超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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エンデヴァーに焼かれる夢を見た。

そんな訳で初投稿です。

因みに、シンリンカムイはデビュー前です。


記録3

 

 

 

 “ヒーロービルボードチャートJP”。

 

事件解決数、社会貢献度、国民の支持率などを集計し毎年二回全国に向けて発表される現役ヒーロー番付け。

 

つまり、このチャートランキングの上位に名を刻んだ者程、人々に笑顔と平和をもたらしたヒーローなのである。

 

 そして、その年最初のランキング発表の当日。発表される会場には異例の事態が起きていた。

 

これ迄の発表では、会場にヒーロー本人達が登壇する事は無かった。しかし、先の巨大隕石の件以降ビルボードチャートは大いに荒れ、この事を色んな意味で重く見た各関係者達が意を決して行われた異例の発表会なのである。

 

既に、会場にはトップ10のヒーロー達が君臨していた。

 

No.10ヒーロー“ヨロイムシャ”

 

No.9ヒーロー“ウォッシュ”

 

No.8ヒーロー“クラスト”

 

No.7ヒーロー“ミルコ”

 

No.6ヒーロー“エッジショット”

 

No.5ヒーロー“ベストジーニスト”

 

No.4ヒーロー“ホークス”

 

 いずれも、日本の平和維持と人々の安寧に貢献し続けた選りすぐりのヒーロー達。錚々たる面々が登壇していく中で、中央部分だけが不自然に空いている。すると、穴の底から一つの舞台が競り上がってきた。

 

『────皆さん、今回のヒーロービルボードチャートは、正に嵐の如くでした。誰もが予想出来ていたランキング、今回も然程代り映えはしないのだと、誰もが信じ、疑いませんでした』

 

徐々に姿を現す三人のヒーロー、彼等の姿が顕になるにつれて、司会進行役の男性の声が震えていく。

 

『故に誰も、そう誰もが! この事態を想像出来ませんでした! 誰が予想出来る!? 誰が予見できた!? 少なくとも、私には頭に描くことすら出来ませんでした。ですが、現実にそれは起きた。………それでは、一人ずつご紹介しましょう!!』

 

『No.3! フレイムヒーロー、“エンデヴァー”!!』

 

 一人、炎を纏う大柄の男が前に出る。その顔は燃える炎の所為かよく見えない。だが、その事に触れる者はいなかった。………いるわけがなかった。

 

『長年座していたNo.2、転げ落ちた衝撃は彼自身が一番強く、重い。それでも私は、彼の一ファンである私は信じたい。いつかまたNo.2へと返り咲き、更にその向こうへ届くのだと!!』

 

空気が重苦しくなる。本来ならば頑なに公の場に出たくはない筈なのに、それでもこの場に留まっているのは、偏にこの先の展開を無視できない為か。

 

 空気が静まり返る。エンデヴァーの紹介も終わり、いよいよ次が回ってきた。日本中の………いや、世界中が注目しているのはこの時の為。

 

絶対不動のNo.1、それを頂く何者かを。

 

『………いよいよこの時が来ました。正直、私自身震えが止まりません。長年この仕事を続けて来ましたが、今日だけはどうか新人の様なミスをする事をお許しください』

 

司会の男性の声が裏返る。緊張で冷静さを欠くなど、長年この仕事をしているのなら許されざるミスだ。

 

しかし、今は誰も咎めはしない。何故ならば、誰もが同じ思いを抱いているのだから。

 

『それでは、改めてご紹介致しましょう。─────No.2!! ヒーロー、平和の象徴“オールマイトォォォォッ”!!

 

 拳が天を衝く。人が認め、他のヒーローが認め、ヴィランすら認めざるを得なかった最強にして最高のヒーロー、オールマイト。彼の登壇により場の空気は最高潮に盛り上が……らなかった。

 

拍手はある。喝采も、惜しみ無い賛辞も、しかし誰も今はその口を固く閉ざしてしまっている。

 

────決まっている。全ては、彼をNo.1の座から引きずり下ろしたとあるヒーローに注目しているからだ。

 

それは、登壇している他のヒーロー達も同様。一方で二名ほど新たなNo.1ヒーローに心当たりのある者はニヤニヤとその時を待っていた。

 

『────さぁ、遂に此処まで来ました。我等が平和の象徴を超えた新たなNo.1ヒーロー、先の巨大隕石破壊の立役者であり、世界中から支持を得た謎のヒーロー。独立してからの活動期間は僅か1ヶ月、ついこの間まで殆どの人達が認知してこなかった無名のヒーロー』

 

No.1 【超】ヒーロー!! ゴジィィィタァァァァッ!!

 

 照明が一人に集約される。現れた一人のその男は、オールマイトやエンデヴァーに比べれば頭一つ分程小柄で、身に纏っている覇気も並みのヒーローのそれ、一体この黒髪のヒーローの何処に注目できる余地があるのか。

 

そんな、誰もが懐疑的に見つめて来るなかで渦中の中心人物であるゴジータは………。

 

(あば、あばばばばばばば………)

 

 混乱の極みに立たされ、頭の中が真っ白に染め上がっていた。

 

(どうして、どうしてこんなことに!? 助けてゴジータ!!)

 

お前じゃい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あぁ、今すぐ空を飛んでこの場から逃げ出したい。

 

どうも、修行鍛練ばかりでマトモに公に出る練習をしてこなかった中身陰キャの後藤甚田です。

 

何故、どうして自分はこの場にいるんだろう? 確か、事の発端はヒーロー委員会からの手紙からだった気がする。

 

ヒーロー委員会の人達はなんか人を値踏みしたりするから、最初は手紙を開けることすら抵抗があった。

 

すると、何処からか手紙の事を聞き付けた先輩が、折角だから受けてみろよって言うから、仕方なく了承のサインを書いたんだっけ。

 

ここ最近書類仕事も多かったから、殆ど読まずにサインをした自分も悪いんだろう。………いやだってさ、先輩ってばやたらと急かせるんだもの。お陰で手紙の内容は殆ど分からずじまい。

 

で、後日やって来た黒服のニーチャン達に連れてこられてあれよあれよとこの会場に通されたと言うわけ。先輩、絶対これを狙ってただろ! あ! 今視線合ったのに露骨に逸らした! しかも笑ってやがる!

 

クソが! 以前世話になったからって言うこと聞くんじゃ無かった! 今度ケンタッ◯ーのフライドチキンを送り付けてやる!

 

 あぁ、どうしてこうなっちゃったんだ。俺はただ、穏やかなヒーロー活動を続けて、慎ましく生きて修行に明け暮れる日々を送りたかっただけなのにィ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先ずは、No.1ヒーロー、おめでとうございます」

 

「っ! あ、あぁ、ありがとうございます」

 

 ヒーロー達が登壇している場に、一人の女性が近付いてくる。どうやらヒーローの一人一人にインタビューをしていた様で、内心現実逃避を続けていたゴジータはその事に全く気付けなかった。

 

視界にマイクが飛んできた事で漸く気付き、美人アナウンサーにドギマギしながら応えてしまう。

 

だが、幸いにもその事を指摘する者はこの場にはいなかった。

 

「ヒーローの活動期間は一年と1ヶ月、うちその一年はとあるヒーローのサイドキックを勤めていたそうですが?」

 

「ひゃ、ひゃい。先輩方にはいつもお世話になってましゅ………」

 

「「「──────────」」」

 

 

(─────────────か、)

 

「「「(噛んだァァーーーッ!!??)」」」

 

 なんと言う事でしょう。ゴジータの皮を被ったクソ陰キャは、あろうことか公衆の面前で噛んでしまった。これにはエンデヴァーも愕然、オールマイトは微笑ましそうに見守っているが、鳥と兎のヒーローは今にも吹き出しそうにしている。クソが。

 

既に、会場の空気は笑いが渦巻き掛けている。主に嘲笑の方面で。ネット上ではオールマイト信者がこれでもかと叩き出し、既にお祭り規模の炎上に発展してしまっている。

 

司会側もこの冷めきった空気を何とかしたいが、本人が既にどうしようもなくなっている。幾ら力がゴジータとなっても、その性根は前世から引き継いだ生来のモノ、千人規模の視線を前にこれまで碌に公に出てこなかった人間が、上がらないというのは土台無理な話だった。

 

その内、誰もが彼に興味を示さなくなっていた。ヨロイムシャは勿論ながら、ウォッシュも既に興味を失くし、視線を逸らしている。多くのヒーロー達にも未熟なヒーローに呆れの空気が充満しつつあった。

 

 しかし、だからと言って司会側も今更止めるわけには行かない。緊張と現実逃避で白目を剥いているゴジータから何とかしてマトモなコメントを得ようと、マイクを突き出した時。

 

一人のヒーローがそれを遮った。

 

「失礼、少しマイクを借りてもいいかな?」

 

「お、オールマイト?」

 

 オールマイト。平和の象徴と謳われ、多くの人々とヒーローから絶大の信頼と実績を持つ、最高のヒーロー。

 

彼のスタンドプレーを咎めるものはいない。他ならぬオールマイトの言葉が貰えると判断したアナウンサーは、手にしていたマイクを一旦預けて壇上を後にする。自分の我が儘に付き合ってくれた女性アナウンサーにフォローの手振りも忘れずに済ませると、今度は件の人物であるゴジータへ向き直る。

 

「HeyHeyHey!! なんて様だよヒーロー! そんなんでNo.1だなんて、一体誰が認めるよ!?」

 

「ッ!?」

 

 突然のオールマイトによる挑発を込めた怒声、会場全体が震えると思える程の声の振動に、周囲の人間が震え上がる。

 

当然、それはゴジータにも通じた。突然の怒声に困惑しながらも、それでも緊張状態から脱したゴジータはその目を嘗てのNo.1に向ける。

 

「ゴジータ。ヒーロー活動の短い君は、運であれ実力であれ日本のヒーローのトップの座に君臨している。今後、君の背中を目指して多くのヒーローが追い抜こうとするだろう。当然、私もその内の一人だ」

 

「否応無く。君は全ての人々、全てのヒーロー、そして………全てのヴィランから狙われる立場となった。だからこそ聞こう」

 

「君にとって、ヒーローとはなんだ?」

 

「───────」

 

 圧が放たれる。今までNo.1の座に座り続けた男からの、本気の圧力。その余波を受けて現地にいる多くのヒーロー達が尻込みする一方、一番その圧力(プレッシャー)を受けているだろうゴジータは、純粋に驚いた様に目を見開いていた。

 

ゴジータ─────()()()()にとって、ヒーローとは何なのか。それは、きっととっくに決まっていて、だからその答えに行き着くのはある意味当然とも言えた。

 

「─────人は、屈する者だ」

 

「─────」

 

「悪意に、暴力に、権力に、理不尽な現実に。打ちのめされ、膝を折る」

 

 オールマイトは、茶化すこと無く静かに聞いている。

 

「悔しくて、悲しくて、辛くて、苦しくて、もうダメだと、諦めるのが普通だ。それが当然なのだと、俺は知っている」

 

「けれどその中で、それでも立ち上がれるものがいることも、また知っている。もしもヒーローになるのに条件があるとするなら、きっと其処なんだと俺は思う」

 

 嘗て、男はそれを見てきた。幾度となく現れる強敵、一人では決して敵わない怪物達。何度も負けて、何度でも立ち上がる。自らを決してヒーローとは認めない彼等だが、それでも男にとっては彼等こそが英雄(ヒーロー)なのだ。

 

「だが、現実は非情だ。ありとあらゆる壁が立ちはだかり、立ち上がった君を再び追い詰めるだろう。それでも君は立ち上がるだけの者をヒーローと呼ぶのかい?」

 

オールマイトは敢えて問う。これは、必要な事なのだと。No.1に一度でもなってしまったら、その重責に耐えねばならない。ヒーロー活動一年弱のヒーローに務まるのかと、嘗てのNo.1にはそうしなければならない理由があった。

 

理想を体現するのか、それとも現実的に示すのか。それを遠巻きに訊ねてくるオールマイトに対し、その意図を知ってか知らずか、ゴジータは不敵な笑みを浮かべる。

 

「現実という壁は、可能性という扉で破壊して抉じ開ける。何度でも、何度でも。泥にまみれ、涙鼻水を垂れ流しても、立ち上がって壁にぶつかれば良い」

 

「何故なら、壁を壊した先に────無敵の自分()が、そこで待っているのだから」

 

 気付けば、オールマイトは笑っていた。

 

「ならば聞こう、No.1ヒーロー! 其処で君は何を成し遂げる!?」

 

「何だかんだ言ったが、結局の所俺に言えるのはこれだけだ」

 

 炎が舞い上がる。キラキラと輝き、ギラギラと目映い、光煌めく黄金の炎を纒い、黄金の戦士(ヒーロー)はオールマイトからマイクを又借りする。

 

「──────刮目せよ」

 

それは、全てに対する宣戦布告だった。全ての見ている人々に、全ての目にしているヒーローに、そして………全ての暗躍しているヴィランに。ゴジータは宣戦布告をしたのだ。

 

静まり返る空気、唖然としている観客達の様子を前に我に返ったゴジータ(後藤甚田)は、自分の言葉を振り返り………。

 

(し、しまったーーーっ!! つい何となくそれっぽい事を言ってたら場の空気が死んだーー!!)

 

 再び悶絶、からの大後悔。ヒーローとは何ぞやなるオールマイトからの禅問答についそれっぽい事を言ったつもりでいるが、全然問いの答えになっていなかった。

 

これが、頭を空っぽにして夢だけを詰め込んだ者の末路か。静まり返る会場の空気に、いよいよ本気で逃げ出すことを考えたゴジータだが………。

 

ふと、拍手が聞こえた。見ればオールマイトがパチパチと手を叩いている。それに伴い、会場からもチラホラと拍手の数が増え始めた。

 

 其処には、四人の猫なヒーローがいた。

 

 其処には、眼鏡を掛けたヒーローがいた。

 

 そこには、黄色いマフラーを着けた年老いたヒーローがいた。

 

エンデヴァーを除いた登壇しているヒーロー達もゴジータの言葉に納得したのか、惜しみ無い拍手を贈っている。

 

軈て拍手は喝采となり、喝采は嵐となってゴジータに叩き付けられる。そして歓声が爆発し、これ迄の静寂が嘘のように大歓声となっている。

 

「かっけぇよゴジータ!」

 

「私、ファンになったかも!」

 

「俺も、頑張ろうって気持ちになれたよ!」

 

 まさかの掌返し。しかし、それを咎めるものはやはりいない。予想していなかったゴジータの答え、オールマイトからの問いに対しても崩さなかった堂々とした佇まいに惹かれ、大衆達はゴジータに注目し始めた。

 

ただ、当の本人たるゴジータは未だ戸惑いの中にいる。

 

(え、えぇ? なにこの歓声、え? 俺はどうすればいいの!?)

 

生まれて初めて体験する拍手喝采の嵐、前世を含めても経験したことのない事態を前に、再びパニックに陥っていると。

 

「さぁ、皆に応えてやれよヒーロー! 今日から君が【No.1】だ!!」

 

オールマイトがゴジータの腕を掴み、天へ掲げる。それに伴って歓声は更に爆発し、会場全体を震わせていく。

 

嘗てない体験、経験を前にして………。

 

(もう、訳が分からないよ)

 

ゴジータは今度こそ、現実逃避の海へと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無敵の────自分」

 

 その日、一人の少年は立ち上がった。テレビの中で堂々と佇む新たなNo.1に、くせっ毛が特徴的な緑髪の少年は、その言葉を何度も反芻していた。

 

転んでも良い、泣いても良い、泥だらけになって、挫けても良い。それでも立ち上がれば、それだけで人はヒーローになれる。

 

勿論、それが理想論なのは分かっている。でも、それでも………。

 

「母さん、ゴメン! ちょっと走ってくる!!」

 

「い、出久!?」

 

ジッとなんて、していられなかった。

 

少年は走った。転んでも、転んでも、傷だらけになっても、無意味だと分かっていても、涙を滲ませながらひたすら走り続けた。

 

だって、言われた気がしたんだ。こんな僕でも、無個性な自分でも、ヒーローになれるんだって、そんな自分を信じても良いのだと、そう言われた気がしたから。

 

 この日から、少年は憧れるだけだった自分から卒業し、最初の一歩を踏み出した。

 

 

 

 





ガワはゴジータだけど中身は陰キャ気味な主人公。

こんなのゴジータじゃないと思った其処の貴方、うん。その感想は全く以て正しい。

だからどうか見逃して欲しい。お願い!



オマケ。

「ホークスさん、なんかゴジータから荷物届きましたよー?」

「え、マジで? 中身は?」

「ケンタッキーフライドチ◯ン」

「─────何で?」

この後、サイドキック達と一緒に美味しく頂きました。

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