超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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最近のドカバト、クォリティヤバくない?

そんな訳で初投稿です。


記録38

 

 

 

 オールマイトからの要請により、後藤甚田ことゴジータは翌日の休日の時にお馴染みの集合場所になりつつある砂浜へ朝早くから訪れた。

 

以前は粗大ゴミに溢れ、水平線など見えもしなかった場所。その景観は今も保たれており、近隣住民はこの景色を維持しようと色々と対策を立てているらしい。

 

そんな、オールマイトと緑谷にとって思い出深い地にお邪魔する事になったゴジータは……。

 

「どうですかゴジータ! この個性! 凄くないですか!?」

 

「あーうん、そうね」

 

緑谷の指先からチョロッとだけ出ている黒い紐状のナニかにどう反応したら良いか分からなかった。いや、だって……オールマイトが物凄く焦った様子で言うんだから、てっきりもっとヤバそうな代物かと思ってたんだもん。

 

それがお前、指先チョロってお前……。

 

「初めて個性が発現した時はこれの比じゃなかったんだよ。幸い雄英の敷地内で人気があまりなかった場所だから何とかなったけど……」

 

「あ、そうなの?」

 

 パッと見てとてもそうは思えないが、オールマイトが言うには当時の緑谷は暴走状態にあったらしく、オールマイトも怪我をさせないように抑え込むのも難しい状況だったのだという。

 

いつも通りの組手に勤しんでいた所へ突然発現した新しい個性。当然緑谷は持て余すし、オールマイトも緑谷が自分と同じ無個性だったと思っていた故に驚き、対処が一瞬遅れた。

 

そんな時、たまたま近くを通り掛かった相澤と心操人使なる生徒のお陰で事なきを得たと言う。

 

「心操? ………あぁ、あの洗脳の個性の奴ね。え? じゃあその二人にO.F.Aの事が知られたの?」

 

「いや、その辺りの事は私が誤魔化しておいた。緑谷少年の個性について私が相談を受けていたという形でね」

 

「いや、それ絶対裏で色々と怪しまれる奴。………緑谷、空気を読んでくれる担任と友人で良かったな」

 

「は、はい!」

 

「で、俺にその新しい個性の扱い方を指導をしてくれって? 期待してくれるのは嬉しいが、その如何にも鞭みたいな奴の扱い方なんて知らないぞ?」

 

「あ、いえ。確かに助言が欲しいのも事実なんですけど……」

 

「実は、それだけじゃあないんだ」

 

「?」

 

 今の黒い鞭よりも大事な話があると口にして二人の空気が劇的に変わった。その表情に余程重い内容なのだと覚悟したゴジータもおふざけ無しで聞き入れようと佇まいを正し。

 

「───緑谷少年が、歴代の継承者の方々とお会いになったらしいんだ」

 

「………………」

 

オカルト方面にぶっ飛んだ話を叩き込んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、緑谷とオールマイトからの話を纏めると、どうやらO.F.Aには故人の意志のようなものが内封されており、この時初めて具体的且つ鮮明に顕れたのだと言う。

 

意識を失った際に現れたスキンヘッドの厳つい男性、自らをO.F.Aの元継承者だと名乗るその男は緑谷に自らの個性の有用性を語り、個性と感情によるメリットとデメリットを語った後に消えたのだと言う。

 

「───切っ掛けは、体育祭の時でした。あの時も心操君の個性で洗脳されて、場外に誘導された時、朧気だったけど、今思えばあれは歴代の継承者の方達なんだと思います」

 

「取り敢えず、心操君とやらには後日ちゃんとお礼言っときな?」

 

「は、はい!」

 

故人だと言う歴代の継承者達と出会ったと語る緑谷もそうだが、切っ掛けやら暴走状態の緑谷を止めてくれた心操某君には、心からの誠意を見せるべきだとゴジータは助言する。

 

いやだって、理由も事情も知らずに助けてくれるとか、普通に将来有望なヒーロー株じゃん。ゴジータは継承者云々よりその子のことの方が気になった。

 

「んで、その継承者の人達って何で今になって顔を出すようになったんだ? ………いや、この場合は緑谷の方が会えるようになったと言った方が正しいか?」

 

「相変わらず良い読みしてるぜゴジータ、私も同じ見解だ。緑谷少年は最初こそO.F.Aを持て余していたが、体育祭以降は自分の出来る範囲で習得し、今では一瞬だけとは言え50%の力を引き出せるようになっている。恐らくはそんな緑谷少年の成長に合わせてO.F.Aの奥底で眠っていた歴代の方々の意識が浮上してきたんじゃないかと思うんだ」

 

 個性の中に第三者の意識が混じっている。医療の歴史の中では移植手術を受けた人の手足に元となった人間の意識が宿っている───みたいな話を何処かで聞いたことがあるが、それにしたって眉唾物である。

 

妄想、或いは妄言の類いだと切り捨てても良い話なのだが………不思議と、ゴジータはそうは思わなかったし、何なら同調すら出来てしまっていた。

 

何故なら、後藤甚田もまた緑谷の体験と()()()()をしたことがあるからだ。故にオカルトだと一蹴しないし、妄想だとバカにしたりもしない。

 

ただ、自分の体験の方がより妄想的なので口にはしないだけ。

 

「────ん? じゃあ、何でオールマイトは他の個性を使わなかったんだ?」

 

「私はただ初代の継承者の追体験を夢という形で目にしたに過ぎないんだ。緑谷少年の様に、直に継承者の方と話を出来た事はない」

 

「え、じゃあまさか緑谷って………結構霊感体質なの?」

 

「急に怖いこと言わないで下さいよ!?」

 

口ではふざけてはいるが、割とこの考察は当たっているのでは? とゴジータは思った。昨今、個性を持って生まれてくるのが当たり前となっている現代、個性とはその人にとって無くてはならない身体の一部であり、手や耳、鼻といった感覚に類するモノだという見方も存在している。

 

そして、先天的や後天的を問わず、その感覚を失っている者は別の器官、或いは感覚が発達すると聞く。視力を失った者が聴覚や嗅覚が発達するといった具合に、緑谷の霊感能力も個性を持たない故の擬似的な能力だったりする可能性も………?

 

「という考察はどうよ?」

 

「いや、それはどうだろ?」

 

「流石にちょっと突飛過ぎません?」

 

割と真面目に考察しているのに、オールマイトと緑谷は苦笑い。おい、そっちから振ってきた話だろうがと、ゴジータの額に青筋が浮かんだ時。

 

「あはは、流石はNo.1ヒーローだ。その発想力は大したモノだ」

 

「全くの見当違い………と、言い切れないのが怖いところではあるな」

 

「お、塚内さんじゃん」

 

「グラントリノも! 来てくれたんですか!」

 

 遅れてやって来た二つの人影、昇ってくる朝日に照らされながらやって来たのは、オールマイトにとってもゴジータにとっても馴染みになりつつある面々だった。

 

「この二人にはもう予め……?」

 

「あぁ……あ! ちゃんとナイトアイにも話したからね! 今度こそ、ちゃんと相談したからね!」

 

「それはそうだろうよ。………でも、姿は見当たらないな」

 

塚内とグラントリノとゴジータ。相変わらず腹の内を話せる身内の少ないオールマイトだが、今回は流石にナイトアイにも伝えていた様子。だが、それにしては彼の姿が見えない。オールマイトの嘗ての相方であり、重度のオールマイトオタクでもあるナイトアイが約束をすっぽかすとは思えない。不思議に思い首を傾げるゴジータと、不安そうに指先をチョンチョンと合わせているオールマイト。

 

現在のオールマイトの体躯は鍛えられているおじさん程度なので、そのビジュアルからしてその振る舞いは少々笑えるところがあった。

 

「………実は、ナイトアイは今回来れそうにない。代わりにあるものを預かって来ている」

 

「え、そうなのかい?」

 

「ありゃま、ドタキャンだなんてあの人らしくないな」

 

「……まぁ、今回は仕方ない。何せ内容が内容だ。緑谷君にはくれぐれも内密に頼むよ」

 

「「?」」

 

 そう言って塚内が真剣な表情で手渡してくるのは一枚の紙きれ、折り畳まれたそれを受け取ったオールマイトは、緑谷の方へ視線を向ける。

 

見れば、既に緑谷の相手はグラントリノがしており、彼の新しい個性についてアレコレ相談を受けていた。古参のヒーローだけに為になるアドバイスを受けている様子の緑谷は、此方に気をやる事無く個性鍛練の励みにしている。

 

そんな夢中になっている緑谷を他所にオールマイトがその紙を開くと………。

 

「これは……!?」

 

 其処には歴代の継承者の名前と個性………そして死因が記載されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───で、それで何でこの家で話し合う事になってるの!?」

 

「仕方ねぇだろ? 内々の話をするんだからって、人の耳に入らない場所っていったら俺ン家くらいしかないんだもの」

 

 場所は変わって甚田宅。オールマイト達を乗せた車をゴジータが担いでいく様は、空を飛んでいた為に衆目に晒されずに済んだ。

 

「ジェントルはどうしてる?」

 

「今は町の方でボランティア活動をしているわ。この時間だと子供達の通学路の見回りね。あぁ、勿論個性なんて使ってないわよ」

 

「今更そこを疑うことはしねぇよ。ただ、これからこのメンツでちょっと話があるんだ。悪いんだけどラブラバは………」

 

「はいはい、奥の方に引っ込んで動画の編集をさせてもらうわ。ただ、今夜の夕飯だけど………」

 

「俺の方で準備しておくよ」

 

家で留守番していたラブラバに奥の部屋へと移動して貰い、リビングへ通されたオールマイト達はゴジータに促されてそれぞれ席に座る。

 

「ご、ごごごごごごゴジータの家! ままましゃかお邪魔出来るなんて!」

 

「緊張してんなー緑谷」

 

「彼、極度のヒーローオタクだから」

 

No.1ヒーローの自宅に招かれたという事実、ヒーローに対して大きすぎる羨望を抱いている緑谷にとって、ゴジータの家というのは刺激的に過ぎた。バイブレーションの如く震える彼を微笑ましく見ているオールマイトを横目に毒されてるなーと思うゴジータであった。

 

 ………体育祭で見せた滝のような号泣ぶりといい、本当に無個性なの?

 

閑話休題。

 

「さて、早速だが続きを話そう。先ずは歴代の継承者に関する話だが……」

 

「書かれてある七名、オールマイトを含めればこれ迄O.F.Aは八人の人間に受け継がれてきた。そうですよね?」

 

A.F.O(オール・フォー・ワン)と関わっている所為か、全員早死にだな。俺が言うのもなんだが、もうちっと自分を大事にしても良かったんじゃねぇの? 特に名前と個性以外黒塗りされてる奴とか、絶対になんかあっただろ」

 

「それが許されなかった時代、というヤツさ。事実、当時の奴の影響力は凄まじく、相対してきたヴィランの多くがA.F.Oの手下だった」

 

ナイトアイがもたらした情報の殆どが既に故人となっている人達ばかり。中でも四代目に該当する者は名前と個性以外が黒く塗り潰されている。

 

恐らくは調べたナイトアイが何らかの理由で消したと思われるが……恐らくは此処に彼が今回来なかった理由があるのだろう。詳しくは次に顔を合わせた時に聞くことにしよう。

 

「しっかし個性を奪い、与える個性か。勿体ねぇなぁ、それを上手く活用すれば人類の躍進に大きく貢献できただろうに。どうしてこの手の奴は頭の悪い使い方しか思い浮かばないかねぇ?」

 

「それは誰もが思うことだよ。……話を戻そう、重要なのは今後緑谷君の身に起きる出来事についてだ」

 

「恐らくは、歴代の継承者の個性が何らかの形で発現するだろう。今回出てきたのは五代目継承者である万縄大悟郎。黒い鞭を自在に操り、戦場を自由に飛び回ってきたという」

 

「へー、スパイダーマンだな。因みに、次に発現するとしたら何代目辺りだと思う?」

 

「………そうだね。私としては先代の、お師匠の個性を希望したいな」

 

「志村菜奈………へぇ、綺麗な人じゃん」

 

 大悟郎の隣に並べられる写真、スキンヘッドの厳つい男の隣に並ぶように差し出された写真の女性。とても優しそうで、ヴィランと率先して戦うヒーローとは思えない程の優しそうな笑顔がそこにはあった。

 

「七代目の個性は浮遊。もし緑谷少年にお師匠の個性が宿れば、緑谷少年は空を飛べる手段を得られる事になるな」

 

「ほぇー、すげぇじゃん緑谷。選り取りみどりで」

 

「い、いや、これら一つ一つを使いこなさなきゃいけないと思うと………正直、戸惑ってばかりです」

 

これから七人の継承者達の個性が緑谷の身体に発現してくる。その事実に嬉しさよりも、それらを使いこなせる様にならなくてはならないという未来に、緑谷は今から目が回る思いだった。

 

 なお、もし仮に緑谷の個性について疑問視する者が現れたとしても、ゴジータという前例が既に存在している為、そこまで追求される事はないだろう。

 

「じゃあ、今後は緑谷に歴代の継承者の個性が顕れた時、それなりにフォローすればいい、という話?」

 

「───いや、実はもう一つ重大な案件が一つ。内容的にこっちの方が本命だ」

 

「先日、ゴジータが沖合いで遭遇した人造ヴィラン、通称脳無。ゴジータが捕まえた奴を筆頭に雄英、そして保須市に現れた脳無の検査が先日完了した」

 

「お、遂に来たか」

 

「結論を言えば、此方の読み通りに脳無と呼ばれる人造ヴィランは、文字通り人体実験の末に造り上げたおぞましき生体兵器だという事が分かった」

 

 遺伝子レベルで加工され、複数の個性を保有し使用できる強い肉体。淡々と語る塚内の言葉に自然と場の空気が締まる。

 

「捕らえられた脳無、その悉くが死んだ人間を改造したもの。そして複数の個性の因子が検出された事から、我々は一つの結論に至った」

 

「………恐らく、脳無の元締めであるA.F.O。奴は今も生きて、社会の裏で暗躍している」

 

塚内の言葉を代弁するグラントリノ。その目には強い怒りが滲み出ており、同時に恐れに近しい感情が見え隠れしている。

 

A.F.O。個性黎明期に頭角を現し、一時は社会の全てを掌握していたヴィラン。奴によって世界は混沌の淵に叩き込まれ、人々は目に見えない恐怖と不安で押し潰されそうになった。

 

そんな、悪の大王みたいな奴が生きている。そう聞かされた緑谷の顔は緊張と恐ろしさで強張っているが………。

 

「ふぅん、じゃあ今後はそのA.F.Oを捕まえる方針ってことか?」

 

「そうは言うがゴジータ、これは言うほど簡単な事じゃないぞ」

 

「大丈夫さ。何故なら───俺達がいる。過去の亡霊相手に今更負けられるかよ。なぁ、相棒?」

 

「全く、相変わらず楽観的で生意気だな。………けど、その通りさ!」

 

 不敵に笑う二人のヒーロー、オールマイトとゴジータを前にするとそんな不安なんて吹き飛んでしまう。

 

「今の日本には私だけではない。ゴジータも、そしてエンデヴァーも、多くのヒーロー達がいる。彼等が守るこの社会を、今更奴の好きにはさせないさ!」

 

立ち上がり、マッスルフォームへ姿を変える。最近は食事量も増え、トレーニングも欠かさずに行っている事から、今の彼は全盛期から衰えてはいるものの、決して弱ってなどいない。

 

力強く言いきる平和の象徴、そんな彼に誰もが異議を唱えはしなかった。

 

「あ、でも次の林間合宿には安全面を考慮して私も参加するんだよね。場所も以前とは違う所でやるみたいだし」

 

「そうなの?」

 

「そ、そうだったんですか?」

 

「これ、一応オフレコね。私も同行するっていうのも現地に着くまで秘密になってるから」

 

「俊典、お前なぁ」

 

「それ、言っちゃダメな奴じゃん」

 

 指を立ててシーッという素振りを見せるオールマイトに苦笑いが浮かぶ。相変わらず何処か抜けてる相棒に肩をすくめていると。

 

「ただいまーって、凄い靴の数。誰かお客さんが………オォォルマイトォォォッ!?」

 

「あ、ジェントル・クリミナル」

 

子供達の通学路の見回りから帰ってきたジェントル。時間も頃合いだし、あることを思い付いたゴジータは徐に立ち上がる。

 

「よし、話も纏まったし、ラーメンでも食いにいくか」

 

「お、良いねぇ。私もそろそろ脂っこいのが食べたくなったんだ」

 

「なら行くとするか。塚内、緑谷、行くぞ」

 

「ぼ、僕も良いんですか!?」

 

「まぁ、たまにはいいか」

 

「ジェントルも行くぞー。っと、ラブラバも呼んでやらないとな」

 

和気藹々とした昼下がり、とある田舎のラーメン店にて二人のトップヒーローが現れ、ちょっとした騒ぎになったとか。

 

 

 

 

 

 

 

「───で、その時に撮った写真がこれです!」

 

「オールマイトとゴジータに挟まれるとか、どんな豪運してるンすかアンタッ!?」

 

「藤原さん、ファンの人達を敵に回したわね」

 

(────何やってンだよ甚兄!?)

 

 





Q.なんでオールマイトが林間合宿に?

A.ゴジータのお陰でヒーロー活動の負担が減り、教師として経験を詰め、充分な休息を得られた結果である。

近頃問題視している敵連合に備えてオールマイト自らが進言し、合宿に同席する事となった。


尚、これは教師の間しか知り得ることの無い話。当日まではクラスの誰も知ることはなかった。

Q,ゴジータとオールマイトと一緒に写真撮ったのって?

A.某ラブ探偵で間違いない。
因みに、その後のそのラーメン店はトップヒーローが二人も来たという事でちょっとした話題となり、地元の有名店になる模様
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