最近、影の実力者を観始めた作者です。
この主人公、アトミック部分がねっとりしてる!?
そんな訳で初投稿です。
日本の名だたるヒーロー達からの認可を受け、ジェントル・クリミナルは公安から下される条件をクリアし、晴れて仮免試験への受講を受理された。
動画サイトに投稿された動画は未だに再生数が伸びており、既に千万の超大台に乗りつつある。ゴジータの扱きをリアルタイムで見ていた為に視聴者からの反応も悪くなく、ジェントル・クリミナルという名は、着実に良い方面で世間に認知されつつあった。
そんなジェントルは現在活動を休止しており、居候先のゴジータの自宅にて一時の休みを満喫している。当分の間の彼はゴジータによってイジメ抜かれた自分の身体の静養に専念する事だろう。
さて、その一方で色々と話題の中心人物であるゴジータはというと。
「だりゃぁぁぁっ!!」
現在、とあるヒーローの事務所………そこに備え付けられているトレーニング室にて若きヒーロー候補の相手をしていた。
振り抜かれる拳、死角から現れるその一撃をゴジータは見向く事なく避け、返す刀の裏拳にて迎撃する。
見事なカウンターだが、手応えはなかった。自身の身体をすり抜ける光景に眼を見開くゴジータに対して、金髪の青年はしてやったりとにこやかな笑みを浮かべる。
「へぇ、すり抜ける個性か、いい個性じゃないか。いやこの場合、いい個性にした、が正しいかな?」
「そう言うこと! さ、ドンドン行くよー!」
瞬時に自分の個性を見抜かれ、それを使いこなすに至った経緯すら暴かれながらも、青年の攻撃は決して弛むことはない。上下左右に囲まれた閉鎖的空間、限られたこの場所において青年のゴジータに対する優位性は揺るがないモノになっていた。
上から、下から或いは左か、はたまた右か。縦横無尽に仕掛けてくる青年に一見してゴジータは翻弄されているように見えた。
しかし。
「ほい」
「ッ!」
左から現れる青年へ掌サイズのエネルギー弾を飛ばす。威力は最小、当たってもゴム弾程度の衝撃しかないソレを、青年は透過させて事なきを得る。
予測? それともトップヒーローによる経験? 対応され始めた理由を青年は分析するが、その悉くが違うと加速した思考が両断する。
目の前のNo.1は自分の動きなど最初から見切っている。彼が今までなにもしてこなかったのは偏に自分の実力を推し測る為、ただそれだけに過ぎない。
自分の培ってきた経験や予測など簡単に上回ってしまうのが、目の前のNo.1ヒーローだ。一瞬だけ気落ちするも、分かっていたことだと今一度気合いを入れ直した瞬間……。
「まさか、俺にこれを使わせるとはな。流石はナイトアイの秘蔵っ子だ」
徐に、ゴジータは自身の広げた両手を顔に近付け───。
「太陽拳!」
「ガッ、────ア」
突然瞬く眩い閃光に視界を奪われ、次の瞬間インターンの青年はうなじ付近に感じた衝撃と共に意識を失った。
◇
「あー悔しい! もうちょっと頑張れたら一発くらい叩き込めたのに!」
「はっはっは、舐めるなよ若造。No.1の座はそう簡単には譲らないのだ」
サー・ナイトアイが経営している事務所………その地下にて、自前のトレーニング室で悔しがる青年を見下ろしながら、ゴジータは笑う。
今しがた相手をしたのは、ナイトアイの下でインターン生として活躍しているヒーロー名ルミリオンこと、通形ミリオ。
何物も透す【透過】の個性を持ち、その厄介な特性の個性を実用にまで持ち込み、更にはその個性を活かした立ち回りは彼のこれ迄の血の滲むような鍛練の成果である。それを僅かな時間の間で読み取ったゴジータは素直にルミリオンに感心した。
「しっかし、極めれば極める程応用性の高い個性だよな。その辺りもナイトアイから?」
「えぇ、だからこそサーからは常に相手や周囲の動きを予測して立ち回るように言われているんです」
「だろうな。お前の動きは常に相手の一手二手先を取ろうとしているモノの動きだ。加えて誘導させる能力もな」
「あはは、流石はNo.1。あれだけの動きで其処まで見抜かれちゃったか」
「けれど、それは逆を言えば相対している奴に自分の動きとその目的を伝える事になりかねない。確かに有象無象のヴィラン未満のチンピラ相手なら問題ないが、これが組織化されたヴィラン集団、目の肥えたヴィランが相手ならお前の動きが看破され、窮地に追い込まれてしまう可能性もあるぞ」
「そうなんだよね。だから一撃離脱と一撃で相手を気絶させる様にしているんだ。そこでNo.1ヒーローである貴方にアドバイスをお願いしたいんだ」
「ナイトアイ辺りならとっくに分かっていると思うけど………まぁあれだ、死角からの不意討ちが一番お前のやり方にあっているんじゃないのか? ヒーロー的にはどうかと思うけど」
「う、やっぱりそうなる? サーも似たような事を言ってたんだよなぁ。でも、流石にヒーローとしてどうかと思うし、俺的にもちょっと遠慮したいかな~って」
「けど、いざそう言う手段が必要になった時は迷わずに動けるように心掛けておいた方がいいぞ。差し詰まった状況下で、お前の矜持と何も知らない民衆を天秤に掛けるような真似、したくはないだろ?」
「それもそうだ。よし、それじゃあもう一本お願いします!」
「おう、何度でも相手してやるよ」
個性に関する欠点とそれを補う思考力、ルミリオンの強みを伸ばしつつ、欠点を補える立ち振舞いを教えながら組手は夕暮れ時まで続いた。
◇
「ミリオの相手、ご苦労だったなゴジータ」
「気にすんなよ。俺もアンタにはインターンの頃には世話になったからよ、このくらい安いもんだ」
その後、ミリオを満身創痍にまで追い込んだゴジータは、外の見回り警護を終えてきたナイトアイの所へ今日一日の報告へやってきた。
恐らく外で起きたヒーロー活動の報告を纏めているのだろう。机の上に積み重ねられた書類を物凄い速さで処理していくナイトアイに、ゴジータは若干引きながらも感心していた。
「うへぇ~、えげつない処理速度。腱鞘炎とかならないの?」
「生憎と、そんな柔ではない。貴様と違い、事務員に任せっきりではないのでな」
「さ、左様で………」
「それよりも、貴様から見たルミリオンはどうだった?」
相変わらず色々と容赦のないナイトアイだが、そんな彼でも愛弟子は可愛いらしい。素っ気ない振りをしつつも確りと気に掛けてやっているナイトアイにゴジータも表情を和らげる。
「透過する個性、あれをモノにするには相当な修練があった筈だ。加えて周囲への対応力とそれに伴う予測。並大抵の努力ではないのは確かだな」
「─────」
「その甲斐あってか、近接戦闘では無類の強さを誇っているよ。組手をしている最中、何度か当てられそうになったしな」
事実、ルミリオンの実力はナイトアイの下で修練を積み重ね、自己鍛練を欠かさず行ってきた為に並みのプロヒーローでも歯が立たない程に強くなっている。
他にも救助の面で見ても、障害物を無視して対象の救助に行けると言うのは、現場から見ても非常に頼もしく思える。もし彼が正式にプロヒーローとしてデビューすれば、その年の内にトップヒーローに名を連なる事も夢ではない。それ程のポテンシャルがルミリオンにはあった。
「唯一欠点とも言えるのは火力の面だけど……ま、その辺りはアンタが考慮しているだろうから省いておく。アンタが目を掛けているヒーローの卵は、ちゃんと成長しているよ」
「…………そうか」
「それじゃあ俺はこれで。バブルガールとセンチピーダーによろしく言っておいてくれ」
今日一日ルミリオンの面倒を見て、彼の成長具合と将来性も見ることが出来た。これで先日の協力の件の義理も果たせたと、満足したゴジータが事務所から去ろうと扉に手を掛けた時。
「オールマイトの………O.F.A.の後継はミリオにこそ相応しい」
「…………」
「当時の私は、そう思っていた」
背後から聞こえてくる声、ゴジータは振り返ることはなかった。
「無個性の少年に自ら個性を渡すのは正気の沙汰ではない。体育祭を見るまでの私は、オールマイトの判断を誤りだと思っていた」
「────今は?」
「………悔しいことに、嘗てのオールマイトと重ねてしまったよ。緑谷出久だったか? 今では彼の成長を楽しみにすらしているよ」
「なんなら、今からでも紹介してやろうか? インターンの受け入れ枠は一人だけじゃないんだろ?」
一度だけ振り返り、意地悪な笑みを浮かべるゴジータに。
「それはごめん被る。問題児を扱うのは貴様で懲りているからな」
「えー、出久はそんな問題児じゃあ無い筈だぞ」
「先日、試験場となった会場を更地にしたそうじゃないか。幾ら相手がオールマイトだからとは言え、やりすぎだ」
「いや、それ絶対オールマイトが八割原因だろ」
て言うか、学生相手になにしてんだよ、とはっちゃける相棒の姿を幻視したゴジータは項垂れ、そんな彼に今度はナイトアイが笑みを浮かべた。
「───ま、相談されれば検討してやらんこともない。さ、もう行け。例の死穢八斎會に関する話は追って次第連絡する」
「はいよー、それじゃあナイトアイ。お先に失礼するなー」
扉を開け、屋上へと掛け登り飛翔する。瞬く間に空の彼方へ消えていくゴジータを見送りながら、ナイトアイは嘗ての彼の姿を思い出す。
『たとえ未来が見えてても、対処できなければ意味がないよな』
「────ふん、あの生意気だった奴が随分と丸くなって」
嘗てゴジータがインターン生としてやって来た日。この日にナイトアイはオールマイト以来の衝撃を受けた。コイツならばオールマイトの後を継げるヒーローになれるかもしれない。彼の負担を少しでも軽くできるかもしれない。
当時、オールマイトの事で余裕の無かったナイトアイは、同じく余裕の無いゴジータの内情に気付かず、彼の苦悩に寄り添う事が出来なかった。
「だから、という訳ではないが。彼の頼み事はそれとなく受け入れることにしている。条件を提示するのは照れ隠しの表れ、それを決して他者に見せることの無いナイトアイは今日も仕事に精を出すのであった」
「─────随分と面白いモノローグを言うじゃないかバブルガール。何処で磨いたんだそのユーモア、是非私にもご教授願いたいな」
「あ、あれ? もしかしてナイトアイ怒ってる? ご、ごめんなさい! ちょっと調子に乗っちゃって………! でもゴジータを独り占めしてて正直ずるいと言うかなんと言うか!」
「ハハハ、怒ってないよ」
「それめっちゃ怒ってるやつー!!」
夜の帳が下り始める時間帯、ナイトアイの事務所には笑い声の断末魔が響いたという。
そして早朝。小鳥の鳴き声と共に目覚めを迎えたゴジータは今日も一日頑張るゾイと意気込み、朝の支度を始める。今日はこの田舎回りの見回りからだった筈だと、欠伸を噛み殺しながらリビングへやって来ると。
「おっせーぞゴジータ! 何呑気に寝てんだよ、さっさと起きてヴィランどもを蹴り飛ばしに行くぞ!!」
何故か既にリビングにて白米をかっこんでいる兎のヒーローがいた。
朝から刺激的な光景を目の当たりにしたゴジータは、ポリポリと頭を掻いた後………。
「─────寝よ」
現実逃避を決め込むのだった。
オマケ
ある日のヒーロー特番。
「いい加減貴様のバカ面を見るのも飽き飽きだ。今日こそ決着を着けてやるぞ、オールマイト!」
「ハハハ! 相変わらず威勢がいいじゃないかエンデヴァー、けれど残念。今日の勝負はバスケ、所謂チーム戦だぜ」
「個性使用禁止、素の身体能力のみのバスケ勝負か。………いや、何で?」
「何でもプロデューサー辺りが最近バスケに嵌まっているらしいよ? で、折角だからプロヒーロー同士でバスケの試合が見てみたいってさ」
「マジか。良くエンデヴァーが共演OKしたな」
「個性無し、て言うのが逆に良かったらしいよ? そんな訳でゴジータ、後は宜しく」
「良いかゴジータ、相手がオールマイトでも決して手を抜くなよ! エッジショットもだ!」
「……はーい」
「……無闇に流行りに乗るものではないな」
後に、トップヒーロー達を巻き込んだこの日の視聴率は、テレビの歴史に深く刻まれる事になった。