から煮え湯を浴びせられたとしても、持って生まれた力は君の力だ。そう語る緑谷の言葉が轟の琴線に触れたのか、轟焦凍は感情的に()の力を解放させた。

 

 

長らく封じていた父親の個性、それを遂に自分を受け入れたと錯覚したエンデヴァーはこの時凄まじい雄叫びを上げたのをゴジータは覚えている。周囲の人間が親バカかな? と思っている一方、轟家の闇深さを断片的に知っているゴジータは、エンデヴァーを其処まで微笑ましく見ることは出来なかった。

 

───閑話休題。

 

 それで、自身の言葉で何か吹っ切れた様子の轟に改めて挑む緑谷は、禁止されていた100%の力を解放して轟と肉薄。轟も解放された炎の力を使い、全力の一撃を緑谷に見舞う。

 

衝突の破壊力と規模を危惧したセメントスが瞬時に緩和材のコンクリを用意するも、ぶつかり合った衝撃は収まらず周囲に分散、ミッドナイトも爆風で吹き飛ばされて大惨事────には、ならなかった。

 

「全力で相手とぶつかり合うのも結構だが、周囲の事も考えておけよ? 俺がいなかったら、今頃大騒ぎだ」

 

「そ、その節は本当にありがとうございます!」

 

何故ならば、雄英体育祭の警備主任であるゴジータが事前に防いだからだ。周囲を巻き込む大爆発、それをゴジータが単独で拳を振るうことで相殺し、場外へ吹き飛んで壁に叩き付けられる緑谷を寸前で抱き留めていたからだ。

 

緑谷出久と轟焦凍、二人による白熱したバトルは炎の力を解放した轟の勝利で終わった。終了直後の緑谷の評価は低くなく、限られた力で上手く立ち回って見せたその判断力は、多くのプロヒーローを唸らせる程だった。

 

ただ、挑発した割に負けてしまったのがマイナスな所で、なにも知らない連中はダサいなんて言いたいことを吐き捨てる始末。ま、そんな連中はこの先ヒーロー稼業を長く続けていられるとは思えないので、捨て置くんだけどね。

 

「ったく、轟の奴を助けたいからって、お前が文字通り骨折ってちゃ、轟も罪悪感で素直に受け止められねぇだろ?」

 

「え? ゴジータ、なんでその事を………」

 

「盗み聞きをするつもりはなかったがな。それは謝っておく、許せ。ただ前にも言った通り、一人を助ける為に手足を折ってたら世話ねぇぞ?」

 

「それは……はい、すみません」

 

「よし、ならそんな反省したお前に残念賞をくれてやる。ほれ」

 

 自分の忠告を無視して100%の力を引き出した緑谷、結局自分の忠告は聞き入れず………否、聞き入れた上でやらかす緑谷に呆れながら、ゴジータは彼の口に指で弾いた仙豆擬きを捩じ込んだ。

 

「っ!? ご、ゴジータ!? いきなり何を!? ………て、あれ? 腕、痛くない?」

 

突然豆を食べさせれられた事に動揺する緑谷だが、折れていた筈の手足からスーッと痛みが引いていく事に、驚愕に目を点にして固まってしまう。

 

「やれやれ、アンタの作った仙豆……だったかい? 効果は凄いが、多用するのは控えた方がいいかもね。これじゃあ、この子の為にならないよ」

 

「それは無理だ。コイツは助けを求める奴がいれば、自分なんてどうなってもいいと思う人間だ。そんな人間は言葉だけじゃ止まらない。その事を本当の意味で理解するまで、俺達でフォローしてやるしかないんだよ」

 

「………全く、本当に困った子だよ。アンタにも言ってるんだよ、聞いているのかい、オールマイト!」

 

 混乱に固まる緑谷を尻目に、医務担当のリカバリーガールの怒声が響く。すると、扉の陰に隠れていた男が、苦笑いを浮かべながら現れた。

 

「い、いやーハハハ、本当にすみません」

 

「仮にもこの子はアンタの弟子なんだろ、だったらちゃんと見てやらないとダメじゃないか! 教育ってのは、発破を掛けるだけじゃ成り立たない。時には自分で考えて、自重する事も覚えさせないと、泣くのは自分だけじゃ済まなくなるよ!」

 

「胆に、銘じておきます」

 

流石のオールマイトも、リカバリーガールには頭が上がらないようで、咜り付けてくる彼女にただただ頭を下げ続ける事しか出来なかった。

 

と、そんな時だ。通路の外からバタバタと慌ただしい気配が近付いてくるのをゴジータは察知した。オールマイトも活動限界にはまだ余裕がありそうだし、少し位なら良いかとゴジータは人知れず退室。引き続き警備の任務へと戻っていった。

 

 そして、それから暫くして。

 

「─────ん? 電話、根津校長から?」

 

携帯から発せられる着信音、手にとってみると其処には散々世話になった根津校長の名前が映っていた。

 

『あ、もしもしゴジータ君? 今大丈夫?』

 

「ウッス、此方は特に異常はないッス」

 

『アハハ、君の仕事振りに不安を抱くことはないさ。今回電話したのは別の件でね、次の一年生達の行事に君も参加して欲しいのさ』

 

「次の行事? ………あぁ、職場体験か」

 

『そう。本当は任意で希望して欲しかったんだけど、今年のNo.1ヒーローは君だ。オールマイトを超えたヒーローである君の生の仕事振りを間近で見せて上げたくてね』

 

「それは別に構わないが………いいのか? 折角の将来有望なヒーローの卵の心をへし折っちまうかもしれないぜ?」

 

『そんな君だからこそ、卵達は更に向こうへ至ろうとするのさ。それじゃあ、希望する生徒はいるかい?』

 

「誰でも構わないさ。が、生半可な奴が来ても面白くない。そうだな………せめて、今回の体育祭で優勝を決める奴が来て欲しいもんだな」

 

『了解。じゃ、そゆわけで!』

 

 自分のゴジータとしての在り方に文句の一つも言わずに受け入れてくれる根津校長に感謝しながら、ゴジータは通話を終える。現在残っている生徒は四名で全員が一年A組であるが、その全員が優勝できるポテンシャルを秘めている。

 

本音を言えば緑谷が来て欲しいが………まぁ、その辺は仕方がないと諦めよう。何より彼はオールマイトの弟子。ならば今後の彼の指導は相棒に任せる事にして、ゴジータは未来のトップヒーローの卵を鍛える事にしよう。

 

そうして優勝する生徒にワクワクする事約一時間、遂に体育祭の予定の全てが終了し、壇上に上がる三名の生徒を前にして。

 

『さぁ、それではゴジータ、此処まで奮闘してトップスリーに輝いた生徒達にメダルを授与してあげて!』

 

「光の戦士との邂逅か……フフ、昂る……!」

 

「………どもッス」

 

「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️ッ!!!」

 

 中央の一位の座に鎖やら拘束具やらで縛られた優勝者(爆豪勝己)に、ゴジータは溜息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 急ぐ。体育祭の終盤、惜しくも敗退した飯田天哉は母から届いた兄の悲報に逸る気持ちを圧し殺しながら、急ぎ兄のいる病院へと向かう。

 

兄がヴィランに襲われ、重傷。飯田の憧れであり目標である兄が、ヒーロー殺しなるヴィランに襲われて瀕死の重傷と知った彼の胸中はとても言葉にし難いモノだった。

 

願うのは、ただ兄の安否のみ。焦りとショックで気持ちが昂ってしまった飯田は、病院のある街へ新幹線で移動する際、白い炎が新幹線を抜いて飛んでいく様を幻視してしまう程に動揺してしまっていた。

 

どうか、どうか兄が無事でいてくれます様に。藁にも縋る思いで病院へと辿り着いた飯田天哉は、看護師の制止も聞かずに病院を走り抜け………そして、兄のいる病室の扉を開けると………。

 

「兄さん、無事か!?」

 

「あ、天哉。ちょっと待っててくれ、今この問題児にお仕置きしている所だから」

 

「いたたたた……おい止めてくれってインゲニウム。照れ隠しに後輩を痛め付けるのは、らしくないぜ?」

 

「黙らっしゃい! 毎度毎度お前さんは澄ました顔でとんでもないことをやりやがって! こっちの心を少しは労れやバカヤロー!」

 

「イヤでも、終わり良ければすべて良しって言うじゃん」

 

「過程も少しは省みろ!」

 

重傷患者である筈の兄が、元気な様子でNo.1をコブラツイストで締め上げている。その傍らには気絶した母が。多すぎる情報を前にした飯田天哉は……眼鏡を割りながら母と同様に気絶した。

 

 

 

 





今回、雑に雄英体育祭を終わらせてしまいました。
緑谷君が原作と変わらず敗退しましたが、途中までの展開は大分違うので、プロヒーロー達からの印象は大分変わっています。

そして、次回からは職場体験編。爆豪君とゴジータの絡みを中心に書いていこうと思います。


「次回、Mt.レディがゴジータ宅に突撃!?」(嘘)

「更に向こうへ、Plus Ultra!!」

今後、ゴジータの家を特定しそうなのは誰?

  • ミルコ
  • Mt.レディ
  • 拳藤一佳
  • 轟焦凍
  • プッシーキャッツの四人
  • エンデヴァー
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