超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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 メリュジーヌ、宝具重ね失敗したので初投稿です。


記録22

 

 

 

「ブゲラッ!?」

 

 透き通る青空を、一人のヴィランが舞い上がる。自身の個性を使って大きな事を成し遂げようと画策した自信過剰なヴィランは、運悪く遭遇したNo.1ヒーローの手によってその力を一瞬披露するだけに終わった。

 

マンホールの蓋を操るという色々と反応に困る個性を持ったヴィラン、しかしその個性はゴジータの拳の一振りで粉砕され、その脅威を世間に認知される前に終了する。

 

「しかし、ここの所ヴィランの出てくる頻度多いな。他のヒーロー達も頑張っているのに……何でかね?」

 

警察にヴィランを預け、パトカーに乗せられる様子を眺めながら一人溢す。昨今のヴィランの増加傾向はゴジータも聞き及んでおり、少なからずその事実に憂慮していた。

 

オールマイトとゴジータ、ヒーローの二大巨頭がいるにも関わらず、少しずつだがヴィランによる犯罪件数が増えつつある。ヴィランによる被害自体はヒーロー達の活躍によりそれ程ではないが、それでも発生そのものが増えつつあるのは、ゴジータに僅かながらの違和感を与えていた。

 

「やっぱ、例の敵連合とやらの連中の影響かね、其処んところどうよ爆豪」

 

「ぜぇ……ぜぇ……ンなの、……はぁ……知るか」

 

 原因となっているのは、恐らく先日雄英を襲撃したという敵連合なる組織。天下の雄英を襲撃したという話は裏世界に浸透し、それが他の雑魚ヴィランの野心に火を付けてしまったのではないかと、ゴジータは分析する。

 

オールマイトや塚内警部から一応話は聞いているが、当事者の一人にも話を聞いておきたい。そんな訳で職場体験に来ている爆豪にも話を振るが……どうやら、彼自身はそれどころではないようだ。

 

肩で息をして、全身から汗を噴き出している爆豪。それでもゴジータの質問に答えられる程の元気が回復している辺り、流石のタフネスと言えた。

 

ゴジータの職場体験に赴いて四日目、残る体験学習も折り返しに差し掛かり、ゴジータはプロヒーローとしての活動を直に体験させるべく、爆豪を抱えて飛び回ったりせず、比較的近い街で一緒に行動を共にすることにした。

 

近場とは言え、そこはゴジータの自宅から数十キロ先の他県。普段より九割以上力を抑えても、未だ学生である爆豪では追い付けず、彼が追い付く頃にはすべての事件は終わった後だった。

 

「んー、お前の潜在能力的にこの程度のスピードには充分追い付けると思ったんだがな。やっぱ数日程度の稽古では身に付かないか」

 

「──────」

 

両膝に手を当てて肩で息をしている爆豪、彼なりに頑張っているのは分かるが、本人の潜在能力的にまだまだ上があり、爆豪の爆破の個性も様々な用途を待つように進化していく事だろう。

 

昨日も、組手をする際に爆破の威力を一点に集中させたものや、スタングレネード染みた発光現象を起こしている。次の段階(ステージ)に行ける下地は徐々に出来上がりつつあるが、その場面に立ち会えないことにゴジータは少なからず寂しさを感じていた。

 

そんなゴジータの様子を知ってか知らずか、爆豪はその顔に笑みを張り付ける。

 

「………慌てんなよ」

 

「ん?」

 

「帰る頃には、アンタに新しい俺を見せれるようにしてやんよ」

 

「────はは、そうこなくちゃな」

 

 凶悪に、且つ鮮烈な笑みを浮かべる爆豪にゴジータも嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「それじゃあ、そんな努力家の爆豪君に朗報だ。これから俺達は新幹線に乗ってとある街へ向かう。その間、存分に体を休めるといい」

 

「……いらねぇ世話だ」

 

「強がんなよ。個性を酷使して痛むんだろ、手とか腕とか」

 

頑張っている爆豪を労おうと、次に向かう街には新幹線を使う。そんな自分に気遣っての言葉に爆豪は突っぱねたかったが、ゴジータが言うように爆豪の腕や手は個性の酷使により限界を迎えつつある。それを見抜いた上で、ゴジータは爆豪の肩を叩く。

 

「俺も、久し振りに文明の力に肖りたくなってな。ほら、とっとと行くぞ」

 

「くそ、分かったから引っ張るんじゃねぇ! ………いや持ち上げようとすんな!?」

 

 子供扱いをしてくるゴジータに、爆豪は終始不満そうにしていたが、明確な実力差もあることから、爆豪はゴジータにされるがままだった。

 

「で? 結局何処の街に行くんだよ」

 

結局、自分達は何処に向かうのか。そんな素朴な疑問に対して………。

 

「ちょっと、例のヒーロー殺しを捕まえるのに保須市までね」

 

サラッと、そんな事を口にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────で、何でテメェまで此処にいんだよデクゥッ!?」

 

「ヒィッ! 完全なる偶然だよかっちゃん!」

 

「いちいち威嚇すんな」

 

「ゲプゥ!?」

 

「かっちゃん!?」

 

 そして、保須市に向かう為に新幹線に乗り込んだゴジータと爆豪だが、其処で思いがけない出会いを果たしていた。乗り込んだ一般車両の中、偶然空いていた席に座ろうとした時、前の座席にはデクこと緑谷出久が保護者らしき老人と座っていたのだ。

 

偶然の出会いに当然ながら噛み付く爆豪だが、保護者であるゴジータがそれを遮る。軽めの手刀(チョップ)を脳天に叩き込み、物理的に黙らせると沈黙した爆豪を問答無用で席に座らせる。

 

その、如何にも手慣れた手際のゴジータに緑谷が戦慄していると、今度は隣にいた老人が顔を覗かせる。

 

「ほう、お前さんが噂のゴジータか。成る程、若いのに良い面構えをしていやがる」

 

「アンタは?」

 

「ワシは“グラントリノ”、そう名乗れば分かるか?」

 

「………あぁ、アンタが相棒(オールマイト)の言ってた鬼の様に恐ろしい教官殿か」

 

「はは、俊典に聞きたいことがまた増えたな」

 

 ケラケラと笑っているが、目は全く笑っていない。どうやら本当の意味でオールマイトの言う通りだと理解したゴジータは、自身の失言を内心で相棒に謝った。

 

その後、他の乗客達から理解を得て折角だからと椅子を向かい合わせる事にした二組のヒーロー達。周囲はNo.1ヒーローがいることに好奇心を隠せないでいるが、彼等の話が気になって話し掛ける余裕がない。

 

好奇の視線に晒されながらも平然としているゴジータは目の前の小さな老人のヒーローとの話に華を咲かせている。

 

「はは、流石のオールマイトも昔は若造か。アンタ程のヒーローなら、そう言われても仕方がないか」

 

「ま、この歳になれば大抵のヒーローなぞ小僧同然よ。マトモな修羅場を経験したことの無いひよっ子のヒーローばかりが目立つこのご時世、それでもNo.1の座をアイツから奪い取ったと知った時は驚いたがな」

 

「No.1という称号に興味はないが………まぁ約束もしたしな。当分の間はこの座を譲るつもりはねぇよ。折角のアンタの教え子から奪い取っておいて失礼な話だが」

 

「気にする必要はあるめぇよ、今お前さんが立っている場所は、他ならぬお前さん自身の力で勝ち取った場所だ。飽きたならとっとと退けりゃあいい、気負いすぎるなよ、若造」

 

「………そっか」

 

 不敵に笑みを浮かべる二人だが、会話の流れが進むにつれて二人の表情が変わっていく。グラントリノは教え導く教師のような顔で、ゴジータは柔らかな少年の様にそれぞれ笑う。

 

そんな神妙な会話の中、周囲の人間の誰もが口を出せずにいる一方で、緑谷と爆豪はこそこそと話をしていた。

 

(そ、それにしても凄いよかっちゃん。まさかNo.1の所で体験学習なんて!)

 

(黙れカス、話し掛けんな)

 

(ひ、酷い………でも、本当に凄いよ。あのゴジータと一週間でマンツーマンでいられるなんて、やっぱり色々と教えてもらってたりしているの?)

 

(…………あぁ)

 

 短いが、その返事には多くの意味が込められている。たった数日、しかしその数日は雄英だけでは決して埋められない濃い時間がこれでもかと詰め込まれていた。

 

それが分かるからこそ、緑谷も何も言わなかった。

 

しかし、爆豪が言いたいことはそれだけではない。

 

(クソデク、テメェは確かに強くなった)

 

(──────え!?

 

(個性が出てきて、超パワーを使いこなしつつある今のテメェは、確かにクラスの中でも頭一つ抜けてンだろうが………)

 

『自分に克て』 

 

思い返すのはNo.1ヒーローから受け取った薫陶。簡単なようで、実はとても難しい。爆豪にとって最も屈辱且つ苦痛を伴う選択、苦虫を噛み潰したように、泥水を呑み込むように言葉を吐き出しながら、それでも己の勝利の為に爆豪は宣誓する。

 

(それでも、俺が勝つ)

 

(──────)

 

 変わった。何がとは言わないし分からないが、確かに爆豪の中で何かが変わったのを緑谷は感じた。相変わらず凶悪な笑みを張り付けているが、それでもそこに以前のような自身を追い詰めた力みはない。

 

自然体、或いはそうあろうとする姿勢。いずれにせよこの短期間で恐ろしく成長を遂げているであろう幼馴染みに、緑谷は言葉に出来ない何かを感じた。

 

そんな二人を微笑ましく見つめるヒーロー二人、緑谷と爆豪、色々と危なっかしい所があるが、これで一つの区切りとなればいいなと、ゴジータが背凭れに身を預けた瞬間。

 

新幹線の壁が、何かによって砕かれた。瞬く間に広がる悲鳴、混乱は津波のように伝播し、車両の内部の乗客達がパニックに陥り掛ける。

 

更に、其処へ剥き出しの脳を晒す怪物────脳無が覗き込んでくる。恐怖と混乱に包まれる中、一人のヒーローが瞬時に反応し、これに対応する。

 

動いたのは、当然のごとくNo.1。

 

「シッ」

 

「◼️◼️◼️◼️◼️◼️ッ!?」

 

 狭い空間の車両内を動き、脳無の顔面を蹴り飛ばす。最小の動きで最大の効果を叩き出すゴジータに、乗客全員が魅せられた。

 

そんなゴジータに次いで反応したグラントリノが、止めと脳無を蹴り飛ばし、車両から完全に引き剥がす。直後、新幹線が停止したのを確認すると二人のヒーローは空いた壁から外に出る。

 

 外に出て、車両の天井部分に降り立った二人が目にしたのは……惨劇だった。

 

街が燃えている。悲鳴の声があちこちから上がっていて、炎と暴力が街を蹂躙している。

 

保須市。自分達が向かう筈だった街が大規模な災害を受けている。災害をもたらしているのは怪人脳無、それを認識したゴジータは、全身に白い炎を纏う。

 

「爆豪! お前は此処に残って乗客達を守れ!」

 

「あぁ!?」

 

「小僧、お前もだ! 此処で待ってろ!」

 

「そんな!?」

 

 尋常ではない事態だと即座に判断したヒーロー二人は、ヒーローの卵に待機命令を下して街に向けて飛翔する。グラントリノなるヒーローも飛べた様で、最初こそはゴジータと並走するが、次の瞬間には引き離されていた。

 

(これが……!)

 

ゴジータの実力。出会ってまだ一時間も経たない間柄だが、ゴジータの実力を目の当たりにしたグラントリノは、若いヒーローの援護から自分のやるべき事を模索する方へ切り替える。結果、行動を共にするよりそれぞれ対応した方が効率的だと判断し、歴戦のヒーローは一足早く現地に降り立つ。

 

そして、対するゴジータもグラントリノと同じ判断をし、結果最も脳無達が集まる場所へ降り立つ事にした。

 

「っ! アンタは────」

 

「ゴジー………」

 

 右も左も脳無だらけ。他のヒーロー達が苦戦するのを一瞥して認識した瞬間………風が走った。

 

そして、気付けば脳無達は倒れていた。市民を襲おうとした脳無、ヒーローを追い詰めていた脳無、他にも十数体規模の怪人達が、延焼している火災の炎と共に吹き飛んだ。

 

地に倒れ、動けなくなった脳無達。それらを見下ろすとゴジータは近くで駆け寄ってくる女性のヒーローに後処理を頼もうとして……。

 

彼女を抱えて、その場を跳躍。何が起きたか分からない様子の女性ヒーローに対し、ゴジータの目は冷たく女性の居た場所を見る。

 

其処には、白い無数の何かが地面を抉っている跡があった。直撃すれば致命傷は避けられない、殺意を込めての不意討ち。

 

着地し、女性ヒーローを地面に下ろすと、ゴジータは静かに振り返る。

 

「脳無ってのは、色んなバリエーションがあるんだな」

 

「────エへ、エヘヘへへ!」

 

「イタ、No.1、ヒーロー、イタ!!」

 

「強ソウ、強ソウ!」

 

「気持チヨ、ク! ナレソウ!」

 

 影から這い出る様に現れるのは四つの影、いずれも脳髄を剥き出しにした異形の怪物達。ゴジータというヒーローを前にして畏れる処か舌なめずりをしている怪人達に……。

 

「………え、お前ら喋れたの?」

 

ゴジータの口から出てきたのは、率直な感想だった。

 

 

 

 





「次回、雌型の脳無が恋に落ちる!?」

「恋はいつだってハリケーンッ!?!?」

「更に向こうへ、Plus Ultra!」


尚、予告は嘘です。


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