今回もあまり進展は無いかも。
故に初投稿です。
「クソ、飯田君てばこんな時に何処へ行ってしまったんだ!?」
燃え盛る炎、既に数多のヒーローが対処に当たっている中、飯田天哉の引き受け先であるノーマルヒーローマニュアルは、騒ぎの中ではぐれてしまった飯田の事を気に掛ける。
彼の兄、インゲニウムの事についてはマニュアルもメディアを通じて知っている。ヒーロー殺しのヴィランであるステインに襲われ、重傷者として今も大手の病院にて治療を受けているのだという。
恐らく、再起は絶望的。兄であるインゲニウムを尊敬している飯田天哉にとって、それは誰よりも受け入れがたい事実だろう。
きっと、飯田はステインを憎んでいる。奴を追い、復讐する為に自分の所に来たのだろうと、彼が自分の所へ来たがっていると知った時は、マニュアルはそう確信していた。
此処で彼を拒絶してしまったら、この先の彼がどうなるかなんて分からない。故にマニュアルは飯田を自身の事務所へ受け入れ、様子を見ながらそれとなく説得を試みる事にした。
一度だけ、マニュアルがインゲニウムとステインの事で追及すると、飯田は頑なに口を閉ざして表情を見せまいと顔を反らした。それを見たマニュアルはやはり今の飯田は精神的に不安定な状態であると察し、可能な限り側において見守ろうと思っていた。
そんな矢先に起きた今回の事件。既に街一つを巻き込んで起こっている争乱は多くのヒーロー達を駆り出し、対処に当たっているが……。
「くそ、このヴィラン手強いぞ!」
「何処から現れたんだコイツら!?」
現れる幾体もの怪人ヴィランである脳無の進撃が止まらない。複数人のヒーローを纏めて吹き飛ばす様はヒーロー側にとって悪夢に思えた。このままではじきに此方が押されてしまい、更に被害が拡大してしまう。
飯田を探しに行きたくても、目の前の状況がそれを許さない。何とかしてこの窮地を乗り越えねばと、マニュアルもまた目の前のヴィランに集中した時。
「あ、そこ危ないぞー」
「へ? ドワァァッ!?」
突然、頭上から物凄い勢いで何かが降ってきた。マニュアルは横に飛び退いたお陰で間一髪逃れたが、ヒーローの言葉など解する知能の無い脳無は落下してきた何かに巻き込まれ地に沈む。
あれだけ手こずった脳無が一瞬で倒された事にあ然となるマニュアルと周囲のヒーロー達だが、砂塵の中から現れるヒーローによって場の空気は弛緩する。
「やれやれ、四体纏めて襲ってきたのは良いものの、肝心な連携がお粗末とか笑い話にもなんねぇぞ。唯でさえ被害気にして手を抜いたってのに………三分も掛からねぇとか、お前らの製造元半端な仕事し過ぎだろ」
「ア、アァァァ………」
「コンナノ、キイテナイ、キイテナイィィィ……」
「キモチヨクナイ、キモチヨクナイヨォォォ……」
「」
No.1ヒーロー、日本のヒーロー界の頂点に君臨しているヒーローが其処にいた。両手には他の脳無とは明らかに異なる風貌の脳無の首を鷲掴みにし、その足元には同じ二体のヴィランが踏みつけられている。
その内一体は完全に沈黙しており、他の個体も戦意が根刮ぎへし折られている。その風体と人語を話す特異性から、明らかに性能の異なるヴィランである事はマニュアルを始めとした他のヒーロー達も十分理解できる。
理解できないのは、そんな個体のヴィランを複数相手に圧倒している目の前のゴジータだ。彼の手に捕まっているヴィラン達は総じて他の個体より手強い筈、唯でさえヒーロー数人がかりでやっとの相手を、このヒーローはたった一人で圧倒し、捕らえてみせた。
これがNo.1の【超】ヒーロー、ゴジータの実力か。周囲のヒーロー達が騒然とするなか、マニュアルはゴジータへ一歩進んで近付く。
「ゴジータ、手を貸して欲しい! 俺の所にいる雄英の生徒の姿が見えないんだ!」
「え、そうなの?」
「あぁ、恥ずかしい話だが俺一人の力じゃこの状況を打破できない。だから頼む! アンタの力なら……!」
自分の無力さを棚上げしての他人頼み、それはヒーローとしてあるまじき姿だが、同時に人として間違っていない判断。自分の力量を知っているマニュアルは、自身の名誉よりも預かっている雄英の生徒の安全を優先した。
天秤に掛けずとも導き出したマニュアルの決断、恥も外聞も捨てて頭を下げる彼に……。
「おう、任せておけ。はぐれた場所へ案内できるか?」
「ッ!」
No.1ヒーローもまた、即答で了承する。
「あ、でも待って、その前にコイツらふん縛らないと……おーい、誰か捕縛系統の個性持ちいない?」
「あ、そ、それなら俺が!」
「助かる。一応全員の戦意をへし折っているけど、何も出来ないように丹念に縛り上げてくれ。んじゃ、そっちの用件を済ませようか」
「あぁ、頼……!?」
黒い四体の脳無を近くのヒーロー達に預け、ゴジータはマニュアルの下へ駆け寄る。頼もしい援軍に安堵しながら、飯田とはぐれた場所まで引き返そうとした時、マニュアルとゴジータの前に脳無達が立ち塞がる。
「こ、コイツらまだこんなにいたのか!?」
無尽蔵と思われる脳無の群れ、ゴジータが戦った黒い奴とは違うが、それでも一体一体が厄介な
「ほら、こんな奴らに後退っている場合じゃないだろ。アンタは雄英の生徒とはぐれた場所に案内することに集中してくれ」
「で、でもこんな数相手じゃ……!」
「大丈夫。何故って?」
多勢に無勢、覆せない脳無の数に足踏みしているマニュアル。そんな彼の不安を吹き飛ばすように……。
「この、俺がいるからだ」
黄金の炎を纏い、金髪碧眼の戦士へと変わる。
「さぁ、悪いがこっちは急いでいるんだ。────一瞬で終わらせるぞ」
知性もなく、理性も失われた脳無の群れが襲い来る。奴等を前にゴジータは不敵に笑みを浮かべ……次の瞬間、ゴジータは向かってくるすべての脳無に打撃を叩き込み、沈黙させた。
◇
(我ながら、運が悪い!)
兄からのアドバイスを受け、職場体験先はマニュアルの事務所にした飯田はこの日、自分の運の悪さを心底呪った。
兄も無事に快復し、真摯な気持ちで待ち望んでいた職場体験。ただそこはヒーロー殺しステインが現れ、兄を襲った保須市という因縁ある場所だった。
当然ながら、体験先であるマニュアルに復讐目的で自分の所に来たのではないかと怪しまれたり、実際に質問されたりもした。確かにステインには言いたい事もあったし、思う所は多々あるが、日々筋トレに明け暮れている兄を見て、復讐やら恨み等の気持ちは殆んど持ち合わせてはいない。
ただ、幾ら自分がそう思った所で相手に伝わる事はなく、寧ろ兄に関する話はヒーロー委員会の公安から固く口止め(懇願とも言う)を受け、安易に話せなくなっている。
故に、飯田は口を閉ざして顔を背ける事しか出来なかった。罪悪感で一杯になる飯田、そんな彼を見てより疑惑を深めるマニュアルという色んな意味で厄介な悪循環が出来上がった瞬間である。
自身に疑惑の視線が向けられているのを知った飯田は、真摯に職場体験に向き合うことで信頼を勝ち取ろうとした。常にマニュアルの目の届く範囲に控え、彼の許可を得て個性を使う。
使う内容も迷子の子供を手を引いて親元へ届けたりという、兄が信条としている行動を率先して活動していった。
いつか自分も堂々とインゲニウムの名を受け継ぎ、その名に相応しいヒーローになるのだと、そう改めて決意した矢先だった。
燃え盛る街並みと暴れる脳無達。保須市に突如として訪れた危機、当然飯田はマニュアルの指示に従い、避難誘導の手伝い位はしようと考えていた。
しかし、この騒ぎに巻き込まれてすっかりマニュアルとはぐれてしまった飯田は、彼のヒーローを探しながら自分のすべき事を模索する。困っている人はいないか、何処かで泣いている子供はいないか。名を継いでいないものの、インゲニウムとして誰かを助けようと奮戦している飯田の耳に……ふと、ある声が聞こえてしまった。
それはくぐもった声、痛みと苦しみに悶えて息を吐く人間の声だ。騒ぎの中でもやけに耳に届くその声に振り返ると………そこは人気の無い路地裏へ続く道。飯田は嫌な予感を感じた。
人は、明らかに不味い状況に対面すると大抵は足を止めてしまう。今回もそれに該当し、生き物としての本能が飯田にその先へ進むなと警告している。
だが、助けを求めている人がいるかもしれない。この騒ぎに巻き込まれて怪我をして、身動きが出来ない人がいるかもしれない。ならば、インゲニウムとして見過ごす訳にはいかない。
少し覗くだけ、覗いてみて、誰もいなかったらすぐ戻る。そう自分に言い訳をしながら暗い路地裏の道を進むと……。
「く……そ……」
「………はぁ、お前も、この社会に蔓延る偽者。粛清対象だ」
「─────ッ!」
いた。ボロボロの格好に赤いマフラーと目元を隠す布のマスク、メディアでも取り上げられているヒーロー殺し、ステインがヒーローの口元を抑えて刃を突き付けている。
何でよりにもよってこの街にいるのか、困惑と疑問が浮かんでくる飯田だが、既に状況は差し迫っている。此処で自分が動かなければ、待っているのは彼の死だけだ。
彼を押さえ込んでいるヒーロー殺しステイン。奴の敵意と殺意は本物だと、飯田はステインの殺気を目の当たりにして確信する。奴は自分の目的の為なら、殺しすら厭わない本物のヴィランだと。
ならば、自分のやるべき事は一つ。内心で気に掛けてくれているマニュアルに謝りながら、飯田は己の脚に力を込める。
相手はプロのヒーローである兄ですら打ち負かす怪物、万が一にも自分に勝てる要素はない。それならと、僅かな可能性に掛けて飯田は個性である“エンジン”に火を入れる。
「───なんだ? エンジンの音?」
「その人から────」
「ッ!?」
「離────れろォッ!!」
フルスロットルからの強襲、死角を突いての飯田による渾身のドロップキックは、見事にステインの虚を突いた。全体重を乗せた一撃はヒーロー殺しを退け、彼の手に捕まっていたインディアン風のヒーローを解放させた。
「大丈夫ですか!? 動けますか!?」
「だ、ダメだ。体が………動かない。君も、逃げろ」
ぐったりと地に倒れ、動けないヒーローを見た飯田はステインによる個性かと察する。
どちらにせよ此処にはいられないと、未だ倒れるステインに目もくれず、飯田はヒーローを抱えて路地裏からの脱出を試みる。
格上のヴィランを相手に飯田が選んだのは、ステインの打倒ではなく、とらわれたヒーローの救出。ヒーローとしての本質を雄英から学んでいる飯田は、ステインを倒すことより目の前の苦しんでいる誰かを助けることを選んだ。
今の自分の勝利条件は、この人を連れて人気のある場所まで逃げること。その事だけに意識を集中させ、一気に路地裏を駆け抜けようとした時………突如、自身の体が動かなくなる。
倒れ、地に這いずる飯田。一体何が起きたのだと混乱する彼の頭上から………奴の声が聞こえてくる。
「────はぁ、相手と自分の力量を図った上での一撃離脱。自分の個性を把握した上でのその選択………悪くない」
「ッ!?」
「だが、少々焦りが出たな。踏み込みすぎだ」
「ヒーロー、殺し!」
不気味な笑みを浮かべながら此方を見下ろしてくるヒーロー殺し。兄を襲い、今もなお社会に影を落とすヴィラン。奴の的確な指摘に悔しさよりも納得し掛けてしまう自分に腹が立ちながらも、飯田はこの状況を何とかするためにもがき始める。
「安心しろ。お前は殺さん。偽者の中でも時たま見掛ける本物の原石を砕く程、俺は見境なしではない」
「偽者……だと? 何を、言っているんだ!?」
「お前のような子供には分かるまい、今の社会の在り方を。ヒーローという存在を、客商売の手段として乱用している奴等。そんな歪な偽者を持て囃す人々、その結果今の歪んだ社会が生まれた」
ヒーローとして合格点らしい飯田に気持ちを良くしたのか、ニヤニヤと笑みを浮かべながら語り始めるステインに、飯田はただあ然となった。ヒーローを、社会を正す。そんな事を本気で望んでいるステインの狂気に当てられ、飯田は顔を青ざめさせていく。
「ヒーローとは、偉業を成し遂げた者にのみ許された称号!! 断じて、他者を喜ばせるだけの道化に与えられるモノではない!」
「だったらなんで、何で兄さんを襲った!? お前から見れば兄さんも偽者だって言うのか!?」
「………なに? 兄だと?」
「僕は、ターボヒーローインゲニウムの弟、飯田天哉! 答えろヒーロー殺し! 僕の兄は、泣いている子供の手を引いてあげるヒーローは、お前から見て偽者と呼ぶのか!?」
「………………」
涙を流しながら訴えてくる飯田に、今度はステインが口を閉ざした。何かを思い返しているのか、今まで浮かべていた笑みは消え、静かに見下ろすステインに飯田は睨み返している。
「………それでも、誰かがやらなくてはならない。この間違った社会を糺し、真のヒーロー………オールマイトやゴジータの為に、あるべき在り方を取り戻す為に!!」
どんなに言葉を重ねても、どれだけ訴え掛けても、ヒーロー殺しは止まらない。刃毀れしている刃を手に、倒れているヒーローに歩み寄る。
「や、止めろ!」
「俺を止めたければ、お前が俺を殺しに来い。俺が求めるのは、真に強いヒーローのみ」
「止めろォォォッ!!」
振り上げた刃が鈍く光る。飯田の制止の叫びも虚しく、凶刃がヒーローに振り下ろされた時。
「
「死ねェッ!!」
拳と爆発が、ステインを吹き飛ばした。突然の事に驚く飯田。彼の前には同じクラスで共にヒーローとしての道を歩く学友達。
「助けに来たよ、飯田君!」
「ぶっ飛ばしに来たぜぇ、イカれ野郎!」
緑谷出久と爆豪勝己が其処にいた。
ヴィラン:ステイン。
真の意味でヒーロー社会を取り戻す為に活動する過激派。
ゴジータとオールマイトを神聖視しており、なんなら信者みたいな感じになっている。
某超激レアカードを二枚とも所持し、今は隠れ家にケースに入れて保管している。
いつか二人のサインを貰えたら良いなと夢見る一方、そんな日は二度と来ないと自覚している為、現在は殆んど隠れ家に戻っていない。