超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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今週のヒロアカも凄く面白かったです。

そんなわけで初投稿です。


記録20

 

 

 

「────じゃあお前ら、くれぐれも先方に失礼の無いようにな」

 

 雄英体育祭から数日、トップのプロヒーローを志す雄英の生徒────一年A組の面々は、無愛想な担任の言葉に頷き、それぞれスカウトのあったヒーロー事務所を目指す。

 

「切島はフォースカインドってヒーローの事務所なんだよな?」

 

「あぁ、折角のご指名だからな。ビシッと漢らしく決めてくるぜ!」

 

生のプロヒーローの活躍を間近で見られる。その機会に恵まれたことに流石の雄英と感じる一方、何処か浮き足立つ卵達。やる気に満ちているのはいいが、相澤としては空回りしないことを祈るだけだ。

 

それに、気掛かりなのはそれだけじゃない。

 

「あの、飯田君、本当に大丈夫?」

 

緑谷が気遣い、声を掛けるのは今日まで何処と無く暗い雰囲気を纏う少年、クラスの委員長でもある飯田天哉。普段は真面目ながらも明るい委員長が、変わったと思ったのは先の雄英体育祭の時、兄でありヒーローのインゲニウムの悲報だった。

 

彼の兄であるインゲニウムが、ヒーロー殺しに襲われて負傷。現在は大手の病院にて入院中との事。その放送でお茶の間を騒然とさせたのは緑谷の記憶にも新しい。

 

 飯田天哉にとって、兄である天晴は緑谷にとってのオールマイトと同じ。憧れであり指標であり、目標。いつか自分もそう在りたいと思い、願っている星。

 

その憧れが、ヴィランによって重傷を負っている。肉親であり憧れであるインゲニウムが倒れたという事実は、緑谷が思っている以上に飯田の背中に重くのし掛かっている事だろう。

 

そんな飯田に自分達がしてやれるのは声を掛けて自分達がいることを示す事だけ、そんな、緑谷達に対し……。

 

「─────え? あ! 済まない緑谷君! 何か言ったかい!? 全然聞いてなかった!」

 

緑谷に声を掛けられていた事に気付かず、凄まじく動揺していた。

 

「い、飯田君、本当に大丈夫?」

 

「無理もないわ。お兄さんの痛ましい事件、私も悲しかったけど、飯田ちゃんはもっとずっと悲しかった筈。上の空になるのも仕方がないわ」

 

 そんな委員長の飯田に何を思ったのか、同じクラスメイトである麗日お茶子と蛙吹梅雨も気に掛けてくる。

 

「あ、うん………ソウダネ」

 

そんなクラスメイト達の心からの心配に、飯田天哉は遠い目になる。

 

 言えない、言える訳が無かった。ヴィランであるヒーロー殺しに襲われたのは事実だし、兄が一時は意識不明の重体で、生死の境を彷徨っていたという話も本当だし、何より飯田自身も病室に着くまでそう思っていた。

 

そんな兄が今では病院の中で筋トレしているなんて、一体誰が想像できる。しかも、それを成したのは医療系統の個性なんて微塵も持ち合わせていない現No.1ヒーローだ。

 

もう、既に飯田天哉の許容量(キャパシティ)はイッパイイッパイである。母に至っては兄の重傷から快復の一連の流れを間近で見ている所為か、白目を剥くのが一芸と化してしまっている。

 

 とは言え、結果はどうあれ兄の体は重傷前の体に戻りつつある。色々とアレなNo.1に言いたいことは山程あったが、真面目な性格である天哉もその事自体には喜んだ。

 

しかし、兄の快復の報に喜んでいられたのは一瞬だけ。翌日病院に訪れてきた黒服の集団───ヒーロー委員会の公安達からの話に身体を固くせずにはいられなかった。

 

まず、ターボヒーローインゲニウムである飯田天晴の長期間の活動自粛、期限は一ヶ月から二ヶ月。その間、病院から抜け出すことは許されず、不自由な生活を余儀なくされた。

 

加えて、家族と親戚、そして病院への徹底した箝口令。No.1ヒーローの事も、彼によってもたらされた影響も、何一つ口外してはならないという誓約をほぼ一方的に呑まされてしまった。

 

文面だけ見れば横暴な内容………だが、公安からの徹底した要求に天哉も天晴も、その家族や病院関係者達の誰一人文句を言うものはいなかった。

 

何故なら……。

 

『私だって、私だってこんな事を言いたくありませんよぉぉ! でも、仕方ないじゃあないですか! 其処にいるアンポンタンが、トンデモ回復アイテムをスナック菓子感覚で乱用しまくるとか、誰が予想できるって言うんですかぁぁぁ!!』

 

その要求を呑ませに来た公安の人が、物凄く泣きじゃくっていたのだから。

 

『なんで瀕死の人間が豆粒一つで快復するんですか!? なんで人体の重要な神経が都合良く治るんですか!? 何ですか仙豆擬きって!?』

 

『イヤでも、これでも完成には程遠いんだぜ? 本当なら一粒で全快する筈なんだけど、大事な部分だけ快復しているってだけでまだ斬られた何ヵ所かは完治してないぞ』

 

『あ、ホントだ。まだ腕とか痛いや』

 

『兄さん!?』

 

『─────ふぅ』

 

『母さん!? 母さーーーん!!』

 

『だから無理に動くなって言ったじゃん。インゲニウムといい、公安といい、相変わらずそそっかしい人達だなぁ』

 

『『喧しいわ!!』』

 

 その後もすったもんだがあり、兎に角兄である天晴は暫くの間入院。彼に関係する人達には、暫くの間の今回の件に関する徹底した箝口令が敷かれ、飯田にもその命令は下される事になった。

 

あの疲れきった年配女性公安の顔、暫く忘れられそうにない。短期間の間に色々とありすぎて、飯田天哉の脳はすっかり疲れきってしまっていた。

 

しかもその疲れが抜けきっていないから、此処の所暗い表情が出てきてしまったらしい。訂正したい所だが、下手に説明すれば例の件に触れてしまう気がして、飯田としては口をつぐむ他なかった。

 

「だ、大丈夫さ! 僕の事は心配せず、君達も自分のするべき事を成し遂げようじゃないか!」

 

 心配してくれるクラスメイト達に対して、凄まじい罪悪感を覚える天哉。その場から立ち去る事を申し訳なく思いながら、彼はマニュアルなるヒーローの下へと急ぐ。

 

そんな飯田を見て……。

 

(頑張れよ、委員長!)

 

既に色々と察している相澤は、心の中でエールを送っていた。

 

「────にしても、爆豪はやっぱスゲェよな。体育祭優勝者として、この上ない特例じゃん!」

 

「上鳴じゃねぇが、確かにな。No.1ヒーローの職場にいけるなんて、滅多にある事じゃねぇからな」

 

「………」

 

 一方で、爆豪と良くつるんでいる切島と上鳴は雄英体育祭の優勝者として、No.1ヒーローの事務所に受け入れて貰えるクラスメイトを、純粋に羨ましく思った。

 

一度だけの組手、顔や名前を覚えて貰えているかは定かではないが、それでもあの時間はヒーローの卵達にとって有意義な瞬間となっている。切島は自分の目指すヒーロー像を、上鳴は自分のやるべき事をそれぞれ教えて貰っている。

 

他のクラスメイトも同様で、生徒達一人一人に対して的確なアドバイスをしてくれたゴジータに、誰もが改めてその姿に惹かれたモノ。

 

そんなゴジータにマンツーマンで見て貰える。その事を思うと、二人が羨ましく思うのも無理もないのかもしれない。

 

だが、当の爆豪は盛り上がる二人とは正反対に静かだった。殺る気に満ち溢れているのではなく、苛立っている訳でもない。

 

「イチイチ騒ぐな。………俺はもう行く、てめえ等もとっとと行け」

 

「ちょ、爆豪?」

 

「なんか、今日の爆豪大人しかったよな? もしかして、No.1ヒーローの事務所に行くからナーバスになってんのか?」

 

「アイツが? ………そうは思えねぇが」

 

 静かに目的地に向かう新幹線に向かう爆豪を、二人は神妙な面持ちで見送る。普段とは様子の違うダチを不思議に思うが、二人にもそれぞれ向かうべき所がある以上立ち往生のままではいられない。次に乗り込む新幹線に向かう為、二人は急いでその場を後にする。

 

そして、無事に新幹線に乗り込んだ爆豪はと言うと……。

 

(────負けた。あの日、No.1ヒーローに向かった俺は、何一つ刻める事なく完膚なき迄に敗北した)

 

 思い返すのは初めてゴジータと対峙したあの日。多くの同級生達がNo.1ヒーローにボロボロにされた時、爆豪は目の前の【最強】に目と心が奪われた。

 

他者を寄せ付けない圧倒的強さ。オールマイトとは別方向の強いヒーローの姿に、爆豪勝己は目が離せなかった。如何なる相手も完封し、圧倒する。有無を言わせない強さ、その全てに釘付けだったのだ。

 

新たなNo.1ヒーローゴジータ。オールマイトと唯一肩を並べ、同時にオールマイトすら超えたとネット上で騒がれる規格外。そんなヒーローの事務所で自分が何を得られる? 何を見出だせる? ゴジータに何一つ示せず、拍手だけで地に伏せた自分が、今更何ができると言うのだ。

 

(………考えたって仕方がねぇ、か)

 

 どうやら、今の自分は思ってた以上にナーバスになっていたらしい。切島と上鳴にそれとなく気を遣われていたし、ダサいのは結局自分だけか。

 

自嘲し、乾いた笑みを浮かべながら、爆豪はゴジータのいる事務所に向かい………。

 

「「「ようこそ、爆豪勝己君!!」」」

 

「───────」

 

ゴジータ、並びに事務員総出で横断幕やらケーキやらを用意している目の前の光景に、言葉を失い白目を剥くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、職場体験を迎える側なんて初めてだから緊張しちまって、つい張り切り過ぎたぜ」

 

「なに初っ端から宴会開いてんだ!? 遊びで来てるんじゃねぇんだぞこっちは!!」

 

 ゴジータの事務所に来て初日、爆豪が体験したのは事務所総出の歓迎会だった。職場体験の子を迎える手前、これ迄そんな経験をしたことのないゴジータが考え抜いた結果生まれた案である。

 

尚、他の事務員は一度は止めようとしたものの、誰かを祝うことなど施設の子供達以外に経験がないというゴジータ、彼が屈託のない笑みを浮かべて楽しみだと口にしていた為、なにも言えなかった。

 

「まぁそう言うなって、お前だって何だかんだ堪能してくれたじゃん」

 

「………あんな空気の中で、断れるかよ」

 

「意外と律儀だな、お前」

 

 そして洗い物も終わり、後片付けも終えた爆豪。口は悪く態度も悪いが、素行そのものは品行方正な爆豪にゴジータは素直に感心した。

 

「って言うかよ、ここの事務所には他のヒーローは居ないンかよ」

 

「他の……? あぁ、相棒(サイドキック)の事ね。いねぇよ、ここの事務所にいるのは俺と事務処理担当の人達だけだ」

 

ヒーロー飽和社会において、チームアップは良くあること。自分には解決できない案件に、他所のヒーローと組んで事に当たるのは普通にあり得る事だ。

 

その内の一つがサイドキックというシステム。複数のヒーローが一つの事務所に所属し、トップのヒーローを中心に据えて社会に貢献するというモノ。それはヒーロー社会のトップに立つヒーロー達も同様で、あのエンデヴァーもこの制度を大いに活用している。

 

だが、ゴジータの事務所にはそれが居ない。何故か? いや、その理由は分かっている。

 

「それは、あんた一人で全部事足りているからか?」

 

「ん? まぁそうだな。色々とあるが、一番の理由は其処だな」

 

んーと上を見上げ、考える素振りを見せながらあっけらかんと答えるゴジータに、爆豪は改めて目の前のヒーローの規格外さを思い知る。

 

日本中………いや、世界中の何処であろうとも駆け付けるヒーロー。そんなヒーローに、自分は果たして付いていけるのか?

 

 思い返すのは体育祭閉会の時。自分の順位に納得出来ていない爆豪が、ゴジータに食って掛かった時だ。

 

『ゴジータ、俺ぁこんな一位なんて要らねぇんだよ。たとえ周りが認めても、俺自身が認めていなくちゃ、ゴミなんだよ!』

 

『あっそ、なら止めるか? 俺は一向に構わねぇぞ。まぁ、目の前の現実を受け入れず、イヤだイヤだと癇癪起こしているだけのお前じゃあ、確かにこのメダルはゴミかもしれんしな』

 

『──────!?』

 

『爆豪勝己。このメダルを今のお前がゴミだというのなら、次のお前で“金”にしてみせろ。それが、お前に送る最初のアドバイスだ』

 

『……そ、れって……』

 

『この間の組手、お前にだけは言ってやれなかったからな。遅くなったがまぁ許せ』

 

『………』

 

『んで? 結局このメダルはどうするんだ?』

 

『………貰っとく』

 

……いや、付いていけるのか、ではない。付いていくのだ。必死に食らい付き、泥に這いつくばってでもその背中を追い掛ける事を、爆豪勝己は自身とあのメダルに誓うのだ。

 

「────上等だ。殺す気で食らい付いてやるから、覚悟しやがれNo.1!!」

 

「え、唐突にどうしたのこの子? 怖っ」

 

 鋭い眼光で睨み、不敵に笑う爆豪。其処らのヴィランより余程恐ろしい顔付きの彼に、ゴジータは軽く引くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────ハァ、例の雄英襲撃犯が、一体俺に何の用だ?」

 

「決まっている。オールマイトとゴジータ、目障りなヒーローを殺すためだ」

 

 

 

 

 





Q.公安の人達、ゴジータの仙豆擬きについて知ってたの?

A.ナイトアイが事前に教えてくれました。オールマイトが全盛期の状態に近くなったこと等、その他諸々を説明したお陰で公安の上層部の人達の何名かは気絶。某睡眠不足の人は笑いながら狂い掛けたとか。

Q.因みに、ゴジータの仙豆擬きってどのくらいの頻度で作れるの?

A.
「んー、具体的な日数は分からないけど………週に一つか二つ、調子が良ければ三つくらい」

「────ふぅ」

「あー、上司がぶっ倒れた!!」

「おのれゴジータ、何処まで我々の胃を破壊すれば気が済む!!」

「おのれゴジータァッ!!」

「流石に酷くね?」

「残当だ馬鹿者」

特に意味の無いヒロイン予想レースpart2だぜイェーー!

  • 1.ミルコ
  • 2.爆豪勝己
  • 3.轟焦凍
  • 4.ミッドナイト
  • 5.相澤消太
  • 6.Mt.レディ
  • 7.オールマイト
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