楽しみながらプレイしていきたいと思います。
そんな訳で初投稿です。
魔獣の森にて無数の土塊の怪物達を撃退しながら突き進んで数時間、日は傾いてそろそろ夕暮れに差し掛かる時間帯。
緑谷と爆豪を筆頭に1年A組の面々はボロボロで肩で息をしながら森からの脱出を果たしていた。
委員長である飯田も轟も酷く消耗しているのに対し、先の二人は汗と泥で汚れていながらも他の生徒達より幾分か余裕を持っていた。
「はぁ……はぁ……や、やっと着いたぁ……」
「もう無理。オイラ、もう一歩も歩けねぇ。モギモギも品切れだぁ」
疲労困憊、満身創痍の面々。それでも例年よりだいぶ早い今年の1年に、ピクシーボブは素直に感心していた。
「へー、思っていたよりやるじゃん! そこの二人といい、今年の子は本当に粒揃いだ!」
「夕方まであと30分。うん、このタイムは本当に誇っていいと思うよ」
「でも、アタシ達ならもっと早くクリア出来るのニャー!」
褒めているようでマウントを取るプッシーキャッツ、大人気ないラグドールの言葉にも、反応出来るものはいない。疲労のあまりマトモに反論の言葉すら出せない生徒達に、流石のピクシーボブもやり過ぎたと反省した。
「……チッ、やっぱあの局面で多少のリスクを負ってでも強行突破するべきだったか」
「でもそれだと森に火が付いちゃうし、皆も巻き込むから、僕としては皆と息を合わせる事を優先させるべきだと思うよ」
「クラス全体の連携も加味してるならそっちの方が正解か、クソが」
未だに肩で息をしている他の面々に対して、既に爆豪と緑谷は今回の森の中での行軍に対して反省会をしている。………何なのこの二人、明らかにこの二人だけ違う立ち位置にいたりしない?
「……まぁ、でもそんなに気を落とす事はないわよ。今の時点でもだいぶ動けている方だしね」
「そうそう………あのトンチキ野郎なんてスタートから三分も掛からずにゴールしてたけどね。何だよ、カップラーメンが出来るより早く片付いたとか、ふざけすぎだろ」
自分の至らなさを嘆く1年A組、そんな彼等をフォローするべく過去の話を持ち出すピクシーボブだが、それは彼女達にとっての地雷だったらしい。項垂れ、顔に影を落としながら当時の事を思い出すピクシーボブに、緑谷は薮蛇だと思いながらも好奇心には勝てなかった。
「そ、その話って………もしかしてゴジータの?」
「そうよ、あの超絶ドチート野郎のゴジータ。当時のアイツも今日の君達みたいにクラスごとあの森へと落としたのよ」
「ピクシーボブ、ちゃんと話は正確に伝えなよ」
「落としたんじゃなくて、落ちてくれたんだよねー」
マンダレイの横槍に言葉を詰まらせるが、構わず話を続ける。
「あの男、森にいた魔獣を全て叩きのめすだけに留まらず、クラスメイト全員を背負って森を縦断しやがった」
「しかも私達を待っていた間、呑気に筋トレをしている始末」
「施設に戻ってきた私達を見てゴジータの奴何て言ったと思う? 『こっちだ。ウスノロ』だって! しかも鼻で笑いながらよ、酷くない!?」
ピクシーボブは当時の事を思い出して憤り、マンダレイは苦笑する。ラグドールに至っては真似をしながら当時のゴジータのデタラメさを誇張抜きで語っている為、生徒達の衝撃は大きかった。
「す、スッゲーなゴジータ。既にその頃から規格外なのかよ」
「しかも、話はこれだけで終わらないのニャ。何とゴジータに背負わされた当時のクラスメイト達は、流石にこれはないんじゃないかと自分達から自主的にもう一度やり直すことを提案したのよ」
「流石に素人を森に二度も戻すのは気が引けるし、その日は結局軽めの筋トレだけで終わったんだけどね」
あははと、ゴジータのお陰でメチャクチャになった日程に遠い目をする三人。学生の頃から逸話を残しまくっているゴジータに、一部の生徒は目を輝かせているが、大多数の生徒はドン引いていた。
生徒達に試練を課すことで更なる強いヒーローへ導く雄英。そんな雄英を弄ぶが如くPlus Ultraしてくるゴジータ。
その光景をちょっぴり見てみたかったと思う爆豪だった。
「オホン。それじゃあ皆、先ずはお疲れ様。余った時間を小粋な昔話で潰せた事で、そろそろ夕飯の時間となりました」
「今日だけのスペシャルメニュー! 明日からは自分で作るんだよ!」
「猫の手助けは今日までニャー!」
疲れて動けなくなった面々も、そろそろ動けるようになってきた。そして、言われて初めて気付いた自身の空腹状態、余程疲弊していたのだろう。途端に鳴る腹の音に、一同は案内されるがまま食堂へと向かった。
そこで………。
「わーたーしーがー、皆の夕御飯を作りながら、いたッ!!」
ピチピチのエプロンを着て、虎と一緒に晩御飯を作るオールマイトにA組全員がスッ転んだ。
◇
「いやぁ、まさかオールマイトがいるとはなぁ」
「サプライズにしたって衝撃的過ぎるでしょ。何だよ、エプロンって」
「オイラ、暫くは裸エプロンネタは控えるわ」
用意された食事も食べ終わり、今日一日の疲れを癒しに露天風呂へやって来た男子生徒達。予想以上に大きい浴場にテンションを上げつつ、心地よい暖かさに浸っていく内に話題はクラスの話に移る。
「しっかし、緑谷強くなったよなー。入学初日と比べるとまるで別人じゃん!」
「個性使っても体を壊さなくなったし、マジでこの数ヵ月で変わったよなぁ」
「う、うん。その節は心配掛けてすみませんでした」
入学式からヴィラン襲撃まで、個性を使うには体の一部を壊さなければいけなかった緑谷。それがゴジータと関わった事で改善され、今では50%の力も一瞬だけであれば反動なく使いこなすことが出来ている。
そんな緑谷がクラスの中で一番強くなっている事に対し、切島や砂藤といった肉体派の生徒達は素直に緑谷の成長を喜んだ。
「でも、やっぱり調整が難しくてさ。少しでも力んじゃうと筋を痛めちゃうんだ。今回の合宿で、その辺りを改善するのが今の僕の目標かな」
「うむ、そのたゆまぬ向上心、感服するよ緑谷君。俺も負けてられないな」
「────諸刃の剣の技、響きはいいのが、な」
「成長といえば爆豪、お前もヤベェ位成長してんじゃん! 例の光る爆破、だいぶ使いこなせるようになってるよな!」
「あぁ?」
次の話題が自分に振られ、折角心地よかった気分が害された事を微塵も隠さない爆豪。そんな不機嫌全開な爆豪に怯む素振りを全く見せず、上鳴は続ける。
「やっぱアレか、ゴジータに鍛えられたからか!?」
爆豪も、緑谷に負けず劣らず短期間で劇的な成長を遂げている。爆発の凝縮、そこからの威力の向上。威力が増せば増す程制御の難しい自身の個性を、爆豪は見事にモノにしている。
加えて、先日の期末試験の際に見せた新たに発現した光る爆破。その威力はこれ迄の比ではなく、光る爆破を利用しての推進力も桁違いとなっている。
緑谷とオールマイト、二人と並んで試験会場を更地にした光景は、今もクラスメイト達の記憶に鮮やかに色濃く残っている。
興奮気味に捲し立てる上鳴、いい加減鬱陶しく思う爆豪だが。
「なぁなぁ爆豪、今のお前なら緑谷と一緒ならゴジータ相手でもいいトコいくんじゃね?」
「ちょ、上鳴君!?」
突然巻き込まれる緑谷。こういう軽い所のある上鳴は、クラスの空気を明るくするのに必要とされているが、時には地雷を踏み抜く場合もある。
自分の名前を出せば大抵は声を荒げる爆豪だが………。
「バカかテメェ。あのNo.1がプロにもなってねぇガキ相手に負けるかよ。そこのクソデクがいた所で頭数にもなりゃしねぇ、揃って床のシミになるのがオチだ」
「で、でもオールマイトにはそこそこ巧く立ち回ってたじゃん」
「つくづくノータリンだなテメェは。ガキの実力に合わせて加減しているトップヒーローなんて比較になるか。そんな事も分からねぇから未だに一発屋で終わってるんだろうが」
「ぐ、ぐふぅ………そ、そこまで言うかよ爆豪ぉ」
同級生を相手に一切容赦せずに言葉の暴力で叩きのめす爆豪に、上鳴は涙ちょちょ切れになっていた。しかし、誰も彼を慰めようと思わない。今のは無遠慮に踏み込んだ上鳴にこそ責がある。
それでもドンマイと無言の肩ポンしてくる切島は、やっぱり良い奴だった。
「俺ァ、この合宿を経てもっと強くなる。火力の底上げと制御、それらを同時進行で極めて更に上へと進む。悪ぃが、雑魚の歩みに合わせるつもりはねぇ」
そう口元を不敵に歪ませる爆豪。嘲笑う様な挑発的な笑み、それを向けられた男子生徒達は自分達の今の立ち位置を突き付けられている気がして表情を強張らせる。
「俺が目指す頂はもっとずっと遥か先だ。其処に挑むには用意された試練を乗り越えるだけじゃ足りねぇ。だから俺は………」
強くなる。そう静かに、自身に誓う様に呟く爆豪は自身の手を見る。ゴジータの手はもっと大きく強かった。あんな男になる為に一切の妥協はしないと決意を固める。
そんな爆豪を中心に場の空気が張り詰め始めた時。
「皆と裸の付き合いをしたいが為に、私が来たァ!」
腰に布を巻いたオールマイトが満面の笑みを携えて入ってきた。あ然となる生徒達、霧散する場の空気、それを感じ取ったオールマイトは気まずそうに……。
「えっと、その………お邪魔でした?」
モジモジとしているNo.2ヒーロー、そんな彼に失礼だと承知しながらも。
(((エンジョイしてるなぁオールマイト)))
緑谷を除いた男子生徒一同、そう思わずにはいられなかった。
◇
「く、クソぉっ! ここまでなのかよぉ!」
大阪市。古くから商いを生業としている商人達の街。義理人情の街として有名なこの街にヴィランの悲鳴が響き渡る。
ヴィランと呼ぶには小物で、いっそチンピラと称されても違和感のない木っ端者。涙混じりに街中を走る男は目の前のヒーローを見上げる。
「やれやれ、やくざ者というから某堂島の龍みたいな奴を想像していたってのに、てんで期待外れだったな」
「ふざけんなボケェ! 何でテメェにガッカリされなきゃならねぇんだよ!!」
泣き喚き、当たり散らす男。凄む訳でもなく、ただ目の前の現実を受け入れていない駄々に、ゴジータは深い溜め息を吐き出しながら肩を竦めた。
「おおきになゴジータ。チンピラヴィランの確保、ご苦労さんや」
「空のパトロールしていたら偶々目についたから対応しただけさ。近くにアンタがいるのを知ってたら、手出しはしなかったよ───ファットガム」
未だに泣きわめくチンピラを無視し、背後の人垣から現れる大柄のヒーローを見る。丸みを帯びて黒いマスクを着用しているのは大阪を中心に活動しているBMIヒーロー“ファットガム”だ。
その巨体を揺らしながら歩み寄る彼に苦笑いを浮かべ、自身の余計な手出しを謝罪する。そんなゴジータにファットガムは笑みを浮かべて応えた。
「なに言うとんねん。お前さんが来てくれたから被害も出さずに未然に防げたんや。お前さんが最初にぶちのめしたヤクザモン達の付けていた奴、あれはどうみても昨今話題になっている違法サポートアイテムやったで」
「やっぱりそうか。………因みに、確保の方は?」
目を伏せて、悔しそうに首を横に振るファットガム。どうやら今回も詳しく調べようと近付いた瞬間に自壊したらしい。徹底的な漏洩防止の手段、此方に一切の情報を与えるつもりはないという、裏に潜む黒幕の執念深さを垣間見た気がした。
「仕方ねぇ。一応残った残骸だけでもかき集めて警察側に提出しておこう。この案件は警察も追っているモノだから、きっと力を貸してくれる筈だ」
「おおきに。気を遣わせてしまって悪かったな」
「気にすんなよ。持ちつ持たれつ、気楽にいこうぜ」
ナハハハと快活に笑うファットガムと不敵に笑うゴジータ。座り込んで大人しくなっているチンピラなど最早眼中になかった。
どうせこの程度の輩なら大した情報など持ち合わせてはいないだろう。そんな、慢心とも呼べるゴジータの態度に………チンピラは言葉に出来ない憤りを覚えた。
そして。
「こんのぉ、調子に乗んなやクソヒーローが! おどれらまとめて地獄行きじゃあ!!」
「コイツ、まだ得物を隠し持ってたんかい!」
チンピラの個性は【隠し扉】。自身の体の一部を小さな箱へと自在に変え、そこへモノを収納し隠し持つ。木っ端ヤクザの中でも更に半端な個性しか持たない自分の唯一の有用性、隠し持っていた銃を取り出し、狙いを付ける。
狙いの対象は、勿論ゴジータだ。
「これでテメェもおしまいや! さよならやぁ、ヒーロー!!」
鼻水と涙でグチャグチャになりながら狂ったように嗤う。引き絞られる引き金、撃鉄が落ち、銃身から飛び出してくるのは小さな
弾丸というより画鋲に近いソレ。まっすぐゴジータの額へ目掛けて飛来するソレに、チンピラは緩やかな世界の中でより笑みを歪める。
ちっぽけな雑魚のチンピラでしかなかった自分が、No.1ヒーローを討ち取れる。自分の名前は間違いなく歴史に刻まれることになる。
ゆっくりと流れる時間の中で男がそう確信した瞬間……。
「あ? 何だこれ? ───画鋲?」
「…………ふぇ?」
なんて事なく、赤い破滅の一撃は指先で摘ままれ。
「まぁいいや。取り敢えず返しとくぞ、ほい」
「ブフッ」
親指で弾いて返されると、あかいはめつのいちげきはまっすぐチンピラへと向かい、吸い込まれるように額へと捩じ込まれた。
「いくら腹に据えかねていると言っても、流石に弾一発で俺を倒そうとするのは………逆に舐めすぎだろ」
それもそうだ。薄れ行く自我の中でNo.1ヒーローの台詞を反芻しながら、チンピラヴィランの意識は深い泥の底へ落ちていった。
Q.オールマイト、少しはっちゃけすぎてない?
A.オールマイトははっちゃける時ははっちゃける印象。
「ちゃんと他の仕事は終わらせているから、無問題さ!」
「そういう理屈じゃねぇと思う」