超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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日刊ランキング2位、ありがとうございます。

そう言う訳で初投稿です。


記録4

 

 

 

 それから1ヶ月。件のヒーローランキングの日を境に、世間は新たなNo.1ヒーロー【ゴジータ】の話題で持ちきりだった。

 

先代No.1ヒーロー、オールマイトも認めたヒーローとしての素質、その強力な個性にも関わらず傲慢な性格に至らなかった謙虚な人間性。

 

そして、如何なる脅威からも人々を守り抜ける強さ。ただ己を高め、母校である雄英校の理念を抱き続ける向上心。人間として、ヒーローとして、人々の話題に上がるには充分過ぎていた。

 

 その年、ヒーローを志して雄英校に進学を決めた生徒達は例年の100倍近く増加し、激増した仕事量にとあるアングラなヒーローを筆頭に、在籍している教員のヒーロー達はゴジータに対して怨み節を呪文の様に口ずさんでいたとか。

 

閑話休題。

 

 しかし、話題に上がるという事はそれだけ人々の視線が集まるという事。現在、ネット上では未だにオールマイトやエンデヴァーの古参ファンがポッと出のゴジータを敵視している。僅かでも欠点が見付かれば鬼の首を取った勢いで扱き下ろす為に。

 

そんな、良くも悪くも大衆から注目を浴びている新たなNo.1ヒーローはと言うと……。

 

「注意一秒怪我一生。仕事で疲れているかもしれないが、居眠り運転はいただけないな」

 

「は、はいぃ……」

 

「帰ったら会社の上司に伝えておけ、ゴジータから注意を受けたってな」

 

「は、はいぃ!」

 

 とある街中にて、交通事故を未然に防いでいた。通報を受けていた警察に居眠り運転をしていたサラリーマンを引き渡していた。

 

被害も出ておらず、居眠り運転をしてしまう程に劣悪な会社の方に問題があると判断し、厳重注意で済まされているサラリーマンを確認すると、ゴジータは白い炎を纏って跳躍。そのまま空を飛翔して去っていった。

 

「スゲー、マジで空を飛んでる」

 

「ホークスみたいに羽生えてないのに、どういう個性なんだ?」

 

「空を飛んで変身して、力も強い」

 

「噂ではメチャクチャ大きなビームとか出せたりするらしいぞ」

 

「それ、もしかして例の巨大隕石を壊したゴジータの必殺技って奴?」

 

「あ、俺それ知ってる。確か“かめはめ波”って言われてる奴だ」

 

「かめはめ波ぁ? 何だソレ、ハワイのカメハメハ大王となんか関係あんのか?」

 

「つーかかめはめ波って、ダサくね?」

 

「いや、でも近所の子供達は皆真似してるぞ? 確かこう、かーめーはーめー………」

 

「いや、こんな所でやってんなよ恥ずかしい」

 

「でも、何て言うか分からないけど………」

 

「あぁ」

 

「「格好いいよな」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 某所。拠点となる田舎町の一軒家、自らの事務所兼自宅に帰ってきたゴジータは、帰ってくるや否やソファーに腰掛け、変身を解いて黒髪へと戻っていく。

 

「ア”ぁぁぁ……疲れたぁぁ」

 

ヒーローコスチュームを脱がないまま、だらしなくソファーに身を預ける。No.1ヒーローとしてあるまじき光景だが、本人にとってはそれ処ではなかった。

 

何せ起床してからこっち、常に日本全土を飛び回り各地で起きている事件事故を手当たり次第に対応していたのだ。先に解決した車の居眠り運転から既に8時間、今日だけで100件近くの人為的問題を解決したゴジータは、体力面では余裕であっても精神的に参っていた。

 

特に憂鬱にさせているのは、デスクに積まれた書類の山。ヒーローは現場に出撃する際、個性を使用するにあたって様々な手続きをしなくてはいけない。戦闘による被害、その規模と損害の報告。国から個性使用の自由を認められている以上、この規則には従わなければならない。

 

そういう手続き関係が面倒だから、ヴィランによる被害の少ない田舎でヒーロー活動する事にしたのに、ゴジータの目論見は完全に裏目に出ていた。正直、そこいらの敵を相手にするよりよっぽどしんどい相手である。

 

それでもゴジータの体力と身体能力を以てすれば、ほんの一、二時間程度で終わる作業だ。………いや、今から二時間は普通に苦行だが。

 

「これも、No.1ヒーローって奴の宿命なのかなぁ……」

 

別にヒーローランキングに興味はなかったが、誰かが困っている以上無視はできない。責任やトップヒーローとしての矜持と言うより、人としての大事な所を優先したい後藤甚田は、自分の今置かれている状況を主観的にではあるものの、ある程度は理解していた。

 

今、日本は一つの節目を迎えつつある。平和の象徴と謳われたオールマイトがNo.2となり、ゴジータという新たなヒーローが頂点に座している。

 

そんなゴジータを侮るヴィランが一人でも現れると、つられてオールマイトをも侮る輩が増えていく。事実、先のヒーローランキングから今日まで犯罪の件数は少しずつではあるが上昇しつつあるのだ。

 

謂わば、これは一つの試練だ。ゴジータというヒーローが、オールマイトという最高のヒーローに取って変われる存在なのだと、世間に………いや、世界に示さなければいけない。

 

理屈も分かるし、ゴジータ本人もその事は理解している。自分への侮りは即ちオールマイトを始めとしたヒーロー達への侮蔑に繋がる。だからこそ、ゴジータはヴィランに対する新たな抑止力でなければならないのだと。

 

「重いなぁ。重いのは鍛練の為の重力負荷だけにしてくれよ」

 

予想以上に重いNo.1ヒーローとしての重圧。そりゃオールマイトもあんな風格になるなと、ゴジータは密かに理解した。

 

 チラリと、地下へと続く階段へ視線を向ける。ヒーローランキングから1ヶ月、マトモに鍛練も出来ていないことを思い出したゴジータは、気分転換も兼ねて少しだけ修行に没頭しようとソファーから立ち上がった時。

 

来訪者を告げるブザーが鳴った。マジか、なんてゲンナリするのも一瞬。他人に対して八つ当たりするのもみっともないなとゴジータは頭を振って気持ちを切り替え、玄関口の戸を開ける。

 

「はい。後藤です」

 

「ワーターシーがー……お土産のケーキを持って、来たーッ!!

 

 玄関の前に佇むのは、筋骨隆々とした大男。嘗てのNo.1であり現在No.2の平和の象徴、オールマイトが私服姿で其処にいた。

 

「──────」

 

突然の大先輩ヒーローの突撃に固まる後藤、目をパチパチとさせて目を擦るも、目の前の現実は何一つ変わらない。一先ず後藤甚田は………。

 

“パタン”

 

無言で扉を閉めることにした。

 

「え? あ、ゴジータくーん? いきなり来てゴメンねー! サプライズとか苦手だったかなぁー!? ちょっと話したい事があって………その、開けてくださーい!」

 

アワアワと慌てふためく平和の象徴に、一先ず中に入れる事にした超ヒーローだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、本当にゴメンね。急にお邪魔しちゃって」

 

「いや、それは別に構わないですが………一体どうしました? 貴方程のヒーローがワザワザ此処まで来るなんて」

 

 それから少しして、ヒーローコスチュームから部屋着に着替えたゴジータは、上座にオールマイトを座らせて自分と彼の席へそれぞれコーヒーを置く。

 

今の自分は後藤甚田だ。故に先達であるオールマイトを敬うつもりで敬語で言葉を話すが、オールマイトは気にしなくて良いのにと変に残念がっていた。

 

「その前に、先ずはケーキでもどうだい? 行き付けの店に美味しい新作が出来たんだ」

 

「え、良いんですか? ならお言葉に甘えます。ならコーヒーにお砂糖は………要らないか」

 

「……………」

 

「あれ、もしかしてお砂糖は入れた方が良かったですか?」

 

「いや、なんかこう言う対応が新鮮でね。いつもは話しかけただけで邪険にされてたりしたから、ちょっと嬉しくなっちゃった」

 

「えぇ? オールマイトを? 一体誰です?」

 

「………エンデヴァー」

 

「………あぁ、あの人って気難しそうですものね」

 

 親しげに話し掛けてくれるオールマイトは、甚田にとって割と救いとなっていた。ヒーローランキング発表の場にいた時は厳しい先輩かと思っていたが、ゴジータで在る時は基本的に誰が相手でもタメ口である事を決めている彼にとって、フレンドリーなオールマイトは色んな意味で助かっている。

 

対して、エンデヴァーというヒーローは後藤甚田にとって一種のタブーとされている。近付くだけで分かる拒絶の意思、向けられる視線はライバル視というより敵視に近かった。

 

そんな気難しそうな彼とも進んで親しくなろうとするオールマイトに、甚田は素直に感心した。

 

「俺も後輩として挨拶しようと思ったんですけど、近付くだけでメチャクチャ睨んでくるんですよね」

 

「そうそう、私もそうだった」

 

 その後、話はエンデヴァーから互いのヒーロー活動に関する話へ移る。互いに日本全土で活動しているヒーロー、陸地から海上、そして空の上など様々な場所で活躍している二人の会話は自然と馬が合う様になっていく。

 

「────それで、座礁し掛けたタンカーを持ち上げたんですけど、持ち方が悪かったのか船体から悲鳴が聞こえてきたんですよ。ギギギ、バキンッ! てな感じで。あの時はやっちまったかと、内心焦りまくりましたね」

 

「分かるー! タンカー船って頑丈そうに見えるけど、意外と繊細なんだよね。私も力任せで持ち上げたら似たような音を出してメッチャ焦った事があるもん!」

 

「後は崩壊し掛けた橋なんかも持ってて怖かったですねー。アーッ持つ支点ミスったー! みたいな」

 

「そうそう! 支点力点作用点ー! って、パニクり過ぎて何故か数学の授業内容が頭に浮かぶんだよね」

 

「で、その度に当時の先輩ヒーローに叱られるんですよ。力任せにするなっ! て」

 

「私もお師匠から良く叱責されたっけなぁ。バカ力を上手く使えなければ唯のバカだって。うぅ、思い出したら寒気が……」

 

次第に、過去の自分のやらかした話を暴露していくようになっていく。互いに似たような失敗をしているのか、共感できる部分に次第に二人は笑みを浮かべた。

 

尤も、話の内容を理解できるモノは二人以外誰もいないのだが。

 

楽しい一時。No.1ヒーローになってから誰かと談笑していた記憶の無い後藤は、オールマイトとの会話は楽しかった。共感できる話題、共感できる失敗。自分以外にも似たことをやらかしていると知った後藤は、オールマイトの来訪を純粋に楽しんでいた。

 

だが、いつまでも楽しんでばかりもいられない。折角来てくれた彼の時間を無為に終わらせない為に、後藤はそろそろ話を進めることにした。

 

「────それで、結局オールマイトは何しに俺の家へ? まさか、本当に雑談をしに来た訳では無いのでしょう?」

 

「─────」

 

 笑みを浮かべていたオールマイトの表情が引き締まる。その迫力にやはり平和の象徴は伊達ではないなと、改めて後藤は思い知った。

 

「─────後藤君。いや、超ヒーロー【ゴジータ】。私から君へ一つ頼みたい事がある」

 

「それは………何です?」

 

「─────私と、一時だけチームを組んでくれないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒャッハー奪え奪えー!」

 

「異能最高! 個性最高! 使わなかったら勿体ないゼェッ!」

 

「俺が、俺達が、ヴィランだ!!」

 

 街中で暴れる個性の集団。社会に苛立ち、個性を持て余し、遂に理性と共に弾けた悪意の集団。自分はちっぽけな存在じゃないと、下らない承認欲求が爆発し、周囲を破壊して人々を巻き込んでいく。

 

逃げ惑う人々、怯え、喚き、泣き叫ぶ彼等を前にして悪漢達の顔が喜悦に歪む。

 

故に………。

 

「─────あ」

 

「ん? おいおい急に止まんなよ。しらけるだろう………が?」

 

 彼等(・・)は、来るのだ。

 

「な、なななな何で……ッ!?」

 

「なんで、ここに!?」

 

「「「No.2とNo.1がいるんだよぉぉぉっ!?」」」

 

逃げ惑う人々の足は止まり、ただその光景に唖然とする。親とはぐれて泣いていた幼い子供すら、言葉を失い目を奪われていた。

 

並び立つNo.1とNo.2、時代を背負う両者が肩を並べているその光景に、人々は勿論ヴィラン達ですら圧倒されていた。

 

「さぁ、組んで初めてのお仕事だ。恥ずかしい所は見せられないぜ、気合いを入れていこうか。ゴジータ!」

 

「当然。上げていくぜ、オールマイト」

 

「「私達(俺達)が………来たッ!」」

 

この日、日本が震えた。

 

 

 

 






「────所でオールマイト、どうして俺の自宅が此処だと?」

「あ、うん。根津校長から教えて貰ったんだ。彼なら此処にいるって」

「いや確かに教えたけども! 何でこのタイミング!?」

『そろそろ手助けが必要と思ったからさ! 主に事務処理的な意味で、ね!』

「さ、流石ハイスペック、何でも知ってるのね」

『何でもは知らないさ、知ってることだけさ!』


今回の話で脳が焼かれてそうなのは次の内誰?

  • 1.爆豪勝己
  • 2.ステイン
  • 3.エンデヴァー
  • 4.死柄木弔
  • 5.全員
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