超なオイラのヒーロー記録   作:アゴン

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なんとか2部7章クリアしましたので初投稿です。


記録33

 

 

 

 

 天下無敵のスーパーヒーロー。それがゴジータに対する世間の評価である。あらゆるヴィランを苦戦する事なく圧倒し、あらゆる災害から人々を守るその姿は、まさにNo.1ヒーローに見合う実力を有していた。

 

 オールマイトとは異なるが、オールマイト以上のヒーロー。若さ故に色々と未熟な所が目立つも、それすらも愛嬌として人々に受け入れられていた。

 

そんな、色んな意味で人気絶頂であるゴジータは………。

 

「ほーん、コイツがゴジータのサイドキック候補ねぇ? ほーん」

 

現在、メチャクチャ居たたまれない気持ちで自宅のソファーに座り込んでいた。ドスの利いた低い声を出しているのは何故か自分の隣に腰掛けているトップヒーローの一人であるミルコ。向かい側のソファーに座っているジェントルとラブラバは、突然のトップヒーローの訪問に冷や汗ダラダラになっていた。

 

(ちょっとー! どういう事なのよ! どうしてここにトップヒーローのミルコがいるのよ!? どうしてあんなに不機嫌そうにしているのよ!?)

 

(知らねぇよ! 帰ってきた時には既に家の前にいたんだよ!)

 

(何で家に招き入れてんのよ! 普通に締め出しなさいよ! No.1ヒーローなんでしょ!)

 

(バカ言うな! んなことしたら玄関ごと蹴り飛ばされるわ! あの人は俺がNo.1になる以前から世話になっている人だぞ、恩義的にも難しいわ!!)

 

 ギロリとジェントルを睨み付けているミルコの横で、コソコソと話し合う二人。どうしてここにミルコがいるのかと問い詰めてくるラブラバだが、そんな事はゴジータ自身が知りたいところだ。

 

 とは言え、このまま何も言わないでいては埒が明かない。ミルコの来訪の真意を知る為、あと睨まれ続けているジェントルが可哀相だからと、ゴジータは不機嫌さを全開にしているミルコに声を掛ける。

 

「────というか、何でミルコは俺の家を知ってんだ? 一応、機密扱いになっている筈だろ?」

 

 ヒーローというのは、その役職柄恨みを買ったヴィランに狙われやすい。故にヒーロー業に勤しむ者達の個人情報はヒーロー委員会によって守られ、保護されている。

 

ゴジータの脳裏に以前自分の情報を売った根津校長の顔が甦るが、彼は人徳で知られる個性社会きっての人格者。相手がナイトアイという真面目の前にクソが付く程の人物だから、根津校長同伴という事でゴジータの家に来られた。

 

ナイトアイに関しても、そういう秩序を乱すことを心の底から軽蔑している彼が、一時の感情で他人の情報を売る真似はしない………筈!

 

では、一体どうやって? 不思議に思うゴジータが訊ねると、一度だけミルコの視線は彼に向けられる。

 

「匂い」

 

「───────」

 

 マジで? と、あ然となるが、ミルコの個性は“兎”。兎の様な強靭な足腰でトップヒーローに至るまで鍛え上げてきたミルコであれば、全国を股にかける事など造作もない。

 

加えて元から野生児染みた彼女なら、嗅覚でゴジータの家を特定する事くらい………いや、やっぱ納得出来んわ。

 

 しかし、言い切っているミルコの様子に嘘はなく、流石に恥ずかしいのか頬が若干紅くなっている気がする。ラブラバはそんなミルコからの漂うラブの香りに「まっ」と頬を手で覆うが、ゴジータ本人はそんな機微に気付く事なく、自分の体を嗅いで臭いを確かめていた。

 

「………まぁ、アンタが俺の家を特定した理由は後で問い詰めるとして、用件は? ただ顔を見せに来ただけじゃないんだろ?」

 

「────お前、本気でコイツ等と組む気か?」

 

「あぁ?」

 

先程の態度とは打って変わって、小さく絞り出すように言葉を吐き出すミルコにゴジータは戸惑う。何故ミルコがそんなことを気にする? 確かに以前から何かと理由を付けては自分とチームアップの要請をしてきたが………。

 

何故、自分に固執するのか。【ラビットヒーロー】ミルコは基本的に単独で動き、単独で活躍する色んな意味で独立したヒーローだ。そんな彼女が何故自分にこだわるのか、ゴジータには理解できなかった。

 

「………組む、というか俺の監視下に置くだけだぞ? チームアップじゃなくてサイドキックだ。あくまでプロのヒーローになるまで俺の部下として扱うつもりだけど………」

 

ミルコの言う“組む”というのがチームアップの事を指すのなら、それは違うと訂正する。あくまで二人はプロのヒーローになるまでの預かりであって、正式な相棒ではない。あくまで自分の監視下におくことで更正する事を目的とした間柄だ。

 

 故に、ゴジータ本人と世間が認めたらジェントルとラブラバは晴れて自由の身となる。尤も、本人達がヒーローになった後もサイドキックとしてゴジータの下で活躍したいと言うのなら話は別だが……。

 

 組む相棒というより、部下として扱う。そう訂正するゴジータに……。

 

「……………」

 

ムスーと、何処か納得したくない様子のミルコにゴジータは頭を悩ませた。頬を膨らませて見るからに拗ねているミルコ。年上の癖に子供みたいな態度の彼女に一体なんと言えば納得してくれるのか、頭を悩ませていると。

 

「………あー、じゃあミルコも審査員として参加する?」

 

「あ? 審査?」

 

「そ、このジェントルって奴は個性的にも便利だし、今後ヒーローとして活躍すれば多くの人達の助けとなる存在になるだろう。問題は説得力、コイツがヒーロー活動しても大丈夫って言える説得力が欲しいんだ」

 

「……………」

 

「現時点で協力してくれるヒーローはナイトアイ一人だが、明日にはホークス辺りに声を掛けるつもりだ。最低三人、その中にミルコが入ってくれれば世間に対して強い説得力の材料になる」

 

ホークスにはまだ了承を得てないが、彼とミルコの前でジェントルはヒーローとしての才覚が問われる事になる。相手がトップヒーローであることから難易度は大きく跳ね上がるが、逆にそれを乗り切り信頼を勝ち取れば、ジェントル・クリミナルは二人のトップヒーローから実力で信頼を獲得した事になり、それは否定的な世間や公安に対して力強い説得力にも繋がる。

 

頼む。と、両手を合わせて頼み込んでくるゴジータを一瞥し……。

 

「────わぁーったよ」

 

ミルコは渋々ながら了承した。

 

「その代わり条件一つな。次の活動日、一日私と組むこと、いいな!」

 

「はいはい、いつぞやみたいに俺を足にしたいのね。いや、いいけど」

 

「へへ、そうこなくちゃな!」

 

 人差し指を立ててがなるミルコにゴジータもまた苦笑いを浮かべて了承する。一日限定、しかし久し振りに正式に組める事を喜ぶミルコはこの日一番の笑顔を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、ホークスも協力してくれるという事でいいんだな?」

 

『うん、構わないよ。ゴジータが認めたジェントルってのがどんななのか気になるし』

 

「おし、なら予定が決まり次第連絡するよ。サンキューな」

 

『はいはーい。そんじゃ、連絡来る日を楽しみにしてるよ』

 

 既に日も落ち、夕食も終えた時間帯。庭先で一人ホークスと連絡を取っていた後藤甚田は電話の向こうで愉快に笑う先輩ヒーローに審査の参加を要請。これに二つ返事で了承してくれた【速すぎるヒーロー】に感謝しながら、ホークスとの通話を切る。

 

これで、公安から提示された最低限の人員は確保された。ジェントルを見定める為に必要なプロヒーローの三人の内二人はトップヒーロー。難易度的に大分高難易度(ルナティック)よりだが、それでも認めて貰えた時の恩恵は大きい。

 

動画撮影の準備を終えた時、その時がジェントル・クリミナルのヒーローとしての素質が問われる大一番である。今から楽しみだと、当日の事を思いながら家へ戻ろうとする甚田の視界に件の当人を見付けた。

 

「ジェントル………いや、今は弾柔郞か。どうした? 縁側に座り込んで」

 

 縁側に座り、一人空を見上げているジェントルこと弾柔郞。穏やかな表情で夜空の月を見上げている彼の横顔は確かに紳士的であった。

 

「────何だか、夢を見ているようで。眠ってしまったらこの夢が覚めてしまうようで……何だか眠れないのさ」

 

「意外と詩人」

 

揶揄するゴジータに微笑む弾柔郞だが、彼自身そう思っても仕方がない。学力が低く、昔から身の程知らずと罵られ、これ迄小悪党なヴィラン擬きとしか見られてこなかった自分のまさかの転機。

 

No.1に捕まり、見初められ、ヒーローとしての力を鍛えて貰えている自分は、きっともの凄く恵まれている事だろう。No.1ヒーローから鍛えて貰える日々は、弾柔郞にとって辛く、厳しく、そして楽しい毎日だった。

 

ラブラバと出会ってからも決して味わう事のなかった充足感。自分はまだヒーローを志しても良いのだと、そう言って貰えた事に飛田弾柔郞は救われたのだ。

 

そんな夢のような時間が、眠ってしまったら覚めてしまうのではないか。らしくはないセンチメンタルな気持ち、我ながら気色悪いなと飛田は嘲笑の笑みを浮かべる。

 

「阿呆、まだ念願のヒーローになってないってのに、何を終わった気でいるんだよ。そんなセンチになるのはせめて仮免を取ってからにしろ」

 

 そんな飛田の心情をゴジータは容赦なく一蹴する。何せ、これから飛田には三人のプロヒーローの監視の下で、自身のヒーローとしての素質を示さなければならない。終わりどころかスタートラインにすら立てていないのに、何をやりきったつもりでいるのか。

 

 そう檄を飛ばす甚田に、飛田は目を見開いて………そして、笑った。

 

「ははは、本当にその通りだ。私のヒーローとしての道のりはまだ始まってすらいない」

 

「分かったならとっとと寝ろ。明日も早いんだ。無駄な時間を過ごすんじゃないぜ」

 

 腰に手を当てて呆れる甚田に弾柔郞はただ笑みを浮かべる。この恩は必ず行動で返すと、そう誓いながら用意された布団へ向かい………。

 

「………そう言えばゴジータ、君はあのミルコとはどういう関係なので?」

 

「………一言で言えば、ヒーローとしての先輩後輩な関係」

 

ふと思い返す先程の出来事。何かとゴジータに対して距離感の近いミルコ。二人の関係性がどう言ったモノなのか、純粋に気になった飛田は思ったことを口にすると、返ってきた返答に普通に納得し、それ以上疑問に思う事はなかった。

 

この二人、揃って良い歳の癖に男女の恋愛感情について何一つ理解出来ていないポンコツであった。

 

 因みに、ミルコは甚田の部屋へ半ば強引に泊まり、今日の甚田は弾柔郞の部屋で眠ることになった。

 

ぴえん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日後、I・アイランドで起きた事件以外で特に騒がれる事がなかった日々、特訓を続けてきた二人は遂にその日を迎えた。

 

動画撮影の準備は万全。本日は特別に生放送で撮影する事になり、ゴジータもジェントルもラブラバも、いつも以上に気合いを入れている中、遂に待ち合わせの時間がやってきた。

 

指定した場所はゴジータが在住している田舎の、少し離れた所にある採石場。町の人々に協力して貰い、何とか場所と時間を確保したゴジータはジェントルと共に其処へ赴く。

 

今日でジェントルのヒーローとしての素質、その是非が問われ、定められる。果たして元ヴィランがヒーローとしての道を歩めるのかどうか、その緊張を抱く二人の前に立ち塞がるように佇む五人の影。

 

(─────ん? 五人?)

 

 あれ? なんか人多くない? 具体的には二人くらい。

 

もしかしてナイトアイがルミリオン辺りを連れてきちゃったのかな? そんな風に考えたのも束の間。

 

「成る程、彼が噂のヒーロー志望の元ヴィランか。その在り方、正にダメージデニムの如く」

 

「ふん、No.1の育成理論とやら、見せて貰うとしようか」

 

 何故か増えているトップヒーロー、なんで二人がここに? 疑問に思うところは多々あれど、取り敢えず一言。

 

「帰れNo.3(エンデヴァー)、なにしに来やがった」

 

「何だと貴様ァッ!」

 

 No.3には丁重にお帰り願う事にした。

 

 

 





Q.本当になんでエンデヴァーいるの?

ヒントつ焦凍&ホークス。

Q.なんでベストジーニストいるの?

A.ゲスト






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