超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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もうドカバト八周年も終わり……。

そしてグラブル九周年が始まる。

そんな訳で初投稿です。



記録39

 

 

 

 夏。衣替えの季節が巡り、蝉の鳴き声が響き渡る時期。雄英の生徒である1年A組の面々はとある郊外へ連れてこられていた。

 

眼下に広がる森林、鬱蒼と広がる緑の大地。本来なら林間合宿の宿泊施設に向かっている筈なのに、人気もなく車も通らないこの場所へ何故自分達は連れてこられてきたのか。首を傾げる生徒達に対して、引率者であり担任である相澤消太は淡々と告げる。

 

「さて、それじゃあ説明を始める。後悔しないようにちゃんと聞いておけよ」

 

合理的に物事を進める相澤は非効率的な言動を嫌う。その事を今日までの行程でイヤという程思い知っている生徒達は、その脳裏に嫌な予感が過ぎる。

 

今回の合宿の面倒を見てくれるというとあるヒーロー、【ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ】のピクシーボブとマンダレイ。相澤の紹介から登場するベテランヒーローにより一層不安を募らせる生徒達に相澤は告げる。

 

「さぁ、始めるぞ卵ども。林間合宿は既に始まっているぞ」

 

 瞬間、嫌な予感を回避するべくバスへ逃げようとするも、ピクシーボブの個性である“土流”が1年A組を崖下へ流し落とす。獅子が千尋の谷へ突き落とすが如くの行い、自らの生徒達の悲鳴を耳にしながら、相澤はさて…と一人バスへと引き返す。

 

「しっかし、相変わらず酷いねーイレイザーヘッド。幾ら生徒が可愛いからって、此処までスパルタしちゃう?」

 

「まだまだこの程度では済みませんよ。アイツ等には今後も逆境をはね除ける地力が必要になってくる。ヒーローとは逆境を覆す者、であればこのくらい乗り越えてもらわなくては困ります」

 

「相変わらず合理的ね」

 

「───まぁ、世の中にはその合理性すら踏みにじる化け物がいるけどね」

 

 アハハと苦笑いを浮かべるピクシーボブにマンダレイも遠い目で嘗ての出来事を思い返す。数年前、自らの個性に対する絶対的な自信と慢心とすら言えるその在り方に当時の教師達は頭を悩ませた。

 

 一度その鼻っ柱をへし折るべく、期末テストの実技や林間合宿の時に今回と似たような試練を課してみたものの、その生徒は嘲笑いながらその試練を超越してみせた。

 

今でも思い浮かぶ憎たらしい顔。寧ろこの程度かよと煽ってくるその生徒に、相澤も随分と悔しい思いをした。

 

「……その時の事は、あまり思い出したくないんですけどね」

 

「あはは、まぁアイツ生意気だったもんねー」

 

 過去の出来事に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる相澤だが、実際はそこまで気にしてはいなかった。いや、気にしてはいるが、それ以上にその生徒について色々と思うところがあったのか、その生徒に対する不満はなかった。

 

「アイツの場合、生意気というよりそうしなければならない事情があったんでしょう。自らをそう定め、そう在る事を自らに課し続ける。そんな呪いを抱え続けていたら、ああなるのも頷ける」

 

呆れたように呟く相澤。何だかんだ言いながら面倒見の良いツンデレ教師に、ベテランヒーローの二人はニヤニヤ笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッだぁぁー! マジかよ相澤先生、相変わらず唐突過ぎるだろォ!」

 

「でも、流石はピクシーボブ。あれだけの土石流を操りながら誰一人怪我人は出してない。繊細な個性の扱い、伊達にベテランじゃないよ!」

 

「デ、デク君、さっきその手の話題でピクシーボブにシメられてなかった?」

 

「ケロ、懲りてないわね緑谷ちゃん」

 

 相当な高さから落とされたというのに、誰一人怪我を負っていない。繊細な個性の使い方を絶賛する緑谷を他所に、生徒達は周囲を見渡す。

 

「しっかし、マジで鬱蒼としてんな。こりゃ施設に辿り着くのに結構時間が掛かるぞ」

 

「正に自然の迷宮……」

 

「そういや峰田はどこ行った?」

 

 どこまでも広がる大森林、これは進むのに骨が折れそうだなと、肩を竦める上鳴。一方でいつの間にか姿を消している峰田の行方を探していると……。

 

「たっ、たたた助けてェェェッ!!」

 

 いつの間にか離れた所にいた峰田が巨大な怪物に追われていた。そのファンタジー感満載の巨大な獣、正に魔獣と呼ぶに相応しい怪物の登場に1年A組が浮き足立った時。

 

SMASH(スマァッシュ)ッ!」

 

 翡翠の放電を全身から迸らせながら、緑谷が蹴りを見舞う。直撃し、一撃で粉砕される怪物にそれが土塊であったと知った一同は、これがピクシーボブの個性によるものだと知る。

 

既に試練は始まっている。そう告げている相澤を思い浮かべたクラスの面々は、表情を引き締めて個性を発動させる。

 

 次々と現れる土塊の魔獣、これが林間合宿の最初の試練だと確信した一同。ある者は戦慄し、ある者は不敵に笑う。

 

 押し寄せる魔獣の群れに、1年A組もまた全力でこれを乗り越えていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かっちゃん、そっちに一体行ったよ!」

 

「わぁってるわクソデク! テメェは目の前の土塊獣に集中しろや!」

 

 自分達の前をひたすらに突き進む二人の男子。翡翠の電流を全身から迸らせ、超パワーで土塊の魔獣を圧倒していく緑谷。

 

数ヵ月前はマトモに個性を扱えず、手足を壊してばかりいた彼が、気付けばクラス内での実力はトップクラスの座に君臨している。

 

 そして、そんな緑谷を引き剥がさんばかりの勢いで前を行く爆豪も、追随を許さないと言わんばかりに魔獣達を蹴散らしていく。先をひた走る二人に対し、他のクラスメイト達は焦燥感に駆られていた。

 

炎と氷という強い個性を持つ轟焦凍すらも、二人に食らい付いていくので精一杯。二人は生い茂る森林を縦横無尽に駆け回り、地形を利用しながら的確に魔獣を蹂躙していく。

 

スタートは同じ筈だったのに、どうして此処まで差を付けられてしまったのか。遠くなっていく級友に歯を食い縛る。

 

(────そんなの、そんなことは)

 

「飯田?」

 

(絶対に、嫌だ!!)

 

 瞬間、飯田天哉のエンジンに火が灯る。置いていかれるのは嫌だと、自らヒーローになる為に誓った男は、初めてヒーロー以外の目的の為に個性を使おうとしていた。

 

『なぁ飯田、お前の個性は強い。けど、その使い方は少し勿体ねぇぞ。折角分かりやすく活躍できる個性を持っているんだ。もっと日常的に使うよう意識してみろよ』

 

『い、いえ、ヒーローの資格が無い者による個性の使用は禁じられていますので!』

 

『……なぁ飯田、お前にとってヒーローとは何だ? 法律に殉ずる者? 秩序を重んじて守る者? だとするならば、お前にはヒーローじゃなく警察への転向を勧めるぞ?』

 

思い返すのはあの日、たった一日限りのNo.1ヒーローによる立ち合い。その圧倒的強さに惹かれ、同時に速すぎる彼に絶望した。

 

『で、ですが! ルールを守らなければ、それはヴィランと同じなのでは!?』

 

『何か勘違いをしているようだから言っておくぞ。ヒーローってのは社会の秩序を守る存在ではない。自分の目的の為、守るべきモノを守り抜いた人達が、結果的にヒーローと呼ばれる存在になっただけだ』

 

『ケロ、でもゴジータ。ルールを遵守しないものはやがて社会から淘汰されるわ』

 

『勿論、人に仇なす輩はヴィランと呼ばれても仕方がないだろう。けどな蛙吹、ただ社会の言いなりになるのはヒーローとは言わん。それはただの歯車だ』

 

『『─────』』

 

『飯田、蛙吹、そして他の連中にも言っておく。もっと利己(エゴ)に走れ。そのエゴはいずれお前達の芯になる。芯のあるヒーローは間違いなく強くなるぞ』

 

『な、なぁゴジータ! それなら俺の女の子にモテてぇって思いも、強くなれる理由になれるのかな!?』

 

『否定はしねぇよ』

 

 それは、No.1ヒーローが口にするにはあまりにも不健全で、不誠実な物言いだった。けれど………。

 

『滾れ、焦れろ。時間は待ってはくれねぇぞ。大事なモン、人を守れる様になりたいのなら、社会の奴隷に成り下がるな。お前達はヒーロー、社会とそこに生きる者達の希望になる存在だ………足踏みしている場合じゃねぇぞ』

 

No.1ヒーローは笑って吐き捨てる。自らのエゴに従い、自身の力を解放させろ。それこそが、強くなれる最も近い道筋だと。

 

もし、それが事実であるというのなら……!

 

(それで君に、君達に追い付けるのなら、僕は……!)

 

 ヒーローとは誠実で社会の模範となるべき存在。幼い頃から抱いていたヒーローに対する印象は、ゴジータによって粉々に打ち砕かれた。

 

けれど、そんなゴジータの言葉を否定したくても飯田には出来なかった。ヒーローとは時に利己的に動く事も必要、その言葉の意味を本当の意味で理解する事はまだ出来ないが……。

 

()は、初めて自分の欲求に従う!!)

 

 それでも、今の自分の望み(エゴ)は理解できている。目の前の友人達に追い付きたい。そんな子供の駄々にも等しい願い(エゴ)は、少年のエンジンに強い炎を宿した。

 

「レシプロ────バースト!!」

 

加速。景色を置き去りにし、視界が速度に狭められる。目の前には巨木、背後では呼び止めるクラスメイト達の叫び声が聞こえてくる。

 

しかし……。

 

(加速しろ、俺ェッ!)

 

更に加速。直後に跳躍。巨木をポールにつかまる要領で掴み、襲い来るGを次の加速でいなしていく。

 

 加速、加速、更に加速。遠心力を付けての跳躍は飯田を空の飛翔へと誘う。狙うのは二人の前方にいる二体の怪物───否、既に障害物でしかないそれに。

 

「どっっっけぇっ!!」

 

 邪魔だと言わんばかりに、飯田の蹴りが貫き徹す。貫かれ、次いで起きた衝撃波に吹き飛ぶ土塊の魔獣達。一足飛びに自分達を飛び越えられた二人は、今起きた出来事にあ然となる。

 

そんな、あ然となっている二人が何処と無く面白くて……。

 

「────お先に」

 

 眼鏡を掛け直した飯田は、不敵に笑う。真面目な委員長にしてはらしくない挑発。

 

しかし、二人と後続の級友達には効果覿面だったようで……。

 

「「────上等」」

 

 魔獣の森は更なる激戦区と化していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「────おおう、今年の1年は活きがいいねぇ」

 

「ほほう、出水少年のご両親はウォーターホースだったのか」

 

「う、うん。オールマイトはお父さんとお母さんの事を知ってるの?」

 

「勿論、二人とは何度か現場で鉢合わせたからね! 二人の息のあったコンビネーションにはとても助けられたよ!」

 

「そ、そうなんだ」

 

「でも、君を寂しくさせるのはちょーっと戴けないな。ヒーローである前に一人の親なのだから、息子に寂しい思いをさせちゃあいかんだろうに」

 

「うん。……でも、いいんだ! 二人が頑張るのはそれだけ助けを求める人がいるって事だし、両親が頑張ればそれだけ救われる人達がいるって事だから! 寂しいのは本当だけど、同じくらい自慢に思えるんだ!」

 

「クーッ! 泣かせてくれるじゃないか少年! そんな君には私からのせめてものプレゼント、URの私のカード(ゴジータ衣装)をプレゼントしよう! サイン付きだぞ!」

 

「いりません」

 

「………え?」

 

「オールマイトはトップヒーロー、多くの人達の憧れなんだからあまり自分を安売りしないほうが良いですよ」

 

「………あ、うん」

 

「でも、その気持ちは素直に嬉しいです。ありがとうございます」

 

「あ、はい。こちらこそスミマセンでした」

 

 先に宿泊施設へやって来ていたオールマイトは、遥か年下の子供に窘められるのだった。

 

 

 

 




Q.出水洸汰君のご両親は生存してるの?
A.当時無名だったヒーローが某筋肉ヴィランをボコしている為、生存してます。

Q.洸汰君は個性社会を憎んでいるの?

A.憎んではいないが、内心ではヒーローやらヴィランやらが生まれる現在の社会の仕組みを疑問に思っている。

尚、本作の洸汰君は中々のヒーローオタク。ヒーローグッズを小遣いを貯めて自分で購入しているが、欲しいものは自分の力で手に入れる拘りを持っている為、ヒーロー本人から渡されてもやんわり断るというガチッぷり。

あと、オールマイトよりもどちらかと言えばゴジータ派。

「オールマイトも格好いいと思うけどね」

「その心遣いが痛い!!」

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